異世界迷宮の英雄に! 作:チワワ
昼食を終え、俺とミンとリビラの三人で迷宮の三階層へ来た。
既に三階層はミンと一緒にかなり回っている。ボス部屋もすぐに見つけて、四階層へ行けるようになるだろう。
戦い方も確立しているし、何も心配はいらない、のだが……。
「主様。やはり、防具は僕ではなく、主様が身につける方が……」
「迷宮に入る前に言っただろう。正面で迎え撃つ二人が優先だ」
俺が持っている防具は二組。前衛に渡せば俺が着る分はない。
どうせこの階層では魔物は二匹しか出ないし、二人が一匹ずつ受け持てば俺は攻撃を受ける事はない。
というか、そもそも攻撃魔法で接近前に倒せるのだし危険はない。
という事を迷宮に入る前に説明したのだが、リビラは未だ難色を示していた。
真面目だねえ。
「あえて言うが、リビラより俺の方が強いぞ。俺の探索者のレベルは今は22だ」
「22……僕より15も上……」
今のリビラは探索者Lv7じゃなくて竜騎士Lv3だけどな。
いずれにしても、ロクサーヌばりに技術でカバー出来るのでない限り、俺の方が強いというのは間違いないだろう。
「つまり、弱い方に防具が必要というわけだ。わかるな?」
「……はい」
リビラが悔しそうな顔をしている。
まあせっかく迷宮に挑むパーティーに入ったと思ったら、そこでも足手まとい扱い。それでは悔しくもなるだろう。
「リビラ。俺はお前に期待している」
「期待、ですか?」
「そうだ。いつか迷宮の奥深く……五十を超える階層に至った時、先頭に立って敵の攻撃を受け止めるのはお前だ」
「僕が……先頭……」
リビラの目がキラキラと輝き出した。
「その時のお前は、竜騎士として両手剣と大盾を構えているだろう」
「両手剣と……大盾……!」
「いつか迷宮の討伐を果たす時、パーティーの盾としての名声はお前が得る」
「パーティーの盾……!!」
「その時のためにも、今は鍛錬の時だ。つまらない傷を受けないためにも、しっかり防具は着けておけ」
「はいっ!!!」
やる気が出ててヨシッ。
一時間ほど三階層の探索を行うと、ボス部屋にたどり着いた。
「ボスは魔法ではなくデュランダルで戦っている。詠唱中断があるからな。
正面からの攻撃は、リビラが受け持ってくれ」
「お任せ下さい!」
「俺は右側から、ミンは左側からの攻撃だ。慎重にいくぞ」
「はい!」
まともにやれば三階層のボスもすぐに倒せるだろう。だがせっかくだし、リビラの動きも確認しておくか。
防毒の盾がある以上、もし攻撃を受けてもそうそう毒にならないだろうし、竜騎士の防御力なら何発かは耐えられるはず。
後は僧侶のジョブがあれば備えは万全だ。
ボスへと続く迷宮の扉が開かれ、部屋の中央にスパイススパイダーが現れた。
リビラが正面に相対して盾を構え、ミンは左側へ走る。
二人を確認しながら俺も右側へ。
リビラが慎重に相手の動きを見ていると、スパイススパイダーがその右足を振り上げた。
そしてリビラがその攻撃に盾を向けて……。
スパイススパイダーの攻撃はリビラの横を通り、床に打ちつけられた。
なんだ? 外した?
リビラとミンは好機とみて剣を打ち込む。
ミンの攻撃は鋭く、そしてリビラの攻撃もそれなりの勢いでスパイススパイダーの体に命中するが、スパイススパイダーもすぐに反撃に出る。
今度はスパイススパイダーの左足がリビラを突き刺そうと前に出され。
リビラの右へと抜けていった。
え? なんで?
リビラがかわした様子はない。攻撃の前と後での位置は変わっていない。
二回連続で外れるなんて事があり得るのか?
