異世界迷宮の英雄に!   作:チワワ

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20-防御は最大の攻撃

昼食を終え、俺とミンとリビラの三人で迷宮の三階層へ来た。

既に三階層はミンと一緒にかなり回っている。ボス部屋もすぐに見つけて、四階層へ行けるようになるだろう。

戦い方も確立しているし、何も心配はいらない、のだが……。

 

「主様。やはり、防具は僕ではなく、主様が身につける方が……」

「迷宮に入る前に言っただろう。正面で迎え撃つ二人が優先だ」

 

俺が持っている防具は二組。前衛に渡せば俺が着る分はない。

どうせこの階層では魔物は二匹しか出ないし、二人が一匹ずつ受け持てば俺は攻撃を受ける事はない。

というか、そもそも攻撃魔法で接近前に倒せるのだし危険はない。

 

という事を迷宮に入る前に説明したのだが、リビラは未だ難色を示していた。

真面目だねえ。

 

「あえて言うが、リビラより俺の方が強いぞ。俺の探索者のレベルは今は22だ」

「22……僕より15も上……」

 

今のリビラは探索者Lv7じゃなくて竜騎士Lv3だけどな。

いずれにしても、ロクサーヌばりに技術でカバー出来るのでない限り、俺の方が強いというのは間違いないだろう。

 

「つまり、弱い方に防具が必要というわけだ。わかるな?」

「……はい」

 

リビラが悔しそうな顔をしている。

まあせっかく迷宮に挑むパーティーに入ったと思ったら、そこでも足手まとい扱い。それでは悔しくもなるだろう。

 

「リビラ。俺はお前に期待している」

「期待、ですか?」

「そうだ。いつか迷宮の奥深く……五十を超える階層に至った時、先頭に立って敵の攻撃を受け止めるのはお前だ」

「僕が……先頭……」

 

リビラの目がキラキラと輝き出した。

 

「その時のお前は、竜騎士として両手剣と大盾を構えているだろう」

「両手剣と……大盾……!」

「いつか迷宮の討伐を果たす時、パーティーの盾としての名声はお前が得る」

「パーティーの盾……!!」

「その時のためにも、今は鍛錬の時だ。つまらない傷を受けないためにも、しっかり防具は着けておけ」

「はいっ!!!」

 

やる気が出ててヨシッ。

 

 

一時間ほど三階層の探索を行うと、ボス部屋にたどり着いた。

 

「ボスは魔法ではなくデュランダルで戦っている。詠唱中断があるからな。

正面からの攻撃は、リビラが受け持ってくれ」

「お任せ下さい!」

「俺は右側から、ミンは左側からの攻撃だ。慎重にいくぞ」

「はい!」

 

まともにやれば三階層のボスもすぐに倒せるだろう。だがせっかくだし、リビラの動きも確認しておくか。

防毒の盾がある以上、もし攻撃を受けてもそうそう毒にならないだろうし、竜騎士の防御力なら何発かは耐えられるはず。

後は僧侶のジョブがあれば備えは万全だ。

 

ボスへと続く迷宮の扉が開かれ、部屋の中央にスパイススパイダーが現れた。

 

リビラが正面に相対して盾を構え、ミンは左側へ走る。

二人を確認しながら俺も右側へ。

 

リビラが慎重に相手の動きを見ていると、スパイススパイダーがその右足を振り上げた。

そしてリビラがその攻撃に盾を向けて……。

 

スパイススパイダーの攻撃はリビラの横を通り、床に打ちつけられた。

なんだ? 外した?

リビラとミンは好機とみて剣を打ち込む。

ミンの攻撃は鋭く、そしてリビラの攻撃もそれなりの勢いでスパイススパイダーの体に命中するが、スパイススパイダーもすぐに反撃に出る。

 

今度はスパイススパイダーの左足がリビラを突き刺そうと前に出され。

リビラの右へと抜けていった。

 

え? なんで?

 

リビラがかわした様子はない。攻撃の前と後での位置は変わっていない。

二回連続で外れるなんて事があり得るのか?

