異世界迷宮の英雄に!   作:チワワ

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6-不可能を要求する

目を覚ますと見慣れない天井だった。

 

……いや、知ってる。

ちゃんと知ってる天井だ。

少し混乱したが、ちゃんと覚えている。

 

ここは地球ではなく、『異世界迷宮でハーレムを』の世界。

転移して二回目の朝を迎えた。

 

 

昨日、初めてのモンスターハウスで戦い、俺は生き残った。

 

その後は……。

そう。ドロップ品を全て拾い、キャラクター設定でワープを使えるようにして、そのまま直接家に戻った。

 

ミレーナさんは驚いていたけど、ただいまを言って抱きついて……確かその時点でほとんど気絶しそうになって、ミレーナさんに支えてもらいながらベッドまで来たんだっけか。

 

 

はあ。

挟み撃ちに気をつけろ、だなんてアニメやマンガで腐る程見てきた注意点だ。

知識があっても、こんなチートを授かっても、結局使い手次第ってわけだ。

自分の失敗を思い出すと、ひたすらに悔しさが湧いてくる。

 

……まあいいさ。

俺は生きている。

真の敗北とは道を進めなくなったその時だ、ってね。

ベッドから降りると、俺は大きくノビをした。

 

 

「おはよう」

「おはようございます、カズト様」

「おはよ、ざいます」

 

相変わらずミレーナさんもミンもすでに起きていて活動している。

 

「昨日は迷惑をかけた。ベッドまで連れて行ってくれてありがとう」

「いいえ、カズト様。ずいぶん活躍されたご様子ですね」

「ドロップ品、私、あっちに片付けたよ」

「助かる」

「……ところで、その……昨日、急に部屋に現れたあれは一体……?」

 

おっと。これはあのセリフの出番か。

 

「ワープの魔法だな。詳しくは省くが、俺は冒険者のフィールドウォークと同じ様な魔法が使える。

だが、内密にな」

「ないみつ?」

「誰にも言ってはいけない、という意味だよ、ミン」

 

俺はコホン、と一呼吸置いた。

 

「いい機会だから伝えておく。俺は遠くから旅をしてきたが、その際に身につけた力が色々とある。もし不思議に思う事があればそれだろう。

だが、それらは内密にしなければならない」

「どうして?」

「力はトラブルも引き寄せるからだよ、ミン。

今はここの迷宮に潜る事が優先事項だ。余計なトラブルをさける為には、内密にする事が絶対に必要なんだ」

「……うーん?」

「ミン。秘密にしないとカズト様に迷惑をかけてしまうという事よ。ミンだって、カズト様に迷惑をかけたくないでしょう?」

「んー……わかった。ないみつ」

「ありがとう、ミン。

 ……それにしても」

 

俺は積み上がったドロップ品に近づいた。

すでに50個は超えている。

 

「そろそろ売って金に換えたいもんだな」

「行商人が30日に一度ほどこの村に来ますが、少し前に来たばかりですのでしばらくは……」

「なら、街に売りに行くしかないか」

「村長に話して荷車をかりましょう」

 

探索者のレベルを確認すると7だった。

ということはアイテムボックスの大きさは7×7で49。

レベルが上がれば8×8の64で足りるが、戦えばまたドロップが増える。

ここは荷車を借りておいて、明日は街に向かう事にするか。

 

「わかった。俺は食事が済んだらまた迷宮に行くから、村長に話しておいてほしい」

「はい」

 

それまでは家に置いておくしかないな。

……ちょっと邪魔だなぁ。

 

「そうだ。ミレーナさん、迷宮に入った経験はある?」

「私ですか? いえ、一度もありませんが?」

「そっか。探索者のジョブがあればアイテムボックスが使えて何かと便利かと思ってね」

「そうかも知れませんが、この村には探索者のギルドがありません。一度街へ行きギルドに登録する必要が」

「ふーん? まあ、とりあえず色々と試してみよう。パーティー編成」

 

強引にパーティーを組み、ワープで迷宮と家を往復した。

 

パーティージョブ設定。

村人Lv3、農夫Lv1、探索者Lv1。

 

そういえばミレーナさんは農家出身だっけ。

でも今は探索者をセットして、と。

 

