Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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虚飾の宴

――夜分遅く、机に積まれた大量の書類から目を逸らしたナツミ・シュバルツは背もたれに体重を掛けて息を吐いた。

 

「はぁ……やっと終わった」

 

この世界に転移……いや、転生してから十七年。

 

 

少なくとも過去に日本人が転移又は転生しているのはカララギという国を知って確信したが、どうやってナツミシュバルツの本来の自我を取り戻して、元の世界への足掛かりを見つけようか悩んでいた俺はある人の助言でルグニカ王国の内部に入り込むことなった。

それでファザーやらマザーのコネを借りて軽犯罪等を取り締まる裁判官のポストをゲットすることになる。

裁判官と言えば出世出来ない。転勤マジ死ぬ、タスケテ……これはこの世界でも言われていて、散々止めとけと周囲に忠告されたが、デメリットを上回るメリットとして法律関係や過去の事件事故について調べる為に、王国秘蔵の重要書類を閲覧出来る権限を持っていたのだ。

 

転勤という形で働きながら各地の調査も出来るならむしろ一石二鳥ではないかと俺は意気揚々とこのポストについた。

 

……就いてしまった。

時刻は深夜の二時頃だろうか?

片付いた物とはいえ大量に積まれた書類の山には吐き気すら感じた。

 

元引きこもりの俺が言うのも何だが、この世界の公務員ってブラックすぎね?

 

この世界は労働基準法やら定時とかの概念がないから余計にそう感じるだけかもしれねぇけどよ、俺……役職的には裁判官だよな?

 

何で、騎士様方の武具の購入金、設備等の補修代、予算を細かく計算して赤字・脱税防止などに務めなければならんのだ。出来る出来ないは兎も角、専門外だぞ。

 

「……いくら、深刻な人手不足だからって……このままじゃやってらんねー!」

 

「それは仕方のない事だよ、()()()

 

 

ふわりと肩に手が置かれる。

 

突然の事にビクリと震え、そして紅茶の芳しい匂いが鼻腔をくすぐり、久しく呼ばれていなかったその名に気分が高揚していくのを俺は感じていた。

 

「女性の部屋にノックもなしに訪れるのは無作法だったかな?」

 

振り返ると赤毛の青年が二組のティーカップとクッキーの乗せられたお盆を片手に持ち、悪戯が成功した子供のような無邪気な笑みを浮かべている。

彼の名はラインハルト。この国最強の騎士にして現代の剣聖、そして気の置けない三歳上の従兄弟である。数少ない、と言っても自分から打ち明けた訳じゃないが俺が異世界転生者と知る男だ。

 

「ハッハッハ……やりやがったなぁ~ラインハルト君。いっくら懐の広いナツミ様と言えど今日という今日は許さないぞ?

お菓子でもつまみながら、お説教といこうか!」

 

「それは困ったな。騎士として断る訳にはいかないじゃないか」

 

「ひゅー!今夜は飲むぜ、酒持ってこいー!」

 

 

 

髪紐をほどき、自分で言いつつ戸棚からワインボトルを取り出すナツミ。あれ?そう言えば今の時期にこいつ王都に居たっけ?と疑問に思ったがまぁラインハルトだしルーラでも使って帰ってきたのだろうとコルクを飛ばして二人だけの飲み会を開始した。

 

「やはり、最後の席は貴女で決まりですね」

 

 

 

 

 

「――――ハッ!?」

 

 

目が覚めた時、ナツミ・シュバルツは自宅のベッドの上であった。

 

――ラインハルトを出迎えてから昨夜の記憶が全くない。

 

二日酔いのような頭痛と酷い渇きを覚えてナツミ嬢は水を呷る。

 

「女に産まれて十七年。己の危機管理能力の無さには一周回って誇りすらもっちゃいるが、記憶がないのは不味いだろ……俺」

 

ため息。

 

女に産まれ直してから男に興味など一切抱いた事はなく、男としての感覚が根強く残っている自分だが、男の前で記憶を失くすほど酔っ払う事が、どれ程危機感が足りていないと言われるかは理解している。

 

これが、聖人君子のラインハルトだから良かったものを、残念イケメンのユリウスなら魔がさして…流石にねぇな。

 

 

ナツミは、今日が休日であることを思いだしパジャマに着替えてもう一眠りしようとベッドに手をかける。

 

枕元には真っ黒な本が添えられており、寝ぼけて仕事場から持ち出してしまったのかと表紙を見て「…傲慢?」数枚捲ってみたがよくある宗教本みたいな文章が書きなぐられており、重要そうには見えず明日返しに行けばよいだろうと、テーブルの上に放置した。

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