RAILJACK   作:マブラマ

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集団下校の亡霊

國鉄本社ビル裏手 深夜

神長香子は、RJの動きを監視しながら物陰を進んでいた。拳銃を握る手には汗が滲み、心臓の鼓動が耳に響く。爆発までの時間が迫る中、彼女は一瞬の隙を突いて次の行動を模索していた。

その時、背後から低いエンジン音が近づいてきた。香子が振り返ると、暗闇に溶け込むような黒い日産・ラングレー4ドアセダン(N13型系)が静かに停車した。角張ったボディと鋭いヘッドライトが、まるで獲物を狙う獣のようだ。運転席の窓がゆっくりと下がり、中から鋭い声が響いた。

「神長、何やってるんだ?」

声の主は、SAT(特殊急襲部隊)の隊長、剣持しえなだった。彼女はラングレーの運転席に座り、黒い制服に身を包んでいる。三つ編みおさげ髪と、冷徹な光を宿す瞳が、彼女の存在感を際立たせていた。

「剣持……お前か」

香子が息を整えながら応える。二人はかつて明星学園黒組の同期生だったが、卒業後も互いを下の名前で呼ぶことはなかった。そこには、過去の絆と距離感が複雑に絡み合っていた。

「RJが國鉄本社を狙ってる。爆薬を確認した。今すぐ動かないと間に合わない」

香子が早口で状況を説明すると、しえなが眉を寄せた。彼女はハンドルを握ったまま、冷静に問い返す。

「単独で突っ込むつもりか? 神長らしい無茶だな」

「――――剣持。SATが来るのを待ってたら手遅れになる」

香子が苛立ちを隠さず言い返すと、しえなは小さく鼻で笑った。

「安心しろ。既に隊員を配置済みだ。このラングレーは指揮用車で、ボクが現場を仕切る」

しえながそう言って、助手席の無線機に手を伸ばす。彼女の指がスイッチを押すと、SAT隊員たちへの指示が流れ始めた。

「全隊員、目標は國鉄本社裏手のRAILJACK。爆薬処理班を先行させろ。発砲許可は私が下す」

香子がしえなの横顔を見つめる。ラングレーの車内は、無線音と緊張感で満たされていた。

「……」

香子が黙り込むと、しえながちらりと視線を向けた。

「神長、お前が無鉄砲なままなだけだ。明星の頃から変わらないな」

二人の間に一瞬、懐かしい空気が流れる。だが、それはすぐに現実の重圧に押し潰された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車外では、RJのメンバーが爆薬の設置を進めていた。しえなが無線で隊員たちに最終確認を入れる。

「爆発まであと何分だ?」

《推定10分以内です、隊長!》

隊員の声が返ってくる。しえなが香子を見やり、短く告げた。

「神長、乗れ。私と一緒に指揮を取るぞ」

香子が一瞬躊躇するが、すぐに助手席に滑り込んだ。ラングレーのドアが閉まり、エンジンが再び唸りを上げる。

「剣持、失敗は許されないぞ」

「分かってる、神長。國鉄を潰すわけにはいかない」

二人の視線が交錯し、明星学園黒組で培った信頼が蘇る。SATの隊長と警視庁の管理官――立場は違えど、今夜、二人は同じ目的のために戦う。

夜空に響く列車の音を背に、ラングレーが闇の中を疾走し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日産・ラングレーのエンジン音が静かに響く中、しえなと香子は車内で緊迫した空気を共有していた。SATの隊員たちが國鉄本社周辺に展開し、RJの爆薬設置を阻止する作戦が進行中だ。

突然、ラングレーのヘッドライトが暗闇の中の怪しい人影を捉えた。男はフードを被り、手には何か金属製の物体を握っている。しえながハンドルを握る手に力を込め、車を急停止させた。

「神長、あれを見ろ」

香子が目を細め、助手席から男を注視する。警視庁警備部警備第一課警備現場第1係の警視として、彼女の勘は鋭く研ぎ澄まされていた。

「RJの構成員か……! 剣持、動くぞ!」

香子が拳銃を手にドアを開けようとした瞬間、しえなが鋭く制した。

「待て、神長。あれは……違う」

男がフードを外し、街灯の光に顔が浮かび上がる。瘦せた頬と鋭い目つき――しえなの表情が一瞬固まった。

「お前、まさか……『集団下校』の残党か?」

しえなの声には、驚きと冷ややかな怒りが混じっていた。

「剣持しえな……生きてたのか、裏切り者」

男が低い声で呟き、手に持っていたナイフを構える。『集団下校』――かつてしえなが所属していた復讐代行を主にした暗殺組織。彼女がSATに転身するきっかけとなった過去の影が、今ここに蘇っていた。

「何!? 剣持、お前こいつと知り合いなのか!?」

香子が混乱した声を上げ、しえなを睨む。彼女の頭の中では、男をRJの構成員と決めつけていた推理が崩れ始めていた。

「神長、落ち着け。これはボクの過去だ。RJとは関係ない」

しえなが冷静に説明するが、香子は納得いかない様子で拳銃を握り直す。

「過去だろうが何だろうが、怪しい奴がここにいるのは事実だ! 剣持、お前が何を隠してても、今は國鉄を守ることが先だ!」

男がニヤリと笑い、ナイフを振りかざして一歩踏み出した。

「剣持、お前がSATの隊長だろうが関係ない。『集団下校』の裏切り者には死をくれてやる!」

その言葉に、しえながラングレーのドアを開け、静かに降り立つ。彼女の手にはSAT標準装備の拳銃が握られていた。

「神長、これはボクが片付ける。お前はRJに集中しろ」

しえなの声は冷たく、過去の因縁を断ち切る決意に満ちていた。

香子が一瞬躊躇するが、すぐに状況を理解した。

「分かった、剣持。だが、生きて帰れよ。明星の同期として、それだけは命令だ」

彼女は警視の威厳を込めて言い放ち、ラングレーの助手席から飛び出してRJの追跡へと向かった。

一方、しえなは男と対峙する。『集団下校』の元構成員は、かつての仲間だった彼女に深い恨みを抱いているようだった。

「お前が組織を抜けたせいで、俺たちは崩壊したんだ。剣持、今ここで償え!」

男がナイフを振り下ろすが、しえなは素早く身をかわし、拳銃の銃口を男に向けた。

「過去は過去だ。ボクはもう、あの闇には戻らない」

しえなの引き金に力が込められる。その瞬間、國鉄本社裏手で爆発音が響き、RJの計画が動き出したことを告げていた。

香子は暗闇の中を走りながら思う。

しえなの過去か……だが、今はそれどころじゃない。國鉄を、守らないとダメだ!

夜の戦場で、二人の戦いが交錯し始めた。

 

To be continued

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