異世界迷宮の英雄に!   作:チワワ

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18-唖然・茫然・吃驚・仰天

「英雄? 英雄って初代皇帝が就いた伝説の? 冗談ですよね?」

 

俺は優しく微笑んだ。

 

「なあリビラ。なんで俺が秘密を守れと何度も念を押したと思う?」

「……じゃあ……本当なんですか……」

 

リビラは驚きの目でミンを見たが、ミンは落ち着いていた。

 

「カズト様のほうが強いし、すごいです」

「そうなんですか?」

 

今度は俺を見つめるリビラ。

 

「まあ俺も現時点で魔物相手ならそれなりに強いな。

だが心の強さという点ではミレーナさんは俺より優れていると思う」

 

あっちこっち見回して、ついにリビラは天を仰いだ。

 

「なんだか凄いって事だけわかりました」

 

 

お互いの紹介も終わり、もうすぐ太陽も沈む時間なので寝床に案内した。

俺とミレーナさんとミンが寝ている家はもういっぱいなので、あらかじめ村長に別の家を用意してもらっている。こちらを本宅として別宅というわけだ。

パーティーメンバーはあと三人は増やすので、広めの家を用意してもらった。

 

……七人ぐらいで暮らせる家もあるそうなのだが、ミレーナさんとミンには元々の家がある。

引っ越しさせるのは少しためらわれたので、断った。

 

「明日、日が出る前にあっちの家に来い。朝食を一緒に作ってもらう。

そして朝食を食べ終えたら迷宮に行くから、そのつもりでな」

「はい。……あの」

「なんだ?」

「その……夜伽は良いのでしょうか。初めてですが、頑張ります」

 

俺がじっと見つめると、恥ずかしいのか、もじもじと体を動かしていた。

 

「今日のところはいい。それも明日からだ」

「えっ……そうなんですか?」

「今日はとにかくゆっくり休んで明日に備えろ。

おやすみさん」

「あ、はい。おやすみなさい」

 

 

「おかえりなさいませ。……こちらでよろしかったのですか?」

 

出迎えてくれたミレーナさんは、暗にリビラと同衾せずに良かったのかと問うてきた。

俺は頷きながらミンの様子をうかがった。パーティーを解散させていないから、どこにいるのかすぐわかる。

まだ寝てはいないようだが寝室にいるのを確認し、ミレーナさんを俺の寝室に誘った。

 

「……よろしいのですか?」

 

二度目の確認に、改めて頷く。

 

「ミレーナさんが一番だから」

 

 

何となく激しくする気分ではなく、お互いの隅々まで穏やかに触れる様な、あるいは口づけていく夜を過ごした。

 

 

「明日はリビラも初めてだし、ミレーナさんもあちらの家に来てくれ。出来るだけ安心できるようにしておきたいからな」

「わかりました」

「明後日からは順番であちらのベッドを使う。寝る時はここに戻る」

「順番……ですか」

「たまには複数人で過ごすこともあるかもしれないが、基本的に俺は一晩に一人がいい。これからもパーティーメンバーは増えるだろうが、一番として差配は頼む」

「……かしこまりました」

 

 

翌朝。

俺が起きる頃には既に三人共に起きていた。

 

「おはよう」

「おはようございます、カズト様」

「おはようございます」

「おはようございます、主様」

 

どうやらリビラもちゃんと寝られたようだ。すっきりした様子に見える。

 

日課の水魔法に取りかかる。

寝ぼけ眼でウォーターウォールを使い、水瓶を満たしていく。

ついでに顔も洗う。冷てえ。

 

「主様、今のは……」

「んあ? あー水魔法だが……?

あ、リビラは初めて見るのか。俺は攻撃魔法も使える」

「なんと……主様は凄いですね……」

「カズト様はすごいです」

 

驚くリビラの横で、ミンが楽しそうに言った。

 

 

四人で朝食の準備を行う。

どうやら包丁の扱いが上手いのはリビラ、ミレーナさん、ミン、俺の順のようだ。

……日本でも料理をしなかった訳ではないが、インスタントで済ませる事もあった。

それに対し毎食しっかりと作っているミレーナさんやミンに負けるのは当然なのだろう。悔しいが。

 

「しかし、リビラが一番包丁の扱いが上手いのは意外だな」

「僕が一番器用だったので、毎日の様にやらされました。騎士団では何十人分の芋の下拵えをする事もありました」

「……そいつは大変だ」

「主様こそ、料理は僕達に任せていただいて良いのではないですか? なぜわざわざ?」

「まあ……趣味だ」

 

