RAILJACK   作:マブラマ

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東京湾岸警察署占拠

國鉄本社裏手での戦いから数ヶ月後の2025年。RJと『集団下校』の残党によるテロは一時的に鎮圧されたものの、その余波は日本中に広がっていた。剣持しえな、神長香子、五能瞳の三人は、それぞれの立場で後始末に追われていたが、新たな嵐が静かに迫っていた。

貝塚博彦――かつて『集団下校』のリーダーとして剣持しえなを裏切り、彼女を捨て駒と呼んだ男。10年前、国からの援助を目論んだ計画が露呈し、逮捕された彼は長い刑期を終え、つい最近釈放されたばかりだった。だが、自由の身となった貝塚の心は、復讐の炎に燃えていた。

東京湾岸警察署の前。夕陽が海面に反射し、赤く染まる中、黒いバンが静かに停車した。バンのドアが開き、貝塚が姿を現す。瘦せこけた顔に深い皺が刻まれ、かつての冷酷な眼光はそのままに、彼の手には自動小銃が握られていた。背後には、数人の武装した男たち――おそらく『集団下校』の残党やRJの過激派から集めた仲間だ。

「けんもっちゃん――いや、剣持……お前が俺を潰した日から、ずっとこの瞬間を待ってたんだ」

貝塚が呟き、警察署の正面玄関を見据える。彼の目的は明確だった。警察署を占拠し、かつて自分を裏切った者たちへの報復を果たすこと。そして、國鉄を巡る戦いに再び火をつけること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ!」

貝塚の号令一下、武装集団が一斉に動き出した。警察署のガラスドアが銃弾で粉々に砕け、警官たちが慌てて応戦するも、訓練された動きの前に次々と倒れていく。貝塚は冷静に署内に踏み込み、無線室へと向かった。

「ここを制圧すれば、奴らに俺の声が届く。剣持、お前が守る國鉄も警察も、全部ぶち壊してやる!」

彼が無線機を手に取り、マイクに向かって叫ぶ。

「聞こえるか、SAT! 鉄道公安! そして國鉄の犬ども! 貝塚博彦が帰ってきたぞ! これから東京湾岸警察署は俺の城だ!」

署内は瞬く間に混乱に包まれた。警官たちは籠城を試みるが、貝塚の部下たちが爆薬を仕掛け、脱出路を封鎖していく。外では、市民が悲鳴を上げて逃げ惑い、夕陽の下で銃声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、しえなはSATの指揮所で報告を受けていた。

「隊長! 東京湾岸警察署が武装集団に占拠されました! リーダーは貝塚博彦と名乗ってます!」

隊員の声に、しえなの顔が青ざめた。

「貝塚……ボクを潰しただけじゃ済まなかったのか」

彼女が拳を握り潰す。過去の因縁が再び目の前に現れた事実に、怒りと焦りが交錯していた。

一香子は警視庁で五能瞳と連絡を取っていた。

「五能、貝塚が動いた。東京湾岸警察署だ。RJと『集団下校』の残党が絡んでる可能性が高い」

香子の声は冷静だが、その瞳には緊迫感が宿っていた。

「神長、すぐ鉄道公安機動隊を向かわせる。だが、貝塚が何を企んでるか分からない。慎重に動くぞ」

五能が応じ、装甲車の準備を急がせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察署の屋上から、貝塚が東京湾を見下ろしていた。夕陽が彼の顔を赤く染め、狂気じみた笑みが浮かぶ。

「剣持、神長、五能……お前たち全員に地獄を見せてやる。そして國鉄もろとも、この国をボクの復讐の炎で焼き尽くす!」

占拠事件のニュースが全国に広がり、SATと鉄道公安機動隊が動き出す。貝塚博彦の復讐劇は、10年の刑務所生活で熟成された憎しみを爆発させ、新たな戦いの幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾岸警察署周辺 夜

東京湾岸警察署の周辺は、赤と青のサイレンの光が交錯し、緊迫した空気に包まれていた。貝塚博彦率いる武装集団が署内を制圧してから数時間が経過し、外ではSATと鉄道公安機動隊が包囲網を形成していた。夜の海風が冷たく吹き抜け、遠くで波の音が不気味に響く。

