RAILJACK   作:マブラマ

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本作はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません




第1章 -鉄道公安隊史上最悪の殺人事件ー
合同訓練は波乱の予感


日本国有鉄道が分割民営化されなかったパラレルな日本。鉄道公安隊の研修生である高山直人、桜井あおい、岩泉翔、小海はるかの高校生4人は、今日も平和な一日を迎えるはずだった。事件も事故もなく、穏やかな空気が流れる中、彼らに新たな任務が舞い込む。

「合同訓練……ですか?」

直人が目を丸くして教官を見上げると、國鉄本社ビルの一室で五能教官がニヤリと笑った。

「そうよ。警視庁の特殊急襲部隊、通称SATとの合同訓練。で、あなたたちには犯人役をやってもらうから」

「SATって……あのSAT!?」

あおいが興奮気味に声を上げ、翔がニヤニヤしながら頷く。

「なるほどね~、面白くなりそうだ」

「え、私も犯人役ですか?」

はるかがおずおずと手を挙げると、五能教官がさらりと告げる。

「あなたは人質ね」

「えっ!?」

はるかの悲鳴が部屋に響き渡った。

一方、警視庁では幹部たちが難しい顔で話し合っていた。

「國鉄と合同訓練か……まあ、SATなら問題ないだろう」

上級幹部Aが腕を組むと、幹部Bが眉をひそめる。

「だが、隊長の剣持しえなはまだ青二才だぞ。婦人警官上がりで、犯人をまともに捕まえたこともない奴が隊長とは……」

「警視総監が抜擢した人材だ。賭けてみるしかないだろう」

幹部Cがフォローすると、幹部Dがうなずいた。

「ごもっともですな」

「國鉄公安隊か……さて、どうなるやら」

幹部Aは意味深に目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合同訓練当日。東京新幹線車両センターは異様な熱気に包まれていた。ヘリコプターのローター音が耳をつんざくほどの轟音を響かせ、警察車両や機動隊がまるで軍隊のように整列。SATと國鉄全職員が一斉に視線を向けた先には、トレインジャックを想定した訓練の主役――0系新幹線が鎮座していた。

犯人役に選ばれた直人、あおい、翔は食堂車に陣取り、人質役のはるかと國鉄職員たちを従える。あおいは手に持ったニューナンブM60回転式拳銃(訓練用の模造品)を構え、堂々たる演技で叫んだ。

「死にたいの?」

「うっ……!」

はるかが小さく震える中、食堂車内はざわつきに包まれた。

車両センターの外では、SAT隊長・剣持しえながトランシーバーを手に指示を飛ばす。

「各班、状況報告!」

「第一班、配置完了しました!」

「第二班、こちらも完了です!」

「第三班、配置完了!」

隊員たちのキビキビした声が響き、緊張感が高まる。

そして、あおいの声がスピーカー越しに場内に轟いた。

「警視庁の諸君並びに國鉄全職員に告ぐ! この新幹線は我々『國鉄分割民営化同盟』が乗っ取った!」

どこか芝居がかった口調に、翔がクスクス笑いをこらえる。

「作戦開始!」

しえなの号令一下、SATは三手に分かれて行動開始。12両編成の新幹線を次々と制圧していく。

「運転席、異常なし!」

「一両目、クリア!」

「二両目、クリア!」

SATの動きは鮮やかだったが、犯人役の3人は黙ってはいなかった。

直人が手に持ったRPK軽機関銃(これも模造品)を構え、人質たちを黙らせると、あおいがニヤリと笑う。

「さあ、盛り上がっていくわよ!」

「ええっ!? 訓練中ですよ!」

直人が慌ててツッコむが、なぜか車両内がワーワーガヤガヤと騒がしくなり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何!? 訓練中に何やってるんだ!」

國鉄幹部の怒鳴り声が響き、五能教官が焦ったように叫ぶ。

「真面目にやらせなさい! マスコミが見てるわよ!」

外では機動隊と警官隊が押し寄せるマスコミを抑えようと奮闘するが、

「皆さん、下がってください!」

効果はゼロ。騒ぎは収まるどころか増すばかりだった。

しえなは混乱する現場を見下ろし、トランシーバーを握り潰さんばかりに力を込めた。

「警四班!――リーダーは誰だ!?」

「あ、はい! 本日犯人役を担当しております、國鉄東京中央鉄道公安隊第四警戒班の桜井あおいでーす!」

あおいの明るい声に、しえなの眉がピクリと動く。

「怪我しても知らないよ?」

「え?」

しえなは冷たく言い放つ。

「今回は実弾こそ使わないが、実戦通りにやる。私達は手加減はしないから、君たちも本物の犯人になったつもりで向かってきてね」

そして、トランシーバーを少し離して低い声で付け加えた。

「なぁ鉄公。何かあっても責任は取らないからな? 覚悟してね。」

「……何!? アイツ、生意気ね!」

あおいがムッとすると、仲間たちが一斉に火がついた。

「おい桜井、ここまで言われたら黙ってられねえだろ?」

「そうですよ!」

「そうだそうだ! 思いっきり抵抗しようぜ!」

はるかまでが目を輝かせ、國鉄職員たちも「俺たちの職員生命だって賭けてるんだ!」と叫び出す。

「GO!」

しえなの号令でSATが動き出した瞬間、あおいが後ろから隙を突き、一人を捕獲。

「捕獲ね!」

「剣持さん、一人がやられました!」

「構うな! 実戦なら死んでるぞ!」

しえなの冷静な声が響く中、はるかが人質役とは思えない大胆な行動に出る。

「助けてぇっ!」

駆けつけたSAT隊員を油断させ、すかさずボカァッ! 二人を捕獲。

「ごめんなさい♪」

あおいと連携した鮮やかな動きに、しえなの表情がわずかに歪んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マル秘、最後尾車両を逃走! 人質は食堂車に!」

SAT隊員の報告にしえなが目を細める中、直人が焦った声でつぶやく。

「こんなことしていいのか?」

「いいのよ!」

あおいの笑顔が不気味に輝いたその時――

ボッ!

閃光弾が炸裂し、食堂車内が混乱に包まれる。

「みんな伏せて!」

あおいの叫びが響き、直人が目を押さえてうめく。

ズカズカと近づく足音。しえなが姿を現し、銃口を向けた瞬間――

「パンッ!」

あおいの模造拳銃が先に火を噴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練終了後、車両センターは静寂に包まれた。

「……」

國鉄幹部も五能教官も言葉を失い、鉄道機動隊長と警視庁機動隊長が呆然とつぶやく。

「えっ?」

「うそだろ?」

「あのSATが……!?」

平野警視監が目を丸くする中、あおいが申し訳なさそうに頭を下げた。

「すいません……勝っちゃいました」

しえなは無言で立ち尽くし、その瞳に微かな闘志が宿る。

 

 

To be continued

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