Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい 作:戻ってきたミュウ
僕の初恋は白猫でした。
正直、自分でもどうかと思いますがその当時の僕は人間関係と言うものに嫌気が差していたのだと思います。
そんな折『言霊の加護』を持つ僕はあの白猫の優しさにコロっと傾き、そしてやはり初恋は実らないといいますか、想いも告げぬまますぐに破局してしまいました。
そのあと直ぐに街の権力者の娘を敵に回し故郷を追放されまして、スーウェン家の生まれの僕は実家で培った技術を生かして思いがけず行商人として独り立ちすることになりました。
「……ここか」
まだまだ日の浅い新米商人。いつか自分の店を持つんだと心に決めて、初めての取り引き先として僕が選んだのはシュバルツ家のご令嬢だったのです。
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「起きましたか?」
「……あ、頭が痛いです」
温かな湯呑みを差し出してナツミの顔色を伺う。
青ざめたナツミ嬢は覚束ない手つきで受け取って、弱々しく喉を鳴らした。
本物の病人みたいに酷い面だ。
これは単なる二日酔いなんてものじゃない。不摂生な生活習慣や事務職の重労働、果てはストレスや緊張などが積み重なった結果、肉体が悲鳴を上げているのだとオットーは推測する。
「一応、聞いておきますけど最後に睡眠をとったのはいつですか?」
「どうだったかな。5分、10分ぐらいのなら小まめに取るようにしているけど、ちゃんとしたのは4日前ぐらいかも」
「馬鹿ですか。死にたいんですか貴方?」
「そう言うなよ。最近はこれでも休めるようになってきたんだぜ」
なら道端で倒れるなんてこと勘弁してもらいたい。
偶然通り掛かったオットーが、路地裏でアワアワと狼狽える帝国最強の戦士セシルスからナツミ嬢を預かり受けて彼女の屋敷へと運び込むこの珍事態。
貴族にでもバレれば面倒なことになるに違いないと、ここに運ぶまで誰かに見られてないか気が気ではなく…凄く胃がキリキリとした。
「前々から言っていますが、貴方は自らの地位に自覚を持つべきだ」
「そうは言ってもべつに演説とかする訳じゃねぇし、ただ政策を建てたりチェックしたり――」
「たとえ貴方自身が意図しなかったものだとしても、今世間は貴方に注目しているんです。倒れるぐらいなら無理言って休みましょうよ、頼みますから」
言葉を濁すナツミは呆れるようなオットーの物言いにバツの悪そうな顔をした。
まるで親に叱られた子供のようで、昔からこの人は、
「ま、貴方に頼まれていた件も済みましたし、これからは僕も仕事を手伝えますから」
放ってほくとどこまでも馬鹿みたいに走り回って痛い目を見るまで止まらない。
「マジかよ!お前がいれば百人力だよ、オットー!」
だから友人である僕がちゃんと支えて上げなければと毎回思うのだが――、
「もうっ大好き!」
色々と限界の来ていたナツミ嬢は思わぬ助っ人の登場に感極まって、愛の言葉を叫びながら抱きついてしまった。
これにはオットーも驚いたが、ナツミさんのことだ。
これが友愛からくる抱擁であることぐらい分かっていると、そこそこ長い付き合いなので瞬時に理解し、ナツミが倒れてしまわないように優しく受け止める。
その時、扉が勢いよく開いた。
「ナツミ!倒れたと聞いたが大丈夫……か?」
青髪の騎士。王選候補者アナスタシア・ホーシン様の一の騎士にして近衛騎士団所属――ユリウス・ユークリウス。
なんだ
(あ、僕死ぬかも)