RAILJACK   作:マブラマ

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空港の追跡

成田国際空港 第二ターミナル国際線

 

警官Aが息を切らせて駆け寄り、叫んだ。

「船越刑事、来てください!」

船越英一郎が鋭い眼光を向け、即座に応じる。

「どうした!?」

「これを!」

警官Aがゴミ箱から拾い上げた袋状のものを差し出した。船越が慎重に開封すると、そこには拳銃と解剖鋏が姿を現す。

「!……これは」

船越の脳裏に一瞬で推理が閃いた。

(証拠隠滅のために捨てたんだな……真犯人の仕業に違いない)

隣に立つ刑事Aが呟く。

「恐らく、真犯人が」

船越は重々しく頷き、確信を深めた。

「うむ……」

その頃、ファンジュは空港の喧騒の中を必死に逃げ続けていた。

「何とか、まいたか……あとはモスクワ行の飛行機に乗るだけだ」

彼女の声には安堵が滲むが、次の瞬間、工作員Dの焦った声がそれを打ち砕く。

「ファンジュ同志、急いでください! 警察がもうここまで来ています!」

ファンジュの顔が一瞬で青ざめた。

「な……くっ! 早く祖国へ帰って報告せねばならないことがあるのに」

背後から、重厚な声が彼女の逃げ道を断つ。

「動くな! 警察だ! お前を殺人容疑で逮捕する!」

警官Bが拳銃を構え、ファンジュを包囲。彼女は歯を食いしばり、逃走を試みるが――

「ここから先は通さないぞ!」

船越が堂々と立ちはだかり、その冷徹な視線がファンジュを貫いた。

「!!」

「観念するんだな。お前の殺人の証拠は全て揃っている」

「くそっ!」

ファンジュの瞳に絶望が宿り、彼女の抵抗する気力は急速に萎んでいった。

成田空港のロビーは一瞬にして静寂に包まれ、船越の声だけが重く響き渡った。

「貴様の犯行は全て露見した。逃げ場はない」

ファンジュは拳を握り締め、唇を噛みしめる。

「(祖国に……戻らなければ……)」

だが、警官たちが一斉に彼女を取り囲み、冷たい手錠がその細い手首にかけられた。

「連行しろ」

船越の冷静な命令の下、ファンジュは無言で引き立てられていく。

「(パンムン同志……申し訳ありません……)」

彼女の心に敗北の苦い味が広がり、力なく首を垂れた。

結局、ファンジュは韓国へ強制送還されることとなった。追跡劇は終わりを迎え、物語は一つの区切りをつけた。だが、船越の瞳にはまだ、正義を貫く執念の炎が燃え続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京新幹線車両センター

 

「総員発砲用意。敵は一人残らず殲滅しろ!」

パンムンの声が冷たく響き渡った瞬間、しえなの心臓がドクンと跳ねた。

「!!」

「悪く思うな。これも何かの縁だ……」

パンムンが薄ら笑いを浮かべると、無線越しに香子の鋭い声が割り込んだ。

《剣持、発砲を許可する。そいつらを撃つんだ!》

「神長か!? でも……」

しえなの声が一瞬震えた。撃つべきか、撃たざるべきか——頭の中で葛藤が渦巻く。

《上の命令なんか気にしなくていい! 増援は来なくなった。途中でトラブルが発生して引き返したそうだ。奴らを撃て!》

香子の言葉は冷徹で、容赦なかった。

「……」

しえなは唇を噛みしめ、目を閉じた。そして、次の瞬間、瞳に決意の炎が宿る。

「しえなさん、射殺しましょう! こんな連中を野放しにしていいんですか!?」

あおいが鋭く叫び、隣ではるかが拳を握り締めた。

「私も!できる限り手伝います!」

「俺も忘れちゃ駄目だぜ、隊長さん!」

翔がニヤリと笑い、軽口を叩きながら銃を構える。そこへ、直人が息を切らせて駆け込んできた。

「遅くなりました!」

「これで全員か?」

しえなが鋭い視線で全員を見渡すと、あおいが即座に頷いた。

「はい!」

「総員傾注!反撃に出るぞ! 鉄道公安機動隊は前後に後方二列へつけ!我々も応戦する!」

全員が一斉に射撃体勢に入り、しえなが号令をかけた。

「発砲準備!」

銃器を構えた仲間たちの呼吸が一瞬止まる。対するパンムンは冷笑を浮かべ、叫んだ。

「撃てっ!」

「発砲!」

ガガガガガガガガガガガッ!

ドガガガガガガガガガガッ!

バァーン!

ドーン!

バァーン!