 

訳が分からないが、そろそろ俺も攻撃すべきだろう。

ラッシュとスラッシュを同時に発動させてスパイススパイダーに痛撃を加える。

相当に効いたとみえ、スパイススパイダーがこちらに向きを変えようとするが、すかさずリビラは盾で

頭部を叩き、注意を引いた。

 

……ザクリのじいさんは、確かにリビラの盾の使い方が上手いと言っていた。

しかしまさか、ここまで的確に使いこなすとは思わなかった。

その後も俺とミンは攻撃を加えるが、スパイススパイダーが俺達を攻撃する事は無かった。

 

「凄いな」

「リビラさん、すごいです」

「主様こそ。

まさかたったの3発でボスを倒してしまうなど、驚きました」

「いや、それでも注意を引いてくれたのは助かった。

それにスパイススパイダーの攻撃が外れていたが、あれも何かしたのか?」

「ああ、あれは……」

 

リビラは盾を動かしながら解説してくれた。

 

「敵の攻撃がこう振り降ろされる時には盾をこう動かすと、攻撃がこういう軌道で外れていきます。

こういう突きが来るならこう動くと外れます」

 

その後も、こう来るならこう、こう来るならこう、といくつも型の演舞を行ってくれた。

恐らく修練を積んだであろうその動きはとても滑らかで、武術の高みを感じさせた。

 

 

ひょっとしてリビラって俺より強いのかな……?

なんか恥ずかしいんですけど……。

 

 

スパイススパイダーはペッパーを落とすので、そのまま十回ほどボスを周回して倒した。香辛料は大事。

リビラはスパイススパイダーの攻撃をそらし続けて1回も被弾する事はなく、また注意を引き続けて俺達に攻撃が来る事も無かった。

 

うん……凄い……。

 

「どうして騎士団はリビラを前に立たせなかったんだ?」

 

聖騎士の伯父というコネがあり、これだけの技術を持っているのならば、前に出さない理由がないように思える。

だがリビラの表情は暗くなった。

 

「僕は……力が弱いので……」

「力が弱い?」

「魔物を何発叩いても、大した傷を与えられないのです。攻撃はいつも他の人に頼っていました」

「ふむ……」

 

 

恐らく、本来は同じ位のレベルの同じ装備なら、誰であろうと攻撃力はそう変わらないのだろう。

だが、そんな中で一人だけ攻撃力が低いとしたら?

どれだけ防御が上手くとも蔑まれるかもしれない。

 

ゲームで例えるなら、MMORPGならタンクとアタッカーとヒーラーでパーティーを組めても、モンスターハンティングアクションで攻撃しない奴とは組めないもんな。

 

 

「主様……」

「ん?」

 

リビラの声は震えていた。

 

「僕を……捨てないで下さい」

 

うつむくリビラを見て、俺は一つ息を吐いた。

 

「リビラ。俺はお前に期待してるって言ったぜ。パーティーの盾だと」

「……それは……」

「お前はそのままでいい」

 

ゆっくりとリビラは顔を上げた。

 

「一緒に戦ってよく分かった。俺はお前が必要だ。俺の前で敵の攻撃を止めろ。注意を引け。

お前が俺の盾だ」

「……あるっ……あるじざま……」

 

やべぇ。リビラが本格的に泣き出してしまった。

騎士団の扱いはそれほど辛かったのかな……。

 

「よし、今日はもう良いだろう。明日からは四階層に潜るぞ」

「はい」

「……ぁい」

 

俺はガシガシとリビラの頭を撫でた。

 

 

「……カズト様」

「ん?」

 

ワープでボス部屋から家に帰ろうかと思ったが、その前にミンが話しかけてきた。

 

「私、役に立たない?」

 

マジマジとミンを見る。

ミンはじっと俺を見返した。

 

……ミレーナさんは家事、そして夜伽を務めている。

リビラは今日、俺の盾としての役割を得た。

そんな中、『自分は何が出来るのか?』、そう考えたのだろう。

 

俺はゆっくり考え、正直に伝える事にした。

 

「今はミンに期待するのは、英雄である事だな」

「……それは、ジョブだけ? 私は役立たず?」

「ミン。英雄の凄さは覚えているな?」

 

こっくりとうなずいた。

 

「英雄はな。成長が遅い。難しく言うなら、大器晩成だ」

「たいき……ばんせい?」

「大器晩成だ。大きく育つ代わりに、他の人より時間がかかる。そういう意味だ」

「大器、晩成……」

 

俺は膝をついてミンと目線をあわせた。

 

「5年だ。5年あれば、俺はお前を最強にしてやる。今の強さなんて気にするな。出来る事をしろ。

飯を食って、よく寝て、戦え。経験を積んで、よく学び、人生を楽しめ。

5年後、大人になったお前は最強だ。初代皇帝よりもっと凄くしてやる。

俺を信じて、ついてこい」

 

ミンは俺をじっと見て、うなずいた。

 

「わかった。私は大器晩成。5年後は最強」

「おう。最強だ」

 

俺はガシガシとミンの頭を撫でた。




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リビラ関連のイベントはあと少し、22話まで続きます
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