1990年初頭、日本を襲ったバブル崩壊は、國鉄に未曾有の危機をもたらした。華やかな経済成長の裏で膨張していた経営は、一瞬にして赤字の泥沼へと転落。ピーク時には借金が20兆円に膨れ上がり、「税金の無駄遣い」と国民の怒りが沸騰した。
「國鉄を救うなんて無意味だ!」
街頭ではそんな声が飛び交い、國鉄を支持していた国会議員たちは次々と選挙で敗北。日本の政治地図は一夜にして塗り替えられた。
國鉄本社ビルでは、松田第11代総裁が額に汗を浮かべながら報告書を睨みつけていた。
「これが現実か……だが、諦めるわけにはいかない」
彼の隣で、副総裁の井田が静かに頷く。だが、その瞳の奥には、未来への不安がちらついていた。
そんな絶望の中、第12代総裁に就任した小海が立ち上がった。彼はまるで嵐の中の灯台のように、國鉄を導くリーダーだった。
「借金20兆円? なら、それを俺の手で削り取ってやる!」
小海の声は力強く、國鉄職員たちの心に火を灯した。彼の大胆な改革は、路線整理やコスト削減、新たな収益モデルの導入を次々と実行。血を流すような努力の末、借金を3兆円まで減らすことに成功したのだ。
「危機は脱した……これで國鉄は新たな一歩を踏み出せる」
2017年、杉浦元総裁の死からちょうど30年が経ったその時、小海は安堵の息をついた。だが、その瞬間――彼を待ち受けていたのは栄光ではなく、解任だった。
「なぜだ!? 俺が國鉄を救ったのに!」
小海の叫びは虚しく響き、彼は総裁室から追い出された。国民の記憶には「借金を減らした英雄」として残ったが、國鉄内部の権力争いと政治の暗流が、彼の運命を切り裂いたのだ。
小海の解任後、國鉄は再び暗雲に包まれた。借金がじわじわと増え始め、かつての危機が再来する兆しを見せていた。杉浦元総裁が夢見た「國鉄分割民営化」は、遠い幻と化して消えていた……はずだった。
だが、その夢を打ち砕く新たな勢力が動き出していた。RJ――乗客の声を無視し続けた國鉄への怒りから生まれたこの団体は、もはや平和的なデモを掲げる集団ではなかった。國鉄が耳を貸さないことに絶望し、過激派へと変貌した彼らは、テロという手段を選んだのだ。
「國鉄を解体する。それが我々の正義だ!」
RJのリーダーたちが暗闇の中で拳を握り、爆薬と銃を手に計画を練る。2017年以降、彼らの攻撃はエスカレートし、列車爆破や駅舎襲撃が頻発。國鉄は存続か崩壊かの瀬戸際に立たされていた。
葛西は国家公安委員として、RJ穏健派の立場から過激派を抑えようと奔走していた。
「暴力じゃ何も変わらない。だが、このままじゃ國鉄が……!」
彼の声は焦りに震えていた。一方、RJ穏健派に加わった松田もまた、かつての盟友である井田の消息を追いながら、國鉄の未来を案じていた。
國鉄本社ビルの窓から見える夜空に、列車の汽笛が遠く響く。借金の重圧、RJのテロ、そして内部の混乱――全てが絡み合い、國鉄はかつてない危機に瀕していた。
杉浦の夢は潰え、小海の努力は報われず、葛西と松田はそれぞれの立場で足掻く。だが、RJの過激派が次に仕掛ける一撃が、國鉄の命運を決めるかもしれない。
「次はお前らが終わる番だ、國鉄!」
闇の中、RJの影が不気味に笑う。その音は、まるで崩れゆく鉄道のレールのように、不穏に響き渡った。
To be continued