RAILJACK   作:マブラマ

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車両センターの戦場

國鉄本社ビル

「公安部が朝鮮総連ビルを制圧。強制捜査に入り、職員を何人か連行しました」

捜査員Aが報告すると、香子が鋭く質問した。

「RAILJACKの連中は?」

「それが……逃げられました。強制捜査する前に察知されたかと」

「走り警視に公安機動隊を下がらせろと伝えろ! 奴らは何処かの鉄道車両基地に何か仕掛けているはずだ!」

「では刑事部と連携を取って?」

「いや、待て! あの四人にやらせよう」

「あの四人……? まさか!?」

「そのまさかだ」

香子の目に冷徹な決意が宿った。

「…奴らの逃げ場はもうない。あの四人なら、必ずやり遂げてくれる」

その言葉に、捜査員Aはただ一つ、深く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

國鉄 東京新幹線車両センター

剣持しえなが鉄道公安機動隊とSATを陣頭指揮し、第四警戒班の桜井あおい、高山直人、岩泉翔、小海はるかを引き連れていた。

「五能隊長が重傷になった以上、ボクが代わりに指揮を執ることになった。この先不安もあるが、どうか皆の力を貸してほしい」

「しえなさん。私達は出来る限りバックアップします」

あおいが力強く応じると、しえなが頷いた。

「RJの構成員と戦闘経験あるのは鉄道公安隊と第四警戒班だけだ!」

「でも、これだけの人数で?」

直人が不安げに尋ねると、しえなが断言した。

「充分だ! これだけで戦える!!」

しえなはH&K MP5A5を手にパラベラム弾を装填。翔が特殊警棒を握り、はるかがコルト・ローマンで戦闘準備を整えた。

「高山! 万が一の時これを携行しろ!」

しえなが直人にSIG SAUER P226を渡す。

「これって……! 俺は」

「テロリストはいつ何処に撃ってくるかわからない時もある。心に刻んどきなさい」

あおいがアタッシュケースを開き、中からトンプソン・サブマシンガンを取り出した。

「!! お前、何故こんなものを!!!」

「神長管理官から用意してくれたんです」

「トミーガン一丁で連中をやるのか!?」

「やるしかありません!!」

「……分かった! 但し、威嚇射撃だけだ!」

「はい!」

SAT隊員Aが叫んだ。

「隊長。来ました! 例の連中です」

「来たか……」

前方には赤ヘルにゲバ棒を持った老若男女が現れた。「國鉄解体反対!」「民営化反対」と白文字で書かれたヘルメットをかぶり、10代から90歳以上までが集結。

「お年寄りまで……これじゃ発砲できません!」

SAT隊員Bが困惑すると、しえなが制した。

「待て! 落ち着くんだ!」

だが、90歳以上の男女が疲労で退場し、20代の男性におんぶされて去っていった。

「お年寄りをおんぶしていってる?」

「皮肉なものだな。お年寄りまで巻き込んでこんなくだらないデモに参加するとは」

RJ側はゲバ棒、鉄パイプ、釘バットを手にSATと鉄道公安機動隊に立ち向かった。

「皆、準備はいいな!?」

「装備は万全です」

「OKだ」

「良好」

「準備はできておる……いつでも戦える!」

「……」

「(不安だ……)」

「よし! 全員突撃!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

RJ構成員が大隊で特攻をかけてきたその時――

散髪鋏を持った女性が一人で立ちはだかった。21世紀の切り裂きジャック、本物の武智乙哉だ。

「たった一人で立ち向かうとはな、度胸は褒めてやる。だがな、今日は命日だ! 悪く思うなよ!!」

RJ構成員Aがゲバ棒を振りかざすが、乙哉は無言で鋏を構えた。

「どうした!? ビビってんのか!!? 引くなら今のうちだぜ」

「アンタこそビビってんじゃないの!?」

「お、俺は……ビビってなんかねぇ! お前を警戒してるだけだ!!」

「そうかな? 手が震えてるけど?」

「う、うるせーっ!! 俺はお前みたいなイカれた野郎と一緒にしたかねぇーんだ!!」

ゲバ棒を振り下ろすが、乙哉の散髪鋏が一閃。ゲバ棒が真っ二つに。

「な……バカな!!!」

「クソッ! いい気になるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

鉄パイプで殴りかかる構成員Bも、先制攻撃で倒された。

乙哉が散髪鋏を刀のように分離し、切り刻む。

「ぐああああああああああっ!!」

「次は誰なの!? 前へ出なさい!!」

「ぐっ……お前は一体……!? まさか!!?」

「男を切り刻むのは興味ナッシングだけど、今回は訳ありでアンタ達を切り刻みに来たって訳よ」

「ハッ……そうか、お前は10年前の事件で女性を切り刻んだ……!!!」

「ようやく気付いたようね。そうよ…あたしが本物の武智乙哉よ。アンタ達があたしを装い罪に着せようなんて10億年早いわよ?」

「お……俺達はただ雇われただけだ!」

「?」

「アンタを殺すよう命令されただけの身分なんだ!! それ以上もそれ以下でもねぇ!!」

「言い訳なんかどうでもいいわ! アンタ達を切り刻む!! それだけで充分よ!!」

「やめろ……うがあああああああっ!! わかった!! 言うよ!! 金橋!! 金橋だ!! 金橋って言う女がアンタを装って冤罪を着せようとしてたんだ!! 嘘じゃない!! 本当だ!!」

