異世界迷宮の英雄に!   作:チワワ

19 / 32
17-三人目の奴隷(確定)

午前のボス狩りを終えて、午後。

予定通りにミンと三階層に来た。

 

装備を整え、俺は武器としてケーンを持った。

ワンドより高性能と思われるこの杖で、三階層の魔物を近づく前に倒すことが出来るのは疑っていない。

だがそれはそれとして、防具もしっかり身につける。

皮の帽子、皮の鎧、皮のミトン、皮の靴だ。

ミンは同じような防具だが、皮の鎧の代わりに皮のジャケット。武器は両手剣の鉄の剣だ。

これで俺達もようやく探索者らしい格好になった。

 

三階層をうろつけば、すぐに会敵する。

ニートアントとスパイスパイダーだ。御誂え向きというヤツだな。

 

「ウォーターストーム」

 

水の嵐が二匹を包む。

魔物たちはダメージを無視して進んできたが、もう一撃ウォーターストームを唱えればニートアントの方は倒れた。

 

「ウォーターボール」

 

あと数メートルに迫ったところで三回目の魔法をぶつける。

 

スパイスパイダーも倒れた。

 

「やりました、カズト様!」

「装備を強化した甲斐があった。四階層もこの調子だと良いんだが」

 

言いながら、俺はドロップ品を拾った。

ニートアントからは毒針を。そしてスパイスパイダーからはスパイフラワーを手に入れた。

 

 

スパイスパイダーのボスはスパイススパイダー。

早口言葉というか間違い探しというか……ともあれ間違えやすいこの名前の、ボスの方からはスパイスであるペッパーがとれる。これは原作でそうだった。

 

俺はスパイスパイダーの方からも何らかの香辛料がとれると予想していたのだが、実際に現れたのはスパイフラワーだった。

見た目は灰色の粒の中に黒い粒が入り込んでいる様で、フラワー、つまり小麦粉にはとても見えなかった。袋詰めした海岸の砂かと思ったものだ。

 

最初にこれを入手した時にミレーナさんに見せたのだが、ニセ小麦だと言われた。

 

小麦よりも寒い場所で作られる、小麦に似た形の作物があるらしい。それがニセ小麦。

小麦粉のようにパンにしようとしてもあまり膨らまず、見た目も黒く、味も酸味があってあまり美味しくはないらしい。

とはいえ全く食べられないというわけでもなく、スープに浸すなど工夫すればいいらしい。

 

「つまり、これをたくさん入手すれば、また村の食卓が豊かになるというわけだ」

「すごいですカズト様!」

 

ま、探索はどちらにせよするわけだが、やる気の出るドロップだったのは良いことだ。

毒や魔物部屋には気をつけないと危険だがな。

俺達は注意深く、ボス部屋を探しつつ、スパイフラワーを集め続けた。

 

 

「その、これだけだとパンは作れないのです」

 

ミレーナさんの現実を告げる言葉に俺は崩れ落ちた。

いっぱい獲ってきたのに……。

 

「申し訳ありません。必要なものをしっかりお伝えすべきでした」

「イイヨ。勝手に期待した俺が悪いダケダヨ」

「ええと……次の市の時に必要な物を買えば、村でパンが作れますので」

「4日後か……」

 

市より先に、次の階層でコボルトが出て、コボルトフラワーが大量にとれたりしてな。

 

 

「じゃ、トレイアに行ってくる」

「はい。お帰りをお待ちしております」

「いってらっしゃい、カズト様」

 

ミレーナさんとミンに見送られ、リビラを迎えるためにワープでトレイアの街に移動した。

ついでに冒険者ギルドでスパイフラワーなどのドロップ品の換金もしておく。

今日は千ナール強の稼ぎだ。

 

ドロップ品の金額は1〜11階層はどの敵もあまり変わらないらしい。

まあ、ある迷宮では1階層でドロップする品が、ある迷宮では11階層で出る事もあるし、その逆もある。

どんなドロップ品でも1階層で安全に獲れるならば、値段が安く設定されるのは仕方のない事なのだろう。

 

 

騎士団の詰所に着くと、今日はじいさんとは別の騎士が立っていた。

 

「ザクリのじ……ザクリさんはいるか。カズトが来たと伝えてほしいんだが」

「ああ、聞いている。ついてこい」

 

案内され、中へ入っていく。

途中で団員らしい人達とすれ違うが、騎士以外のジョブに就いている者もかなり多かった。

迷宮に挑むには役割分担が必要という証左だろう。

 

「ここだ。中で待っていろ」

 

案内されたのは応接室のようだ。

それなりに良い感じの椅子やテーブルが用意されてある。

値段とかはサッパリわからんが。

 

椅子に座ってふかふかさを楽しんでいると、さほど待たずにじいさんとリビラがやってきた。

 

「では、奴隷商に行くかの」

 

 

奴隷商の商店に着くと、嫌そうな顔の奴隷商人が待っていた。

 

いやごめんて。

今回も売り買いじゃなくて手続きだけで、大した金にならなくて悪いと思ってるから。

 

奴隷商では改めてリビラを奴隷にするにあたっての条件を確認された。

リビラは俺の命令を聞くこと、俺は迷宮に挑む事。あと衣食住は主人である俺が提供すること、奴隷の税金も払うこと。

 

