異世界迷宮の英雄に!   作:チワワ

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19-魔物を狩るだけの簡単なお仕事(アットホームな職場です)

午前はひたすらにパーンを狩る時間だ。

それは例えるなら食品工場でアルバイトがタンポポの花を乗せる仕事の如く、単調に行われる。

 

「やはり誰かといた方がいいな。話し相手がいると気晴らしになる」

「……そうですね」

 

リビラが硬い声で応えてくれた。

 

「単調な仕事になるほどにボスを狩るなんて、初めて見ました」

「そうなのか? ある程度鍛えた探索者なら、目当ての物を狙って狩り続ける事はあるんじゃないのか?」

「それを一人で行う人はいません」

 

うーむ。そんなものだろうか。

例えばオリハルコンの剣を持っていれば同じ様な事は出来るのでは?

いやオリハルコンの剣を持っていればもっと深い階層に潜ったほうが儲かるのか?

 

……まあいいか。

 

「よそはよそ、うちはうち」

 

雑にまとめると、リビラは天を仰いだ。

 

 

雑談混じりにパーンを狩り続けたが、時折リビラのレベルもチェックしていた。

二十匹ほど狩った頃、いよいよ村人のLvが5に上がった。

竜騎士のジョブチェンジ条件はこれで満たした。

パーティージョブ設定を開いてリビラのジョブを竜騎士に変えて……と、そこでふと思った。

 

どうせなら、お祝いとかしても良いんじゃないだろうか。

 

せっかく竜騎士になる夢が叶うんだ。

実際は一日で叶う夢だったとはいえ、本人としては様々な思いがあったに違いない。

あっさり竜騎士になりました、とするより、竜騎士になったよおめでとう、とする方が良いだろう。

俺への好感度も上がるだろうしな。

 

とすると、どうするか……。

ハマグリだのウサギの肉だの、原作で言及された迷宮産の祝いの品を今から自分で穫るのは難しい。

食品を扱う専門店があれば買えるのだが、この辺りにはない。

 

「主様? どうしました?」

 

ドロップ品のヤギ肉をしまって考え事にふける俺を見て、リビラが問いかけてきた。

 

「あー……いや、この辺りの街には食品を常に出している店はないかと思ってな」

「常設の食品店ですか? そうですね、あるとすればディラードの街でしょうか」

「ディラード?」

「トレイアから更に西へ行くと、ガドー領の中心都市のディラードがあります。領主様も住まわれる街で、そこならば様々な常設の店舗があるそうです」

「そうなのか。どんな物が売っているかは知っているか?」

「すみません、そこまではわかりません」

「そうか。ありがとう」

 

ふーむ。

とりあえず行ってみる価値はありそうだ。

 

「トレイアから行けるのか?」

「はい。日の出の頃と正午頃と日の入りの頃の三回、冒険者が回っています」

 

正午か。ならあとパーンを三十匹も狩ればちょうど良いぐらいの時間だろう。

 

 

迷宮を出ると、予定通りに太陽はまだ天頂に来ていなかった。あと一時間くらい余裕はありそうだ。

ミンは漁の手伝いに行っているようだし、ミレーナさんは畑にいるようだ。

好都合なのでリビラにはミンの手伝いを命じ、俺はミレーナさんのところへ行った。

 

 

「……とまあ、そういう訳で日が沈む頃にお祝いをしようと思う」

「わかりました。では昼食は量を少し減らしましょう。それと、お祝いということならお願いしたい食材が」

 

この辺りでは珍しいディナーだ。

ミレーナさんと作るものについてなどをしっかりと打ち合わせた。

原作ではウサギの肉が祝い事の際の食材とあったが、このあたりでも同じ様に扱っているらしい。

食品店にあると良いのだが。

 

 

……というか、ウサギの肉の方が美味しいらしいが、本当はヤギの肉も祝い事の食材らしい。

毎日獲ってきている俺には分からないが、日本で言うなら毎日寿司を食べている様なもの。

 

……まあ所変われば品変わる。

寿司だって漁村のこの村なら難しくはない。

だったら毎日ヤギの肉を食べてもおかしくはない……はずだ。多分。

 

 

昼食までには戻ると告げてトレイアの街の冒険者ギルドにワープで跳ぶと、ちょうど冒険者がいるところだった。

この前、見た顔だな。

 

