RAILJACK   作:マブラマ

29 / 63
死闘

警視庁

上級幹部Aが会議室の重い空気の中で口を開いた。

「SATはRAILJACKと接戦してるそうだな」

「國鉄の鉄道公安隊と連携し、何とかやってるが……」

上級幹部Bがため息をつくと、上級幹部Cが静かに提案した。

「神長君は……まぁ良い。このまま事態が収まらなかったら、私の部下を行かせてやりましょう」

「その方が早いんでしょうね」

上級幹部Aが頷き、上級幹部Dがニヤリと笑った。

「走り君が神長君のバックアップした方が正解でしたな」

「フッフッフッ……君はどう思うかね? 平野警視監」

平野警視監が少し慌てて答えた。

「あ、いえ、剣持君にはいつも貢献してますよ」

「もう少しマシな嘘をつけないもんかね。あ、そうそう、例の件考えてくれてるだろうね?」

「ええ、もちろんですよ。娘はもう25ですし。キャリア組の仲間入りですよ」

「次の時は楽しみにしてるよ」

上級幹部Aの言葉に、平野がぎこちなく笑った。裏では何かが進んでいるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

國鉄 東京新幹線車両センター

しえな率いるSATと警四メンバーは、RJの実行部隊と対峙し続けていた。

「日本の警察はそんな程度か? ざまあないな!!」

イ・パンムンの高笑いが響き、しえなの表情が硬くなる。

「上層部から命令なきゃ動かない……だが俺達は違う! 俺達は祖国の為に戦い、個の為に戦ってるのだ!!」

「……」

しえなが固く口を閉ざす中、警四メンバーに目配せで合図を送った。

「!?」

「どーしたの、あおい?」

はるかが驚く中、あおいが小声で呟いた。

「おびき寄せろ?」

「何言ってるの?」

「合図よ。敵をおびき寄せるのよ」

その時、無線機から直人の声が飛び込んできた。

《こちら高山! 応答してください!》

「高山! アンタまだ警備車にいたの!?」

《武智さんが……》

「!!」

「高山君! 何があったの!? しっかりして!!」

「くっ……武智が逃げられたか!」

《すみません……役に立たなくて》

「いや、いいんだ。高山! お前はそこで待機だ! 命令が下るまで動くんじゃないぞ!」

あおいは即座に行動を決めた。逃げるふりをして敵をおびき寄せ、撃退する策だ。700系新幹線の近くまで後退し始めた。

「パンムン同志! 女が逃げました」

「フンッ。尻尾を巻いて逃げたのか……?」

「どうします?」

「追え。追跡しろ。見つけ次第すぐ殺せ!」

「了解です」

前方に翔が立ちはだかった。

「おっと、お前達の相手はこの俺だぜ!」

「そこをどけ! 死にたくなければな!」

「生憎だが、俺はそう簡単には死なない男でな。まずはお前から行くぜ!」

「命を無駄にしたな。おい、あいつを消せ!」

「ハッ!」

実行隊員Bがトカレフ銃を構え、翔に発砲しようとした瞬間――

バァーン!

バァーン!

バァーン!

「グベッ!」

謎の銃撃に撃たれ、隊員が倒れた。

「何だ? 何処から銃撃だ!?」

翔の背後に線路を走る車影が現れ、徐々に加速してきた。

「あれは……軌陸車?」

「遅くなってすまねぇ」

伊勢崎がマツダ・ボンゴトラック(BA2系)の軌陸車から降り立ち、レミントンM1100ショットガンを手に持っていた。

「伊勢崎さん! 何でここに?」

「おめぇ達が心配で援護しに来ただけだ」

「桜井は?」

「あおいは向こうで敵をおびき寄せて一人で」

「そうか……高山は外で待機か?」

「はい、ですが……」

「逃げられたんだろ? まぁ……それも分かるまでもない。彼女を冤罪着せようとした連中を野放ししない気持ちは分かる」

「……」

「……あと30分」

しえなが時計を見ながら呟いた。決断の時が刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京新幹線車両センター 格納庫

「……」

桜井あおいは700系新幹線の車両間に身を潜め、敵が来るのを待ち伏せていた。息を殺し、耳を澄ます。

ガガガガガガガガガガガッ!

