Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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ファーストライフ

ファーストライフでもセカンドライフでも俺って人間はつくづく勿体ないぐらい恵まれた両親の元に生まれてきたものだと思う。

 

 

父親(ファザー)、ボルックス・シュバルツ

母親(マザー)、ミッシェル・シュバルツ

 

ファザーは騎士家系の生まれらしいが生まれつき身体が弱く、冷遇されていたところ反抗心を爆発させ必死こいて内政官にまで上り詰めた凄い人だ。

マザーは剣聖の家系というルグニカの騎士家系の中でもトップに位置する特別な生まれで、ファザーに一目惚れしてシュバルツ家に飛び込んだらしい。

 

身分の差から簡単には認められなかった二人だがルグニカ王国を騒がせる大恋愛の末、許されたのだとか、何とか。

 

こんな二人の間に生まれた俺は蝶よ花よと溺愛され、美形な二人の容姿も合わさって、とんでもない美少女に変貌を遂げている。

目付きだけは生前と同じような気もするが、青髪のファザーと赤髪のマザーとが合わさって暗めの紫髪であり、顔はほっそりまん丸である。

 

「ナツミは本当に可愛いね」

「私たちの子よ当然でしょ?」

 

この國では赤ん坊の頃ならいざ知らず、ある程度成長すれば子供は一人部屋を宛がわれるらしいが4歳になった今でも家族三人川の字になって寝ている。

 

そして俺が寝付くまでずっと愛を囁いてくれるのだ。

こんなに愛されても良いんだろうか……。

 

転生という、もしかしたらこの身体に本来宿る筈だったナツミ・シュバルツちゃんの意識を塗り潰してしまったかもしれないという罪悪感は常に感じていた。

返せるものなら返してやりたいが現状ではその手段もない。

ただ加護や権能といった理を越える力がこの世界にはあるらしい。もしかしたらそれらを利用すれば本来のナツミシュバルツちゃんを取り戻して、俺もファーストライフの世界へ帰れるかもしれない。

 

子供に戻って、今一度両親の有り難みを再確認した。

散々迷惑をかけてコンビニ帰りに轢かれて終わりだなんて、あんな終わり方が許されて良い筈がない。

まだ子供の身では表立って動くことは出来ないが、いつかは……。

 

「ナツミが幸せなら私たちは満足よ」

「そうだぞ。無理はするなよ」

 

それは俺が受け取っていい言葉(親愛)じゃない。

 

俺が必ず、アンタ達の娘を救ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔獣。

 

それは人々の平和を無下に脅かす悪しき存在『魔女』の眷属であり、魔女教と呼ばれる魔女に魅入られたカルト集団を除けば、魔女の恐怖を最も象徴する化け物だ。

 

ユリウスは現在、歴史などを中心に勉学に励んでいるが、古い文献を漁れば漁るほど、度々現れる奴ら。

 

犬や水性生物など、自然動物を邪悪に歪めたような外見を持ち、人を憎悪をもって貪るような相容れない生物。その強さは多岐あれど、時に国すらも滅ぼす事がある。

 

「ガルルル」「ガルル…」「ガルルルル」

 

その日は何時ものようにナツミ嬢を連れ出してユリウスが覚えたての魔法の実演をしているところだった。

シュバルツ家の抱える未開拓の森は、魔獣が住み着かないようにキチンと結界を敷いている。けれどその日に限って結界の不備があり、外から魔獣が侵入していたのだった。

 

「ゆりうす…これ、やばくね?」

 

「ナツミ様。私から決して離れないで下さい」

 

気づいた時にはもう遅い、ユリウスとナツミ嬢は魔獣の群れに囲まれていた。

 

恐らくユリウスの魔法に吸い寄せられたのであろう。運が悪かったといえる。しかし、奴らをここまで呼び寄せたのはユリウスが少し派手な魔法を見せて驚かせたいという見栄っ張りな行動が原因だった。

 

ユリウスはナツミ嬢を背にして歯噛みする。

 

 

何と浅はかな!

 

 

おまけに、今のユリウスに武器らしい物はない。

 

微精霊達はいるが、騎士として修行を始めたばかりのユリウスは精霊騎士として未だ未熟だった。

 

精々、火をおこし水を出す程度。この数にそれを放っても焼け石に水である。

 

「――こいっ!」

 

「なっナツミ様!?」

 

 

ジリジリと距離をつめる犬科の魔獣達。

 

冷や汗をたらしながら、打開策を模索するユリウスであったが、突如ナツミ嬢はその腕を引っ張り、大きな樹木に向け走り出す。

 

 

「しってっか!ゆりうす!犬のつめは丸いから木登り“へたくそ”なんだぜ!」

 

「そうか!ナツミ様失礼!」

 

「この、木登りスバちゃんと言われた俺の実りょ…うひゃ!?」

 

 

意図を察したユリウスはナツミ嬢を両手に抱え、一般的な貴族の屋敷よりも一・五倍ほど高い木の頂点まで跳び上がった。

 

 「うへぇ…やっぱ“いせかい“のちょうやくりょくばぐってるわ…」

 

 

ナツミ嬢が恐る恐る下をみれば、木にしがみつくも滑って落ちる魔獣達が。

 

 

「何とかなりましたね」

 

「そうだな…よし、おろせ」

 

「なりません」「おーし、ゆっくり……は?」

 

 

「下ろしたら落ちてしまうでしょう?」

 

「……は?」

 

 

ナツミ嬢は、真顔になる。

 

 

「おまっマジでおろせよ」「なりません」

 

「おろせよ!おーろーせーよ!」

 

「なりません」

 

「おろせぇ!!!こどもあつかいすんなー!」

 

 

 

ガロオオオオ!!!!!!

 

 

 

ナツミ嬢の言葉に被せるように、地面が揺れる。

 

ユリウスが何事かと下を注視すれば魔獣の一体が膨れ上がり…ユリウス達の眼前まで大きくなった。

 

 

 

「「ふぁ!?」」

 

 

 

その瞬間……俺たちは思い出した。壁の中に捕らわれていた屈辱を。

 

 

 

「いちなんさってまたいちなん…どころじゃねぇ、にげろー!ゆりうすぅぅぅ!」「了解しました!」

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