RAILJACK   作:マブラマ

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RJの狗

2024年 國鉄本社ビル裏手 深夜

 

剣持しえなは、かつての暗殺組織『集団下校』の元構成員と対峙していた。男のナイフが街灯の光を反射し、彼女の冷徹な瞳に映り込む。だが、その緊迫した空気を切り裂くように、男が不敵な笑みを浮かべた。

「剣持、知ってるか? 『集団下校』の残党はな、今じゃRJの一部になってるんだよ」

男の言葉に、しえなの表情が一瞬凍りついた。

「何……?」

彼女の声が低く震える。RJ――國鉄を潰そうとする過激派組織が、かつての暗殺集団と結びついているという事実に、しえなの頭が一気に混乱した。

「お前らが崩壊した後、俺たち一部はRJに拾われた。國鉄をぶっ潰すって目的が一致したからな。今夜の爆破計画だって、俺が手引きしたんだ!」

男が哄笑を上げ、ナイフを振りかざす。剣持は反射的に拳銃を構え直すが、その背後で爆発音が轟いた。RJの仕掛けた爆薬が、國鉄本社の外壁を一部吹き飛ばしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、香子は暗闇の中を走り、RJの追跡を続けていた。警視庁警備部警備第一課警備現場第1係の警視として、彼女の使命は國鉄を守ること。だが、しえなと男の会話を偶然耳にした瞬間、彼女の足が止まった。

「RJと『集団下校』が繋がってる……? なら、あの男もRJの一味か!」

香子が拳銃を握り直し、しえなの方へ視線を戻す。彼女の中では、男がRJの構成員であるという誤解がさらに深まっていた。

「剣持! お前が過去を隠してたせいで、こんな事態に――!」

「神長、違う! こいつは『集団下校』の残党だ。RJに合流したのは一部の話だ!」

しえなが叫び返すが、香子の耳には届かない。彼女は怒りに駆られ、男に向かって一歩踏み出した。

「RJだろうが何だろうが、國鉄を狙うなら許さない!」

香子の声が鋭く響き、彼女が拳銃の引き金を引こうとした瞬間、剣持が間に入った。

「待て、神長! こいつはボクの過去だ。自分でケジメをつける!」

男が嘲笑うように剣持を見やる。

「お前がSATの隊長だろうが関係ないぜ、剣持。RJと手を組んだ俺たちは、國鉄を終わらせる。杉浦の夢を潰したように、今度はお前が守るもの全てを壊してやる!」

ナイフがしえなに向かって振り下ろされるが、彼女は冷静に身をかわし、拳銃の銃口を男の胸に突きつけた。

「RJに魂を売ったお前が、ボクを裁く資格はない」

しえなの声は冷たく、引き金に力が込められる。だが、その瞬間、背後でさらなる爆発音が響き、國鉄本社が揺れた。RJの計画が本格的に動き出した証だった。

香子が振り返り、焦りを隠せない声で叫ぶ。

「剣持、早くしろ! こいつを片付けて、RJを止めなきゃ間に合わない!」

彼女の誤解はまだ解けていないが、國鉄を守るという目的だけはしえなと一致していた。

「分かってる、神長。ボクがこいつを終わらせる」

しえなが男を見据え、静かに引き金を引いた。銃声が夜空に響き、『集団下校』の残党が地面に崩れ落ちる。だが、その背後ではRJの影が蠢き、國鉄本社への攻撃が加速していた。

しえながラングレーに戻り、無線でSAT隊員に指示を飛ばす。

「全隊員、爆薬処理を急げ! RJと『集団下校』の残党が絡んでる。油断するな!」

香子もまた、剣持の横に立ち、決意を新たにする。

「剣持、お前の過去が何だろうと、今は國鉄を救う。それだけだ」

二人の視線が交錯し、明星学園黒組の絆が一瞬だけ蘇る。だが、すぐ近くで聞こえる爆発音が、彼女たちに休息を与えない。

RJと『集団下校』の残党が手を組んだ今、國鉄の存亡を賭けた戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しえなは、倒れた『集団下校』の元構成員を見下ろしていた。銃声の余韻が夜空に消え、彼女の手にはまだ温かい拳銃が握られている。すぐ近くで、香子が苛立たしげに息を吐いた。

