Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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ユリウス・ユークリウス

異世界転生して四年目。

ナツミちゃんは4歳になり、何とか日常生活に支障がないレベルまでヒアリング能力が向上した。

まだ早口で喋られると聞き取れなくなるが、これは大きな一歩だ。何たって言葉が分かると言うことは人から教えを乞うことが出来るようになるということだからな。

 

 

「素晴らしい!この歳で語学を修めてしまうとは、ナツミ様は天性の才能をお持ちなのですね!」

 

家庭教師のおば様が、誉めちぎる。

 

幸いなことにも言語は兎も角、文字は日本語と類似点が多かったお陰で比較的楽に覚えることが出来た。

周囲のメイドや執事さんもパチパチと、少々大袈裟な気もするが、そりゃー4歳で字が書けるようになれば凄いと思うわな。俺的には一年近く丁寧に教えてもらってやっと覚えられたって言う……喜びよりも、ほっとした気持ちが強いんだが。一年近く赤ん坊やってると結構忘れてる事が多くて普通に恐いんですわ。

 

「つぎ、をおねがいします」

「し、しかし今日の講義はもう二時間ほど超過して…私は構いませんが、ずっとお勉強というのはお嬢様もお辛いでしょう?」

「すること、ないので、つぎ、をおねがいします」

 

ちなみに喋る方はまだカタコトだ。頭では分かっていても発音するとなるとてんでダメになる。

だからせめて、この世界の基礎知識ぐらいは修めて安心しておきたい……ん?

 

別に無口ボッチで、することがないとかじゃないから。

 

……おば様?何黙っているんです。そんな悲しい物を見る目を向けないで……いや、本当に違うから!ボッチじゃないんです!

 

 

 

コンコン

 

 

 

「お嬢様、ユリウス様が――」

 

 

 

おしっ!良いところに来たマイフレンド!

 

やっぱ小さいお子さまは部屋で勉強せず、お外で遊ぶべきだよな!……と言うわけで、おば様?……あ、いいんですね!

 

――スバル行っきます!

 

 

 

「あらあら、ユリウス様が来た途端に」

 

「ナツミ様ったらおませさんね!」

 

 

 

 

 

 

 

「ナツミ様、今日は何を披露致しましょうか」

 

さてさてと我がシュバルツ家の保有する未開拓の森の広場で、切り株に腰かけたナツミと舞台役者のように振る舞うユリウス。

 

テレビやゲームもない異世界で、下手なマジックの百倍は面白い“魔法ショー”を独占してて良いもんなんですかね~奥さん。

 

 

「イアのあれやりたい!」

 

「それはいい、彼女も貴女の事を好いているようですから」

 

ユリウスが右手の指を軽く弾き、一つの淡い輝きがナツミの周囲を飛び回る。微精霊のイア。

 

子猫のようにナツミにじゃれつく彼女は可愛いらしく、ユリウス曰く既に契約者のいる微精霊がここまで他者に愛着を示すのは大変珍しいことらしい。もしかしたら俺にはユリウスの『誘精の加護』と似たような加護があるかもしれないとのこと。

 

ふと、ナツミは思う。

 

「ゆりうす、こんなところで、うったら火事になるんじゃねぇか?」

 

ナツミの疑問にイアが震える。ちょっと可愛いと思ったのは俺とユリウスだけの内緒だ。彼は顎に手を当てて、七歳児の頭脳を振り絞り上空に撃てば問題ないのでは?と結論を出す。 

 

流石だ。ユリウス!(七歳児に頭脳で負けた瞬間である)

 

 

「れい……がん!」

 

 

ナツミは上空へ指を向け、漫画の主人公が必殺技を放つが如くたっぷりと時間を溜め……イアを射出した。

 

そしてお預けを食らうと思っていたイアさんはテンション高めに、いつもより高めに昇っております。

 

3……2……1

 

 

ドカン

 

 

「えくすぷろーじょん」

 

 

……綺麗な花火だ。

 

前髪をかきあげたナツミ嬢はクールに呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

ユリウスにとってそれは偶然の連続だった。

 

最近何かと噂の種となるシュバルツ家の令嬢ナツミ・シュバルツ様。

 

少々目付きが鋭いのが難点だが、あの剣聖の家系と生まれが近く、精霊術士として高い素養を持ち、3歳という幼い年齢ながら趣味は歴史研究だという、勉学にも積極的な彼女。

 

家柄やその幼くして光る才覚からみても近い未来、国の重要な役職を任される事は間違いないだろうと話題になっている。

 

幼少期に両親を失くし、父方の親戚に引き取られた不幸もあれど、それにめげず血の滲むような努力を重ねたユリウス。将来有望な騎士として頭角を顕しつつある彼が、一度会っておいて損はないと親族同士の顔合わせで会話をすることになった。

 

 

「…こんにちは」

 

「ご紹介に与りました、ユリウス・ユークリウスと申します」

 

「……そうか……いえ、そうですか。ごていねいにどうも」

 

「はぁ……」

 

 

 

微妙な空気が流れる。

 

このユリウス、自慢ではないが持ち前の美貌が災いし、ひと度女児の視界に入れば黄色い悲鳴を上げられてきた。

 

……つまり、自身にこれっぽっちも興味がない相手と会話したことがない。

 

 

「とりあえず、これたべます?」

 

「…有り難く頂戴いたします」

 

 

初の顔合わせは、殆どを無言で過ごし、ナツミ嬢(3歳)の気遣いにこれ以上ないほどプライドをズタズタに傷つけられたユリウス。

 

そんな彼が、頻繁にシュバルツ邸を訪れるようになったのは自然な事だった。

 

「ナツミ様、バラ園に興味はございますか?

私の知り合いの庭師が――「ごめんなさい、きょうみないです」」

 

「――そうですか」

 

「ナツミ様、巷で評判のお菓子を頂いたのですが「甘いものはちょっと」」

 

 

若さ故、あまり物事を深く考えず、思い付いたまますぐ行動に移してしまうユリウスとそれを冷たくあしらうナツミ嬢。

 

初めのうちは、「女性に気を使わせてしまうなど騎士の恥だ。恩を受けたならば返さなければ」そんな気持ちで動いていたユリウスだが、あんまりにもナツミ嬢が振り向かないので、だんだんと意地になってきた。

 

花やお菓子、あの騎士は女性に人気だの、女性の好む騎士と姫の禁断の恋物語など、少しでもピンっとくればそれらをもってナツミの下に訪れる。

 

 

ナツミ・シュバルツは冷たくあしらった。

 

 

何故だ。ユリウスは嘆く。

 

 

魂が男だから、花やら菓子やらで喜ばないのだろう。

微精霊達は思った。

面白そうだから黙っていよう。準精霊達は話し合った。

 

ところが、世話焼きのイアさんがある日、ユリウスに語りかける。

 

魔法をみせてみたらいいんじゃない?

 

 

ユリウスは女性がそんなものをみても何も喜ぶことはないだろう。一瞬そう思ったが、ナツミ嬢はまだ三歳児だ。中性的な年齢だし、もしかして……

 

ダメ元でナツミの前にやって来たユリウス。

 

 

「…精霊よ」

 

 

「ふあああああ!!!!!!」

 

 

ナツミが目をキラキラと輝かせ、満更でもない微笑を浮かべるユリウス。

 

 

 

 

ユリナツ最高!

 

 

 

 

イアさんは腐っていた。

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