Re:ナツミシュバルツは友達が欲しい   作:戻ってきたミュウ

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盗品屋

事今日に限って、道に迷ってしまうのは己の悪運からなのか。

日頃の行いは国民の生活を豊かにする素晴らしい物だと言うのに、納得がいかない。

こちとら半年以上の休みを削って睡眠時間すら曖昧曖昧で取ってると言うのに、やれ何々の責任者として顔を出せやら、ついでに仕事を置いていく図々しさとか……

 

(あたくし)、決めましたわ!賢人会は今日をもって解散とさせます!」

「おおー!やれやれ!ついでに俺たちの給料増やしてくれー!」

 

「あの無能どもに鉄槌を!」

 

何年経っても及第点すら貰えない貴族口調を思いっきり崩して冗談半分、半分本気、ナツミ嬢はビールジョッキを片手に泡髭を拭った。

 

「ひっさしぶりだな!爺さん!店は繁盛してっか?」

 

「盗品屋にあるまじき大繁盛じゃわ!」

 

ハゲ頭の巨人――ロム爺は、俺たちからすれば立派な中華鍋を玩具のように指先で操り、ワシャワシャ食材を混ぜながら顔を真っ赤にしている。

 

「フェルト!あのクソ有り難てぇ迷惑な女王様に野菜炒め持ってけー!」

「たっく、いつからアタシはこの店のウェイターになったんだよ」

 

金髪の小柄な少女――フェルト。

おおよそ飲食店のウェイターには見えない何日も洗ってなさそうな服に赤マフラーをたなびかせる彼女はピリピリした匂いが鼻腔を擽る野菜炒めをナツミが腰かける卓上の上に下ろした。

 

「ほらよ、姉ちゃん」

 

「お、サンキュ~フェルト」

 

「うわっ……アタシが言えた義理じゃねえけど、姉ちゃん最後に風呂入ったの何時だ? 何かインク臭ぇ」

 

「マジかよ。お前に言われるとかもう終わりじゃん」

 

鼻を摘んであからさまに臭うというリアクションをとるフェルトに、これでも湯浴みの時間は毎日取るようにしているのに……と、腰辺りまである黒髪に鼻を近付けてナツミは顔をしかめた。

 

「確かに……お前ほどじゃねえがヤバイなこりゃ。城に行く前に気付けてよかったぜ」

 

「姉ちゃんは一々アタシを貶さねぇと会話も出来ねぇのか!?」

 

「ハッ何たって俺はこの国の最高責任者(仮)だからな。嘘は吐けねぇよ」

 

鼻を鳴らし野菜炒めをフォークで掻き込む。フェルトはまだ何か言いたげだったが爺さんのお呼びが掛かって退散しちまった。

 

「……しっかし、手付かずだった貧民街の開拓がここまですんなり進むなんてな」

 

小さい頃にはよくここを訪れたが、あまりに様変わりしていたモノだから、この店を見付けるまでここが貧民街だと分からなかった。

 

人は活気に満ち、廃屋は潰されてあっちこっちで新築物が建造される、何というか…金山の回りに人が集まって街が出来るっていう古いアメリカ映画の開拓地みたいな感じ?

 

意図してここまでやったつもりはない。ただ色々と任されることが多くなって、少しでも節約しようと貧乏性に駆られて商会の人と交渉してたら、結構な額の金が余ってしまったのだ。こういうあぶれた予算は還元する必要があるらしいが、その手続きがまた面倒で余計な仕事を増やしてしまったと頭を抱えていたところ新規事業につぎ込むならOKという話を聞いた。

そこで前世で聞き齧った偉い政治家さんの考えを丸パクリして貧民街の開拓資金に回していたらご覧の有り様だ。

 

「反対とかされると思ったんだけどな」

「嬢ちゃん以外ならそうなっとったろう。上手いこと言いくるめて儂らを追い出す気なんだろうと猛反対した光景が目に浮かぶわい。じゃがここでは信用が命。山猿みたいに小さい頃からここで遊び呆けていた嬢ちゃんなら悪いようにはせんだろうと、まぁ失敗したらしたらで散々からかってやろうとでも思ったんじゃろう」

「期待はされてなかったのかよ」

「ま、日頃の行いってやつだな。それはそうと姉ちゃん、これから城に行くってのに何でわざわざ貧民街なんかに来てんだ?ロム爺の盗品屋が目当てなら他を当たった方がいいと思うぜ」

 

追加のメニューを運びながらフェルトだ。

ほんと……まさかこの盗品屋が飯所になってるなんて思いもしなかったぜ。

 

「爺さんの飯はまぁまぁだけどな」

「余計なお世話じゃ!」

「ま、冗談はさておき。これ見たことあるか?」

 

ナツミが取り出したのは徽章である。

 

「何だこれは?」

「ま、知らなくて当然か。簡単に言うと龍の巫女、王選候補者が誰であるか握ったら光って教えてくれる便利アイテムだ。賢人会のやつらがいい加減最後の一人が見つからないことに痺れを切らしたみたいでな。俺の知り合いに片っ端から触らせてこいって持たされたわけ」

「持たされたって、姉ちゃんで光ってないってことは資格なしって訳だろ。姉ちゃんで無理なら他の候補者ってどんな化け物なんだよ」

「よく分からないけど龍の巫女って言うぐらいだし精霊術師みたいに素質があるんじゃないか?もしくは神龍ボルカニカの好きなタイプで決めてるとか。どうだ、薔薇色の人生を夢見てお前も挑戦しとくか?」

「遠慮しとく。王様になってもやりたいことなんてねェし、姉ちゃんの話を聞いたら余計なりたくなくなった」

「そんなこと言わずに触ってみろって。こう見えて俺友達少ないんだよ。見つからないにしても、ちゃんと探してなかったなんて後からバレたらなんて言われるか分かったもんじゃねぇ。もしお前が候補者になったら俺が後ろ盾になってやるし、騎士を付けたいなら飛びっきりのやつを用意してやる」

 

まぁ偶々貧民街に住む少女が選ばれし者だったなんて物語じゃあるまいし有るわけがない話だ。

ちゃんと探しましたよ、というアピールでしかない。

フェルトもフェルトでその事は分かっているので、嫌がりつつもそれなりに付き合いのある相手からの頼み事だ。

触るだけだぞ、とナツミから徽章を奪い取る。

 

 

 

 

 

 

 

ピカーンと徽章が光った。

 

「なんか、光ってるんだけど?」

 

 

「光ってるな」

 

こんな事って本当にあるんだな。

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