「ミレーナさん。アイテムボックス操作って言って」

「アイテムボックス操作、ですか? ……え?」

 

アイテムボックス操作を使える事に気付き驚くミレーナさんに、俺は指を一本立てて言った。

 

「内密にね」

 

 

「八百千五百のお宝を 収めし蔵の掛け金の アイテムボックス オープン」

「うん。ミレーナさんのブラヒム語、完璧だ」

「恐れ入ります。……そういえば、カズト様は詠唱は……?」

「あー。これも内密にね」

 

流石にミレーナさんも呆れた様子を見せた。

 

「今日1日で、私の常識はずいぶん裏切られました」

「ははは……」

「ご主人様の郷里では、みなご主人様の様に特別な力を持っているのですか?」

「ん……」

 

俺はちょっと言葉を選んだ。

 

「遠いところだからね。こっちに来る人はほとんどいないと思うよ」

「ほとんど、ですか……」

「うん。……ミチオ・カガという名は聞いたことある?」

「いえ、わかりません」

「そっか……郷里じゃ英雄のごとく話が伝わってるんだけどね。その人のおかげで俺もこっちに来れた様なものかな」

「英雄、ですか」

 

ここはミチオ君がいる世界なのだろうか?

それともいない並行世界?

……いつか帝都に行けばわかるだろうか。

 

 

 

昼食前に戻ると言って、俺は一人で迷宮に来た。

パーティーは組んだままだ。

この状態で戦えば、経験値は俺とミレーナさんの2人に入るからな。

キャラクター設定も経験値周りを少しいじり、取得経験値5倍と必要経験値減少5分の1を、取得経験値10倍のみにする。

 

今日はこのまま午前中いっぱい、六時間の狩りに出発だ。

 

 

今日も順調だ。

俺もそろそろ初心者とは呼べないくらいになったな。

鼻歌とか歌ってもいいくらいに余裕があった。

 

探索の途中、またモンスターハウスに遭遇した。

今回はすぐ部屋へ入り、壁を背中にして戦ったおかげで終始安定して戦えた。

そもそも戦士のレベルが上がったおかげか、ダメージも昨日より少なかった気がする。それともHP上限が上がっているのか。

 

アイテムボックスを空にして迷宮に入ったが、六時間後にはリュックまでいっぱいになっていた。

探索者のレベルが2つあがっているのに、だ。

 

これで午後いっぱいも潜るとすると、今日中にレベルが二桁にのりそうだな。

 

魔結晶もあれば金も稼げて良かったんだよなあ。

1日百匹の狩りを四倍効率で250日狩り続けるだけで黄魔結晶になる。買取3割増だと十三万ナールになって、税金も余裕で支払える。

……1階層でここまで稼げるとかチート過ぎだろ。

 

 

狩りを終え、ワープで家に戻ると二人とも留守だった。

どこにいるのかと疑問に思ったが、パーティーを組んでいるおかげで大体の方向はわかる。

村の中心にいるようだ。

 

昼食の準備、まだかなあ……。

 

ちょっと見に行ってみるか。

手が離せない仕事なら手伝ってさっさと終わらせよう。

 

 

そう思って村の中心、ちょっとした広場になっているそこへ向かったが、何やら村人が集まっていた。

 

集会? 今日はなんかの日だったのかな?

 

遠目でみた俺は一瞬そう思ったが、集まった村人を囲む様に何人か立っている男達は、みな武器を持っていた。

 

そう、囲む様に……というか、例えるなら銀行強盗が人質を監視しているように……っ!

 

鑑定!

 

盗賊Lv11、盗賊Lv5、盗賊Lv2、盗賊Lv8、盗賊Lv6、盗賊Lv8。

周りに立っている男たちは、一人の例外もなく盗賊だった。

 

「なんで……」

 

俺はかすれた声で呟いた。

 

なんで、盗賊? なんで、今更?

 

俺は思わず叫んでしまった。

 

「おととい来やがれぇぇぇぇ!!!」

 

 

「✕✕✕✕✕✕!!」

盗賊Lv11のやつがこっちを指差し、何事か言った。

 

あ、ヤベ。

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