RAILJACK   作:マブラマ

38 / 63
一触即発

寝台特急『北斗星』の食堂車は、血の海と化した厨房と、緊張感漂う車内で一触即発の空気に包まれていた。

直人が毅然とした態度で名乗りを上げる。

「鉄道公安隊です。通してください。」

健二が怪訝そうに目を細める。

「何だ? お前は?」

直人が一瞬戸惑う。

「え? あの……。」

吉平が嘲笑を浮かべた。

「よく見たらガキじゃねぇか、バカヤロー。」

あおいが内心で歯噛みする。

「(よく見たらヤバい連中ね。でも私には誰であろうと関係なく射殺するわ!) 」

健二が直人に詰め寄る。

「おい、この状況をどう説明できるんだコノヤロー。」

直人が冷静に対応しようとする。

「お客様、どうか冷静に。」

吉平が声を荒げる。

「客だから許されると思ってるのかコノヤロー。」

直人は言葉を失い、黙り込んだ。

あおいが我慢の限界を超えて叫んだ。

「チンピラ二人で強気がってんじゃないわよ!!!」

直人が内心で慌てる。

「(!!!!おい!! 桜井!! よせって!!!)」

吉平がニヤリと笑う。

「へへっ、またガキが一人増えたぜ。」

健二が呆れたように呟いた。

「はぁ……最近の鉄道公安隊はこんな鼻くそみたいなガキを俺達を検挙すんのか? 舐められたもんだな。」

あおいがムキになって反論する。

「私達は鉄道OJTから研修受けているれっきとした鉄道公安隊員よ!!」

吉平が一蹴した。

「何が鉄道公安隊だコノヤロー! 本物の鉄道公安隊を呼べ! 大人の人だ!!」

あおいが悔しさに唇を噛む。

「くっ…………!!」

彼女はヤクザの男に銃口を向け、発砲体勢に入ろうとするが――。

その時、ミランダが静かに割って入った。

「もうそのくらいにしたらどうです?」

吉平がようやくまともな相手が現れたとばかりに反応する。

「ようやく真面な公安隊員来たか。料理長がヤク吸ってんだ! 次の駅で降ろせ!」

直人が口を挟もうとする。

「あの……。」

健二がさらに詰め寄る。

「それに何でガキ二人が公安隊の制服着とるんだ! 説明しろ!」

直人が困り果てて答えた。

「この二人のお客様が話聞かなくて戸惑ってたんです。」

ミランダが冷静に説明を始める。

「世間も何も知らないのも当然よね。良いわ――全て話すわ。この二人は指定暴力団の豊南組若頭の水野吉平と、同じく組の幹部。安部健二。あなた達の敵であるRJは豊南組と中立的な立場にあり、裏で繋がっているのよ。」

直人が驚愕の声を上げる。

「ええっ!!?」

あおいも信じられない様子で叫んだ。

「はぁぁっ!!? あの、どういう事ですか、その……RJは暴力団と同盟関係にあるって訳ですか!!!?」

吉平がイラついて注意する。

「おい!! あまり大きな声出すなコノヤロー。大体よ何でまだ学生なのに公安隊の制服着てんのか疑問に思っちまったぜ。」

健二が怪訝そうに尋ねた。

「鉄道OJTって何だ?」

ミランダが簡潔に答える。

「簡単に説明すると鉄道公安隊の研修。つまり職業訓練ね。」

吉平が納得したように頷いた。

「職業訓練…………なるほど一つ理解したぜ。」

あおいが内心で毒づく。

「(こいつ………分かってない) 」

その時、車内放送のメロディが鳴り響いた。

チャラララララン、チャラララララン、キーン。

ブルートレイン特有の優雅な音色が、緊迫した空気を一瞬和らげる。

『お待たせいたしました。上野19時03分発札幌行き北斗星3号です。担当車掌は國鉄仙台鉄道管理局の山田です。では停車駅と到着時刻をお知らせします。大宮19時28分、宇都宮20時27分、郡山21時52分、福島22時27分、仙台23時27分、仙台の次は函館になります。函館明朝6時34分、森7時26分、八雲8時5分、長万部8時26分、洞爺8時56分、伊達紋別9時11分、東室蘭9時32分、登別9時48分、苫小牧10時19分、南千歳10時41分、終着札幌には11時15分の到着です』

吉平が話を戻す。

「……ま、とにかくだ! そのバカ面な料理長を次の駅で放り出せ!」

すると、ブーッブーッブーッと携帯電話のバイブレータ音が鳴った。

吉平が電話に出る。

「はい。親分どうなさったんで……わかりましたそう伝えます。」

ピッと電話を切り、健二に報告する。

「川俣は死んだ。」

健二が淡々と応じる。

「そうか。」

吉平が続ける。

「あとはこの列車にいる組の連中を片づけるだけか………。」

その時、直人の携帯が鳴り響く。

グアアアアアアアア……(0系新幹線の走行音)

直人が電話に出た。

「はい高山です。」

《高山君、今桜井さんと一緒にいるの?》

電話に出たのは奈々だ。直人が困り顔で答える。

「はい、それが……厄介事になってしまいまして。」

《予想通りね。では班長代理として仕事よ》

直人が身構える。

「で、何です?」

奈々は直人に指示を出す。

《そうね………ある人物が今、高山君達が乗っている列車にいるはずだけど、8号車4番客室にいるわよ》

直人が確認する。

「8号車………隣の列車ですね」

食堂車の騒動は一時的に収まったものの、車内にはまだ重い緊張が残っていた。

直人とあおいは、新たな指令を受け、8号車へと向かう準備を始めるのだった。

 

To be continued

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。