異世界迷宮の英雄に! 作:チワワ
俺たちは昼食を終え、リビラ、ミンとともに三人で迷宮に入った。
一つ大きな呼吸をして、意識をしっかり切り替える。
「よし。四階層に来たな。リビラ、元騎士団のお前から見た現状を詳しく教えてくれ」
「はい。私たちは一階層エスケープゴート、二階層ニートアント、三階層スパイスパイダーを抜けて四階層に来ました。四階層の魔物は不明ですが、ここからはエスケープゴートは出なくなります」
うんうん。魔物は下二階の種類まで出る可能性がある。俺の知識と相違ないな。
「四階層からは出てくる魔物は最大三体になります。僕とミンでブロックしますので、主様は後方から魔法での攻撃をお願いします」
魔物の数も知識通り、と。
そしてミンも一人前の戦力として認められている。
この三人でしっかり役割分担していこう。
「ま、おそらくまだ接近前に倒せるとは思うがな」
「そうですね。とはいえ、そろそろ攻撃を受けると毒になる可能性も出てきます。準備は怠れません」
たしかに。ミチオ君がピンチになった数少ないケースの一つは、毒にやられたことだ。
リビラの警告はありがたい。
「毒持ちが近づいてくる時は、防毒の盾を持つ僕が優先してブロックします。とはいえ状況にもよるので、ミンも警戒を忘れずに」
「うん」
「もし毒になったら、毒消し丸をすぐに使え」
「はい。あの……」
ミンがもじもじしながら聞いてきた。
「その……口移し、ですか……?」
「……」
あー……。
そりゃ十歳とはいえ、女の子だもんな。
既に一度は口移しで薬を飲ませたが、できれば二度目は避けたいよな……。
と思ったら、リビラまでもじもじしながら話に加わってきた。
「僕は主様の口移しで大丈夫です」
お前は防毒の盾があるじゃねえか。
「ウオッホン!!
万が一の際はそういう事もあるかもしれないが、それはあくまでも命の危機の緊急事態だからであって、治療に必要な事なので恥ずかしさなどは忘れてしっかり薬を飲むように!!」
「「はい」」
打ち合わせを終えた俺達は四階層の探索を始めた。
数分後にエンカウントしたのは、ニートアントとスパイスパイダーの二匹組だった。
まずはウォーターストームを叩き込み、弱点属性で攻撃されたニートアントが2回で沈む。続いてのウォーターボールを打ち込むと、スパイスパイダーも倒れた。
「やはり魔法三回で倒せるな」
「「凄いです、カズト様(主様)」」
おいおい照れるじゃないか。
「よし、この調子で進むぞ」
「「はい」」
また数分後にエンカウントするが、今度は四階層の魔物三匹組だった。
「ナイーブオリーブです!」
リビラが大声で報告してくる。
なるほど、あれがか。
植えてから三年〜五年程度の植木が歩いているような姿だ。
もちろん特別に強いわけもなく、ファイアーストームを三発唱えると、あっさり倒れた。
ドロップアイテムは、オリーブオイルだった。
「……」
「主様?」
「オリーブオイルはさっき買ったばかりなのに、と思ってな……」
「あっ」
やめろやめろ、「あっ」はやめろ。なんか傷つくだろ。
「まあ面倒な魔物じゃないとわかって何よりだ」
「そ、そうですね!
……それにしても、やはり多いですね」
ん?
「多いとは?」
「魔物の数がです。放置された迷宮は魔物がたまるといいますが、ここまで短時間で会敵するなんて……」
「え、そうなの? 他の迷宮とか知らないから、こんなもんかと思ってた」
「初めはたまたまとも思いましたが、2回連続で短時間の遭遇でしたし、間違いありません。この分だと、魔物部屋もかなり発生していそうです」
「魔物部屋か。俺も危機に陥ったな」
「そうなのですか。逃げられてなによりです」
「え?」
「え?」
俺達は顔を見合わせた。
「……魔物部屋ですよね?」
「ああ。三十匹くらいはいたな」
「…………逃げたのですよね?」
「いや。その場で全滅させた」
「………………」
え? 俺なんかやっちゃいました?
