Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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フェルト派

実はナツミ・シュバルツちゃんは半年ほど貧民街で暮らしたことがある。

一応伯爵令嬢だろ?何故?って聞かれたらハッキリとした理由は説明出来なくて困るんだが、近衛騎士団に連れ戻されるまでロム爺のところで厄介になりつつフェルトと毎日のようにバカやって騒いでいた。

 

「何で姉ちゃんは帰らないんだ?」

「帰ろうと思えば帰れるんだけどなー、誰かにここで待ってろって言われた気がすんだよ」

「誰って親とかか?」

「親、うーん。親かぁー実感ねぇな。ただ漠然とすっごい大切な人だったような気がするんだが……丸っきり抜け落ちてやがる」

「記憶喪失ってやつか」「ま、そう言うことだな」

 

貧乏で不衛生だったが歳の近い妹が出来たようで悪い暮らしではなかった。

 

「ナツミ!俺にもカルメ焼き一つ!」

「カルメ焼き三つ!バター味!」

「カルメ焼き五つ!!!」

 

「うおおぉぉぉぉ!!!!持ってくれよ!俺の右腕ぇぇぇ!!!!」

 

「クソッ、回しても回しても注文が止まらネェ!!!」

 

カルメ焼きを売り出したらプチバズりして、腕がねじ切れるぐらい棒で生地をかき混ぜたり、

 

 

「おいおい、こんな所に女と子供が居るぜ」

「コイツはとんだお馬鹿さんだ」

「へへ、痛い目見たくなけりぁ身ぐるみ全部置いて……いや、女の方はこっちをシコシコしてもらうとするかなぁ!」

 

「あ、誰が子供だって?」「まぁ、待てフェルト……ここはだな」コソコソ

「…はぁん。乗ったぜ姉ちゃん」

 

「ひ、ひぃ。怖いですわ。涙が止まらないですわ。こ、この粗末な檜木の棒をギコギコすれば命だけは助けてくれんですわよね!?」

 

「いや、檜木の棒って何だよ?あとギコギコされたら取れちまうだろが!」

「ひぃぃ!そちらの殿方もギコギコしなくてよろしいのですか?」

「あ?何だよお前もしかしてビッチか?」

 

ナツミ達に絡んできた男たち。傾国の美女ナツミ・シュバルツによる色気ムンムンの誘惑ですっかりその気になった二人はズボンを下ろす。

 

「「死ねェェェ!!!!」」

 

その一物を蹴り潰したり、たった半年だったが、貧民街の連中とは良い意味でも悪い意味でも全員顔見知りになった。

 

だからだろうか。ナツミ・シュバルツは低所得層、貧民街の出や開発区画の民衆からの支持がとりわけ高い。元々身内には義理堅い連中ではあったが、予算を惜しみ無く注ぎ、これまで停滞していた生活水準を一気に引き上げてくれたのが決め手となって、もはや崇拝に近い支持を得ている。

どれぐらい高いかと言うと「悪いのは嫉妬の魔女サテラだろ?銀髪エルフなんて希少属性、ただでさえ少ないんだし、差別やめようぜ」なんて言えば、親が子に、子が親に、銀髪でエルフだからって差別するのはおかしい!と本気で訴えるぐらいだ。

 

アングラからの支持など(笑

と侮っていた貴族達もいざ彼らが所得層になると焦り出す。

まさかこの為に貧民街に身を潜めていたのか!?と賢人会は何度目かの戦慄する。

 

王族が流行り病で全員亡くなるなんて考えもしなかった。ラインハルトや龍がどうにかしてくれるもんだと思っていたので、当然ながらそんな仕込みをやるほどナツミは思慮深くない。

 

だが結果が全てというやつで、上から下まで揃えたナツミは王選に選ばれたら即終了という出来レースが勝手に開催されていた。

開催区画ではロム爺主催で祝杯をあげる準備まで進んでいたらしい。

 

はてさて、そんな中でナツミは王選候補に選ばれませんでした。と来れば貴族達はホッと息をつくかもしれないが、ナツミに心酔している彼らは松明を持って暴動を起こしていたかもしれない。

 

だってこれまで王位についた誰もが自分達には見向きもしなかったのだ。

この国を守ってくれるという龍でさえそれは同じだ。

やっと自分達の声を聞いて手を差し伸べてくれる王様が出てきたと思ったのに、龍がそれを拒んだとなれば世はまさにドラゴンスレイヤー時代である。

 

ボルカニカは泣いていい。龍の血が市場に出回るほど血だるまにされていたかもしれない。

 

 

「私が王様になる!なるけど全部姉ちゃんに任せるから落ち着け!!!!」

 

そのストッパーとしてナツミの妹分のフェルトはこれ以上ない人選だった。

ナツミのように実績はないが、信用はありまたナツミと親しい彼女がナツミに任せると言うのなら信じる価値はある。

 

彼らは手のひらを返し、龍の采配に乾杯した。

我らが貴きドラゴンに祝福あれ。ルグニカに永遠の繁栄を!

 

 

 

「それでお前は誰の騎士になるんだ?」

 

遠征から長らく。今日になって()()()()に王都に帰還した剣聖ラインハルトである。

彼は投げられるような形でナツミからフェルトを頼まれたが、本心ではナツミの騎士になりたいんじゃないかと問い掛ける。

 

「別にいいぜ。操り人形でも無能の王様でも、どうせアタシはお飾りになる予定だ。王様の騎士になりたいってなら姉ちゃんのとこに戻ればいい」

「それは手厳しい。僕がナツミの騎士だとルグニカがこの世全ての中心になってしまいます」

「は!惚れた女の為に世界を手に入れますってか?」

「いえ僕と彼女との間にそのような感情はありません。ただナツミなら使える物は何でも使う主義でしょう?」

「そういやそうだ。姉ちゃんは『数の力だ』って何でも使うし、後先考えずに突っぱしって痛い目を見ることがある。……姉ちゃんに任せたらどんどん仕事を抱えこんで潰れちまいそうだ。お飾りじゃなくて監視、いや見張りか?姉ちゃんが暴走しないように止める、そんな王様もありだと思うか?」

「ええ。あなたのような方がナツミの側にいてくれるならこの国も安泰でしょう」

 

フェルトはナツミとの半年ですっかり絆されていた。幼馴染みで親戚のラインハルトは言わずもながらフェルト陣営は実質ナツミ陣営としてヴィクトリーロードを駆け抜けて行く。

 

「あ、それと私が王になったらドラゴンに一言ガツンと言ってやらなきゃならねェ。そん時は付き合えよ?」

「ええ勿論ですとも」

 

歴代最強の剣聖は気持ちの良い笑みで答えた。

ボルカニカは泣いていい。(二回目)

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