異世界迷宮の英雄に! 作:チワワ
皆で宴の片付けをして、寝る支度をする。
ミンはあまりにテンションが上がったせいか、すぐに寝付いたようだ。幼稚園児かな?
とはいえこの後の事を考えれば、ちょうど良かった。
ここからは未成年お断りの時間だ。
「じゃあ、別宅に行こうか」
「はい」
「は、はい」
緊張するリビラと、俺とミレーナさんの三人でもう一軒の家へ向かう。
……夜伽をさせるために女の子二人を連れて歩くとか。信じられない話だな……。
これからもこの生活を続けるため、頑張らないとな。
こちらの家は個室として四部屋あり、それぞれ既に家具を運んでもらっているので、すぐにでもパーティーメンバーを増やせるようになっている。
俺達三人はリビラが使っている部屋に入った。
「じゃあ順番に。リビラは見ててくれ」
「は、はい」
俺はミレーナさんを相手に、いつものように始める。
……んー。
「気になる?」
「も、申し訳ありません……」
ミレーナさんはチラチラとリビラの方を見て、集中できない様子だった。
まあ普通は他人に見られながらする事じゃないからなあ。
……俺は気にならないが。
多分、知らない人間に囲まれてても気にせずできちゃうだろうなあ。
「リビラ、なんかこの位の長い布をくれ」
「は、はい。すぐ持ってきます」
「カズト様……?」
「大丈夫、目を閉じて」
ミレーナさんが目を閉じ、その上から布で目隠しをした。
「大丈夫だから、俺の事だけ意識して。俺の体だけ感じて」
「わ……わかりました」
少し問題はあったが、無事にミレーナさんの番を終えた。
……いつもより少しミレーナさんの声が大きかった気がする。
隣の部屋でミレーナさんを休ませ、緊張しているリビラにそっと触れる。
「今日は初めてだから、無理のないように。痛かったら痛いと言って、良かったらいいと言ってくれ」
「わかりました」
それから三十分の間、「ここが良いです」「これはそんなにです」「これは良いです」「あっ!」「あ、あ、あ」「ごめんなさい、いいですっ!」とリビラは伝えてくれた。
その後、十五分程は「いい」「いい」「主様っ、いいですっ」「いいっ! いいっ!!」と教えてくれた。
十分程「いい……」「痛い……」「いい……」「痛い……」と交互に言ってきたが、五分の間はずっと「いいっ!」「いいっ!!」「イイッッ!!!」と叫び続け、「いいです、あるじさまぁ……」と最後にこぼして、リビラの夜は終わりを告げた。
ぐったりしているリビラを俺とミレーナさんの二人で拭いてあげ、ベッドに寝かしつけて、俺達は別宅を出た。
既に日は沈み、辺りは暗くなっている。
「今日はありがとう」
「いいえ。これも私の務めですから」
虫の声や風の音、そして二人の足音が聞こえる。
「カズト様。これからは夜伽の差配は私に任せるとおっしゃっていましたよね」
「ああ」
「もし、夜伽は私が全て行います、と言ったらどうなさいますか?」
「え」
俺は思わず足を止めたが、ミレーナさんはそのまま歩いていた。
「冗談です」
「……」
ミレーナさんは俺の二歩前に進んでいた。
……後ろからは、彼女がどんな顔をしているのかはわからない。
再び足音が二人分になった時にミレーナさんは言った。
「では、リビラに全てを任せるのは?」
「それは困るな」
彼女がなぜ、そんな事を聞くのかは俺にはわからない。
だから、俺は正直に答える事に努めた。
……俺の夜にミレーナさんがいないのは困る。
「……そうですか」
「ああ」
「冗談です」
「ああ」
「リビラと交互になるようにしますね」
「そうだな。後はお互いに体調とかに気を配ってほしい。これからパーティーメンバーが増えた時も同様に」
「かしこまりました」
「明日は、リビラは休ませてやってくれ」
「そうですね」
本宅が近づいてくる。
「カズト様」
家の扉の前でミレーナさんが振り返った。
こちらを見つめる瞳は、何か潤んでいるように見えた。
「本日はもう、お休みになりますか?」
俺達は一時間程してから眠った。
朝になり、いつも通り部屋のベッドの上で一人で目覚めた。
ジョブの確認を行い、ちゃんと色魔を得ている事を確認する。
まあしばらくは色魔のお世話になる事はないだろうが、あるに越したことはない。
「おはよう」
朝の挨拶を三人と交わし、魔法で水の補充をする。
