異世界迷宮の英雄に!   作:チワワ

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(22話のUAを見て)

読者さんのエッチ!


23-剣と肉の英雄

石鹸作りを楽しんだ後は、皆で少しだけ肌や髪につけてみた。パッチテストは大事。

問題がなければ明日の入浴で使えるだろう。

 

夜伽は予定通りミレーナさんに相手してもらう。

そろそろ肌を合わせるのも二桁回になる。

どこが良いのかはお互い分かってきた。

体の相性なんてのは、理解する努力で容易に覆る。

 

俺は気持ち良い時間の後、眠りについた。

 

 

今日も午前中は一人でヤギ肉狩り。小走り移動でたくさん戦う。

まさにヤギ肉マラソンだ。

 

戦い自体は普段通りだが、今日は一つの当たりが出た。

 

スキル結晶 ヤギ

 

見た目は六角形の石だが、鑑定するとそう表示された。

ヤギのボスばかり何百匹と狩っていたからなあ。現れてもおかしくはないか。

 

しかし、スキル結晶か。

原作ではミチオ君は鍛冶師の奴隷を求めたが……別に奴隷である必要はないんだよな。

必要なのはスロットの空いた装備なわけで、誰に頼もうと成功する。

ならば鍛冶師ギルドで頼めば良いだけだ。

ドワーフの奴隷を狙う必要はないな。

 

そしてヤギのスキル結晶はたしか、知力アップの効果だったか。

だがコボルトのスキル結晶もないし、今持っているケーンはスロットを気にせずに買った。

鍛冶師ギルドに頼むにしても、最低でも空きスロットのあるロッドと、コボルトのカードが手に入ってからだな。

まだまだ考える必要はなさそうだ。

 

俺はスキル結晶をアイテムボックスにしまい、パーンを狩ってヤギの肉を入手する作業に戻った。

 

 

さて、そろそろ昼食の時間だ。

俺達は竣工式のために浴場となる家に向かった。

 

家の周りには村人がたくさん集まっていた。

いやたくさんというか……コレ全員集まってないか?

この辺りの竣工式は村総出でやるのだろうか?

 

「カズト様」

 

代表して村長が話しかけてくる。

 

「改めて、カズト様にはお礼申し上げます」

 

そう言って村長が頭を下げると、集まっていた村人達も全員頭を下げた。

 

……その場にいる五十人程が、一斉に俺に頭を下げる。

そんな経験がない俺は、その光景に圧倒されてしまった。

いったい、何が始まったんだ?

 

「カズト様のおかげで、既に迷宮の外の魔物は積極的に人を襲うのを止めました。

おかげ様で森に入り恵みを得られるようになりました。畑も大きく広げられるでしょう。更には迷宮産の肉まで。

貴方様は我々の命の恩人です。村民一同、この恩は決して忘れません」

 

俺が驚きに動けずにいると、さらにミレーナさんが俺の前に来た。

 

「カズト様」

 

ミレーナさんはいつの間にやら、服を胸に抱えていた。

 

「村の皆で、カズト様の無事を祈り刺繍いたしました。よろしければお使い下さい」

 

それは二着の服だった。

白っぽい無地のシンプルな服だったが、それぞれの胸元にはデザインの違う刺繍が施されている。

 

「これは……剣と、肉?」

「はい。カズト様のお持ちの剣と、ヤギの肉をデザインしました。

カズト様はその剣でこの村を守って下さっています。ヤギの肉を与え、飢えから遠ざけて下さっています。

その刺繍は感謝を表すため村人全員で縫いました。

……刺繍が苦手な者もいるので、綺麗でない部分もあるのですが」

 

刺繍をよく見てみる。

デュランダルもヤギの肉も、一目でそれとわかるデザインだ。

そしてよーく見れば、上手な部分もあれば、下手な部分もある。

刺繍に縁のない男や、まだ上手にできない子供だっている。多少の下手さは仕方ない。

 

だが上手い下手なんてどうでもいい。

たとえ下手でも、わざわざ縫ってくれたのだ。

この刺繍に祈りを込めて。

これは世界のどこにも売っていない、俺だけの物だ。

 

俺の心に、嵐のように激しく感情が生まれる。

これが、この気持ちこそ『胸が熱くなる』というのだろう。

 

