Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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14話『契約精霊』 微修正(ユリウスのラインハルトに対する悪感情追加)


懐かしきモノ

そして3日後。

 

「なぁ?少し護衛にしちゃ過剰じゃねぇか?」

「そんなことはないよ。またいつ魔女教の襲撃があるとも限らない。フェルト様も心配して快く送り出してくれた」

「いやぁ、お嬢も人が悪い。まさか剣聖とご血縁だったとは。もしかして次期剣聖候補だったりします?そうだったら閣下もお喜びになること間違いなしですよ!」

「おや?まるで僕が剣聖の地位を放棄するような物言いだね?君にはそんなに無責任な男に見えるのかな?」

「いえいえ、そんなことは。でも死んだら次代に切り替わるんでしょ?」

 

二人の漂わせる険悪な雰囲気のせいか若干周囲が歪んで見えた。

ルグニカ王国とヴォラキア帝国の最強が二人。冗談抜きで国を滅ぼせる戦力を引き連れ、ナツミはメイザース辺境伯の屋敷へと向かっていた。

 

「大丈夫か?喧嘩売ってるとか思われないかなぁ……メラクェラとか丁度良かったんだけど」

 

掃除に洗濯、ご飯に護衛となんでもござれの我が屋の完璧メイドのメラクェラだが、今回だけは勘弁してくださいと断られてしまった。なんでもエミリア様と浅はかならぬ因縁があるらしい。

下手をすれば彼女の連れている精霊と火の四大精霊の座をかけて再び争うことになるからとセシルスを半場強引に押し付けられて、閉め出される。仕方がないのでセシルスを連れて向かおうとすれば、玄関前でスタンバっていたのがこの男だ。

 

「ないにこしたことはないが、もしエミリア様、精霊術師との戦闘になれば僕に少しだけアドバンテージがあるからね。それにメイザース家とアストレア家は少なくない交流がある。交渉の場で口を挟む気はないが、何か役に立てるかもしれない」

「アドバンテージってお前が相手だとただのリンチになっちまうよ」

 

ラインハルトとはユリウスの次に長い幼少期からの付き合いだが、こうなったラインハルトは梃子でも動かない。

セシルスいるから大丈夫だって。お前がいるとセシルスの殺気がヤベェんだよ。間に挟まれてる私のことを考えろよと訴えても、なら彼に帰ってもらえばいいんじゃないかい?と屁理屈みたいなことを言ってくる。

 

セシルスは一応正規のルートとはいえ国交の閉じてているヴォラキア帝国からの客人だ。

問題を起こせば、最悪国際問題になるにも関わらず遠慮というものを知らないようで、目を離すと直ぐ強者や武器を求めてフラフラ歩き出すので、手綱を握っておく必要があった。

 

「ってそろそろか。二人とも頼むから変なことはすんなよ。特にセシルス」

「安心してください。人の話を聞かないことに定評がある僕ですが、護衛任務中に現を抜かすほど阿呆ではないので。まぁ十大魔剣がポンッと目の前に現れたら分かりませんが」

 

ラインハルトの帯刀する龍剣レイドを見ながら。

早速信用に置けないようなムーヴをかましてくれるが、こいつのことだ。死合いで戦利品として持ち帰るならまだしも、奪ったりするようなこそ泥紛いことはすまい。

 

 

 

※※※※

 

「これはちょっと勝てないかも」

 

パックが冷や汗をかくほどすごい騎士を二人も引き連れて現れたのは私と同じぐらいの女の子だった。

 

「お招きいただき感謝いたしますわ」

「え!?」

私ってばすっごい驚いて声に出ちゃった。

 

女の人だとは聞いていたけど、賢人会の仕事を全部肩代わりして、王族の人たちがやっていたことにも手を出している、とっても忙しくて博識な人って聞いていたからもっと大人の人だと思っていた。

 

「あら?何かおかしなことでも?」

「ううん!何にもないの!ごめんなさい!想像より若かったから驚いてしまって」

「ほうほう。あからさまなお世辞だとしてもそれは嬉しい限り……いや、ハーフエルフからしたら私って赤ん坊に見えるとか?」

 

たぶん、凄く無礼なことを言ってしまった。

ナツミ・シュバルツさんは今のルグニカにとって王様の代理。だから彼女と仲良くするのが王選で勝ち抜く近道だってロズワールに口酸っぱく言われてたのに、私のおたんこなす!

 

「そうだ!今日は茶菓子をいっぱい用意したの!ナツミ・シュバルツさんは何か苦手なものとかあるかしら?」

「お気遣いありがとうごさいます。嫌いなものはありませんが、少しお湯をお借りしても?カララギの茶葉をお持ちしましたの。もしよろしければどうです?少し苦いですが身体にもいいし、温まります。緑茶という飲み物なのですが」

「聞いたことない飲み物ね。うん、レム。お願いしてもいいかしら?」

 

ここでエミリアはナツミシュバルツと会談するに折、ロズワールから事前に聞かされていた情報の一つを思い出す。

 

ナツミ・シュバルツはカララギの文化を好んでいる。

 

傾倒しているというほどではないが、ダイスキヤキなどのカララギ発祥のお店にはよく訪れているらしく、年明けにはお餅をついたりしているらしい。

 

