呼ばれてますよ、魔王様   作:英雄祈願侍

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呆然

 

 

 

「全く…酷い目に合ったわ」

 

アウラはとぼとぼと道を歩きながら、今日の出来事について思う。

朝早く起き、この地を治める領主と対談をして人類との関係性を深める。

その後には、じゃれついてくる子供の群れの相手をしていた。そんな時に昔会ったエルフに何故かこの街で再会し、その流れで食事を共にする。そこまでは良かった。

 

「なんなのよ、彼奴ら。そこまで貧困なの?」

 

数百年生きている筈なのに、この程度の食事代ですら払えないほど極貧生活を余儀なくされている彼女らの今後を馬鹿にしながら、帰路を歩く。

 

少し先にある小さな庭を持つ家があった。その窓からは騒がしい声が溢れてくる。

それに耳を傾けていると、心地いい風が流れてくる。

汗の滲んだ服の先を持ち、パタパタと風を送り込む。どきどきと鼓動が激しいのは、きっと日差しが熱いからだろう。

左手にある階段を昇りながら、穏やかな光景と全く反する思考をする。

 

「どうしたら、彼奴らを苦しめられるかしら」

 

やはり、やられっぱなしでは許せないのだろう。

理屈に合わないだとか、自らに即さない道筋だとか、評価に対する思考が、この言葉に反応する。想像したことを、頭の中で臨床実験し、失敗すれば次の策を練る。

 

「私はね、やり返すタイプなの。それも同じ程度ではなく、倍以上にね」

 

暴君だったエルフとドワーフ。あの者達への復讐をアウラは誓った。

 

「でも正面で戦うのは、怖いわよね…あぁ、闇討ちでもしてみる?」

 

あぁでもない、こうでもないとアウラは頭を捻り続けている。思考の海に身を沈めて短くは無い時間が過ぎた。

ふと我に返ったのは、脇の下に湧いた汗がたらりと腕を伝わった時だった。

反射的に顔を上げると、小鳥を大きな鳥が寄って集って虐めていた。

唐突にアウラは足を止めた。何の前触れもなく、突然「そうだわ」と呟く。

 

「数で押せばいいのよ、それなら安全に功績を上げられる」

 

あの者達は魔族に敵対する癌だ。ならばその芽を事前に摘んでおく事は大事だ。

魔族という種族に誇りなんてものは無いけど、一丁前に善人を気取ってみる。

 

「私が街の住民にせこせこと魔法を掛け続けた甲斐があるってものね。言葉で欺いて、魔法を教える教師役という地位を築いてきた退屈な日々もようやく報われる」

 

永い日々であった。楽しくも無い子守りも。

魔族の中で、偉いはずなのに。この街には使者として訪れたはずなのに。

待遇も、扱いも保育士みたいだった。

 

「人類は無駄が多い種族、同種にでも襲わせれば手心を加えて、攻撃を緩める」

 

死人に対して、その死を悼み、思いを繋いでいく。馬鹿馬鹿しい、生きているものに思うならまだしも。その気遣いが自らの首を絞めるなんて気が付きもしないなって。

ある種確信染みたものを感じつつ、人類の習性に今は感謝した。

 

「あぁでも、本当はこんな中途半端なタイミングで決行するつもりは無かったの」

 

地面に転がっている石を蹴りながら、変える気のない選択に悔いを見せる。

 

── でもしょうがないわ、だって私の誇りを穢されたから

七崩賢という地位に恥じる扱いをされたのは癪だわ

 

「やっぱり名案ね。折角温めてきた作戦だけど…それもしょうがないわね」

 

アウラは玩具を手にした子供みたいな無邪気さを見せた。

鼻歌混じりにスキップのような歩き方をしながら、空を向上げる。

雲が少しあるだけで、青い空だった。

目に入り込んでくる太陽の陽ざしには億劫そうに手で遮りながらも、空と同じような無限大の可能性を妄想する。

 

「そうすれば魔王様の側近になれるかも…」

 

