RAILJACK   作:マブラマ

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特別編:國鉄オトボケ三人組の京都旅

2025年 京都 清水寺周辺 昼下がり

 

京都の秋は、紅葉が街を鮮やかに染め上げる季節だ。清水寺の参道を歩く観光客の喧騒の中、ひときわ目立つ三人組がいた。國鉄オトボケ三人組――東京南鉄道管理局の局長・神田川、副局長・秋田、公安課課長・香久山だ。

神田川はサングラスをかけ、派手なアロハシャツで観光気分全開。

「ふはは! 京都の風情、最高だな! 総裁の座を狙う僕にふさわしい旅だ!」

彼の声が参道に響き、通行人がチラチラと振り返る。

その後ろで、秋田が奇声のような笑いを上げながらついてくる。

「キヒヒヒ! 局長、さすがっす! でも、接待費で旅してるってバレたらマズいっすよ~!」

ちゃっかりした性格丸出しで、秋田はガイドブックを手にウキウキだ。

香久山は少し離れて歩き、冷静に二人を見やる。

「神田川局長、秋田副局長、はしゃぎすぎです。公安課の私がいるんだから、せめて品位を保ってくれないと…」

彼の声は真面目だが、なぜか手に持つ抹茶アイスがその威厳を台無しにしていた。

「香久山君! お前も楽しめよ! 國鉄分割民営化なんぞ興味ない僕には、京都の紅葉が全てだ!」

神田川が大仰に腕を広げると、秋田が「キヒヒ!」と笑い、香久山がため息をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参道を歩き疲れた三人組は、路地裏にひっそりと佇む茶店「涼庵」にたどり着いた。木造の建物に囲炉裏の煙が漂い、どこか懐かしい雰囲気が漂う。店先に立つ女性が、ショートカットの髪を揺らして三人を迎えた。

「ほぉ、旅人か。ワシの茶店へよう来たな。座れ、抹茶でも振る舞うぞ」

彼女は首藤涼、明星学園黒組の卒業生だ。一人称「ワシ」が達観した口調に混じり、155センチの小さな体躯からは不思議な威厳が漂っていた。

「うおっ! 抹茶! いいね、局長っぽい!」

神田川が目を輝かせ、ドカッと座卓に腰を下ろす。秋田が「キヒヒ! タダなら最高っす!」と続き、香久山が渋々座った。

「私は東京南鉄道管理局の神田川だ! こいつは副局長の秋田、公安課の香久山! 國鉄の未来を担う俺たちに、最高の抹茶を頼むよ!」

神田川がサングラスを外して言うと、涼がクスクス笑った。

「涼じゃ。國鉄の人間か、ほぉ、面白い連中じゃな。まぁ、抹茶はワシの自慢じゃ。味わうがいい」

涼が手際よく抹茶を点て、三人に差し出す。彼女の動きは無駄がなく、まるで長年生きてきた者の落ち着きを湛えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抹茶を啜りながら、香久山が涼に話しかけた。

「首藤さん、この茶店、いい雰囲気ですね。京都で長くやってるんですか?」

「長く……じゃな。ワシ、京都に来てからまだ数年じゃが、昔から生きとるようなもんじゃよ」

涼が遠い目をして言う。ハイランダー症候群の影響で、彼女の年齢は誰も知らない。

「へぇ、なんか神秘的っすね! キヒヒ! まるで仙人みたいっす!」

秋田が奇声で笑うと、涼がニヤリと笑った。

「仙人か。まぁ、ワシはただの茶店主じゃ。昔は明星学園の黒組ってとこで、香子って女と一緒に戦っとったがな」

「香子!? まさか神長香子!?」

神田川が抹茶を吹きそうになり、目を丸くする。香久山も驚き、秋田が「キヒヒ! 管理官!?」と叫んだ。

「ほぉ、香子を知っとるのか。ワシ、あの子の髪を触るのが好きでな。今でも会えば触らせてもらうんじゃ」

涼が懐かしそうに笑う。彼女の脳裏には、黒組時代に香子を気にかけ、彼女の脱落後に委員長・寮長を引き継いだ日々が蘇っていた。

「神長管理官とそんな仲だったなんて……! 僕、ますます総裁の座が欲しくなってきたよ!」

神田川が拳を握ると、涼が冷ややかに見やった。

「総裁か。ワシの友、杉浦総裁の夢を継ぐなら、しっかりせんとな。香子も今、國鉄守っとるぞ」

「首藤さん、黒組って何だったんですか? なんかカッコいいっすね!」

秋田が興味津々に尋ねると、涼が抹茶を点てながら答えた。

「黒組はな、暗殺者を育てる場所じゃった。ワシはそこで香子や兎角、伊介たちと過ごした。ワシの暗殺報酬は『病を治して普通に死ぬこと』じゃったが、今はこうやって茶店やって、過去に囚われず生きとる」

彼女の言葉に、三人組が一瞬黙り込む。涼の机に飾られた赤いチューリップが、かつての「恋の宣言」を静かに物語っていた。

「武雄の墓参りして、ワシは前に進むと決めたんじゃ。今は京都で、こうやって旅人と話すのが楽しいよ」

涼が微笑むと、神田川が勢いよく立ち上がった。

「首藤涼! 僕、お前の抹茶に感動した! 総裁になったら、この茶店を國鉄の公式休憩所にするぜ!」

「キヒヒ! 局長、最高っす! 俺も賛成っす!」

秋田が笑い、香久山が渋々頷く。

「まぁ、悪くない提案だな……」

「ほぉ、面白い奴らじゃな。まぁ、香子に話してやるよ。ワシ、たまに彼女の髪触りに行くからな」

涼が笑い、抹茶をもう一杯点てて三人に出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茶店を後にしたオトボケ三人組は、清水寺の紅葉を背に京都の街を歩き続けた。

「神田川局長、次はどこ行くんですか?」

香久山が尋ねると、神田川がサングラスをかけ直し、叫んだ。

「次は金閣寺だ! 國鉄の未来は僕が照らすぞ!」

「キヒヒ! 金閣寺! タダで入れるかな!?」

秋田が笑い、香久山がため息をつく。

涼は茶店の縁側に座り、三人組の背中を見送った。

「ワシの京都も、こんな賑やかな奴らで悪くないな。香子、また髪触らせてくれよ」

彼女の呟きが秋風に乗り、紅葉と共に京都の空に溶けていった。

國鉄オトボケ三人組の京都旅は、首藤涼との出会いで一層思い出深いものとなり、彼らの笑い声が古都に響き続けたのだった。

 

 

 

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