アサルトライフルの銃声が格納庫に響き渡った。RJの実行部隊の下っ端だろう。

「クッ……弾切れか? 弾倉を装填だ!」

実行隊員AがAK-47の弾倉を慌てて入れ替えると、嘲るように呟いた。

「腰抜けが。日本の警察はこんなものか?」

「残念。鉄道公安隊よ! 大人しく観念なさい!」

あおいがトンプソン・サブマシンガンを構え、威嚇する姿が影から現れた。

「ど、どっちだっていいだろ! 意味は同じだし! あ、相手が女であろうが何だろうが、容赦はしねぇ!!」

「威勢はいいけど、手が震えてるのは私を撃てないからじゃないの?」

「うるせーっ! そしてくたばれぇ!!」

実行隊員がAK-47を乱射したが、あおいは素早く車両の陰に身を隠した。

「ば、バカな!? 弾は当たったはず!!?」

「倍返しよ!」

ガガガガガガガガガガッ!

トンプソンの連射が実行隊員を襲い、胸を撃ち抜かれた隊員が倒れた。

「女一人で……ガハッ!!」

「女だからって甘く見たからこうなったのよ」

「なかなかやるわね。日本の鉄道公安隊さん」

突如、冷ややかな声と共に一人の女性が現れた。

「誰?」

「フッフッフッ……とりあえずは沢井恵子と名乗っておこうかしら。いや……ハン・ヨムジュと名乗っておくべきかな?」

「どっちでもいいわ。アンタ達みたいな連中がいるから國鉄……いや、日本国の鉄道企業全体が腐敗していくのよ!」

「そんなのエゴイストの言う台詞よ。まぁどっち道、日本は我が将軍様の手のもとに入るわけだから、南北統一も夢の一歩に近づいていくのよ。武智乙哉を利用して全てを終わらす時に……」

「言ってくれるわね」

「(間抜けな公安隊員さん、見て見ぬふりしとけば死なずに済んだのよ)」

ヨムジュが内心で嘲笑い、解剖鋏を握ってあおいに襲いかかった。

「!!(やられるっ!)」

「祖国の為にここで……」

だがその背後で――

ガギィィィンッ!

「うぐっ……くそ……もう少しの所だったのに! …アンタは……本物の!!」

「よくもあたしを利用してくれたわね」

武智乙哉が巨大な散髪鋏を手に現れ、ヨムジュを睨みつけた。

「ご、誤解だ! あれは組織の連中が……!」

弁解するヨムジュを無視し、乙哉が鋏を振り上げる。一瞬にして切り刻みが始まった。

ズガァァッ!

ガギィィィンッ!

ズボラァァッ!

ガボラァァッ!

ヨムジュが解剖鋏で対抗するも、乙哉の力に圧倒された。

「この女……私より倍近く力あるっていうのか!?」

「(!? しぶといわね、ますます切り刻みたくなっちゃった)」

「(何だ!!? この目は……まるで獲物を追うハイエナの眼差しだ!)」

乙哉は容赦なくヨムジュのダッフルコートや衣服を切り裂き、血が滲むまで体を切り刻んだ。

切り刻む。

切り刻む。

切り刻む。

切り刻む。

切り刻む。

切り刻む!

切り刻む!!

「が……はぁ……」

ヨムジュが意識を失い、目の前が真っ白になると、最後に呟いた。

「(も……申し訳ありません……パンムン同志)」

「……」

あおいが愕然と立ち尽くす中、乙哉が振り返った。

「何? アンタも切り刻んで欲しいの?」

「……殺すの?」

「……ふふ」

「!!」

あおいがトンプソンで乙哉に銃口を向けた。

「こっちは実弾があるんだから!」

「心配しないで、あおいっちは切り刻んだりはしないよ?」

「……ならその鋏を捨てなさい」

「嫌だ」

「武器を捨てなさい」

「……」

「聞こえないの? 武器を捨てて投降しなさいよ! 抵抗すると射殺するわよ!!」

「あおいっちの願いでも聞けないよ」

ガガガガガガガガガッ!!

あおいが上空に威嚇発砲すると、乙哉が鋏を振り上げる――

ガァッ!!

――が、わざと外した。

「アンタ、命拾いしたわね」

 

To be continued

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。