「ディラードの街へ行きたいのだが、行けるか?」

「ええ大丈夫です。二百ナールいただきます」

 

銀貨を渡すと、冒険者はパーティー編成の呪文を唱え始めた。

あ、やべ、パーティー解散しないと。

パーティーを解散すると、ミレーナさん達との繋がりが切れる。

今までずっとお互いの場所を把握していただけに、解散すると何だか落ち着かないな。

 

 

ディラードの街の冒険者ギルドは、トレイアと違ってそれなりに賑わっていた。

まあトレイアは帝国の東の果てみたいな位置らしいし、田舎なんだろう。

ちなみにもう少し南に行くと原作でも出てきたザビルがあり、ペルマスクに跳べるらしい。

 

……そういえば日本から鏡を持ってきたけど、未だに売ってない。

鏡を買えるような財産のある客に伝手がないからだ。

もういっその事、家で使うか。そうしよそうしよ。

 

食料品店では様々な物を買うことが出来た。

今回は卵と牛乳、コボルトスクロースやコボルトフラワー、パン酵母とウサギの肉を買う。

魚醤も扱っていたので欲しかったが、今回は荷物になるので断念した。

まあ店は太陽の出ている時間は開店しているらしいので、明日買いに来れば良いだけだ。

 

 

買い物を終えて、ワープで家まで戻る。

うん、この位のMP消費なら負担にならないな。

買い物に一時間もかかっていないので、いつもの昼食の時間にはまだ早い。

早いが、何かするには中途半端すぎる時間だし、夕飯を食べる事を考えればもう昼食でも良いだろ。

 

「今日は夕方に軽く食事をとる。なので、今から昼食にしようと思う」

 

そう告げるとミンとリビラの二人は首をかしげていたが、故郷のちょっとした風習だとごまかした。

 

今日のメインは購入した卵を使って、ヤギ肉と野菜の卵炒め。

調味料は塩だけだが、ヤギ肉の脂とハーブの交わりが味を一段上に押し上げている。

 

「僕はこんな贅沢をいただいて良いのでしょうか……」

 

リビラがなんか言ってる。

そしてミレーナさんが質問をした。

 

「騎士団でもやはりヤギの肉は珍しいのですか?」

「はい。ガドー領では職務中のドロップ品は騎士団のものとなり、装備品の向上のための資金に充てられます。迷宮の討伐を目指すためにはスキル付きの武器などがどうしても必要ですから」

 

へえ。原作ではドロップ品は見つけた者に所有権があるとされてたと思うが。この辺じゃ違うのか。

 

俺も会話に加わる。

 

「そういえば、迷宮のボスは装備品を破壊してくるのだったか」

「はい。なので、補充のためにもドロップ品の私物化は認められません。

どうしても欲しい場合は休日を利用して私的に手に入れることになりますが、パーティーメンバーが揃うとは限りませんし、備品の持ち出しも認められません」

 

 

なるほどねぇ。

……そうすると、装備品の持ち出しは本当に結構なやらかしだったのでは……とは思ったが、蒸し返すのも可哀想なので俺は黙った。

つまりはそれほど焦ってしまったんだろう。

 

それに、

 

「美味しい……」

 

モノを食べる時は誰にも邪魔されず自由でなきゃあダメ……って話だしな。

ゆっくり味あわせてやろう。

 

 

リビラは本当に美味しそうに食べていた。




この世界は砂時計しかないクセに一時間とか正午とかロクサーヌが言ってるぞどうなってるんだ(ようやく気付いた)
いや確かにそう考えれば午前と午後もおかしいけどさあ……
表現に気を使ったのがアホみたいじゃないか……おかげで書き直しだよ……
お湯の沸くまで(五〜六分)、食事を作るまで(一時間)とか言いたかった……。


お気に入り登録、感想、評価、ここすき、誤字報告ありがとうございます。

特に誤字報告は今回いっぱいいただいてしまって……。
一部はわざと使っている表現もありましたが、九割は普通に間違いで勉強になります。ありがとうございます。
……それはそれとして自分の間違いに凹みます。


なんか日間ランキングに拙作があるのをみました。
ランキング入りを目的に書いているわけではありませんが、それはそれとして嬉しかったです。

これからもよろしくお願いします。
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