「……」

「滅茶苦茶だ! 何もかも……!!」

乙哉が散髪鋏を下ろし、収納すると、しえなが声をかけた。

「武智」

「何?」

「下がってろ! ここから先はボクの仕事だ」

「わかった。後はしえなちゃんに任せるよ」

「高山! 武智を保護してくれ! 外にSATの警備車があるからそれに乗せろ!」

「わかりました!」

「ちょっと待って! これじゃ私が犯人みたいに」

「黙ってボクに従え!」

「……わかったよ」

直人に連れられ、乙哉は警備車へ。

しえなが拡声器を手に警告した。

「もうお前たちに勝ち目はない。武器を捨てて降伏しろ!」

だが、一人の青年が砕石を拾い、しえなに投げつけた。ライアットシールドが防ぎ、命中しなかった。

「あの男。砕石を拾い投石するとは……前代未聞だな」

「このまま見過ごせませんよ! 隊長」

「神長。発砲許可をくれ!」

《待て! 撃つな! もうすぐ増援のヘリがそこに来る。それまで耐えるんだ!》

「増援来るまで何分だ!?」

《少なくとも2時間は掛かる。もし抵抗する奴がいるなら威嚇射撃しても構わない!》

「神長! 恩に着る!」

《幸運を祈る……》

「警察も國鉄を匿うつもりか!!?」

青年が再び砕石を投げるが、しえなが避けた。

「あの青年を確保しろ! 公務執行妨害だ!」

「ハイッ!」

青年は御用となり、連行された。

「これ以上の抵抗は無駄だ! 大人しく投降しろ!」

「う、うるせーっ!! 俺たちはな、国の税金で運賃取られんのがムシャクシャしてるだけだ!!」

しえながGLOCK 19で上空に威嚇発砲。

バァーン!

RJ構成員が後退し始めたその時――

「全くどいつもこいつも役に立たない連中だな」

AK-47を手に持つ男が現れ、威嚇射撃でRJ構成員を強制退却させた。

「あ、すまないな。連中がピィーッピィーッうるさくてさ」

「お前が仕組んだのか? この二つの事件を武智乙哉に冤罪着せ、その後彼女を抹殺しようと企んでいたのか!?」

「ま、そうなる事になるな。理論的に。だが俺は直接手出ししない主義なんでね。武智乙哉本人を殺すような事は出来ない。何故だと思う?」

「……」

「我が祖国にとって使える人材だからだ!! 南朝鮮を潰す為には手段を選ばず、祖国統一の為に彼女を捕まえるしかなかったからだ!! そして祖国統一した後、鬼畜米帝の連中を一人残らず滅多殺しにしてやるのだ!!」

男が高笑いし、本性を現した。

「あ、紹介遅れたな。俺はパンムン。イ・パンムンだ。一応RJの幹部の一人だ」

「狂ってるよ。アンタ達がやってることは間違ってる!」

「綺麗事で片づければお前は既にこの世から抹殺してるよ。我が朝鮮民主主義人民共和国にいたらな」

「ボクはアンタ達とは違うんだ!」

しえなが銃口を向ける。

「違わないね……君はもう既に何十人の命を奪ってる。違わないか? 自分の胸に当てて確かめてみろ」

「何だか知らないけどうっとうしい相手ね」

あおいがトンプソン・サブマシンガンを構えたが、しえなが制した。

「待て! 撃つな! 発砲命令は出てない!」

「わかってます! 威嚇射撃なら構いませんよね?」

パンムンの背後にRJ実行部隊50人が軍隊のように整列して現れた。

「くそ……敵の増援か!?」

「一体何だって言うのよ!?」

「数が増えてきましたね」

「相手するには丁度いいくらいだ! ちっと厳しいけどな」

「神長! まだ増援は着かないのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

國鉄本社ビル

「まだだ! まだ撃つな! 狙撃班はまだ着かないのか!?」

香子の声が会議室に響き、捜査員Aが緊張した面持ちで答えた。

「あと1時間30分です」

その時、伊勢崎が重い足取りで近づいてきた。

「管理官」

「何だ? 鉄道公安隊は後方支援に専念しなさい」

「俺がちょっくら行ったら、あの若えモンを援護すればいいことだろ?」

「伊勢崎さん。あなたは……!?」

香子が驚きを隠せない中、伊勢崎が渋い笑みを浮かべた。

「俺ももうすぐ定年だ。少しは活躍の場を与えてくれないか?」

「……」

香子が言葉に詰まると、鳰がニヤリと笑って口を開いた。

「良いっスよ。ウチが許可します」

「走り、お前……!」

「公安部もたまには緩めないといけないっスからね」

「お前も疲れてるだろ? 少しは休憩したらどうだ?」

香子が心配そうに言うと、鳰は軽く肩をすくめた。

「いやいや、まだやらなければいけない事が山ほどあるんスよ……」

「……何を企んでる?」

「別に? 何も疾しいことなんてしませんっスよ」

鳰が薄笑いを浮かべると、その表情には何か疑わしい企みがちらついていた。香子の視線が鋭く鳰を捉えるが、彼女は平然と目を逸らした。

 

To be continued

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