「ありがとう。大切に……大切に、使わせてもらう」

 

俺はぎゅっと服を抱きしめた。

 

 

「さあカズト様。食事も用意してあります。粗末なものとなりますが、どうぞお召し上がり下さい」

 

宴に出ている食事は、正直に言えば大したことのないものだった。

魚と野菜。いつも見ているものばかりだ。

昨日俺達が食べた物の方が、はるかに高価で珍しい食事だった。

 

だが今日並んでいるものは、いつもより少しだけ大きかったり、形のきれいなものだ。

高価なものが用意できなくとも、穫れた中での一番を用意してくれた事が伝わる。

 

「美味い」

 

誰だよ空腹が最上のソースとか言ったやつ。

愛情こそが最上のソースだぞ。よく覚えておけ。

 

 

食事の途中には村人達が一人一人、挨拶に来た。

もちろん言葉がわからないのでミレーナさんが隣で通訳を務めてくれた。

 

魔物に家族を殺された。

迷宮に挑んで帰ってこない。

村を出ていこうにも途中で襲われる恐怖が強かった。

飢えて死ぬ事が怖かった。

盗賊がまた来た時は絶望した。

 

皆、いかに辛かったかを語り、そしてこう結ぶ。

 

「カズト様のおかげでまた安心して暮らせます。ありがとうございます」

 

話は聞いていた。ミレーナさんとミンの話だって十分に大変さを感じさせるものだった。

だがそれは、村の全員もそうである、とは聞いていても理解できていなかった。

目の前で話されて、俺はやっとその事に気がついた。

 

そして、俺は全員から感謝される事をしたらしい。

 

 

村人達から挨拶が終わり、俺はぼんやりしていた。

 

俺は大した事をしたと思っていなかった。

ボーナスポイントがあれば、誰にだって出来る事をしただけだと思っている。

 

この世界は現実だ。

生きている村人はNPCではなく、生きた人だ。

感情があり生活があり命がある。

わかってはいる。

 

だが、俺はこの世界がゲームみたいだとも思っている。

魔物がいてレベルがあってジョブもスキルもある。

そんな世界は本物か? ゲームと思っても……仕方ないだろう?

 

そんな世界で……俺は、どうすればいいだろう。何をすべきなのだろうか。

生きている人達の横で、あやふやな気持ちを抱く俺は。

 

 

「カズト様」

 

ミレーナさんが呼びかけてきた。

穏やかに微笑みながら、俺の目をまっすぐに見つめて。

 

「カズト様は、そのままが良いと思います」

「そのまま?」

「はい。御心のまま、好きなように振る舞ってください。それがきっと一番良いと思います」

 

 

心のまま、か……。

俺は、英雄になってちやほやされて、ついでに女の子侍らしてハーレム作りたいって思ってた。

この世界に来る時にそう思っていた。

色々あってちょっとだけズレたが、それでもその道を進んでいる。

 

今、俺は最高にちやほやされている。

この村にとっては、俺は英雄だ。

ハーレムだって、まずは二人の女の子が加入してくれた。これからも増えるだろう。

 

そして、ここで生活を送って……俺は嬉しいし、楽しい。感情が激しく動いている。

この世界がゲームだろうと現実だろうとどうでもいいほどに。

 

ミレーナさんの言う通りだ。

心のままに。俺は、生きていく。

 

「うん、そうだな」

 

俺はこのままでいい。あやふやな気持ちのままで。

迷宮行って魔物倒して、ドロップ拾って金にする。

ご近所さんにお裾分けして、ありがとうって言われて、代わりに色々作ってもらって。

 

偽物でもいい、英雄として過ごす。

俺はそう決めたんだった。

 

これからも……俺は、英雄だ。

 

俺は意思を込めてミレーナさんを見つめた。

 

「ありがとう。これからもよろしく」

「はい。お側におります」

 

 

今はまだ力が足りない。だが。

この村の迷宮は、必ず俺が討伐する。




感想、お気に入り登録、ここすき、評価、ありがとうございます。

ところで異世界迷宮ハーレムの英雄ジョブなしの二次創作が増えても良いと思うんですよ。
一緒にやりましょう…?
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