異世界迷宮の英雄に! 作:チワワ
読者さんのエッチ!
石鹸作りを楽しんだ後は、皆で少しだけ肌や髪につけてみた。パッチテストは大事。
問題がなければ明日の入浴で使えるだろう。
夜伽は予定通りミレーナさんに相手してもらう。
そろそろ肌を合わせるのも二桁回になる。
どこが良いのかはお互い分かってきた。
体の相性なんてのは、理解する努力で容易に覆る。
俺は気持ち良い時間の後、眠りについた。
今日も午前中は一人でヤギ肉狩り。小走り移動でたくさん戦う。
まさにヤギ肉マラソンだ。
戦い自体は普段通りだが、今日は一つの当たりが出た。
スキル結晶 ヤギ
見た目は六角形の石だが、鑑定するとそう表示された。
ヤギのボスばかり何百匹と狩っていたからなあ。現れてもおかしくはないか。
しかし、スキル結晶か。
原作ではミチオ君は鍛冶師の奴隷を求めたが……別に奴隷である必要はないんだよな。
必要なのはスロットの空いた装備なわけで、誰に頼もうと成功する。
ならば鍛冶師ギルドで頼めば良いだけだ。
ドワーフの奴隷を狙う必要はないな。
そしてヤギのスキル結晶はたしか、知力アップの効果だったか。
だがコボルトのスキル結晶もないし、今持っているケーンはスロットを気にせずに買った。
鍛冶師ギルドに頼むにしても、最低でも空きスロットのあるロッドと、コボルトのカードが手に入ってからだな。
まだまだ考える必要はなさそうだ。
俺はスキル結晶をアイテムボックスにしまい、パーンを狩ってヤギの肉を入手する作業に戻った。
さて、そろそろ昼食の時間だ。
俺達は竣工式のために浴場となる家に向かった。
家の周りには村人がたくさん集まっていた。
いやたくさんというか……コレ全員集まってないか?
この辺りの竣工式は村総出でやるのだろうか?
「カズト様」
代表して村長が話しかけてくる。
「改めて、カズト様にはお礼申し上げます」
そう言って村長が頭を下げると、集まっていた村人達も全員頭を下げた。
……その場にいる五十人程が、一斉に俺に頭を下げる。
そんな経験がない俺は、その光景に圧倒されてしまった。
いったい、何が始まったんだ?
「カズト様のおかげで、既に迷宮の外の魔物は積極的に人を襲うのを止めました。
おかげ様で森に入り恵みを得られるようになりました。畑も大きく広げられるでしょう。更には迷宮産の肉まで。
貴方様は我々の命の恩人です。村民一同、この恩は決して忘れません」
俺が驚きに動けずにいると、さらにミレーナさんが俺の前に来た。
「カズト様」
ミレーナさんはいつの間にやら、服を胸に抱えていた。
「村の皆で、カズト様の無事を祈り刺繍いたしました。よろしければお使い下さい」
それは二着の服だった。
白っぽい無地のシンプルな服だったが、それぞれの胸元にはデザインの違う刺繍が施されている。
「これは……剣と、肉?」
「はい。カズト様のお持ちの剣と、ヤギの肉をデザインしました。
カズト様はその剣でこの村を守って下さっています。ヤギの肉を与え、飢えから遠ざけて下さっています。
その刺繍は感謝を表すため村人全員で縫いました。
……刺繍が苦手な者もいるので、綺麗でない部分もあるのですが」
刺繍をよく見てみる。
デュランダルもヤギの肉も、一目でそれとわかるデザインだ。
そしてよーく見れば、上手な部分もあれば、下手な部分もある。
刺繍に縁のない男や、まだ上手にできない子供だっている。多少の下手さは仕方ない。
だが上手い下手なんてどうでもいい。
たとえ下手でも、わざわざ縫ってくれたのだ。
この刺繍に祈りを込めて。
これは世界のどこにも売っていない、俺だけの物だ。
俺の心に、嵐のように激しく感情が生まれる。
これが、この気持ちこそ『胸が熱くなる』というのだろう。
「ありがとう。大切に……大切に、使わせてもらう」
