異世界迷宮の英雄に!   作:チワワ

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次話は31日0時投稿です


14-再度の盗賊襲来

「じゃあ行ってきます」

「はい。行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃい」

 

午前中をいつものパーン狩りで過ごし、昼食を食べてトレイアの街に出発。

歩けば一日かかる距離でもワープを使えば一瞬。

 

……時空間魔法って本当にヤバいな。22世紀の某青いタヌキの秘密道具並みじゃん。

たった100〜200ナールで街から街へ移動させてくれるとか価格破壊もいいところでは? どうなってるんだこの世界は。

 

 

冒険者ギルドに着いたが、相変わらず人が少なかった。

受付さんが一人と……この間は居なかった冒険者が一人。

どこからか来て、休んでいる最中の様子だ。

俺はキャラクター再設定から買取額30%アップをつけて、300を超える毒針と緑魔結晶を受付に提出する。

 

ドキドキしながら待つと、受付さんがトレイに硬貨を載せて運んでくる。

金貨が一枚と、銀貨が約70枚、あと銅貨もいっぱい。

 

これだけあればワンドより上の、漫画版で登場していたケーンも買えるかも知れない。

でもそろそろ防具も色々と欲しい。

調味料もあれば食生活が充実する。

ああ欲しい物がいっぱいだ。早く市へ行こう。

 

 

市をうろつくことしばし、武器の店を見つけた。

ちゃんと店主も商人だ。

キャラクター再設定を開き、30%値引きになっている事を確認して商品を見る。

 

「何を探してるんだ?」

「ワンドやケーンなんかの魔法使い用の装備だな。いくらだ?」

「ワンドなら三千。ケーンなら一万二千だよ」

「なるほど。……ついでにそこの銅の剣はいくらだ?」

「千だな」

「……よし。ケーンと銅の剣をくれ」

「わかった。ならあんたは今日魔法使いの装備を買ってくれた初めての客だし、九千百ナールでいい」

 

手持ちは一万七千程度しかないので買うか悩んだが、装備は強い方が良い。

強ければ上の階層でも使えるわけだしな。

俺は金貨を一枚渡し、銀貨九枚の釣りをもらった。

それにしても三割引スキルの値引き理由、いつもなんか適当に思えるんだよな……。

 

その後は防具を売っている商人を見つけて皮の装備を二人分揃えた。

皮の帽子、皮の鎧とジャケット、皮のミトン、皮の靴だ。

今のところ大した被弾もないので保険程度だ。

 

……それにしても、どの装備も本当にしっかりと作られている。

これを手作業で作れば何日かかるやら。

 

こういうところがあるから、どうにもゲーム気分が抜けないんだよな。

まあ迷宮なんて恐ろしいところに潜るなら、ゲーム気分は悪い事とは言えないが。

楽しんでないとやってられない部分はある。

 

 

あとは鍋や針や糸や布やなどの雑貨だ。

頼まれた物を買っていく。

 

……うーむ、この間はリボンを買ってプレゼントしたわけだが。今日も何か買ってあげたいなあ。

何が良いだろう。装飾品だろうか。指輪? ネックレス? イヤリング?

 

そういえば、原作だとロクサーヌからセリーへブラシをプレゼントしていたな。

昔の日本でも櫛の贈り物は割と一般的だった気がする。

 

探してみるか。

 

「贈り物ならば、こちらのタルエムの櫛はいかがですか?」

「へえ。タルエム」

 

原作でも聞いた名前だなぁ。

たしかエルフの領で採れる上質の木材だったはずだ。

木材の良し悪しなんて分からないが、白い見た目は悪くないように思える。

値段も百ナールと手頃だったので、買うことにした。

喜んでもらえるかなあ。

 

 

なんだかんだで二時間くらいかかってしまった気がする。

そろそろ村に戻るか。

 

 

「ただいま」

「おかえりなさいませ」

 

家に戻ると、すぐにミレーナさんが荷物を受け取りに来た。

パーティーを組んでいるおかげで、お互いの居る場所はすぐにわかる。

ミンは外で仕事みたいだ。

 

「頼まれていた物はコレだな。……それと、こんな物を見つけた。良かったら使って欲しい」

「まあ。……ありがとうございます。ミンと使わせていただきますね」

 

笑顔で受け取ってもらえた。

良い選択だったようでホッとする。

 

 

……買った物をしまっているミレーナさんを後ろから眺める。

 

良い女性だよな。

色んな意味でそう思う。

 

俺はそっと後ろから近づいて抱きしめた。

 

「今、忙しいか?」

「……まだ日は出ていますよ?」

 

俺はそっと離れると、パタンと窓を閉めた。

 

「たったいま、日は落ちた」

 

 

幸福感。

ベッドで彼女を抱きしめていると、頭の奥から何やら分泌されているのを感じる。

セロトニンだっけ? ドーパミン? テトラヒドロカンナビノール?

