PM22:00 國鉄郡山駅ホーム
郡山駅のホームは、寝台特急『北斗星』の混乱が収束した後の静けさに包まれていた。薄暗い照明の下、直人たちは疲れ切った顔を見合わせながらも、任務を終えた安堵感を共有していた。ホームにはまだ警察のざわめきが残り、遠くでサイレンの音が響いている。
直人が深く頭を下げ、感謝の言葉を口にした。
「すいません。ご協力感謝します!」
その声には、仲間や協力者への素直な敬意が込められていた。
伊介は髪をかき上げ、冷たく言い放った。
「別に。アンタ達に助けた訳じゃないから」
彼女の妖艶な笑みには、いつもの余裕が漂っているが、その瞳には微かな苛立ちが隠れていた。
鳰がニヤリと笑い、からかうように突っ込んだ。
「またまた~、ホントは意地張ってるくせに」
「殺すわよ♡」
伊介が甘い声で返すと同時に、鋭い視線が鳰を刺した。
「…」
鳰は思わず肩をすくめ、苦笑いを浮かべた。
その時、乙哉が血まみれの散髪鋏を手に近づいてきた。
「犬飼さんいたんだ?」
彼女の声には驚きと、少しの懐かしさが混じっていた。
伊介がムッとした顔で振り返った。
「いたわよ! 何、私の存在自体なかったようにしたい口調は?」
「だって私、あんまり話せなかったから」
乙哉が肩をすくめて返すと、伊介の眉がピクッと動いたが、それ以上は追及しなかった。
あおいがホームの端に目をやり、冷静に呟いた。
「あ、あのヤクザ二人」
彼女の視線の先には、健二と吉平がうなだれて立っている姿があった。
鳰が軽い調子で言った。
「見逃してあげましょう。ま、どーせ捕まった所で実刑喰らうだけっス」
「それもそうね」
あおいが頷き、冷めた視線を二人から外した。ヤクザの運命に同情する気はないようだ。
翔が腕を組んで、急に思い出したように尋ねた。
「爆弾はどーなったんだ?」
「あああああああああああああああっ!! すっかり忘れてたぁぁ!!」
直人が突然叫び、頭を抱えた。その声に、皆が一瞬呆気に取られる。
鳰が笑いながら手を振った。
「心配ないっスよ。地元の警察呼んで何とかしましたっスから」
「そーですか」
直人がホッと息をつき、肩の力を抜いた。爆弾の危機が回避されたことに、心底安堵した様子だ。
その時、まりがそっと近づいてきた。
「高山君」
彼女の声は小さく、疲れと安堵が混じっていた。
「札沼。怪我はなかったか!?」
直人が慌てて彼女に駆け寄り、心配そうに顔を覗き込んだ。
「うん」
まりが小さく頷き、微笑んだ。その笑顔に、直人も安心したように笑みを返した。
あおいが状況を締めくくるように言った。
「あとは警察の仕事ね」
その言葉に、皆が頷き、長い一日の終わりを迎えた。
ホームの喧騒が遠ざかり、夜の冷たい風が吹き抜ける中、直人たちは互いに顔を見合わせた。伊介の冷淡さ、鳰の軽妙さ、乙哉の無関心、あおいの冷静さ、そして直人の純粋さが交錯するこの瞬間は、戦いの終幕を飾るにふさわしい一幕だった。あとは警察に任せ、彼らはそれぞれの日常へと戻るだけだ。
To be continued