しえなは、SATの指揮用車である日産・ラングレーの運転席に座り、無線で隊員たちに指示を飛ばしていた。

「―――全隊員、配置を確認しろ。貝塚は人質を取ってる可能性が高い。突入はボクの命令を待て」

彼女の声は冷静だが、瞳には『集団下校』の元リーダーとの因縁が燃えていた。

その横で、神長香子が地図を広げ、警視庁警備部警備第一課警備現場第1係の警視としての視点で状況を分析する。

「剣持、貝塚の目的は復讐だけじゃない。警察署を占拠したってことは、RJや『集団下校』の残党を再結集させるつもりかもしれない。國鉄への攻撃を再開する気だ」

香子の言葉に、剣持が小さく頷く。

「神長、その通りだよ。貝塚はボクを……いや、ボクたちが守るものを全て壊したいんだ」

そこへ、五能瞳が率いる鉄道公安機動隊の装甲車が到着した。五能が車から降り、二人に近づく。

「剣持、神長、遅れた。署内の状況はどうだ?」

彼女の声は落ち着いており、隊長としての貫禄が漂っていた。

「五能、貝塚が無線で挑発してきた。人質は署内の警官たちだ。爆薬も仕掛けてる可能性が高い」

剣持が状況を簡潔に報告すると、五能が眉を寄せた。

「なら一刻も早く突入しないと。だが、貝塚の動きが読めない。RJとの繋がりをどう使う気だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、東京湾岸警察署の無線室では、貝塚博彦が椅子に座り、足を机に投げ出していた。彼の周囲には、手下たちが警官たちを縛り上げ、人質として監視している。無線機から流れるSATの通信を聞きながら、貝塚が嘲笑う。

「剣持、聞こえてるか? お前がSATの隊長だろうが関係ない。10年待ったこの復讐を、お前たちに味わわせてやるよ」

彼の手元には、古びたUSBメモリがあった。かつて剣持が明星学園のサーバーから盗み出したデータが保存されたものだ。貝塚はそのデータを手に、部下に指示を出す。

「これをネットに流せ。國鉄と警察の汚点を暴いて、我が同胞達を呼び戻すんだ。東京湾岸から再び火をつけてやる!」

部下がノートパソコンを開き、データをアップロードする準備を始めた。貝塚の計画は、警察署占拠を超え、社会全体を混乱に陥れるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

署外では、しえな、香子、五能がラングレーの周囲で作戦を練っていた。

「剣持、貝塚がデータを流そうとしてるなら、ネットへのアクセスを遮断する必要がある。署内の電源を落とせ」

香子が提案すると、五能が即座に反応した。

「神長、その通りだ。鉄道公安の技術班に頼んで、周辺の通信網を一時遮断する。剣持、SATの突入準備は?」

「いつでも動けるよ。五能、鉄道公安と連携して人質救出を優先する。神長、お前は周辺の警備を固めてくれ」

しえなが指示を出し、三人の視線が交錯する。

「貝塚をここで終わらせよう。10年前の因縁も、國鉄への脅威も……全てだ」

香子が拳を握り、決意を込めて呟く。しえなが小さく笑った。

「神長、ボクも同じ気持ちだよ。明星の絆で、こいつを倒す」

五能が装甲車に戻り、無線で隊員に命令を下す。

「全隊、突入準備完了。通信遮断と同時に動くぞ。國鉄と警察を守るためだ!」

 

夜空にサイレンが響き、東京湾岸警察署の明かりが一瞬揺れた。通信網の遮断が始まり、貝塚の計画に暗雲が立ち込める。署内では、彼が苛立たしげに無線機を叩きつけた。

「剣持! お前か! また俺を潰す気か!」

外では、SATと鉄道公安機動隊が一斉に動き出した。剣持のラングレーが先頭に立ち、香子が後方から指揮を執る。貝塚博彦の復讐劇を終わらせるため、三人の戦いが最終局面を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾岸警察署裏口 夜

 