なんかリビラが無表情になってんだけど。
「騎士団では普通、魔物部屋に遭遇した場合は即時退却です」
「そうなの?」
「逃げる途中で挟み撃ちに遭う可能性はありますが、それでもその場で戦うより、はるかにマシですから。そのまま戦うことはまずありえません」
「……」
まあ俺もデュランダルなしなら、死んでたもんなぁ……。
「でも俺、強いから」
「…………」
死にかけたけど、今ならもっとうまくやれるし。そんな強がりを含めての発言だったんだが……。
凄い勢いでリビラの表情が変わってる。
呆れて良いのか、叱るべきなのか、認めれば良いのか悩んでそうだ。
そしてミン、ウンウン頷いてるけどお前絶対わかってないだろ。
「わかりました。主様の判断に従います」
ヤベ、リビラが考えるのを放棄した雰囲気出してる。
「待て。それでも思った事は意見してくれ。何も知らずに行動するのと、知っていてもあえて行動するのはまるで違う。
俺にはお前の知識が必要なんだ。大事だし、頼りにしてる」
俺がまくし立てると、リビラはちょっと顔を赤らめた。
「そ……そこまでおっしゃるなら……。では僕もカズト様の盾として、頑張りますね」
探索はサクサクと進んでいった。
魔法主体で戦っているおかげで、獲得経験値二十倍もつけられるし、結晶化促進三十二倍もつけられる。
今までの積み重ねもあり、ミンの英雄はLv11、リビラの竜騎士もLv11だ。
俺の方も探索者Lv24、剣士Lv22、僧侶Lv20、魔法使いLv22、錬金術師Lv5。
魔結晶は青色のままで変わらないが、そろそろまた緑になって売れるだろう。
危なげなく進んでいったが、さらに良いことに、ボス部屋への扉を見つけた。
「ナイーブオリーブのボスは、パームバウムだったか。弱点とかはなかったよな?」
「はい、ありません」
さすがザクリの爺さんから知識面で太鼓判を押されただけはある。リビラの口調は淀みなく、俺に様々な事を教えてくれる。
実際は正面でタンクとしても戦えるし、竜騎士としてのジョブでも防御力を与えてくれるし、なにより立派なお胸が素晴らしい。
まるでロクサーヌとセリーとベスタを足して3で割ったような子だ。来てくれて本当に良かった。
「よし。正面はリビラに任せて、俺とミンは横から攻撃だ。行くぞ!」
「「はい!」」
パームバウムは一対一でのリビラの防御を抜けず、俺とミンは安心して斬りつけ、三発であっさり倒すことに成功した。
俺たち三人も、ずいぶん連携がうまくなったもんだ。
もしミンがいい武器を持ったら、俺がいなくてもいいくらいだ。
……ふふっ。
「楽勝、楽勝。……お、これがパームバウムのドロップか」
そこに落ちていたのはバームクーヘンのような物体で……いや、年輪がないし、真ん中までしっかり詰まっている。
手のひらサイズのヤシの木の断面図といえばいいのだろうか?
鑑定すると、パームオイルと表示された。
オイル? オリーブオイルとは随分違うが……?
「パームオイルですね。これに火をつけると、一時間は燃え続けてくれるのです。木材が採れにくい地方では重宝されます」
食用じゃなくて、燃料のオイルかよ。パームってヤシの木だろ。ヤシの木要素はどこへ……?
「固形燃料ってことか。まあいくつかはとっておいてもいいか……」
いつも探索を終える時間まで、短い間だったが俺達はボスを周回したのだった。
「「「ただいま」」」
「おかえりなさいませ」
いつものようにミレーナさんが出迎えてくれる。
四階層を探索し、ドロップ品はオリーブオイルだったことや、三人の連携がうまくいっていること、明日からは五階層に行くことを話した。
そしてアイテムボックスを開き、お互いのアイテムを分け合いながら、今日も村長から礼を言われたことや、これから畑の拡張を本格的に始めるらしいことを聞いた。
うん。村も問題なさそうで何よりだ。
「失礼いたします、カズト様」
今日もいつも通りの一日だった。
迷宮に行き、魔物を倒す。ドロップ品を集め、生活を豊かにする。
そして一日の終わりには夜伽をさせる。いつものように。今日の夜はミレーナさんだ。
ミレーナさんは変わらない。栗色の柔らかな髪は肩まで流れ、青い瞳はかすかな疲れをにじませつつも穏やかにこちらを見つめている。美人ではなくとも、安らぎをくれる人。
俺はそんな彼女の服に手をかけ……。
余計な思考がよぎり、一瞬、手を止めた。
「カズト様?」
彼女は奴隷になり、俺は彼女の主人になった。
そこにあったのは契約だ。
彼女は俺に尽くし、俺は迷宮の探索を行う。それだけだ。
だから……彼女が誰を愛していたって関係ない。
まだ夫の事を愛している?
聞いたって仕方のない事を聞こうとしてしまった。
もしまだ夫を愛しているなんて聞かされたらどうする?
今更彼女を奴隷から解放? 出来るわけがない。だって俺は……。
結局何も言わないまま、俺は彼女の体に溺れた。
「あ、あ、あ、あ、あ、」
後ろから激しく身体を揺らされた彼女からは、普段の穏やかな声ではなく、衝撃によって肺を絞られた音が出る。
その音を聞きながら、彼女の身体をもっと激しく揺らし……。
俺は心と身体の限界を迎え、すべてを放出した。
ミレーナさん。
俺はあなたが欲しいよ。
クシュン。
夜伽を終えた部屋の去り際、彼女が一つくしゃみをした。
ここすき、ありがとうございます。でもびっくりしました。一人で136行をここすきする人がいるとは。そこまで気に入っていただけたのなら幸いです。
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