俺はぎゅっと服を抱きしめた。
「さあカズト様。食事も用意してあります。粗末なものとなりますが、どうぞお召し上がり下さい」
宴に出ている食事は、正直に言えば大したことのないものだった。
魚と野菜。いつも見ているものばかりだ。
昨日俺達が食べた物の方が、はるかに高価で珍しい食事だった。
だが今日並んでいるものは、いつもより少しだけ大きかったり、形のきれいなものだ。
高価なものが用意できなくとも、穫れた中での一番を用意してくれた事が伝わる。
「美味い」
誰だよ空腹が最上のソースとか言ったやつ。
愛情こそが最上のソースだぞ。よく覚えておけ。
食事の途中には村人達が一人一人、挨拶に来た。
もちろん言葉がわからないのでミレーナさんが隣で通訳を務めてくれた。
魔物に家族を殺された。
迷宮に挑んで帰ってこない。
村を出ていこうにも途中で襲われる恐怖が強かった。
飢えて死ぬ事が怖かった。
盗賊がまた来た時は絶望した。
皆、いかに辛かったかを語り、そしてこう結ぶ。
「カズト様のおかげでまた安心して暮らせます。ありがとうございます」
話は聞いていた。ミレーナさんとミンの話だって十分に大変さを感じさせるものだった。
だがそれは、村の全員もそうである、とは聞いていても理解できていなかった。
目の前で話されて、俺はやっとその事に気がついた。
そして、俺は全員から感謝される事をしたらしい。
村人達から挨拶が終わり、俺はぼんやりしていた。
俺は大した事をしたと思っていなかった。
ボーナスポイントがあれば、誰にだって出来る事をしただけだと思っている。
この世界は現実だ。
生きている村人はNPCではなく、生きた人だ。
感情があり生活があり命がある。
わかってはいる。
だが、俺はこの世界がゲームみたいだとも思っている。
魔物がいてレベルがあってジョブもスキルもある。
そんな世界は本物か? ゲームと思っても……仕方ないだろう?
そんな世界で……俺は、どうすればいいだろう。何をすべきなのだろうか。
生きている人達の横で、あやふやな気持ちを抱く俺は。
「カズト様」
ミレーナさんが呼びかけてきた。
穏やかに微笑みながら、俺の目をまっすぐに見つめて。
「カズト様は、そのままが良いと思います」
「そのまま?」
「はい。御心のまま、好きなように振る舞ってください。それがきっと一番良いと思います」
心のまま、か……。
俺は、英雄になってちやほやされて、ついでに女の子侍らしてハーレム作りたいって思ってた。
この世界に来る時にそう思っていた。
色々あってちょっとだけズレたが、それでもその道を進んでいる。
今、俺は最高にちやほやされている。
この村にとっては、俺は英雄だ。
ハーレムだって、まずは二人の女の子が加入してくれた。これからも増えるだろう。
そして、ここで生活を送って……俺は嬉しいし、楽しい。感情が激しく動いている。
この世界がゲームだろうと現実だろうとどうでもいいほどに。
ミレーナさんの言う通りだ。
心のままに。俺は、生きていく。
「うん、そうだな」
俺はこのままでいい。あやふやな気持ちのままで。
迷宮行って魔物倒して、ドロップ拾って金にする。
ご近所さんにお裾分けして、ありがとうって言われて、代わりに色々作ってもらって。
偽物でもいい、英雄として過ごす。
俺はそう決めたんだった。
これからも……俺は、英雄だ。
俺は意思を込めてミレーナさんを見つめた。
「ありがとう。これからもよろしく」
「はい。お側におります」
今はまだ力が足りない。だが。
この村の迷宮は、必ず俺が討伐する。
感想、お気に入り登録、ここすき、評価、ありがとうございます。
ところで異世界迷宮ハーレムの英雄ジョブなしの二次創作が増えても良いと思うんですよ。
一緒にやりましょう…?