「剣持、説明しろ。あの男と何の関係だ? RJとどう繋がってる?」

香子の声は鋭く、警視庁警備部警備第一課警備現場第1係の警視としての威圧感が滲んでいた。

しえながゆっくりと香子に視線を移す。彼女の瞳には、過去の影が揺れていた。

「神長……ボクの過去を話すよ。少し長いけど、聞いてくれ」

香子が眉を寄せるが、剣持の真剣な表情に押され、黙って頷いた。

「ボクがかつて所属してたのは、『集団下校』って暗殺組織だ。いじめられっ子たちの互助会……そんな風に始まった小さなグループだった。メンバーは自分の復讐を他の誰かに頼む代わりに、別の誰かの復讐を引き受ける仕組み。ボクは学校で酷いいじめを受けてて、ネットで知り合った『ゆかりん』って友人に相談してたんだ。それで紹介されたのが『集団下校』だった」

しえなの声は静かで、どこか遠くを見るようだった。

「ボクにとって、あそこは居場所だった。いじめられっ子同士が集まって、互いに守り合う……そう思ってた。復讐の報酬は『組織で決める』ってルールで、ボクもそれに従ってた。帰属意識は強かったよ。だって、他に頼れる場所なんてなかったから」

香子が腕を組んで聞いている。彼女の頭の中では、しえなの言葉とRJの関係がまだ繋がらない。

「明星学園の黒組にいた時も、ボクは『集団下校』の任務を背負ってた。学園祭の前日、一ノ瀬晴の台本を盗み出して、夜の楽屋で予告票を仕込もうとした。でも、そこに柩が現れて……千足に憧れてたボクが、彼女を非難したことで柩の怒りを買った。毒針銃で撃たれて昏倒して、翌日には毒で重症。黒組から脱落したんだ」

しえなが苦笑いを浮かべる。

「脱落した後の机に、アザミの花が置かれてた。『復讐』の意味だよ。皮肉だろ?―――でも、ボクは『このままじゃ終われない』って思った。ネットカフェから明星学園のサーバーにハッキングして、黒組のデータを手に入れた。それをUSBに保存して、『集団下校』のリーダーだった貝塚博彦に見せた。ボクの失態は無効だって証明したかったんだ」

しえなの声に悔しさが滲む。

「でも、貝塚は笑ってこう言った。『国からの莫大な援助を貰う為さ。国がバックにつけば「集団下校」は最強のグループと化す!』って。そして……『君は「集団下校」の捨て駒。使えない捨て駒なんだよ!』って吐き捨てた」

香子が目を細める。

「捨て駒……?」

「ボクは言ったよ。『お前の言いたいことは分かった。…ボクは「集団下校」を抜けさせてもらう』って。貝塚は1週間の猶予をくれた。でも、3日後に自宅に不法侵入してきた。貝塚と2人の仲間が扉を蹴破って入ってきて、ボクはベッドに押し倒された。両手両足を押さえつけられて、暴行を受けて……左目を潰されそうになったその時、SATが部屋に突入してきたんだ」

しえなの声が少し震えるが、すぐに落ち着きを取り戻す。

「当時のSAT隊長、高垣に救われた。あの瞬間が、ボクの人生を変えた。暗殺家業を辞めて、必死に勉強して警視庁に入った。そして今、SATの隊長になってる――――さっきの男は、『集団下校』の残党だ。一部がRJに合流して、國鉄を狙ってる。ボクの過去が、今ここでRJと繋がってしまったってわけ」

しえなが香子を見据える。

香子が深く息を吐き、しえなの肩に軽く手を置いた。

「剣持、お前の過去がそんなものだったとはな……。だが、RJと『集団下校』の残党が絡んでるなら、なおさら今夜が正念場だ」

その時、國鉄本社の方角で再び爆発音が響いた。RAILJACKと『集団下校』の残党が仕掛けた爆薬が、次々と作動し始めていた。

「神長、ボクの話は終わりだ。SATを動かして、こいつらを止める」

しえながラングレーの運転席に戻り、無線を手に取る。香子もまた、拳銃を構え直した。

「剣持、お前がSAT隊長なら、私が警視として國鉄を守る。明星の絆は、今でも生きてるな」

二人の視線が交わり、過去と現在が重なる。爆発の炎が夜空を照らす中、彼女たちは決戦の場へと向かった。

 

To be continued

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