陽乃中、雪乃下で、いろはすを片手に結いする、間違いつづけた彼女たちの青春は、フィナーレへと結する。完   作:mokahurapeto-no

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if 比企谷が教師だったら...

 朝日が昇る。

 照りつける太陽を背に、歩き出す。

 比企谷八幡、20歳。新人教師。

  

 今日も今日とて、

 

 「やっはろー、比企谷先生!」

 「おはようございます。比企谷先生」

 

 生徒に絡まれる。

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

やばい、理性が持たない。

 そりゃそうだろ。

 隣のあほピンク髪ガールは胸当て過ぎだし、左手側にいる氷姫は胸元開け過ぎだし。

 

 まだ新任だっていうのに、犯罪歴を経歴書に書くことになってたまるか。

 平凡に過ごしたいのだ。

 ただ優雅に。

 

 「ねえ、先生。私の名前覚えてる?」

 「おお、勿論だぞ。由比ヶ丘結衣だろ?」

 「違うぅ!結衣ヶ浜結衣!」

 「あー、悪い。ちょこっと間違えた。」

 「えー、ほんとかなぁ?そんな間違え方する?」

 「由比ヶ浜さん。先生は新任の教師だもの。なれない中でミスするのは不思議ではないわ。」

 

 おお、なんてええこなんや。

 この子は成績甘めにつけよう。

 

 「ありがとう。ゆきのん」

 「...先生。名前を憶えてくれているのは嬉しいのですが、その、、フランクすぎませんか?」

 「いや、大丈夫だ。本によると生徒との距離を縮めるにはあだ名が有効らしい。」

 「な、、なるほど。」

 「いや、絶対違うから。先生、まじでやめてね。」

 

 由比ヶ浜なんちゃらにそう言われた。

 おかしい。間違ってるはずなんてないのに。

 近頃の女子高生と言うのはわけわからん。

 

 だが、取り敢えず、あだ名呼びはやめておこう。

 

 

 

 

 

_____

 

 

 学校に着き便を取り、昼休みを迎えた。

 職員室は静かすぎてきついし、かといって教室は騒がしすぎる。

 ので、学校の中の空き教室で食べることにした。

 

 今日は唐揚げ弁当。

 溢れんばかりの肉厚さ、これで居てお値段580円。

 コスパは最高だ。

 まずは一口。

 

 う、うまい。

 ジュワっとあふれる肉汁。ジューシーながらもジュワっとカリッとを両立している衣。

 これはロリ巨乳と同じくらい両立の難しさだ。

  

 これを妄想ではなく体現した。

 素晴らしい逸品でございます。

 

 端に留置されているマヨネーズにつけ、唐揚げをほおばる。

 

 「やっはろー」

 

 ...っち、邪魔者が入りやがった。

 

 いったん唐揚げを元の場所に戻し、橋を置く。

 

 「なんで由比ヶ浜がここにいるんだ?」

 「それはー、先生を尾行してきたからです!」

 

 生徒から早くも犯罪者が出てしまった。

 ストーカだなんて、、、

 八幡先生は悲しいよっ!

 

 「はあ、、なら一緒に飯食うか?」

 「やったー!皆で食べるの初めてだー」

 

 ん?み..んな?

 

 「私、大人数で食べるの初めてだわ。」

 「私もゆきのんと食べるの初めてー」

 「戸部、教室はこっちだぞ」

 「お?おお!隼人くーん。ありがとうー」

 「はあ、結衣先輩。上級生多すぎて肩身が狭いんですけどー」

 「大丈夫だよ。いろはちゃん!みんないい?優しい?先輩だからっ!」

 「いや、今疑問形でしたよね!?はあ...誰か~」

 

 ...ガヤガヤと騒がしい連中だ 

 

 ふっと自嘲気に笑う。

 

 まあ、なんとなくこんな展開になる気はしていた。

 教師という仕事は面倒だ。

 一人ひとり、性格も違ければ、好きなものも違う。

 なのに、その人物に対して最大限のポテンシャルを発揮させるのを要求される。

 

 生徒だけでなく、教師だって一人の人間だ。

 そんな一人一人に最適解なんて出せやしない。

 

 だから、一度はやめた。

 目指すことを諦めた。

 逃げ出した。

 

 深夜、一人で酒を飲んでる時ふとそう思った。

 それから、はだしで外に駆け出した。

 目指すところなんてなかった。

 ただひたすら、息が切れるまで走った。

 思えば「何か」から逃げたかったんだろう。

 

 将来、過去、未来、就職、自分への不信感、

 そんなものが自分の中で渦巻いていた。

 

 周りから見れば異常者だっただろう。

 そりゃ、はだしで走ってたからな。

 

 でも、自分の中の常識を捨てたかった。

 そんな気分だった。

 

 走って、走って、走って...

 公園に着いた。

 夜明け前の事だった。

 

 ベンチに座って項垂れていた。

 呼吸は浅く、息は絶え絶えだった。

 

 朝日が昇る。

 陽光が差し込む。

 ああ、綺麗だと思った。

 

 今までだって、美しい景色は見てきた。

 別に今見ている光景が俯瞰してみた時、一番美しいわけではない。

 景色だけで言ったら、もっと美しいものだってある。

 

 でも、この景色が一番美しかった。

 他の何よりも..

 

 

でも、この感動は伝えなかったら、誰も知らないまま消えてしまう。

 人に伝える。託す。

 

 自分がやらなければ、と思った。

 この感動を知ってほしいとそう思った。

 

 だから、戻ってきた。

 

 だと、言うのに。

 まったく。

 

 「ふふっ」

 

 自分でも頬が緩んでいるのはわかった。

 こいつらときたら、青春ばっかじゃなねーか。

 俺の思いはどうなったのよ。

 

 まあ、いいか。

 こいつらはこれから知っていくのだから。

 色んなものに触れて、見て、混ざり合って、時には反発して、

 

 そうやっていつかは、俺と同じように感動するようになる。

 だったら、俺の役目は彼らをそこまで導くことだ。

 

 大変そうだがな。

 

 ああ、やはりだ。

 やはりと言わざるを得ない。

 

 俺が教師になったのは間違っている、とな。

 

 

 

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