Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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契約精霊

ナツミに初めて抱いた感情が、恋愛ではなく友愛であることを私は今でも後悔している。

 

『あー!あー!いい加減、このイケメン二人に靡かない契約パートナーが欲しいなー!はい、近衛騎士!と言うわけで探しに行こうぜ!俺のパートナー精霊!』

『授かった。どうやら強大な力を宿した精霊がエリオール大森林にいるらしい』

『冗談で言ったけど、マジでドラえもんみたいな力だな』

 

もし、あの時。

我が友ラインハルトではなく私が彼女の手を握っていれば、未来は変わっていただろうか。

 

ナツミの契約精霊探しの冒険。道中出くわした魔獣の群れ。そして現れた三大魔獣『黒蛇』の切れ端。

物語などで云う、分かりやすい展開だった。

 

『ラインハルト!龍剣!龍剣!』

『すまない、抜けないようだ』

『マジで使えねぇなそれ!今度鞘に付け焼き刃でも付けるか!?じゃあユリウス!』

『あぁ了解したここは私が!』

 

きっと、あの時。

ナツミが私を選んでいれば、私もナツミを――。

 

『その剣、ラインハルトに貸してくれ!』

 

 

 

 

 

「なんだ、わざわざ来てくれちゃったの。

お前も忙しいだろうに、ありがとよユリウス!」

 

あまりにも場違いな声色でナツミは友人を歓迎する。

ダラダラと汗を流すオットーは「この人、気でも狂ったか!」と内心叫んだが、「そう言えばこの人、こういう人だった」と、顔を青くして恐る恐るユリウスを見た。

 

「……元気そうでなによりだ」

 

端的で、とても衝撃を受けているようには見えないとオットーは感じた。

 

少なくとも、想いを寄せている女性が見ず知らずの異性と抱きついている様を直視する男の目ではない。

もしやユリウス・ユークリウスがナツミ・シュバルツに想いを寄せているという巷を潤せる色恋の噂はホラだったのだろうか。

 

だとすればオットーの恐怖は取り越し苦労となるわけで、でも国のトップにこれまた堂々を抱きついているのを他人に見られたのはそれはそれで不味い状況ではないのかとハラハラとしていると、

 

「――――何泣いてるんだ?」

 

一滴の涙がユリウスの頬を流れていた。

 

「ぁ……いや、何だろうなこれは。私にも分からない」

 

疑問の声を上げたナツミに、戸惑うように涙を拭うユリウス。

「何もないのに涙が出るなんてことないだろ。

何か変な病気とかだったらどうする。腕の良い治癒術師を呼んでやるから取り敢えずうちの屋敷で休め」

 

「いや、本当に問題ない。きっと目にゴミでも入っただけだろう」

 

 

(……やっぱッうわあああああ!!!!!)

 

 

 

修羅場、修羅場、修羅場。あまりにも修羅場。

オットーの胃袋は雑巾のように絞られて、そのあとにミキサーにでも掛けられているようだった。

 

――物凄く気まずい。

 

ナツミの朴念仁さは、もはや同性と接しているレベルだが、これはあまりにもないんじゃないかとオットーは目と目の間に深い皺を作る。

 

「ナツミ様、いくら何でもその言い方は……いえ、恋愛音痴、残念美人、そんなナツミ様も大変好みなので一向に構わないのですが」

 

さすがに聞き咎めたのか紫髪のメイドがユリウスをフォローするようにナツミに耳打ちする。

 

「そうか……?

体調が悪いなら多少業務に支障をきたしても休むべきだと思うんだけど……やっぱりブラックなのかなそこら辺。

これは騎士団の業務に対する意識改革にも手を出さねえといけないかも」

 

むしろ生理的に受け付けないので無理だと断られたほうがマシのフラれ方である。自分とて想いを告げられぬまま初恋を終えた身の上であるが、このようなフラれ方をしたら普通は立ち直れないと思う。

 

オットーは平気そうな顔をするユリウスの肩が僅かに震えているのに気付いた。

 

ハッとする。

 

……恐らく耐えているのだ。ユリウスはこれからの関係を維持するためにも、一欠片も自身の恋慕に気付いた様子のないナツミ嬢に要らぬ気苦労を背負わせないようにと沸き上がる激情を寸前で抑えている。

 

「な、ナツミさん。この状況で何ですが仕事の話をしたいのですけど」

 

これ以上は見ていられないと、オットーは手を上げる。

 

「おう?

ま、お前のお陰か大分楽になったからそれは構わねえけど……」

「ユリウス様は客室でお待ちになられますか?」

「貴方は、そうかナツミの契約精霊の……いや、ナツミの状態を確認しにきただけだ。私は帰らせてもらうよ」

 

紫髪メイドさんの言葉にやんわりと断りをいれるユリウス。

やっと、この地獄のような時間が終わりそうだとオットーはほっと息をついた。

 

 

 

「ナツミ、帰る前に一言いいだろうか?」

 

「何だ?」

「私は君の良き友になれているだろうか?」

「何言ってんだよ。お前以上のダチなんていねーよ」

 

「そうか……」

 

ユリウスは少しだけ頬を持ち上げて屋敷をあとにする。

ナツミにはその笑顔が何故だが印象的に感じた。 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでナツミさん。このメイドの方は?」

「あぁ、そう言えば紹介してなかったか」

 

それはそうと気になったことがあるオットー。彼は少なくとも以前訪れた時にはいかなった筈のメイド。紫髪の彼女について尋ねるとナツミが前に出るように促す。

メイドは薄く微笑みスカートをつまみ上げて名乗りを上げた。

 

「我、元四大精霊、『火』、調停司りしモノ……いえ、肩っ苦しいのはなしにしましょう。ナツミ・シュバルツ伯爵令嬢が一のメイド。火の精霊メラクェラですわ」

 

「つうわけで俺が10歳の頃から契約してる精霊メラちゃん。この度、微精霊から進化、いや復活?してヒト型形態になったと言うわけよ」

 

 

「ははぁ~成る程。そうですか、よろしくお願いしますメラクェラさん……てなるわけないでしょぉぉおおおお!!!!!」

 

今日ほど胃に悪かった日はない。オットーは後にそう語った。




メラクェラ 出典『氷結の絆』
パックの前任の四大精霊である。
この世界線ではパック&エミリアに敗北して消滅しかかっていた所にナツミ一行と出会しナツミと契約することになった。
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