東京湾岸警察署の周辺は、SATと鉄道公安機動隊の包囲網で騒然としていた。剣持しえな、神長香子、五能瞳がそれぞれの役割を果たし、貝塚博彦の占拠を終わらせるべく突入の準備を進めている。だが、その喧騒の中、一つの影が裏口へと滑り込んでいた。

鳰――かつて明星学園黒組を裁定者として仕切った女だ。彼女は鋭い勘と冷徹な判断力で多くの局面を切り抜けてきた。今、彼女の手には古びたナイフが握られ、静かに裏口の錆びたドアをこじ開ける。

「ウチがこんなとこまで来るなんてね~。貝塚って奴、RJと『集団下校』の残党を引っ張ってるらしいし、國鉄絡みなら放っておけないっスよ」

鳰が小さく呟き、暗い廊下に足を踏み入れる。彼女の一人称「ウチ」が、軽やかな口調に混じって響いた。

裏口から署内に潜入した鳰は、物音を立てないよう慎重に進んだ。貝塚が無線室にいるという情報は、香子との以前の会話から掴んでいた。彼女の目的は単純だ――貝塚を止める。そして、國鉄を巡る混乱に終止符を打つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無線室では、貝塚博彦が苛立たしげに机を叩いていた。通信網が遮断され、ネットへのデータ拡散が失敗に終わったのだ。

「剣持の仕業か……! だが、まだ終わってないぞ!」

彼が部下に新たな指示を叫ぼうとした瞬間、ドアが静かに開いた。

「アンタが貝塚博彦っスか?」

鳰が無線室に踏み込み、ナイフを手に冷ややかに立っていた。彼女の瞳には、黒組の裁定者だった頃の鋭さが宿っている。

貝塚が振り返り、鳰を一瞥して嘲笑った。

「何だ、お前? SATでも鉄道公安でもない小娘が、俺に何の用だ?」

彼の手には自動小銃が握られ、鳰に向けられる。だが、彼女は動じなかった。

「ウチは走り鳰っス。昔、明星学園の黒組を仕切ってた裁定者だよ。アンタがRJと『集団下校』を焚きつけて國鉄を潰そうとしてるなら、ウチが裁くしかないっスね」

鳰がナイフを軽く振り、貝塚に一歩近づく。

「黒組だと? ふん、そんなガキの遊びが俺に何の関係がある!」

貝塚が怒鳴り、銃口を鳰に向けた。だが、彼女は素早く身を低くし、貝塚の視界から消えた。次の瞬間、鳰のナイフが貝塚の手首を掠め、銃が床に落ちる。

「アンタ、10年刑務所にいたって聞いてるけどさ、その間に腕は鈍ったみたいっスね」

鳰が冷たく笑い、貝塚を睨みつける。

貝塚が床の銃に手を伸ばそうとするが、鳰が素早く彼の腕を押さえつけた。

「ウチが黒組でやってたのは、ルールを守らない奴を裁くこと。アンタみたいに復讐だの混乱だので人を巻き込む奴は、ウチの裁定の対象っスよ」

彼女の声は低く、裁定者としての威厳が滲んでいた。

「くそっ、離せ! お、俺は剣持や國鉄を潰すまで終わらないんだ!」

貝塚が叫び、もがくが、鳰の力がそれを許さない。彼女は冷静にナイフを貝塚の首筋に近づけた。

「アンタの復讐はここで終わりっス。ウチがそう決めた。後はSATや鉄道公安に任せますか」

その瞬間、無線室の外で足音が響いた。しえな率いるSATが突入を開始したのだ。

鳰が貝塚を押さえつけたまま、外の騒ぎに耳を傾ける。

「ウチの仕事はここまでっスね。剣持さんや神長さんが来る前に、アンタを縛っとくよ」

彼女が近くのロープで貝塚の手を縛り始めると、彼の顔に敗北の色が浮かんだ。

東京湾岸警察署の裏口から潜入した鳰の裁定が、貝塚の復讐劇に終止符を打つ一歩となった。だが、外ではまだ戦いが続いており、しえな、香子、五能との連携が最終局面を迎えようとしていた。

 

To be continued

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