訳が分からないが、そろそろ俺も攻撃すべきだろう。
ラッシュとスラッシュを同時に発動させてスパイススパイダーに痛撃を加える。
相当に効いたとみえ、スパイススパイダーがこちらに向きを変えようとするが、すかさずリビラは盾で
頭部を叩き、注意を引いた。
……ザクリのじいさんは、確かにリビラの盾の使い方が上手いと言っていた。
しかしまさか、ここまで的確に使いこなすとは思わなかった。
その後も俺とミンは攻撃を加えるが、スパイススパイダーが俺達を攻撃する事は無かった。
「凄いな」
「リビラさん、すごいです」
「主様こそ。
まさかたったの3発でボスを倒してしまうなど、驚きました」
「いや、それでも注意を引いてくれたのは助かった。
それにスパイススパイダーの攻撃が外れていたが、あれも何かしたのか?」
「ああ、あれは……」
リビラは盾を動かしながら解説してくれた。
「敵の攻撃がこう振り降ろされる時には盾をこう動かすと、攻撃がこういう軌道で外れていきます。
こういう突きが来るならこう動くと外れます」
その後も、こう来るならこう、こう来るならこう、といくつも型の演舞を行ってくれた。
恐らく修練を積んだであろうその動きはとても滑らかで、武術の高みを感じさせた。
ひょっとしてリビラって俺より強いのかな……?
なんか恥ずかしいんですけど……。
スパイススパイダーはペッパーを落とすので、そのまま十回ほどボスを周回して倒した。香辛料は大事。
リビラはスパイススパイダーの攻撃をそらし続けて1回も被弾する事はなく、また注意を引き続けて俺達に攻撃が来る事も無かった。
うん……凄い……。
「どうして騎士団はリビラを前に立たせなかったんだ?」
聖騎士の伯父というコネがあり、これだけの技術を持っているのならば、前に出さない理由がないように思える。
だがリビラの表情は暗くなった。
「僕は……力が弱いので……」
「力が弱い?」
「魔物を何発叩いても、大した傷を与えられないのです。攻撃はいつも他の人に頼っていました」
「ふむ……」
恐らく、本来は同じ位のレベルの同じ装備なら、誰であろうと攻撃力はそう変わらないのだろう。
だが、そんな中で一人だけ攻撃力が低いとしたら?
どれだけ防御が上手くとも蔑まれるかもしれない。
ゲームで例えるなら、MMORPGならタンクとアタッカーとヒーラーでパーティーを組めても、モンスターハンティングアクションで攻撃しない奴とは組めないもんな。
「主様……」
「ん?」
リビラの声は震えていた。
「僕を……捨てないで下さい」
うつむくリビラを見て、俺は一つ息を吐いた。
「リビラ。俺はお前に期待してるって言ったぜ。パーティーの盾だと」
「……それは……」
「お前はそのままでいい」
ゆっくりとリビラは顔を上げた。
「一緒に戦ってよく分かった。俺はお前が必要だ。俺の前で敵の攻撃を止めろ。注意を引け。
お前が俺の盾だ」
「……あるっ……あるじざま……」
やべぇ。リビラが本格的に泣き出してしまった。
騎士団の扱いはそれほど辛かったのかな……。
「よし、今日はもう良いだろう。明日からは四階層に潜るぞ」
「はい」
「……ぁい」
俺はガシガシとリビラの頭を撫でた。
「……カズト様」
「ん?」
ワープでボス部屋から家に帰ろうかと思ったが、その前にミンが話しかけてきた。
「私、役に立たない?」
マジマジとミンを見る。
ミンはじっと俺を見返した。
……ミレーナさんは家事、そして夜伽を務めている。
リビラは今日、俺の盾としての役割を得た。
そんな中、『自分は何が出来るのか?』、そう考えたのだろう。
俺はゆっくり考え、正直に伝える事にした。
「今はミンに期待するのは、英雄である事だな」
「……それは、ジョブだけ? 私は役立たず?」
「ミン。英雄の凄さは覚えているな?」
こっくりとうなずいた。
「英雄はな。成長が遅い。難しく言うなら、大器晩成だ」
「たいき……ばんせい?」
「大器晩成だ。大きく育つ代わりに、他の人より時間がかかる。そういう意味だ」
「大器、晩成……」
俺は膝をついてミンと目線をあわせた。
「5年だ。5年あれば、俺はお前を最強にしてやる。今の強さなんて気にするな。出来る事をしろ。
飯を食って、よく寝て、戦え。経験を積んで、よく学び、人生を楽しめ。
5年後、大人になったお前は最強だ。初代皇帝よりもっと凄くしてやる。
俺を信じて、ついてこい」
ミンは俺をじっと見て、うなずいた。
「わかった。私は大器晩成。5年後は最強」
「おう。最強だ」
俺はガシガシとミンの頭を撫でた。
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リビラ関連のイベントはあと少し、22話まで続きます