Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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泣きたくなる温度

異世界転生という特質上、生まれた頃から自我があるとはいえ、流石に一歳二歳の頃は寝てばかりでハッキリとした記憶はない。

歩くこと、言葉を覚えることに注力していたつもりだが、やはり全く知らない環境で、かつ言語の通じない人たちに囲まれているというのは赤ん坊の身体には過度のストレスとして悪影響を与えていたのだろう。どうにもその頃は体調を崩しがちで寝る、というより寝込んでいることが多かった。

 

今世の母方の祖母に当たる人物が亡くなったあの日も、そうだった。

葬儀に参列する為、アストレア家の屋敷にまで訪れたはいいものの、高熱を出して完全ダウンした俺は客室で一人眠りについていたのだ。

 

「こいつは?」

 

一応、『治癒術師』この世界で云う医者の人は近くに控えていた。だがこの時ばかりは両親も世話になった母への最後の挨拶を無下にするわけにもいかず、泣く泣く俺を預けて屋敷を離れていた。

 

「ハインケル様!ここへ、立ち入っては」

 

「あ?俺がこんなガキにまで当たるクソ野郎だっていいたいのか?ええ!?」

 

耳障りな男の喚き声、それとほんのり香るアルコールの匂い。

まさか飲んだくれのクソ親父が殴り込んできたとは夢にも思わない俺からしたら、混濁した意識の中、それだけの情報で思い起こされたのは熱を出して魘されていた菜月昴の手を握ってくれた、菜月賢一という世界一憧れる男の人だった。

 

「そうだ!思い出した!ナツミだ!俺の息子に剣聖の座を奪われた妹様の娘じゃねぇか!良い面してるぜ!お袋に似てる。…チッ、アイツに似てどうせ天才なんだろうよ。何だ?お前はどんな加護を持ってるんだ?精霊に愛されてるのか?それともこんな細腕で俺の手を握りつぶしたり出来るのか?は!俺だって、少しぐらい親父の剣の腕を継いでいればこんなことには!!!」

 

『父さん』

 

無意識にハインケルの手を握りしめて、俺は泣いていたらしい。 

病に冒された手は熱く、か弱いながらも必死に生きようという力強い意思を感じたそうだ。

 

「あ……分かってるんだよ。分かってるんだ……クソ、クソクソ……母さん……ごめんなさい」

 

実の息子には看病の一つもしてやる必要すらなかった彼には、それは衝撃だったらしい。

親が守ってやるべき子供がそこには居たのだ。

頭を掻きむしる。けれど捕まれた手は決して振りほどこうとせず、ハインケルというどこまでも無力な男は泣きごとを漏らし続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何とか逃げ延びた俺たち。

ユリウスも俺も傷だらけで、お互い良く生き残れたもんだと笑いあった。

 

 

しかし、

 

……俺の手首、魔獣に噛まれたのはユリウスも同じだが、“呪い”を掛けられていたとか何とかで、治癒術士の姉ちゃんが気づかなければ今頃ポッくり逝っていたらしい。

 

ユリウスの家柄は地位的な意味で俺よりだいぶ低かったらしく本家の奴らはそれにカンカンで、ユリウスは俺の目の前で罵声を浴びせられ激しい折檻を受けていた。

 

 

「まてよ!ゆりうすにたのんだのはおれッ…わたしの責任だから!ゆりうすは何もッ!」

 

元はと言えば、俺も悪いんだし弁解ぐらいさせて欲しかった。いや、するべきだったし俺は声を上げたんだ。

だけど、あの野郎……

 

 

「…何で、あそこで微精霊使って黙らすのかねぇ~」

「うひゃー、フェリちゃんこれにはユリウスに同情せざるをえないにゃ」

「あぁん?どういうことだよ」

 

十五年の月日が経ち、俺もアイツもすっかり大人の仲間入りを果たした頃。

言葉使いやマナーがなんだと五月蝿い連中とは違い、素の状態で話せる数少ない友人の一人フェリスは呆れたように首をふる。

 

 

ちなみに、言葉使いどころか見た目、仕草共に完璧な美少女であるこいつは男である。前世でいう男の娘という奴だ。

 

ユリウスとは違い、治癒術師の爺さんの弟子とその"実験台"として出会い、すぐに打ち解けた俺達だが、彼方には騎士という立場があるため、いくら訂正しようと変えようとしない堅苦しい話口調に、少しムカムカしていた。

 

まぁクルシュさんの騎士になって…あることが切っ掛けで今みたいになったんだが、こいつがユリウスに同情?何の冗談だ?

 

 

「いいですかナツミ様、ユリウスは貴方の事を」

「おいっ止めろ。お前にまで堅苦しくいられたら痒すぎて死ねる」

「……何か、二人の仲が進展しない理由が分かった気がするにゃ」

 

フェリスは一人納得し、冷えきった紅茶を飲む。

 

「ナっちゃんって、ユリウスが未だに敬語使っているのはどう思ってる?」

 

 

「――嫌がらせ?」

 

 

 

(うにゃ……コレは脈なしにゃ。第一ナツミ様がユリウスに好意を寄せるイベントなんて欠片もないのに、あのバカは何一人勝手に納得してるんだか)

 

 

フェリスは一人の男を思い浮かべてため息をついた。

薄々気付いてはいたが、やはりナツミ嬢はユリウスの事を完全に友人と割りきっているのだろう。

しかし……あのバカはナツミ様が未だにフリーな事をいいことに完全に脈ありだと思い込んでいる。

 

『騎士として仕える事が出来なくなった以上、私はナツミを娶るべきなのでは?』

 

真顔であんな事を言ってきた時は必死に堪えたものだが、今度あったらぶん殴ってやろうかな?

 

フェリスは思った。

 

 

 

 


 

ユリウス(21歳)

ナツミ嬢を傷物にした責任もあるし、騎士として支える事が出来なくなった以上、最終的には娶るしかないと思っている。

別に下心があるわけではない。気付いてないとも言う。

騎士として支えることが出来ないのは原作同様アナスタシアの騎士になったから

 

ナツミ嬢(17歳)

男と結婚とかあり得ねぇ。つぅか本来のナツミ・シュバルツを取り戻すことと元の世界に帰ることを諦めていない。心は男の子。ウルガルムの呪いあり。

ユリウスはずっ友。

こう見えて公務員

 

ハインケル

ユリウスをナツミの目の前でボコボコにした人。ラインハルトが生まれなければ次期剣聖は妹がなると思っていた、周囲にもそう思われていた可哀想な人。

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