Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい 作:戻ってきたミュウ
王の候補者が出揃い正式に開幕を宣言されてから早くも1ヶ月。
王選開幕の熱で活気づくも王都には平穏な日々が戻ってきていた。
今日も今日とて忙殺されそうな仕事に追われるも、正式に王が決まれば、この生活にもおさらば出来るのかなんて少し感傷的になりながら筆を走らせるナツミは合間に紅茶を手に取り、一息……
「ルグニカ王国は大丈夫なのか!?」
「強欲がまた攻めてきたら今度こそ陥落するんじゃないのか!?」
「なんとかっていうこの国一番の魔法使いが手も足も出なかったんだろう?」
「剣聖なら倒せるのかい?どうなんだいナツミ?」
───しているどころではなかった。
この国のみならず近隣諸国が注目し、熱を上げた王選は魔女教の影響で、すっかり恐怖に塗り替えられてしまった。
夜間に騎士を巡回させたり、魔女教襲撃時のロードマップを見直したり、無駄に顔が広いせいで買い物中のおばちゃんにも尋ねられたり、とにかく一息つく暇すらない。
「だあああ!!!忙しいったらありゃしねぇ!」
これで被害が甚大なら間違いなくナツミはストレスで禿げていただろう。
「ナツミさん。これやっぱり賢人会にも協力を仰ぐべきでは?ナツミさんのお陰でインフラ崩壊とはなりませんが、食糧品の買い占めによる高騰や魔女教の名を利用した犯罪が起こるのも時間の問題ですよ」
「して欲しいんだけどなぁ~。この前逃げようとする一人を首根っこ捕まえて仕事させたら、何だこれは!自分の時とは何もかもが違う!って使い物にならなかったんだよ」
「引き継ぎなしの人員総入れですからね……ナツミさんのやり方って少々特殊ですし、ブランクが空くと僕でも何をしているのか分からなくなる時があります」
「だから頭の固い賢人会より柔軟性のある若い連中を育成した方が早かったりするんだなこれが。一番の有望株は今のところお前だオットー。早いとここっち側にきて人材育成手伝え」
「嫌ですよ~何度も言いますが、僕は内政官ではなく本業は商人ですからね」
「はいはい、商人志望の内政官どの。こっちの書類確認してくれる?」
「はぁ……全くこの人ときたら」
何だかんだいいつつ仕事の半分を請け負ってくれるオットー様々である。
これで何とか回っているものの、オットーの言うとおり目先の問題が表面化するのも時間の問題だろう。
「食糧品は今年は豊作だし、一部買い取って国で配るか。犯罪はーどうすっかなぁ」
大きなものならまだしも窃盗や暴行など小さいものには対処しきれない。
ただでさえ人材不足に喘いでいる状況だ。王選の仕事もあるし、今は猫の手も借りたい。
「猫……猫……そういや、エミリア様の契約精霊って猫科だったな」
ふと思い出す。
大精霊とはいえ猫の手を借りたところで、どうにかなるとは思えないが、思い出して欲しい。エミリア様や他の王選候補者。本来ナツミのやっている仕事は彼女達の誰かが務めるべきなのである。
「そうだ、これを王選を利用して候補者に解決して貰えばいいじゃないか!」
クルシュさん達が白鯨のことで忙しくしていたから頭から抜けていた。そもそも候補者ですらない自分が王様代理をしていることが異常なのである。
エミリア様は未熟だが努力家だし、アナスタシア様は商人として培った目利きがある、そしてプリシラ様は帝国の関係者、そしてフェルトは……まぁ居ないよりはマシだ。
「善は急げ!このナツミ・シュバルツの名において候補者達に王都の混乱を解消せよと電文を送るぞ!」
幸いにもまだ王選候補者達はこの王都にいる。
未来の王様たる彼女達がどうこの混乱を解消してくれるのかと自分は高見の見物でもしてくれようとナツミは高らかに笑った。
そして各々の候補者達。
「わ!わ!わ!これってナツミが私を頼ってくれたってことよね!どうしよう!私にナツミの仕事の代わりなんて出来るかしら?あ!でも『りょくちゃ』、だったしら?あれなら練習すれば私でも淹れられるかも!そしたらナツミも喜んでくれるわよね!レム!教えて!」
「はい、かしこまりました」
「ふむ。彼女がこういった行動を取るのは初めてだが、実に合理的である。魔女教による被害はルグニカを悩ませる長年の種だ。これ一つを解消せずして何が王かと改めて問いたいということなのだろう」
「たぶんめんどくさいから丸投げしただけなんじゃないかにゃ~とフェルちゃんは思ったり!」
「おのれ魔女教……我が孫娘にかような激務をおわせるなど許せん!必ずやこの『お爺ちゃん』が貴様を細切れにしてくれるわぁ!!!!」
「正直白鯨討伐の援助だけじゃ弱いと思ってたねん。渡りに船や。それに心身ともに疲弊しているナツミちゃんのもとにユリウスをやって、既成事実を作る良い機会になるかもしれんなぁ~」
「不甲斐ない。私にはナツミの背負う重荷を何一つとして代わりに背負ってやることが出来ないのだから」
「……前々から思ってたけど、ユリウスってなんでうちに入ったん?お嬢に惚れたわけとちゃうんやろ?」
「王様としての魅力とかには惚れたと思う!でも男としてはナツミ様に惚れてる!多分一目惚れ!」
「何だ?王都の混乱を治めよ?そんなん勝手にやってろってんだ。逃げた相手に怯えて情けねぇ……私は従うつもりはないぜ」
「そうじゃなぁ。どうせ儂らがいくら考えたとて王都の連中が安心出来るとは思えん。ここは素直にナツミの嬢ちゃんに何をすればええか聞いてみたらいいんじゃないか?」
「いっそのこと、僕が魔女教探知の加護でも授って魔女教を全て……いや、それだと致命的な欠陥がある」
「ほう、この妾にそのような命令を下すか……傲慢か?いや、この程度成せずして己が膝をつくほどの相手ではないと見定めようというわけか……面白い。ナツミ・シュバルツ。妾の王としての権威、とくと見せつけてやろう」
各々がそれぞれの見解を示し、
プリシラ・バーリエルは突きつけられた挑戦状に望むところだと獰猛な笑みで答えた。
「
その後ろ、甲冑頭の男が吐くような言葉を漏らすもそれに答えたものはいない。
王選の第一幕はこうして幕を開けることとなった。