嘘です。

本当はミチオ君の真似をしてるだけだよ。

日本の美味しい食べ物、作ってあげたいんだけどなあ。

 

 

朝食を終え、午前中は俺とリビラの二人で迷宮に行くことにした。

リビラはワープで家から直接迷宮に飛んだ事で驚いていたが、「内密にな」の一言で黙らせた。

リビラのジョブを改めて確認してみる。

村人Lv4、探索者Lv7、盗賊Lv1。

 

「実際のところ、どうなんだ? 魔物と戦った経験はどのくらいあるんだ?」

「騎士団では訓練ばかりでしたが、知り合いの方と一緒に街の外でよく戦っていました」

 

ということは、見た目で後方に回されていただけ……か?

ロクサーヌの様に、能力があっても使ってもらえない、なんて事は日本でもよく聞く話だ。

リビラもやる気はあるし、このレベルという事はかなりの数の戦闘経験があるのだろう。

 

「リビラはどうしたい? 将来は伯父のような聖騎士を目指すのか?」

 

俺としてはせっかくの竜人族だし竜騎士になってほしいが、リビラが憧れたのは聖騎士の伯父だ。となれば、ジョブも聖騎士にしたいかもしれない。

確認すると、だがリビラは表情を硬くしながら首を振った。

 

「僕は、竜騎士になりたいです」

「わかった。じゃあ竜騎士になってくれ」

「え?」

 

あっさり首肯する俺に、しかしリビラは驚きの声を上げた。

 

「どうした?」

「いえ。あの。……なれないとは、おっしゃらないのですね」

「……ああ。誰かに竜騎士は無理と言われたのか」

 

リビラは暗い顔でうなずいた。

なるほど。こうなったら最短で竜騎士を目指してもらおう。

俺はパーティージョブ設定を開き、リビラのジョブを村人にした。

 

「よし。細かい話は抜きだ。まずは戦うところを見せてくれ。で、剣はこれを使ってくれ」

 

デュランダルを呼び出して渡したが、リビラが驚いた顔をした。

 

「今のは……アイテムボックスですか?」

「ん? いや武器を出す……スキル? のようなものだ。色々出せるぞ」

 

言いながらボーナス武器や防具を出したりしまったりすると、リビラの顔がもはや引き攣っていた。

うーむ、ミンやミレーナさんはこんなに激しい反応をしなかったよな……?

騎士団にいた分、この力の非常識さが分かるからか?

 

「俺は色々な事が出来るが、これらは内密にするように。他人に知られてもいい事がないからな」

「そうなのですか? 力を示した方がトラブルは起きないと思うのですが」

「それは普通の探索者として示す分で行う。どうせトラブルはどこかで起きる。

ならばいざという時の切り札は隠し持つ方がやりやすい」

「なるほど……」

 

嘘です。

本当は「これが隠されし本当の力……」とか「内密にな」がやりたいだけです。

 

「さ、それじゃ一回層の敵はエスケープゴートだ。気楽にやってくれ」

「はい!」

 

エスケープゴートは十分少々で見つかった。

飛びかかってくるエスケープゴートに対し、まずは一撃とリビラは攻撃を加えた。

そしてエスケープゴートは逃げ出した。

 

「え?」

 

またもリビラが驚きで固まった。

動きを止めている隙にエスケープゴートは視界から外れる。

 

「一撃で逃げ出すなんて……」

「その剣はデュランダルといって、俺の持つ最高の剣だ」

「……主様は凄いですね」

 

んんー。褒めてもらうの気持ちいいれす。

 

竜騎士の習得条件のため、リビラにはもう一度エスケープゴートと戦わせ、今度はリビラが一対一で倒せた。

これでよし。

 

「後は俺がやる。午前中はパーンを相手にするだけだから、明日からは午前はミレーナさんと一緒に他の事をしてくれ」

「え? いえ、危険です! 僕もお供します!」

「いや危険は無いんだが……。まあ見れば分かるか。

とにかくついてこい。手出しはするなよ」

 

ボス部屋まで直行し、道中のエスケープゴートは一撃で、パーンは二撃で倒す。

 

「流石のデュランダルでも、ラッシュとスラッシュ抜きだと二撃では倒せん。真似しようと思わない様に」

 

振り返ると、リビラは固まっていた。

 

「……はい……真似しません」

 

そんなに驚かなくていいと思うんだがなぁ。




吃驚仰天を、きっきょうぎょうてん、ではなく、びっくりぎょうてん、だと思っていました。
いや間違いではないみたいだけど。


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