「そういえばリビラのジョブはどうなっているんだ?」

「すでに探索者になっておる。罰として迷宮に挑む以上、十年はそのままでいてもらうぞ」

「もし変えたら?」

「即座に盗賊じゃ」

「なるほど。わかった」

 

原作のミリアと同じか。

ならパーティージョブ設定から勝手に変えられるな。

 

「……最後に。わしからの餞別じゃ」

 

そう言ってじいさんは木の盾をリビラに渡した。

 

防毒の木の盾 盾

スキル 毒防御

 

鑑定すると、スキル付きだと俺にはわかった。

 

「じいさん。そいつは……」

「防毒の木の盾。伝世の品じゃ。その子は盾の使い方が上手いでな、持たせてやってくれ」

「お、伯父さん! 私は奴隷です! それはいただけません」

 

リビラは慌てて返そうとするが、じいさんはニヤリと笑った。

 

「なあに気にするな。カズト殿ならば取り上げたりせず、お主に使わせてくれるじゃろうて。なあ?」

「いやらしいじいさんだな。とはいえ、それより強い装備が手に入った時には換えてもらうぞ」

「はっはっは。その時は売り飛ばして資金にして構わんぞ」

「だ、そうだ。リビラ、管理はお前に任せるぞ」

「……はい。伯父さん、ありがとう」

「うむ。お主がカズト殿と共に名声を得る日を楽しみにしとるぞ」

 

 

リビラとザクリのじいさんの別れを終え、俺達は冒険者ギルドへ向かった。

 

「さて、リビラ。俺は秘密を守れない奴はいらないと話したのは覚えているな?」

「はい。主様の秘密は誰にも漏らしません」

「……あるじさま?」

「はい。なにか?」

 

堅い呼び名だなーとは思ったが、元騎士団らしくて良いか。

 

「いや、うむ。リビラは俺の事を主様と呼ぶように」

「はい」

「さて。今から驚く様な事があっても、それを他人には言わないように」

「はい」

 

リビラが頷くのを見て、俺は詠唱をせずにパーティー編成を発動させる。

 

「え? あ、はい、パーティーに入ります。……い、今、詠唱されました……?」

「俺には必要ないから、しなかったな。それより、次だ」

 

冒険者ギルドに着いたので、今度はワープを発動させる。

 

「行くぞ。ちゃんとついてこいよ」

「は、はい。え? フィールドウォーク?」

 

ワープの移動先は俺達の家だ。

ミレーナさんもミンも今日の仕事を終えてゆっくりしていたが、俺とリビラを確認するとすぐに出迎えてくれた。

 

「おかえりなさいませ、カズト様」

「おかえりなさい」

「ただいま。

改めてお互いに紹介しよう。まずは一番奴隷のミレーナさんだ。戦いは行わず、家事を主に任せている」

「ミレーナです」

「はい。よろしくお願いします!」

「その娘のミン。ミンは俺と共に迷宮に行っている」

「よろしくです」

「よろしくお願いします! ……あの、本当にミンさんは迷宮に? かなり若いのでは?」

 

リビラは身長150センチくらいと小柄だが、ミンはさらに15センチ程低い。

異種族は年齢が分かりにくいとはいえ、子供と分かるのは当然だろう。

 

「ミンは10歳だが、この村を守るために自分から迷宮に入ることを決めた。素質もある」

「10歳の子が戦うなんて……」

 

リビラは顔をしかめた。

まあまともな倫理観を持っていれば未成年を戦わせたいとは思わないよな。

だがこの村の現状を考えれば、戦う意思がある人間を遊ばせる余裕はないんだ。それに……。

 

「ミンのジョブは英雄だ」

「は?」

 

リビラは宇宙の真理に触れた猫の様な顔をした。




お気に入り登録、感想、誤字報告、評価、ここすき、ありがとうございます。
どれも嬉しくてぴょんぴょんしてます。


前話で質問に答えていただきありがとうございました!
しばらくは前書き欄は開けておこうかと思います。


スパイフラワーのお話

スパイスパイダーの「スパイ」部分からドロップを設定しました。
現実にある作物を参考にしています。
元々は小麦と違う形だったのに、小麦畑に生える雑草として紛れている内に小麦そっくりの姿に進化していった、とかいうおもしろ経歴が好きです。


実際にスーパーに行って買ってみたのですが、やっぱ小麦より美味しくなく感じましたね。貧民の小麦とか言われてもなっとくです。
いやそんな事言うと北欧とかの農家さんに申し訳ないですが。でもなんか苦味あるしパサついた感じだし……。

まあパンじゃなくてお好み焼きみたいな感じにしただけなんですが。
小麦粉は水を加えて練るとそれだけで「生地!」って感じになるのに、なんかこう……泥団子みたいな見た目に……。
一応、健康にいいらしいし小麦粉を半分混ぜたらあんまり気にならなくなったんで、ぼちぼち消費していく所存です。
ウイスキーの原料になるらしいしうまく発酵して酒にならないかなぁとは思うんですが、さすがに実験したら酒税法違反になるしやめときました。


あと家族に「トゲトゲした食品て何かなぁ?」と聞いたら「トウガラシ?」と返ってきたのでスパイクスパイダーのドロップはトウガラシにします
たしかにトゲトゲした味してるよね……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。