2025年4月13日。
大阪万博の開幕日を迎えた大阪駅は、世界中からの観光客でごった返していた。夢洲会場へと向かうシャトル列車が次々と発車する中、ホームの一角では異様なテンションの集団が騒ぎを起こしていた。
「ふぁっはっは! これぞ大阪万博! 世界の未来がここにあるぞ! どうだ、秋田君、香久山君!」
東京南鉄道管理局の局長、神田川がドヤ顔で腕を広げる。彼の趣味である「旅行・接待」を兼ねた今回の万博視察は、明らかに公務というよりバカンス気分だ。
「ひぇ~! 局長、さすがっス! このスケール、國鉄総裁への道が見えてきたんちゃうスか~? ウキャキャキャ!」
奇妙な笑い声を響かせるのは、副局長の秋田だ。いつも神田川の後ろにピタリとくっつき、ちゃっかりとした性格で局長の機嫌を取るのが得意。だが、その目はどこか裏切りそうな光を帯びている。
「まぁ、確かに派手ですけどね、局長。万博の警備体制、うちの公安課でちゃんとチェックしないとまずいんじゃないですか?」
東京南鉄道管理局公安課の課長、香久山が冷静に呟く。彼は地味だが堅実な仕事ぶりで知られている……はずなのだが、なぜかこの二人と一緒だとペースが乱される。
そして、その三人を少し離れた場所から呆れた顔で見つめる少女がいた。
「はぁ……なんで私がこのオトボケ三人組の広報担当なんてやってるんだろ……」
小海はるか、18歳。國鉄の若手職員で、広報担当としてこの万博視察に同行させられた不幸な新人だ。彼女の鞄には、万博の取材資料と、なぜか神田川局長の「接待用たこ焼きクーポン」が詰め込まれている。
「小海君! ぼーっとしてないで、さっさと写真撮ってくれ! 僕の雄姿を公式SNSにアップするんだぞ!」
神田川が指をパチンと鳴らすと、秋田がすかさず追従した。
「そーっス! 局長のキメ顔、絶対バズるっスよ! ウキャキャキャ!」
「いや、バズるって何!? 公務でSNSバズらせてどうするんですか!」
はるかが叫ぶが、香久山が肩をすくめてフォローする。
「まぁ、小海君、諦めな。この二人はこうやって勢いで生きてるんだから。とりあえず万博会場行って、警備状況でも確認しよう」
夢洲会場に到着したオトボケ三人組とはるかは、巨大な木造建築「グランドリング」の前に立っていた。世界最大規模のこの構造物は、万博のシンボルとして輝いている。
「おぉ! これが未来だ! 僕が國鉄総裁になったら、こんなリングを東京駅にも作るぞ!」
神田川が無茶苦茶な野望をぶち上げると、秋田が拍手しながら奇声を上げる。
「最高っス! 局長、さすがのビジョンっス! ウキャキャキャ!」
「いや、無理でしょ、それ! 予算いくらかかると思ってるんですか!」
はるかがツッコミを入れるが、香久山が苦笑いしながら言う。
「小海君、神田川局長は分割民営化の話すら興味ない人だからな。予算とか考えないタイプだよ」
その時、会場内で突然の騒ぎが起きた。
《緊急事態! パビリオンの一つで展示品が紛失したとの通報です!》
警備員の無線が響き、会場が一気に緊迫した空気に包まれる。はるかが慌てて言う。
「局長! これは鉄道公安隊の出番じゃないですか!? 私、桜井さんたちに連絡します!」
「ふぁっはっは! 桜井? あの熱血娘か! いやいや、小海君、ここは僕たちオトボケ三人組が解決するぞ! な、秋田君、香久山君!」
神田川が胸を張ると、秋田がニヤリと笑う。
「ウキャキャキャ! 局長、かっこいいっス! けど、失敗したら香久山課長のせいにしまスか?」
「おい、秋田! なんで俺!? 俺はただの課長だぞ!」
香久山が抗議するが、すでに神田川はパビリオンへと突進していた。はるかは頭を抱えながら後を追う。
「なんでこうなるの~! 私、広報担当なのに~!」
パビリオンに突入したオトボケ三人組とはるかは、紛失した展示品――「未来のエネルギー結晶モックアップ」が盗まれた現場に遭遇した。警備員が慌てて状況を説明する中、神田川が大仰に宣言する。
「よし! 僕がこの事件を解決して、万博のヒーローになるぞ! 小海君、広報の準備だ! 僕の活躍を全国に発信しろ!」
「いや、まず犯人探さないと広報も何もないですよ!」
はるかが叫ぶと、香久山が冷静に周囲を観察し始めた。
「ん? この床の傷……何か重いものを引きずった跡だな。犯人はこっちに逃げた可能性があるぞ」
「お、香久山君、さすが公安課長! 秋田、お前も何か見つけろ!」
神田川の命令に、秋田がちゃっかり笑う。
「ウキャキャキャ! 局長、俺、犯人見つけたら総裁の推薦状書いてもらうっスよ~!」
「お前、いつも裏切る気満々だな!」
香久山が呆れる中、四人は傷跡を追ってパビリオンの裏手へと向かった。
裏手にたどり着くと、そこには怪しげなマスク姿の男が結晶モックアップを抱えて逃げようとしていた。
「そこの悪党! 國鉄オトボケ三人組の名にかけて、貴様を捕まえるぞ!」
神田川がカッコつけて叫ぶが、男はニヤリと笑って煙幕を投げた。
「うわっ! 目が! 目が~!」
秋田が大げさに転がり、香久山が咳き込みながら言う。
「局長! あいつ逃げるぞ! 小海君、追え!」
「なんで私まで!?」
はるかが叫びつつも、若さでダッシュして男に飛びかかった。
「返しなさいよ、この結晶!」
彼女の勢いに押され、男はバランスを崩して結晶を落とす。そこに神田川がドヤ顔で登場。
「ふぁっはっは! よくやった、小海君! これで僕の名が万博に轟くぞ!」
「いや、ほとんど私がやったんですけど!?」
結局、犯人は警備員に引き渡され、結晶は無事にパビリオンに戻された。
会場に戻ったオトボケ三人組とはるかは、観客から拍手喝采を浴びる。神田川が得意げに言う。
「どうだ! これが國鉄の力だ! 小海君、早くSNSにアップしろ!」
「はいはい、分かりましたよ……でも、局長、ちゃんと報告書も書いてくださいね」
はるかの皮肉に、秋田が奇声を上げて笑う。
「ウキャキャキャ! 局長、書類仕事は香久山課長に押し付けるっスよね?」
「おい、秋田! また俺かよ!」
香久山の抗議をよそに、神田川はたこ焼きクーポンを手に会場を闊歩し始めた。
その夜、万博の花火が夜空を彩る中、はるかは疲れ果てた顔で呟いた。
「もう、オトボケ三人組の広報、辞めたい……」
だが、彼女の背後で、神田川が新たな野望を叫ぶ声が響く。
「次は月面万博だ! 僕が國鉄を宇宙に進出させるぞ! ふぁっはっは!」
「ウキャキャキャ! 局長、最高っス!」
「いや、無理だろ、それ……」
香久山とはるかの呆れた声が、万博の夜に溶けていった。
國鉄オトボケ三人組と小海はるかの万博騒動は、笑いとドタバタで幕を閉じた。彼らの次なる冒険は、果たしてどこへ向かうのか――?