寝台特急『北斗星』の車内は、警四メンバーの賑やかな声で一気に活気づいていた。
翔が腹をさすりながらぼやく。
「腹減ったな。おい高山、早く飯食いたいぜ!」
直人が冷静にたしなめた。
「岩泉。今回はそういう目的で来たわけじゃないだろ。」
はるかがのんびり仲裁に入る。
「まぁいいじゃないですか。」
すると、あおいがニヤリと笑いながら直人をからかった。
「高山らしくないわね、真面目なこと言っちゃって。」
直人はムッとして反論する。
「俺はいつも真面目なんだが。」
あおいが目を丸くして叫んだ。
「はぁ!? 何!?」
直人はさらに真顔で続ける。
「いいか桜井。緊急時以外は発砲禁止だ!」
あおいは呆れ顔で返す。
「わかってるわよ!」
そんなやり取りを繰り広げながら、警四一行は車内食堂へと足を踏み入れた。
那須まゆかが丁寧に迎える。
「ご予約の高山様ですね。席を用意しておりますので、ご案内いたします。」
直人は満面の笑みを浮かべ、「ハイッ!」と元気よく返事すると、他のメンバーを置き去りにしてさっさと席に向かってしまった。
あおいが慌てて突っ込む。
「ちょ、アンタが先に行ってどうすんのよ!!」
はるかがまたもや穏やかに仲裁。
「まぁまぁいいじゃないですか。」
翔はマイペースに呟く。
「それよりさ、腹減ったぜ。」
あおいは呆れ顔でため息をついた。
「岩泉、食い物の事しか考えないのね……。」
翔が聞き返す。
「ん? 何か言ったか桜井?」
あおいはそっぽを向いて誤魔化した。
「何でもない。」
翔は気にも留めず、「そうか」とだけ返した。
すると、そこへ札沼まりが現れ、直人に笑顔で声をかけた。
「あ、高山君。来てくれたのね。」
直人も驚きつつ笑顔で返す。
「札沼か。偶然だね、ここで研修かい?」
まりは少し緊張した様子で答えた。
「うん、でもチーフがいつもの人じゃなくてさ、緊張してるの。」
直人が興味津々に尋ねる。
「変わった人なの?」
まりは首を振って説明した。
「ううん。ドイツから来た営業本部の人よ。」
直人の目がキラリと光る。
「へぇ~っ、ドイツか……ベルリン高速線、いつか乗ってみたいな。」
あおいがすかさず冷やかす。
「相変わらず鉄道バカなんだから。」
直人はムキになって反論した。
「バカは余計だ!」
まりは苦笑しながら話をまとめる。
「まぁ……それはともかく、お腹空いたでしょ? 何か作ってくるからちょっと待ってね。」
食堂車 厨房
厨房では、ハンバーグやビーフシチューを手間暇かけて調理する料理長・牧の姿があった。
その傍らで、一人の女性がキッチン鋏を二つに分離した状態で、驚くほど手際よく食材を切り刻んでいる。
乙哉がニヤリと笑みを浮かべながら作業を進めていた。
牧料理長は内心驚きつつも、黙ってその様子を見守る。
(あの小娘、材料を二つに分離したキッチン鋏で切り刻むなんて……器用なもんだ。)
そこへまゆかが注文を伝えにやってきた。
「オーダービーフシチュー2、ハンバーグ1、注文入ります。」
牧料理長はぶっきらぼうに応じる。
「おう、今作ってから。」
内心では、(ったく、こっちは取り込んでるってのに追加かよ! 客だから文句言えねぇけどよ)と愚痴をこぼしていた。
コックAが感心したように呟く。
「料理長、あの娘センスあり過ぎますね。」
牧料理長は渋い顔で返す。
「あ? そうか? まだまだ甘ちゃんだよ。」
コックAは首をかしげながら続ける。
「そうっすかね~。」
牧料理長は乙哉に声をかけた。
「乙哉ちゃん。あとは俺が任せるから、向こうに戻って客の接待してな。」
乙哉が少し戸惑う。
「でもまだ切り刻んでいない食材が――」
コックAが笑顔でフォローした。
「ここから先は俺たちの仕事だ。構わず接客していいよ。」
乙哉は素直に頷く。
「はい。」
だが、牧料理長が急に呼び止めた。
「待ちな!」
乙哉がビクッとして振り返る。
「!?」
牧料理長は真顔で一言。
「鋏は元に戻しておけ。」
To be continued