これからは別宅の方も毎日水を入れ替えないと。
ワープを使ってさっさと補充を終える。
既に三人共に起きていたので、俺はリビラに問いかけた。
「リビラ、体の調子はどうだ?」
「あ、ええと……」
恥ずかしそうにリビラは上目遣いで見てきた。
「少し、歩き辛いです……」
「……そうか。迷宮は昼食後から入る。ミレーナさん、午前中は無理させない程度に頼む」
「かしこまりました」
そんな会話を交わしながら朝食の用意をしていると、扉をノックする音が聞こえた。
「おはようございます、カズト様。ダーリョです」
村長の声だ。
ミンが扉を開ける。
「✕✕✕✕✕✕」
「✕✕✕✕✕✕」
二人はこのあたりの言葉で喋っている。
俺もこの辺の言葉を学んでおかないとな。どこかで学習の時間を決めるか……。
そんな事を考えていたら、玄関まで呼ばれた。
「カズト様。お待たせしていました風呂場が出来ました」
「お、そうなのか」
確か、頼んだ時は十日かかるといった話だったように思う。もう十日も経ったのか。
「もう使えるようにはしてありますが、せっかくですので、明日は祝いの席を設けたいと思います。いかがでしょうか?」
上棟式とか竣工式とか、そういうのだろうか?
家を新築したわけでもないが、そういう事なら受けさせてもらうか。
「わかった。それはいつ頃やるんだ?」
「昼食時に執り行いたいと思います」
「昼食時ということは、食事もつくのか? ありがたいが、大丈夫か?」
「はい。カズト様のおかげで余裕が出来ました。気にせずお越しいただければ幸いです」
「わかった。楽しみにしている」
出席を確認すると、村長は満足そうに帰っていった。
しかし、風呂か……。ふむ。
「……風呂場とは?」
「カズト様が、魔法でお湯を出すので風呂場を作ってほしいとおっしゃって。村の皆で空き家を改築したのです」
「そ、そうなのですか……」
後ろでリビラとミレーナさんがコソコソと話して、リビラが引いていた。貴族しか入れないという風呂を作らせたと聞けば、そりゃ引くわな……。
違うんだよ。日本人は風呂が好きなんだ。別に貴族ぶってるとかそういうつもりじゃないんだよ……。
「ミン、リビラ。今日は予定を変更して、昼食の後は迷宮行きは止める」
「そうなんですか?」
「僕は構いませんが、どうなさるのですか?」
「なあに。皆でちょっとした理科の実験だ」
いつものヤギ狩りを終える。
今日は一人だったのでちょっと寂しさを感じてしまったが、いつもと移動を変えてみたので少し気分は晴れた。
軽くだが、小走りで移動したのだ。
不意打ちを受けたところで一階層の魔物に負けることはないので、移動時間を縮めることで戦闘回数を増やそうと思ったのだ。
平均して1回の戦闘までに一分程度しか縮まっていないだろうが、チリも積もれば山となる。
普段より多く狩ることに成功した。
体が慣れてきたら、もっと速く移動して、もっと数を稼げるだろう。
……早く力をつけて、そして早く稼いで、もっともっと深く迷宮に潜るんだ。
昼食を終えて、皆を集めたところで俺は宣言した。
「今日は石鹸作りに挑戦したいと思う」
今まで時間を取らずに来てしまったが、錬金術師のジョブにもなる。
風呂が出来たというなら、いいきっかけだ。
「石鹸……ですか?」
「石鹸てなに?」
「主様は作れるのですか?」
「正直、俺は作った事がない。が、作り方だけは何となく知っている。なので皆で試しながら作れば誰かは上手く作れると思ってな」
ミチオ君のおかげで材料は判明している。
重曹であるシェルパウダーを煮込んで溶かし、コイチの実のふすまを入れるのだ。
ふすまって何だろう? と原作を読んだ時は思ったが、つまり実の皮の部分だな。
ミチオ君は米ぬかで作った経験があるとあったし、近い部分を使ったのだろう。
こういう理科の実験って、なんか楽しいよな。
皆でわいのわいのと言いながら作った。
明日までには固まらないだろうが、入浴の時には液体石鹸として使ってみようと思う。
今更なんですが、カラメルソースってカラメル化反応の産物でそれって化学反応……。
プリンは錬金術の成果……?
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モチベーション低下した時のカンフル剤です。