RAILJACK   作:マブラマ

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シリアルキラー再来

寝台特急『北斗星』の3号客車は、薄暗い通路に硝煙の匂いが漂い、緊迫感が張り詰めていた。窓の外を流れる闇が、まるでこの戦いの終わりを見届けるかのように静かに過ぎ去っていく。そんな中、武智乙哉は息を潜め、鋭い視線で周囲を見渡していた。彼女の手には、散髪鋏がしっかりと握られている。

「車掌室は……隣の客車!」

乙哉が低い声で呟き、目標を定めた。主任たちに武器を届けるため、ここで足止めされるわけにはいかない。彼女の心臓は激しく鼓動し、戦いの予感に全身が熱くなっていた。

その時、通路の奥からRJ構成員Bの怒号が響き渡った。

「いたぞ! 生け捕りにしろ!」

瞬間、ガガガガガガガガガガガッ!

機関銃の連射音が車内を切り裂き、弾丸が壁や床に突き刺さった。乙哉は咄嗟に身を低くし、近くの座席の陰に隠れた。

「くっ……流石のあたしにはちょっとキツイかな?」

乙哉が苦笑いを浮かべ、額に滲む汗を拭った。敵の火力は予想以上だ。だが、彼女の瞳には諦めの色はなく、むしろ闘志が燃え上がっていた。

ジャキィッ

散髪鋏を手に持つ音が小さく響き、乙哉は決意を固めた。

「この鋏で懸けるしかないわね」

その声には、絶望的な状況を打破する覚悟が込められていた。彼女にとって、この鋏はただの道具ではなく、命を賭けた戦いの相棒だった。

RJ構成員Bが仲間と共に通路を進み、鋭い声で叫んだ。

「部屋に隠れてるみたいだ!」

RJ構成員Cが即座に応じ、冷酷に指示を出した。

「隈なく探せ!」

乙哉は息を殺し、座席の影に身を潜めた。

「……」

彼女の目は獲物を狙う猫のように鋭く、敵の足音を聞き逃さない。心の中でタイミングを計り、じっとその瞬間を待った。

「何処だ!? あの女は……ぐあっ!」

RJ構成員Bが叫んだ瞬間、背後から乙哉が音もなく飛び出した。

ぐさぁっ!

鋏が彼の首筋に突き刺さり、鮮血が床に飛び散った。

「なっ……お前は! ぐぼぉぉっ!!」

驚愕に目を丸くしたRJ構成員Cが振り返った刹那、乙哉の鋏が再び唸りを上げた。

グジャァァァッ!

鋭い刃が彼の胸を貫き、骨が砕ける音と共に倒れ込んだ。

「後ろががら空きだよ」

乙哉が冷たく呟き、血に濡れた鋏を軽く振って滴を払った。彼女の表情には、戦いの興奮と冷静さが同居していた。

「くそ……こんなサイコパスに負けるなんて……ぐっ」

RJ構成員Bが血を吐きながら呻き、力尽きた。

「全くだ……ごはぁっ」

RJ構成員Cもまた、最後の息を吐き出し、床に崩れ落ちた。

乙哉は二人を見下ろし、静かに息を整えた。

「車掌室に向かいますか。え……と、21時45分。間に合わないけど、出来るだけ持てる武器を主任達の所に持っていかなくちゃ!」

彼女は腕時計を確認し、決意を新たにした。血と汗にまみれた顔に、微かな笑みが浮かぶ。時間は少ないが、まだ戦いは終わっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM21:47 寝台特急『北斗星』2号客車

寝台特急『北斗星』の2号客車に差し掛かった頃、時刻は21時47分を指していた。薄暗い通路に響く乙哉の足音が、車内の静寂を切り裂いていた。彼女の手には血に濡れた散髪鋏が握られ、その瞳には疲労と決意が混在していた。戦いの余韻をまとったまま、彼女は車掌室を目指していた。

「車掌室。アレだね」

乙哉が低い声で呟き、目の前に現れた扉を見つめた。主任たちに武器を届けるため、ここが最後の希望だった。彼女は深呼吸し、慎重に扉のノブに手を伸ばす。

ガチャリ。

扉が静かに開き、乙哉は中を覗き込んだ。だが――

「え? 何もない……」

彼女の声が呆然と響いた。車掌室の中は驚くほど整然としており、武器になりそうなものはもちろん、物音一つしない。ただの事務机と書類が並ぶだけの空間が広がっていた。乙哉の肩がわずかに落ち、期待が裏切られた失望が顔に浮かんだ。

その時、背後から穏やかな声が響いた。

「どうかなさいましたか?」

「え!? え……と」

乙哉が慌てて振り返ると、そこにはありすが立っていた。彼女は制服をきちんと着こなし、不思議そうに首を傾げている。突然の登場に、乙哉の言葉が詰まった。

「?」

ありすは無言で乙哉を見つめ、静かに次の言葉を待った。その穏やかな瞳に、乙哉は一瞬戸惑った。

「あ、その、何て言うか……」

乙哉がしどろもどろになりながら手を振ると、ありすが優しく微笑んだ。

「落ち着いて、ゆっくり話してください」

その声には、混乱した乙哉を落ち着かせる不思議な力があった。

乙哉は一度大きく息を吐き、気持ちを立て直した。

「営業本部のエルヴィラ主任が、何か武器になりそうなモノないかって……」

言葉を絞り出すように説明すると、ありすの目が一瞬鋭くなった。

「テロリストですか!?」

ありすの声が跳ね上がり、状況の深刻さを即座に理解したことが窺えた。

乙哉は苦笑いを浮かべ、感心したように呟いた。

「よく状況呑み込めたね」

「そりゃ勿論、私も國鉄職員としてお客様を守る義務があるのよ。武智乙哉さん」

ありすは胸を張り、毅然とした態度で応えた。彼女の言葉には、職務への誇りと責任感が滲んでいた。そして、乙哉の名前をさらりと口にしたことに、乙哉自身が驚いた。

「私、とうとう有名人になっちゃったか」

乙哉が自嘲気味に笑うと、ありすは小さく首を振った。

「別の意味だけどね」

その一言に、乙哉の顔が一瞬固まった。どうやら、彼女の「有名さ」は戦いの腕前だけでなく、別の評判も伴っているらしい。

「とにかく、主任の所に行きましょう!」

乙哉が気を取り直し、力強く言い放った。ありすも頷き、二人は車掌室を後にして次の行動へと動き出した。車掌室に武器はなかったが、新たな仲間を得たことで、乙哉の心に小さな希望が灯った。

 

To be continued

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