銃声が轟き、硝煙が視界を覆う。直人が突然、肩を押さえて呻いた。

「いぐっ……! 肩が……!」

「高山! 気を引き締めて!」

あおいが叱咤すると、直人は苦笑いを浮かべた。

「そう言われても、銃なんか滅多に扱ってないからさ……」

「私が援護するから、高山は気にせず弾倉を撃ち尽くしなさい!」

「……わかった!」

バァーン!

バァーン!

ドォーン!

ガガガガガガガガガガガガッ!

ドーンッ!

ガガガガガガガガガガガガッ!

しえなが叫んだ。

「守ったら負ける……! 攻めるんだ!! 鉄道公安機動隊、突撃せよ!!」

鉄道公安機動隊がライアットシールドを構え、RJの実行部隊に突進。敵を次々と薙ぎ倒していく。

「圧されているだと……」

パンムンの顔が焦りで歪み、実行隊員Dが悲鳴を上げた。

「このままだと全滅です!」

「そんなことは……ん?」

ジャギッ!

突然、乙哉がパンムンの背後に現れ、鋏を手に不敵に笑った。

「悪いけど、逃がさないよ」

「くっ……サイコパスごときに!!」

「武智、伏せろ!」

しえなが閃光弾を投げ、

ボッ!

カァッ!

閃光が炸裂し、パンムンが目を覆った。

「!!?」

「確保ぉぉぉぉっ!!」

鉄道公安機動隊員が一斉にパンムンに飛びかかり、

ズカズカズカズカッ!

「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

パンムンが絶叫し、地面に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警視庁 幹部会議室

 

重厚なデスクに肘をつき、上級幹部Aが威厳ある声で切り出した。

「テロリストどもを片付けたか?」

その言葉に、上級幹部Bが肩をすくめ、軽い調子で返した。

「いやはや、今回は何とか丸く収まったな」

「その通りだな」

上級幹部Cが簡潔に頷くと、上級幹部Dがニヤリと笑って胸を張った。

「俺の部下を出さなくても済んだな、助かったよ」

上級幹部Aは少し間を置き、視線を平野へと移した。

「さて、平野君」

「は、はい!」

平野が緊張で声が裏返りそうな勢いで返事をすると、上級幹部Aが穏やかに、しかしどこか皮肉を込めて続けた。

「剣持しえなは逸材だな。粗末に扱うなよ。ところで、警視庁ももっと女性警官を増やさないとダメだな、時代遅れだぞ」

上級幹部Bが軽く笑いながら手を振った。

「今回のテロ騒ぎは大目に見てやれよ。RAILJACKの件は俺たちが何とかするから」

「じゃあ、そろそろお開きにしようか」

上級幹部Dが立ち上がり、カジュアルに締めくくると、上級幹部Eが穏やかな笑顔で応じた。

「だな。無事に片付いて何よりだ」

「あの、すみません……」

平野が遠慮がちに口を開きかけた瞬間、上級幹部Fが事務的な口調でバッサリ遮った。

「平野君、もう下がっていいぞ。用は済んだ」

「……」

平野は何か言いたげな顔で唇を噛んだが、結局言葉を飲み込み、静かに会議室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警視庁 某所

 

薄暗い部屋で、走り鳰がコーヒーを片手にソファにふんぞり返り、軽い調子で呟いた。

「あの2人、ホントにあの扱いで良いんスか?」

向かいの影に立つ謎の人物が、静かに、しかしどこか楽しげに返した。

「ええ、まだ利用価値はあるんでしょ?」

鳰が首を振って、コーヒーを一口啜りながら続ける。

「確かに身体能力は一般的な警察官と変わらないんスけどさ、鉄道公安職員ってのはちょっと無理あり過ぎるんじゃねぇかって思うんスよね。だって、電車の中でテロリストとドンパチやるって、映画でもなかなか見ねぇっスよ?」

「あら? 気に入らなかったかしら?」

謎の人物が少し意地悪く微笑むと、鳰はニヤッと笑って手を振った。

「いえいえ、利用価値ある人間はまだ使えるし、それにあのRAILJACKってテロリスト集団、なかなか面白い事やってますっスよ。特にその士幌邦夫って奴、気になりませんっスか?」

「……」

謎の人物が一瞬言葉を失い、無言で鳰を見つめる。だが、鳰は気にもせず、カップを置いて身を乗り出した。

「もう少し見物しますっスかね……。だって、これから何が起きるか分かんねぇ舞台に、こんな美味そうなネタが転がってるんスから、見逃す手はねぇっスよ!」

彼女の瞳には、好奇心と少しの狡猾さがキラリと光っていた。

 

To be continued

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