異世界迷宮の英雄に! 作:チワワ
買ったゲームが思っていたのと違う。
そんな思いをした事はあるだろうか。
RPGだと思っていたのにボス戦だけ音ゲーになってクリア出来なかったとか。
アクションを楽しみたいのに謎解きが難しすぎて進められないとか。
今の俺はそういう気分だった。
「迷宮ハクスラ(R18)だと思っていたのに村経営シミュレーションだったでござる」
いや好きだよ? シム何とかとか。何とか列車とか。
でもほら。思っていたのと違うと……なんか、ね。
ちょっと悩みどころなのである。
この村の現状はとても悪い。
人口は約50人。男は60代10人、50代5人、40、30、20代が居なくて、15歳以下の未成年が5人。
女も似たようなものだが、20代が10人いるところが違いだろうか。
若干のズレはあるが、概ねこんなところだ。
食料生産は何とかなっている。漁に出れば50人がその日に食べる量が獲れるらしい。家庭菜園レベルなら野菜も育てる事が出来る。
今なら魔物の活動も低下し、大規模な畑も作っていける様になった。
だが産業、商業は壊滅している。
そういったものに従事出来る余裕がとにかくない。
魚の干物などを作って行商人に売るのがせいぜいだが、必要な物を購入すれば儲けなど出ず、ほぼ物々交換をしているだけとなるそうだ。
とにかくギリギリ。
今は何とか生きていけるレベルを低空飛行で維持している。
良いところをあげるとするなら、村人達の団結力だろうか。
今この村に残っている人達には様々な思いがある。
それは今残っている本人達だけの思いではなく、親が遺した思いだったり、子が遺した思いだったりだ。
そんな人達の村であるからこそ、この村を守りたいという強い目的意識があり、仲間意識がある。
これらの気持ちは、きっとどこかで役に立っていくだろう。
俺はそんな村に来た。
別に村人達のような強い思いは無い。
でもまあ物語の主人公の様に、NAISEIとか頑張っちゃってもいいかなーと考えちゃったりはする。
とは言え、俺に内政能力なぞない。
力になってあげたくても、どうするのが良いのかサッパリである。
だからまあ……俺の出来る事と言えば。ひたすらに迷宮に潜ることだ。
迷宮には何でもある。
食料も、生活に使える素材も。そして不要な物はすぐ換金出来る。
強くなり、迷宮に深く潜ること。
それが俺の仕事だ。
「あれ? じゃあやはり迷宮ハクスラなのでは……?」
なんだ、悩む必要無かった。
イエイ。
……などと、考え事をしながらもパーン周回を続ける。
すっかり慣れたものだ。
昨日の二階層でレベルをずいぶん上げたおかげもあるだろう。
経験値20倍と1/10をつけていたからな。
探索者Lv20、剣士Lv19、僧侶Lv17、魔法使いLv17だ。戦士はつけていなかったのでLv11。
一日で5つも6つもレベルが上がるとか、チートすぎる。
まあ原作では僧侶や薬草採取士の実験で、経験値10倍で10匹倒すとLv1からLv2に上がっていた。
それを考えれば妥当なのかもしれない。
パーン狩りがあんまり余裕なのでジョブから戦士を外して、トレイアの街での買い物で手に入れた商人をつけて戦ったりもした。
いつの間にか一階層のボスはスラッシュだけでも二発で倒せるようになっていた。
いい調子だ。
午前いっぱいをずっとパーンを狩る時間にあてたおかげで、ヤギの肉は村人全員分以上の数を確保できた。
しかし経験値10倍をつけていたが、商人以外はレベルがほとんど上がらなかった。
やはりデュランダルはしまわないと、そろそろ強くなりにくいようだ。
毒攻撃をしてくる相手でなければもっと積極的に戦えるのだが……。
迷宮を出て昼食前に村長に会いに行く。
ヤギの肉を渡そうとしたら、なんか遠慮してたのでミレーナさんに言ったことをまた適当に説明した。
この村の人は本当に義理堅くて良いね。
何かもらってもそれを当然と思う事は良くないからね。その調子で頼むぞ。
昼食後はミンと迷宮へ行き、二階層を探索する。
ボス部屋はまだ見つけていなかったが、一時間ほどで見つけることができた。
ニートアントのボスはハントアント。恐らく簡単に倒せるはずだ。
ボス部屋に入ると煙が部屋の中心に集まっていく。
一階層で散々見た。
俺とミンは打ち合わせた通りに直ぐに接敵していく。
先制のスラッシュ&ラッシュの振り下ろしが入り、
ハントアントが攻撃してこようとしたところでもう一発。
「やっぱり二撃。凄いですカズト様」
「ミンと二階層をまわったおかげだな。あれのおかげで強くなれた」
ハントアントが倒れたあとには、透明な膜で覆われた何かの液体が残った。
なんだこれ?