瞑目しながら、もしもの未来を想像する。

アウラがその地位に咲き誇る、そんな幸福な結末を望んで。

 

「最近はシュラハトがずーっと居るし私の入る隙が無いのよね」

 

先程の幸せそうな表情から一転恨みを纏った、憂鬱気な表情へと変わった。

コロコロと表情を変える様は、不審者であったが幸い周りに人影は無い。

 

「あぁ、愉しみね。表情が絶望に染まってくれればそれ以上に嬉しいことは無いわ」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

急ぎ足で、食事をした場所から去った2人は、荒い息を吐き、肩で空気を切りながら雑談に勤しむ。

 

「はぁ…、危なかったね」

「何がだ」

「周りにアウラの不死の軍勢が居たんだよ」

「あぁ、あの甲冑を着ていた奴らか」

「え、気づいてたの?」

「あぁ。一見すると衛兵のようだが生気を感じなかったな」

「…まぁ話が早いからいいかな。襲ってきそうだけど、何故か何もなかった」

 

先程の場所は、人気が無かった。アウラからすれば絶好のポジションという事だ。

何度か窓の外に視線をずらして、周囲の様子を見ていたのには2人とも気がついていた。

物騒な鎧を見たからこそ逃げたのであって、決して金欠だから魔族であるアウラに集ったのでは無い、と弁明を混ぜつつ状況を分析する。

しかし広場を行き交う人々の横顔を眺めながら、じわじわと迫る魔の手への諦観の念を浮べた。

 

「…この街も、もう長くは無いかも」

「そうか?彼奴も街に溶け込んでいるようだったが」

「アウラさ、相変わらず人間の事なんとも思ってないよ」

「…成程」

 

口籠りながらも「救うのは難しいかも」と足をぶらぶらと揺らしながら、冷静に判断を下す。

あの時、子どもの世話をしていたのにも拘らず目には光が宿ってはいなかった。

それ以上にフリーレンは昔であったアウラがそのような誇りを穢される行為を嫌っていた事を覚えている。

人類という魔族からすれば、家畜以下の存在に自らの時間を奪われることを何よりも嫌っていたはず。偶々、気が向いて…なんて理由ならばどうしようもないが、そんな事では片づけられないほど、あの行為には身が入っていた。

 

「話や表情は確かに親しみを覚えていたけど目が笑ってない。それに子供たちに魔法使ってたでしょ?あれの被害者がこの街に溢れてる可能性がある」

「あの魔法を安全だと思っているのも不思議だな」

「うん、なんであれを公衆の面前で使って許されているのか分からないけどね」

「なんらかの思惑による結果だろう、それは今考えても仕方ない」

 

確かに。とその思考の無益さを理解した。それは今の状況において重要ではないということぐらいフリーレンにも分かっていたからだ。

 

「まぁ、そんな感じで終わりそうだなって」

「ちょっと待て」

 

アイゼンは腕組みしていた左手で、眉間を抑えた。思い悩んだ時に彼が見せる癖であった。

 

「つまり、パンデミックみたいな事が起こり得ると」

「そうだね」

「住民を操り同士討ち、もしくは俺たちの隙を作るって事か」

「私たちが殺せない、人質を取られた状態で思う様に動けないところを掬い上げるつもりだよ」

 

ふーっと大きく息を吐いた後、アイゼンは眼を閉じて仮説を立証しているらしい。

しかしフリーレンにはその結果が分かっている。魔族とはそういうもので倫理観何て度外視の策を練る奴らだと。

あの軍勢にこの街を襲わせればひとたまりも無いだろう。この街の衛兵を見てもあの大魔族の攻勢に到底耐えられるとは思えない。

鞄の中から一枚の紙を出して、絵で描きながら作戦を立てる。

 

「多分私たちが魔族に敵意があり、反旗を翻そうという思想を持っている事は伝わっている。アウラはそれに対し、何らかの行動を起こすはずだ」

「確かに、先程もこの時代についての感想を聞かれたぐらいだしな」

「彼奴はずっと私達を侮っている。だから勝てて当然の戦だと思っている筈だ。だから援軍何て呼ばずに、挑んでくる」

 

