RAILJACK   作:マブラマ

49 / 63
三馬鹿の寝台特急旅

PM20:45 寝台特急『北斗星』9番客車

 

9番客車の通路は、薄暗い照明の下でひっそりとしていた。窓の外を流れる夜の景色が、車内の静けさを一層際立たせている。直人たちは、一ノ瀬さんの安否を確かめるために足早に歩いていたが、ふと立ち止まった。

「あれ? 一ノ瀬さんは……」

直人が首を傾げ、周囲を見回した。彼女がいるはずの場所に姿が見当たらないことに、わずかな不安が胸をよぎる。

あおいが冷静に答えた。

「それが、やっぱりここにいるって」

その声には確信が込められていたが、直人は目を丸くして驚いた。

「えぇっ!?」

はるかが心配そうに呟いた。

「大丈夫ですよね」

彼女の声は小さく、どこか頼りなげだった。

翔が力強く頷き、安心させるように言った。

「女性公安隊員が付いているんだろ? 元・北朝鮮の工作員で」

その言葉には、ミランダへの信頼が滲んでいた。

あおいが肩をすくめ、皮肉っぽく付け加えた。

「ま、誰もいないよりはマシよね」

その一言に、車内の空気が一瞬和んだ。

その時、通路の奥から神田川がのんびりとした足取りで現れた。彼の顔には、いつものように飄々とした笑みが浮かんでいる。

「あれ? あれあれ? これはこれは第四警戒班の皆さん。お勤めご苦労様です」

その声は軽やかで、まるで日常の挨拶のようだった。

秋田が隣でニヤリと笑い、茶化すように言った。

「局長もすぐ前出ますよね」

神田川は苦笑いを浮かべ、秋田を軽く睨んだ。

「君は余計な事言わなくていいから。あ、それよりさ。飯田班長からさ、ねぇ。これ渡してくれって」

そう言って、彼は小さな包みを直人に手渡した。

直人が包みを受け取り、首を傾げた。

「何ですかこれ?」

「宇都宮餃子」

神田川が得意げに答えると、秋田が目を輝かせた。

「局長、分かってらっしゃる!」

香久山が静かに頷き、同意を示した。

「左様でございます」

神田川は満足そうに笑い、皆に視線を向けた。

「そうだろ? 皆そう思うでしょ? ね? ね?」

その様子は、まるで子供が褒められるのを待っているようだった。

あおいが冷たく切り込んだ。

「で、用件は?」

彼女の声には、冗談を続ける気はないという強い意志が込められていた。

神田川の表情が一変し、真剣な顔つきになった。

「あ、次は真面目な話ね。五能隊長から聞いたんだけど、東北線の何処かに爆弾仕掛けたらしいよ」

秋田が目を丸くし、驚きの声を上げた。

「それって爆弾テロじゃないですか!?」

香久山が軽く笑いながら言った。

「これは緊急事態ですな」

「笑いごとじゃないよ、君」

神田川が香久山をたしなめ、厳しい視線を向けた。

直人が真剣な顔で尋ねた。

「今の話、本当ですか?」

香久山が即座に反論した。

「何を言うかね君は! 局長は何一つ嘘言ってはないからね」

その言葉には、神田川への絶対的な信頼が滲んでいた。

はるかが控えめに尋ねた。

「今日は休暇で?」

神田川が苦笑いを浮かべ、頷いた。

「そうなのよ。今日は貴重な休暇使って接待旅行だよ」

秋田が茶化すように言った。

「小海元・総裁も接待するんでしょう?」

「そりゃあするに決まってるでしょ!」

香久山が即答し、神田川が困ったように笑った。

「いやね、急にばったり会ったもんだから私も戸惑っちゃったよ」

あおいが再び核心に迫った。

「爆弾を仕掛けた場所分かりますか?」

神田川が一瞬考え込み、記憶をたどるように呟いた。

「爆弾? あぁアレね。うん。アレ。うん確か…………」

その言葉は途中で途切れ、皆の視線が彼に集中した。果たして爆弾の場所はどこなのか――その答えが、物語の鍵を握っていることは間違いなかった。

 

To be continued

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。