ギ酸
「ギ酸というらしい。ミンはわかるか?」
「ぎさん? すいませんわかりません」
「そうか。後でミレーナさんに聞いてみよう」
今日の目的は三階層だ。ドロップ品については気にしなくていいだろう。
「三階層の敵が何かは分からないが、基本は二階層と同じだ。アリ以外はミンが引きつけてくれ」
「わかりました」
三階層につき、入り口の小部屋で軽く打ち合わせをする。
ただの打撃は怖くない。怖いのは状態異常を起こすアリだけだ。
そして弱点の水魔法で攻撃する限りは三階層でも近づく前に倒せるだろう。
念の為にデュランダルは出したし油断はしないつもりだが、問題なく攻略できるはずだ。
少し歩くと、三階層の敵があらわれた。
ニートアント Lv3
スパイスパイダー Lv3
「また毒持ちかよ!」
「ウォーターストーム!」
ニートアントは予測したように2発で倒れた。
だがまだスパイスパイダーは近づいてくる。
次にウォーターボールをぶつけたが、それでも倒れない。
そしてお互いの攻撃が届く距離になり、接近戦が始まる。
残り少ない体力ではデュランダルの一撃を耐えることなどできるわけもない。
あっさり倒す事は出来た。
「凄いです、カズト様。この階層もすぐ抜けられそうですね」
ミンが褒めてくれたが、俺は素直に喜べない。
この階層で現れるのはエスケープゴート、ニートアント、スパイスパイダー。
ニートアントは近づいてくる前に倒せる。エスケープゴートも近づいてくる前に逃げ出すから、接近戦にはならない。
だが毒を持っているスパイスパイダーとは接近戦を行う必要がある。
毒消し丸はある。そもそも毒になる確率も低い。二人いればどちらかが毒になってもすぐに治せる。
冷静に考えるなら、この階層で戦えると判断できる。
「今日は二階層で戦おう」
ワンドを買って魔法の威力を上げよう。
ワンドで足りなければ二階層でレベルを上げて、とにかく毒持ちが近づけないようにしたい。
そのためにも二階層でしばらく金を稼ぐと、俺はミンにそう話した。
「わかりました」
ミンにとっては少々退屈だが、受け入れてもらった。
慌てる必要はない。装備を整える事はこの先の事を考えても必要な事だ。
結晶化64倍を中心に、経験値10倍、フィフスジョブなどをつける。
トレイアの街で市がたったのは三日前。次は明後日だ。
今日と明日は午前中はパーン、午後はアリを狩って過ごそう。
結果、一万ナールで売れる緑魔結晶を手に入れることに成功した。
ワンド以外でも色々と装備を充実させられそうだ。
やはりしっかりと計画を立ててから行動すべきだな。
冷静な思考は生存に直結する。俺はまた一つ学んだ。
ドロップ品について(ネタバレあり)
先の展開が予想できてしまうドロップ品について少し書かせて下さい。
なんでかと言うとエタったら書けないので今のうちにネタ供養しておきたかったので(生前葬かな?)
今回ハントアントがドロップした、ギ酸
原作では描写されていない拙作の独自設定です
(他の二次創作の方もひょっとしたら書いてるかもしれませんが、私は他の方の作品をあまり読んでいなくて……もし被っていたら、同じ事考えたんだなあと笑って下さい)
ギ酸(蟻酸)
ギルドへの売値 40ナール
道具屋などで商人から購入する時は160ナール
用途 皮を一晩漬けると革になる
これはシザーリザードが革をドロップするが、それだとあまりにも遅いと考えた為です。
皮より強い程度で値段も安いのにランク3の敵からドロップとか意味わからんし。ランク1のボスくらいが妥当だなと。
ハチノスから直接革を落としても良かったのですが、ギ酸をググってみたら皮を鞣して革にするのに使うらしいので、せっかくなので設定しました。
(本当はタンニンの方が有名だと思ったのですが、タンニン落としそうな敵がいなかった)
同様に銅についても早めに解決させます。
ケトルマーメイドから青銅をドロップさせ、銅の剣などは実は銅からではなく青銅から作る事にしました。
地球の歴史的には青銅の武器→鉄の武器と進んでいますし。ブロンズソードはあってもカッパーソードは聞かないし。その方が良いかなって。
あと鍛冶師の修行は皮→革→板らしいので板→青銅なら不自然じゃないなと。
硬革、つまりハードレザー装備は革と蜜蝋を消費して作ります。
革を硬くするには湯で煮るらしい(調べたらキュイルボイル、ボイルドレザーなどの名前だそうです)のですが、蝋で煮込む方法もあるそうです。
鋼鉄はどうするか現時点で考えてません。
セリーが「鉄から鋼鉄は作れない」って言ってるし何かのドロップが自然なのでしょうか。
鍛冶師の秘伝とかでセリーが知らなかっただけにしても良いですが……。
以上、ネタ供養でした