よくわかんないけどまあいいや。

 

 

「ミンが帰って来そうですね」

 

ぼんやりとしているとそう声をかけられた。

本当だ。ミンがこっちに向かって来る。

ベッドから降りてすぐに服を着て、何とかミンが帰ってくるのに間に合わせた。

 

玄関まで行き、ちょうどドアを開けたところでミンが帰ってきた。

 

ん? 後ろに誰かいるな?

 

「ただいま。お客さん連れてきました」

「お邪魔します! 僕は」

 

俺はそいつが何か言う前に、無意識に鑑定を発動させていた。

 

リビラ ♀:15歳

盗賊:Lv1

 

結果を見て、俺はすぐにミンの腕を引いた。

 

「え?」

 

戸惑うミンを後ろにかばいながら、キャラクター再設定画面を開いて武器と防具を装備する。

 

「あの?」

 

盗賊の女は自分が盗賊とバレている事に気付いていないのだろう。戸惑った声を出していた。

俺も鑑定を見なければそう思わなかっただろう。

盗賊の女は身長が低く、胸がデカかった。いわゆるロリ巨乳。

まだ幼さの残るその顔立ちからは、盗賊とはとても思えない。ただの美少女だ。

 

だがつまり、それこそが狙いなのだろう。

油断させて奇襲をかける。

レベルの低さから見て、本命の盗賊がどこかに隠れていると見て間違いない。

 

俺は慎重に周りに注意を払いながらも剣を突きつけた。

 

「おい盗賊。正直に言えば命だけは助けてやる。何のつもりか言え」

「ボ、僕は……」

 

剣を突きつけられて怯えたのか、中々口を開かない。

いや、これも演技か?

 

もう殺した方が良いか?

 

「カズト様! その人、騎士団だって言ってました」

 

剣を押し込もうとするその一瞬前に、ミンが声を上げた。

 

「いや、こいつは盗賊だ。確実に。俺にはわかる」

 

そう断じる俺に、盗賊は抗議してきた。

 

「盗賊ではありません!! 僕は本当にトレイアの街の騎士団の者です」

「ハッ。嘘は通用しない」

「嘘ではありません!!」

 

「カズト様」

 

平行線をたどる俺達の言い合いに、ミレーナさんが待ったをかけた。

 

「なぜ、その……そちらの方が盗賊であると思ったのでしょうか?」

 

むう。

第三者からすれば、俺の鑑定は伝わらないからな。

ミレーナさんが疑問に思うのは当然か。

ここにもしミンとミレーナさんの二人がいるだけなら全て正直に話すが、目の前の盗賊と他にも何かいる可能性を考えれば、多少ぼかした説明にすべきか。

 

「俺にはわかるからだ。確実にな」

「……なるほど」

 

ミレーナさんは納得したが、また盗賊が抗議してきた。

 

「いやなるほどじゃないですよ! し、証拠があります! 騎士団の団員証を見て下さい」

「そんなの盗んだだけだろう」

「くっ……。ではインテリジェンスカードを! この村にも村長がいるでしょう! 村長が確認すればわかるはずです!!」

「なるほどそれは確実だな。お前が盗賊だということがわかる……ん?」

 

なんでインテリジェンスカードなんて言うんだ?

そんなもの出したら自分が盗賊だとバレるだけじゃないか。

 

「ひょっとして、お前、自分が盗賊じゃないとか思っているのか?」

「は? 当然でしょう」

 

んんん?

念のためにもう一度鑑定してみたが、やはりこいつは盗賊だ。

自分で気が付かない内に盗賊になったって事か?

 

「ミレーナさん。自分が気付かない内に盗賊になるって事は有り得る?」

「ええと……法に則らずに人を殺したり、物を盗めば自動的に盗賊になるはずです」

「ふうん……。おい、殺したり盗んだ記憶は?」

 

尋ねると、何だか盗賊の女の顔色が悪くなっていた。

 

「ぬ、盗んだ訳では……騎士団の倉庫から備品を借りただけです」

「……ちゃんと正式な手続きはとったか?」

「……」

「……村長のところでインテリジェンスカードを確認する。お前の処遇は村長と相談して決めるとしよう」

 

盗賊の女は力なくうなずいた。

 

なんなんだコイツは……?

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