背景で聞こえる噴水の音に掻き消されるぐらい小さな声で告げる。

物憂げに景色を眺め、曇天とした心を何とか晴らそうとする。

 

「それは本当か?嘘では無いだろうな、幾らなんでも一人でやる必要があるのか。それは…」

「合理的じゃない、でしょ?でも獣の思考を私たちが理解できないのも当然だよ」

 

アウラには見えない角の生えた化け物の絵をペンで指しつつ、どういう習性を持つかを箇条書きで羅列する。

 

「魔力探知は嘘をつかない。あの魔族はそういう奴だよ。あと早ければ今夜に決行されるかもしれない」

「その予想が外れる事を願うばかりだ」

「さぁ…、私のも予想でしかないし」

 

曖昧に首にひねりながら、どちらかと言えば生を脅かす可能性が少しでもあったのなら、尻尾を巻いて逃げるタイプだった筈だと思い返す。この予想も魔族に対する思いが入り混じって生まれた濁りなのかもしれない。

 

「取り合えず作戦を言うね──」

 

永い間語り合っていたのだろうか。周りに行く人々の軌跡は重なり過ぎて最初期のものがどれか分からないほどであった。

空はもう変わり、夜の訪れを告げる。カラスの鳴き声は趣深く、時間を知るのには最適だ。

 

「成程、だが上手くいくのか?」

「やってみなきゃ分からない。アウラは昔と違うようにも見えたから…」

「それでは ──」

「でも」

 

曖昧な返答にこの作戦への不安を覚えたアイゼンが否定をしようとするが、フリーレンは真っすぐした視線でそちらを向き、口を挟んだ。

 

「アウラは絶対に攻めてくる、そして慢心もする」

「その自信は何処から…」

「あいつが魔族である以上、その宿命からは逃れられないよ」

 

持っていた杖をギュッと握りしめて、最悪の未来が起こらないようにと祈った。

もう会話は終わりだと、アイゼンはこの街で取った宿に向かおうとする。

仮に今夜戦いが起こるのだとしたら少しでも身体を休めておくべきだからだ。

その後ろに居るフリーレンは、前を行くドワーフを見ながらも焦点は別の何かを見ている。

戦いを想像しているのだろうか、脚を少し痙攣させて、怯えとも武者震いとも取れる反応を見せていた。

 

「…私だって強い相手との戦いは大っ嫌いだ」

「どうした、フリーレン?」

 

先に向かっていたアイゼンが、中々来ないエルフを心配して振り返る。

 

「何でもないよ」

 

ベンチから立ち上がり、アイゼンの背中を追いかける。

夕焼けに差し掛かった空は、どことなく不穏だった。

 

「ただ嫌な事は早めに終わらせないとって。そう私は考えるし、それはアウラも同じって事だってことだよ」

 

誰にも聞こえない声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

かつんと靴が地面を打ち鳴らす音が聞こえる。

ガシャンガシャンと音を立てながら、地面を踏みしめる。

軍勢の行進、その物音に何人かの住民は顔を覗かしていた。

昼間は感じなかった死臭も今は酷く臭い。

 

「あら、観客が多いわね」

 

夜も更けて、良い子はもうベッドに入る時間だ。

道には人の影はもう無く、灯りも街灯の仄かなものしかない。

窓から、扉からこちらを見ている住民に手を振り挨拶をしながら、アウラは嗤った。

 

「可哀そうね、今日でお前たちも終わるのだから」

 

こちらに駆け寄ろうとした子供はアウラのいつもとは違う雰囲気に、尻込みした。

周りの人間も、いつものように冗談交じりの雑談をしようと近寄ってこない。

当然だ。いつものように人類の歩み寄る笑顔を浮かべてないのだから。

今日でくだらないおままごとを終わらせるのだから。

 

「賢いわね。もうお前たちの価値なんて無いのだから構う義理無いのだから」

 

 

 

「随分な性格の変わりようだね」

 