だからカララギの茶菓子も一応用意はしてある。だが、飲み物は盲点だった。いや、もしかしたらエミリアが知らないだけでレム達は用意していたのかもしれない。

 

「……」

「あら、ありがとう」

 

そしてレムが差し出したのは湯飲みであった。

エミリアは変わったコップだとしか思わなかったが、ナツミは内心レムへの評価を上げる一方で、それを主人であるエミリアが全く知らない様子から、蝶よ花よと甘やかされて育てられているのか、それとも神輿として担がれているだけでメイザース家では冷遇されているのか、そのどちらなのかと図りかねていた。

 

「エミリア様はメイザース家との関係は長いのですか?」

「ううん。ほんの数年よ」

「と言うことは王選候補者に選ばれて直ぐですか……先の式では改革について話されていたそうですが、何か王になってやりたいことでも?例えば龍の血が欲しいとか」

 

ルグニカの王だけが使うことを許される龍の血。それがあればどんな病や呪いだろうと完治出来るとされている。

ナツミとて保管されているそれについては取り扱う権限を持っていないし、今後持つことも出来ない。

 

「……うん。どうしても救いたい人たちがいるの。こんな理由で王様になろうだなんて不純よね。そして差別のない国を作れたら素敵だと思ったけど、こんな世間知らずな私なんかにナツミ・シュバルツさんみたいなことは出来ない」

「いいえ。とっても素敵な願いだと思いますよ。誰かを救いたいだなんて真っ直ぐな感情が間違いである筈がない。差別のない国を作るのだって、私は妥協して諦めてしまったものだ」

「諦めた?えっでもこの王都に来てから一度だって差別されたことはないわ」

「それはここが私のホームグラウンドですから。王都から離れれば離れるほど私の影響力は低くなっていきます。エミリア様も王都に来て初めてと、おっしゃっていたように私程度の力では国を変えるほどの力はありません」

 

死力を尽くして使えるものを全部使って血反吐まで吐いても、変えられるのは街一つ。エミリアの故郷は王都からは遠かったのだろう。ハーフエルフ、それも銀髪の女は嫉妬の魔女を連想させ、それだけでなぶり殺しにされることもあったと聞く。

こんなに可愛い子がそんな悲惨な過去を送ってきたかと思うとナツミは胸がぎゅっと苦しくなった。

 

「なら私は貴方が諦めてしまったものを引き継げるような王様になる。うん、例えそれが出来なかったとしてもやる前から諦める理由にはならないもの」

「……ご立派ですね」

 

どうやらただの神輿ではないらしい。ちゃんと心に芯のある強い子だ。

だからこそナツミは残念に思う。ろくに後ろ盾のないエミリアにとって今回の襲撃は実に致命的だ。

 

「それで、メイザース辺境伯のご容態はどうでしょうか?」

「あまり良くはないみたい。峠は越えたみたいだけど、回復まではまだ時間がかかりそうだわ」

「そうですか。メイザース辺境伯には直接感謝の言葉を伝えたかったのですが、そちらは改めてさせていただきますね」

「そうして貰えると助かるわ」

「今回王都はメイザース辺境伯のご尽力のお陰で最悪の被害を免れることが出来ました。賢人会はメイザース辺境伯には形として可能な限りの便宜を図るとのことですが、何かご希望のほどはありますか?」

「?ナツミさんじゃなくて賢人会なの?」

「お恥ずかしながら、私自体は司法の一員に過ぎません。王不在の間、その代理を務めるのは賢人会、であらねばならないのです」

「……つまり、それって……うーんと。分かったわ」

 

要は都合が悪いから名前だけ借りるということだろう。

ロズワールが会談の場で約束したかったのはナツミ・シュバルツ個人と同盟を結ぶことだ。

 

「申し訳ありません。私には既に王にしたい主がございますので」

 

断られるのは想定内である。

ナツミとしては協力してあげたかったが、今さら鞍替えするわけにはいかなかった。

しかし、そこでエミリアは秘策とばかりに小さな箱を取り出した。

 

「本当はロズワールが直接渡したかったみたいなのだけど、私が代わりに預かったものなの」

 

ロズワールはこれでナツミシュバルツを陣営に率いれると言っていた。中身は詳しくは聞いていないが、珍しいミーティアらしい。

 

「ミーティアですか……確かに趣味で集めてはいますが」

 

ファーストライフに戻る手がかりになればと、可能性があるものには目を光らせてきた。ミーティアもその例に漏れず、研究対象の一つとなっているが、何もイロモノ集めが趣味というわけではない。

 

エミリアから受け取った箱を開ける。

 

 

 

「……は?」

 

 

ナツミは目を疑う。

最初は何かの見間違えだと思った。だってあり得ない。百歩譲って()()()()()()()()なら理解も出来たが、何故それがここにあるのか。

 

震える手で箱の中身を掴み取る。

 

そしてカパリとそれを開くと──久しく浴びることのなかったブルーライトが顔を照らした。

 

 

「おれの、携帯……?それも電源までつくだなんて……あり得ねぇだろ……あれから何年経ってると思ってんだ」

 

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