眺める事しか出来ない俺が彼女たちを見守ったか 作:はとみかん
奏とあった日からかなりの時間が経った。
また、いつもの日々が繰り返された。
朝起きて、朝食を食べて、学校に行き、給食を食べ、家に帰り、夕食を食い、寝る準備をしたら寝た。
休日は姉に連れてかれ、色んな物を持った。姉が出かける用事が無ければ自分から外に出て色んな所を回った。
頼まれれば色々な物を買って来た。
最初は新鮮だった。
若い頃にやった事をもう一度出来たから、元々は一人っ子だったから。
だから老いて、色んな事に縛られる前に出来る事をやった。
姉や親と話した、甘えた、遊んだ、過ごした。
色んな事をやって、楽しんで、怒られて。
沢山の場所に連れて行ってもらって、視た景色を。
確かに、楽しかった、視た物は、やった事は、遊んだ事は。
それでも黎明は退屈していた。
今までやっていた事が出来なくなったからだ。
リンバス、ルイナ、ロボトミー、馬鹿騒ぎしていた友たちとの会話、それ以外にも探せばあるだろう。
若返ったからか、転生前の若い記録を思い出す。
『それらを紛らわしたい。』
そう思ったから黎明は他の事を探した、その中で見つけたのが散歩だ。
足をのばせばどこにだって行ける事に目を付けた。
それに気付いた時から、気づけば遠くにいた。
初めて遠くに行って帰って来たら心配された、当然のことながら人は急に消えられると心配する、思い返せばその頃から姉さんが買い物に連れていくようになった気がする。
でも、退屈だった日常を、少しは紛らわせられたから。
だから毎日、遠くへ行った。
連絡用のスマホも持たせられた。
連絡には過去の名残りでナイトコードを使った。
でも、何時しか歩いた所は見覚えのある風景が付くようになった。
その頃には、目が昏く、黄昏の色になっていた。
その日は、おつかいでショッピングモールに来ていた。
白菜、トマト、きゅうり、レタス、えのき、豚肉、鶏肉、鳥ささみなどを買って、袋に詰めなおして軽く見てから帰ろうと思った時、
「黎明?」
過去の、懐かしい声がした。
私は、宵埼奏、何か惣菜とか買おうと思って、こっちに来てみたら、買い物袋を持った、黎明と再会した。
「かなで?」
「やっぱり黎明だ」
「久しぶり」
「久し..ぶり」
久しぶりに会った黎明はあの頃と違って喋らなくなっていた。
「何で、ここに?」
「色々買いに、ここに来たんだ」
「...何で、僕が分かった?」
「あの時と変わらない、見た目だから」
「うん、歩きながら、話そう」
「分かった」
私たちは移動しながら話すことにした。
色んな事を話した。
「あの時、なんで黎明はあそこに?」
「寄り道してたら、ギターの音が聞こえて、向かってみたら、会った」
あの日何故、あそこにいたかを聞いた。
「何でまた会えるって?」
「勘と、いつも言ってる、口癖」
また会えると言った理由を聞いた。
「生活は、どうだ?」
「ぼちぼちかな、元気にしてる」
調子が戻ってきたのか、生活の事を聞かれたり、
「音楽は、好きか?」
「?好きだけど」
音楽は好きかと聞かれたりした。
その後は、色々な物を買った、話しながら物を選んだ、少し懐かしいような、黎明との時間を過ごした。
「家まで、運ぼうか?」
突然、黎明がそう言った。
「いいの?」
「時間もまだあるし、帰る時はこれで帰る」
そう言って、黎明は鞄の中から、ランタンを取り出した。
「なら、お願いしようかな」
「はいよ」
黎明は奏の分の袋も持って、
「奏、案内、よろしく」
歩き出した。
「ついてきて」
奏も、それに続いて歩き出した。
黎明の目は、気づけば、オッドアイのように、左眼が黄昏の色に、右眼が夕陽の色になっていた。