Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい 作:戻ってきたミュウ
【ナツミ・シュバルツを妻に迎え入れる】
この世に一つ、そして複製された二つしかない叡知の書。それに記されたモノは森羅万象において嘘偽りなく、恐らくは平行する世界においても一定の効力を持つであろうあらゆる予測や予想を塗り潰す絶対の予言である。
そして更にその複製かつ劣化版として魔女教の大罪司教達の元に普及している福音書。
内容に添って行動すれば自身の利になる優れものだが、時に破滅への道標を記すこともある欠陥品である。
その書物を持つ強欲担当のレグルスは、ある日唐突にナツミを妻にせよと福音を受けた。
迎え入れると既に過去形なのは選択する権利を侵害されているので癪に障ったが、まぁこれぐらいのことで一々反応していては程度が知れるというもの。
「247番、ナツミ・シュバルツという女について調べろ」
「ナツミ・シュバルツですか?……彼女のことなら、今のルグニカでは知らない人は居ないと言いますか……その、何について話せば宜しいでしょうか」
「はぁ?知ってて当然だって、今僕をバカにしたのか?それってさぁ僕という個人の!(etc.)」
悲しいことに妻の一人が亡くなった。
「ふぅん。ナツミ・シュバルツ。ルグニカの影の女王か…良いね、丁度席が空いた所だ。僕の292番目の妻に迎え入れよう」
レグルスの手にはナツミシュバルツの肖像画があった。
福音を受けるまでは名前も知らなかったが、好みの顔であったので従うことにする。
ペテルギウスとは違い、福音はあくまで彼にとって利になるから従うのであって、仮にナツミがブスなら無視していただろうが目付き以外は本当に好みだったのだ。
「だけどこのギラついた目付きは気にくわないなぁ」
矯正させるか、ずっと薄目でいろと命令しようと思う。
レグルスは"優しい"ので何も目を潰したりだとか、目隠しをして生活しろだなんて不自由を強いるつもりはない。だって彼女にも権利がある。相互理解は夫婦円満の秘訣だ。
そして妻として迎え入れるにあたり、余計な障害を排除するのも忘れない。
特に家族や、人の妻に劣情を抱くようなゲスな男は残しておくとろくなことにならない。「帰りたい」「あの人がいい」だとか、帰る場所も愛する僕もいるというのに悪戯に妻の心を惑わせ綺麗な顔を歪ませるノミ以下の連中だ。
だからレグルスは妻を迎え入れる前に、それらを排除することにしているが、どうやらナツミ・シュバルツの両親は『存在しない』らしい。
確かなのはアストレア家の縁者であること。だが誰の記憶にもシュバルツ家の人間と言えばナツミだけで、それ以外は心当たりがない。
それは誰が聞いてもおかしなことであるが博識のレグルスにはこれが暴食の権能によるものなのは容易に想像出来た。
白鯨か暴食の大罪司教のどれによるものなのかは分からないが、名を奪われたのだろう。記憶が残っていれば何処かで生き延びている可能性もあるが、どうせナツミ当人を含めて覚えている存在はいない。つまり再会してもナツミからすれば赤の他人だ。家族だと言われれば困惑するだろうが、丸っきり心当たりがないのだ。親身になって話を聞いてやろうとするより遠ざけようとするのが普通。とても心をかき乱すような強い存在にはなれない。なるにしても時間はかかるし、直接来ると言うのなら探す手間も省ける。
わざわざ殺しにいくまでもなかった。
なんて都合が良いんだろうとレグルスは上機嫌になる。
余計な障害の排除は夫として当然の責務と割りきっているが、やはり面倒なものは面倒なのだ。それの手間が省けるのは純粋に嬉しい。
……嬉しい、がそれはそれで夫としての責務を全うする権利を侵害されたようで少し胸がムカムカした。
「居ないに越したことはないが、これじゃあ僕が夫として最低限の務めも果たせない駄目人間みたいじゃないか」
レグルスは福音書を読み返し、この蟠りを解消出来る何かを探す。
そして見つけた。
「ロズワール・L・メイザース、目的の為に僕の妻を傀儡にしようだなんて、なんて酷い存在なんだ!夫として見過ごせない!」
要するにクズとクズの頂上決戦である。
両親が消失した瞬間
「ん?……あれ?なんか、胸の内がすっげぇ寒いような、そうでないような……風邪か?」
※彼女はナツキ・スバルではないので暴食の権能は普通に効きます。