数ヶ月後
國鉄本社ビル 会議室
五能瞳教官が無事に退院し、現場復帰を果たした。幸い命を落とすことはなく、彼女の姿を見た警四メンバーは感涙にむせんだ。特に桜井あおいは教官に駆け寄り、勢いよく抱きついた
「教官、無事で良かった……!」
涙目のあおいに、五能教官は照れくさそうに笑った。
一方、武智乙哉は罪の立証がなく無実と認められ、静かに姿を消していた。
五能教官が会議室の椅子に腰を下ろし、剣持しえなに穏やかに声をかけた。
「剣持隊長。鉄道機動公安隊の代理指揮、ご苦労だったな」
「いえ、こちらこそボクは出来る限りしただけです」
しえながいつものクールな口調で返すと、あおいが明るく割り込んだ。
「教官、無事で何よりで良かったですね!」
高山直人がニコニコしながら呟く。
「まぁ、これで一件落着で日の丸一生安泰國鉄人生ってやつで………」
「高山!」
あおいが鋭く睨むと、直人は苦笑いで肩をすくめた。
しえながふと話題を変えた。
「そういえば、肝心な副隊長さんはどうなさったんですか? まさか仮病で休んだとか……?」
「ん? 貝塚のことか。あいつは腹痛で数か月休暇を取ってるよ」
五能教官がさらりと答えると、しえなの表情が一瞬固まった。
「……」
「どうした?」
「いえ、何でもありません。ただ……」
五能教官が首をかしげると、しえなが声を潜めて告白した。
「奴はボクの正体を知ってたんです!」
「!?」
「ボクがかつて裏社会でさつ—――――――」
「はいはい、難い話はそこまでにして、一緒に食事でも行きましょう!」
奈々が軽快に割り込み、場の空気を切り替えた。伊勢崎が渋い声で続けた。
「ま、半々は俺が奢りだけどな」
「おう、俺も腹減ったぜ。どこへ食うんだ?」
岩泉翔が目を輝かせると、あおいが呆れ顔で突っ込んだ。
「岩泉はこれに限って食うことしか考えてないから」
直人がふと思い出したように口を開く。
「あ、そういえばしえなさん。武智さんは誘わないんですか?」
「いや、あいつが来たらありがた迷惑だ。特に綺麗な肌をした女性が…………な」
しえなが苦笑いを浮かべると、直人が首をかしげた。
「はぁ……」
「あいつ、今頃どうしてるんだろ」
しえなが窓の外を見ながら呟いた。彼女の心には、乙哉がどこかで真っ当な仕事に就いている姿を願う気持ちがあった。そうであってほしいと、ただそれだけを祈った。
五能教官がゆっくりと会議室の椅子から立ち上がり、みんなに微笑みかけた。
「それじゃあ、食事に行こうか。みんな、あまり暴れないようにね?」
しえなが少し意外そうな顔をして答える。
「暴れるだなんて、そんなことするわけないじゃないですか。」
「まぁ、岩泉がいれば問題ないけどな。」
直人が揶揄うように言うと、岩泉はむっとして反論する。
「お前だって、いつも食うことしか考えてないだろ!」
あおいが笑いながらその場を和ませる。
「さて、今日はどこに行こうか?やっぱり鉄道員の集まるところでいいんじゃない?」
「それもいいな。でも、ちょっとおしゃれなところがいい気分だな」
伊勢崎が渋い声で言った。
そのとき、奈々がぱっと手を挙げて言う。
「じゃあ、あたしが知ってるところがあるわよ!ちょっとだけお高いけど、いい雰囲気のレストランだよ」
しえなが少し驚いた表情を浮かべる。
「飯田班長、そんなところ知ってるんですね?」
「うふふ、秘密よ。」
奈々は笑って答える。
みんなは賛成し、食事に行く準備が整った。そして和やかな雰囲気が広がった。車に乗り込み、レストランに向かう途中、誰もがそれぞれに思うことがあった。
しえなは車窓から外を眺めながら、ふとつぶやいた。
「……武智、どこで何をしてるんだろうな。」
その問いに、答えはない。ただ静かに、みんなは食事へと向かっていた。
寝台特急『北斗星』 食堂車
寝台特急『北斗星』の食堂車に、柔らかな照明が灯る中、エルヴィラが堂々と中央に立っていた。彼女の声が響き、新人紹介の時間が始まった。
「今日からこの食堂に入った新人さんよ。挨拶してちょうだい」
まりが無言で首をかしげ、まゆかが目を細めてじっと見つめ、アネッサに至っては微動だにせず沈黙を貫く。微妙な空気が漂う中、一人の女性が前に出て、控えめに頭を下げた。
「……武智乙哉です。よろしくお願いします」
エルヴィラがニッコリ笑い、胸を張って自己紹介した。
「営業本部主任のエルヴィラよ。楽しくやりましょうね!」
「ハイ!」
乙哉が少し緊張した声で返事をすると、まりがようやく口を開いた。
「……あんた、なんか見覚えある顔ね」
まゆかが冷ややかに付け加える。
「そうね、どこかで見たような……新聞とかで?」
アネッサがボソッと呟いた。
「……切り裂き……?」
乙哉の顔が一瞬引きつり、エルヴィラが慌てて手を振った。
「ちょっとちょっと! 変な詮索はやめてあげなさい! 新人さんが可哀想でしょ!」
乙哉が苦笑いを浮かべながらフォローする。
「いえ、大丈夫です。過去は過去ですから……今はただ、この食堂車で真っ当に働きたいだけです」
エルヴィラが目を輝かせて拍手した。
「その意気よ! さぁ、みんなで『北斗星』を盛り上げていきましょう!」
まりが肩をすくめ、まゆかがため息をつき、アネッサが「……ふぁ」と欠伸を漏らす中、乙哉は小さく微笑んだ。
「(ここでなら、新しい人生が始められる……かも?)」
To be continued