RAILJACK   作:マブラマ

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裁きの時

廃倉庫の崩れた壁から差し込む月光が、リィズ・ホーエンシュタインの蒼白な顔を照らしていた。

桜井あおいは、意識を失ったリィズを腕に抱え、必死に呼びかける。

「リィズ! しっかりして! あんたが死んだら、真相が分からなくなるんだよ!」

神長香子が近づき、リィズの首に手を当てて脈を確認する。

「まだ生きてる。微弱だけど脈はある。すぐに救急車を呼ぶ」

高山直人が携帯を取り出し、慌てて通報する中、駒木咲代子が冷静に状況を整理した。

「黒装束の連中がリィズを裏切った……つまり、彼女はもう用済みってことね。雇い主が誰か、リィズが知ってる可能性が高いわ」

その時、走り鳰が不気味な笑みを浮かべながら近づいてきた。

「ウチ、リィズちゃんが目を覚ましたら面白い話聞けるかもっスねぇ。この紙切れ、解読してみたんスけど、ちょっとヤバい名前が出てきたっスよ~」

彼が手に持つ暗号の紙を広げると、そこには「桐ヶ谷柩」という名前が浮かび上がっていた。あおいと香子が同時に顔を見合わせる。

「桐ヶ谷柩……ダチュラの暗殺者じゃないか。リィズと同じ組織にいたってこと?」

香子の呟きに、鳰がニヤリと笑った。

「そうっス。ウチ、昔の記録調べてたんスけど、リィズと柩、結構因縁あるみたいっスねぇ。さてさて、どうなるか楽しみっスよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィズが運ばれた病院の一室で、あおいたちは彼女の回復を待っていた。

ベッドに横たわるリィズは、意識を取り戻しつつあった。彼女の瞳がゆっくりと開き、かすれた声で呟く。

「……ここは……私が生きてる?」

「あんた、死なせなかったよ。リィズ、全部話して。黒幕は誰? 桐ヶ谷柩と何の関係があるの?」

あおいの真剣な声に、リィズは一瞬目を逸らしたが、やがて苦笑いを浮かべた。

「ふっ……あなた達、しつこいわね。まぁいいわ。―――どうせ私はもう終わりだ。話してやる」

彼女の言葉に、一同が息を呑む。リィズは遠くを見るような目で、過去を語り始めた。

「昔、私がダチュラにいた頃……明星学園黒組って組織に潜入する任務があった。暗殺の技術を磨くための訓練だったよ。私はそのチャンスを掴もうとした。けど、選ばれたのは私じゃなくて、桐ヶ谷柩だった」

リィズの声に、憎悪と悔しさが滲む。あおいが静かに尋ねる。

「それで、あんたは柩を恨んだの?」

「恨んだわ。あいつは完璧だった。冷酷で、容赦なくて、毒の扱いも私よりずっと上手かった。私は嫉妬して、憎んで……結局、ダチュラの中で孤立した。『胎児殺しのホーエンシュタイン』ってあだ名も、その頃についたのよ。みっともない話ね」

彼女の自嘲的な笑みに、直人が口を挟む。

「でも、それと今回の事件がどう繋がるんだ? 柩があんたを雇ったのか?」

リィズは首を振った。

「いや、柩じゃない。彼女はもうダチュラにいないよ。私を雇ったのは、もっと大きな力……名前は知らない。ただ、暗号と金で指示が来てた。けど……あの黒装束の連中が私を殺そうとしたってことは、雇い主が柩と何か関係あるのかもしれない」

その時、鳰が手を叩いて笑った。

「やっぱり面白いっスねぇ! リィズちゃん、ウチ、同期っスけど柩に嫉妬してた過去がこんな形で絡んでくるなんて、ドラマみたいっスよ~」

「黙れ、公安の犬。お前が笑いものにしてる間に、私は裏切られたのよ」

リィズの怒りに、鳰は肩をすくめただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、病院の外で、あおいと香子は新たな作戦を立てていた。

「リィズの話からすると、黒幕はダチュラと繋がりがある可能性が高い。桐ヶ谷柩が鍵を握ってるかもしれないな」

香子の分析に、あおいが頷く。

「なら、柩の行方を追うべきね。リィズを裏切った黒装束も、柩と関係があるのかも」

そこに、直人と咲代子、翔が合流した。

「桜井、俺たちも手伝うよ。まりを救えたんだ。次は黒幕を捕まえようぜ」

直人の言葉に、咲代子が冷静に補足する。

「でも、相手はプロの暗殺者―――私たちだけで立ち向かうのは危険よ。警視庁や公安部に協力を仰ぐべきじゃないか?」

「警視庁は私を切り捨てた。もう頼れない。公安部なら……走りがいるが、あいつは信用できない」

香子の苦い言葉に、一同が沈黙した。

その時、病院の窓から銃声が響いた。

「何!?」

あおいが振り返ると、リィズの病室のガラスが割れ、黒装束の影が消えるのが見えた。直人が叫ぶ。

「リィズが危ない!」

一行が病室に駆け込むと、そこには血を流して倒れたリィズの姿があった。彼女は最後の力を振り絞り、あおいに呟いた。

「柩を……探せ……黒幕は……彼女を……(ごめんね、お兄ちゃん…私は)」

言葉を終える前に、リィズの手が落ち、息絶えた。あおいは震える手で彼女の目を閉じ、涙を堪えた。

「リィズ……約束するよ。絶対に真相を暴くから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、鳰は病院の屋上で暗号の紙を見つめていた。

「リィズちゃん死んじゃったっスか。まぁ、仕方ないっスねぇ。けど、この暗号、桐ヶ谷柩の居場所を示してるっぽいっスよ~」

彼女の不気味な笑みが月光に映える中、遠くで黒装束の気配が再び動き始めていた。

翌朝、あおいたちはリィズの遺言を胸に、桐ヶ谷柩を追う決意を固めた。

「神長警視、高山、みんな……私、絶対に諦めないよ。この事件を終わらせて、正義を取り戻す!」

あおいの声に、一同が力強く頷く。しかし、その背後で、黒幕の糸がさらに深く絡み合っていることを、彼らはまだ知らなかった。

 

 

 

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