ちらりと声のする方を向けば、杖をこちらに構えるエルフと、斧を掲げ臨戦態勢に入ったドワーフが居た。

 

「あら、フリーレンじゃない?それにアイゼンも。どうしたの?こんな夜遅くに」

「そっちこそ。その後ろの軍勢は何」

「これ?そうね、散歩よ。私は寂しがり屋だから多くの人間に付いて来て貰ってるだけ」

「死んでいる人間に?趣味悪いね」

「そう?良い趣味だと魔王様からは言われたのだけど」

 

「「……」」

 

「まぁ良いわ。お前たち、私に従いなさい」

 

閲覧者だった住民たちは、突然身体を動かしこちらに集まってくる。

数はその死人の軍勢には及ばないが、無視が出来ないほどであった。

「なにこれ」「身体が勝手に」なんて悲鳴を聞いて、アウラは一層笑みを深めた。

 

「役者は揃ったわね」

「やっぱり最悪だよ、お前」

 

その言葉にアウラは瞼をピクつかせる。癪だったらしい。

だがあくまでも平静を装い、軽く咳払いをして気持ちを入れ替えた。

 

「── まず、お手並み拝見といきましょうか」

 

戦いの火蓋が切られるとまず動いたのはアウラだ。

兵士の見た目をした何かが、剣を振り上げて迫ってくる。それをアイゼンは受け止めながら押し込み、戦いは開始した。

 

剛腕から放たれる一撃により、数人の軍勢が崩れ落ちる。

無駄な足掻きをするアウラを、その目論見ごと踏みつぶすと謂わんばかりの勢いだった。余波だけで敷かれたタイルは剥がれている。

 

「ふざけやがってッ!!」

 

アイゼンの口腔からは、怒声が出ている。この非人道的な行為に苛立ちを覚えているのだろう。しかし太刀筋は冷静で、住民には傷一つ付けていない。

 

「あんまり離れないでよ」

 

そんなアイゼンを的確に援護しつつも、目の前の死人の軍勢の相手もするフリーレン。

一番頭を使っているのは彼女だろう。縦横無尽に動き回るアイゼンの先を予知しているかのように魔法を偏差打ちしている。

 

山をも越えそうな跳躍によりまた一人、軍勢はその活動を止めた。

大地に激震が走るその様に若干気おされながらもアウラは決断する。

 

「お前たち、使えないわね…」

 

拮抗する戦況に嫌気が刺したのか、自らもその攻めに加わる。

そこからはより一層劣勢となった。

七崩賢に恥じない威力を誇る魔法を放ち、人類を追い込んでいく。

 

「ねぇ!そんなもんなの!?コケ脅しの威勢だったの!?」

 

嘲笑いながら魔法を振るう、乱雑でありながらも一撃でも食らったら身体のその部位は弾け飛ぶだろう。そう思わせるほどの威力を肌で感じるれる。

傀儡(ぐくつ)と化した兵士たちがその合間から責め立てる。

隙の無い猛攻、風圧だけで周りの地面が抉れ、土埃が舞った。

 

「その程度?」

 

だがフリーレンは怜悧にそう言いながら、その魔法を受け流す。水のように、それが束ねられた川のように。

その程度の力では心は一切乱れぬと易々と受け流す。

暴れる幼子を宥める母の如く、荒れ狂う子供に憐れみを持ち、命を沈めてあげるように。

斧の一撃一撃に、力は最小限に、されどその一刺しに相手を明確に殺す意思を持たせて。

 

「ねぇ、その程度で勝てると思っているの?」

「言うじゃない?もう少し速度上げましょうかね!!」

 

フリーレンは少しずつ押され始めた。威力が先程よりも増し、衣服の端に切れ込みが入る。

住民たちが拙い動きで迫ってくるのをいなしながら、アウラの相手をするのは気の遠くなるほどの作業であった。

優勢だ、負ける筈は無いと高を括っていたのに攻めあぐねている現状にアウラの表情に少しの焦りが混じり始める。

蟻だと思っていた相手が蝶だったように。しかし所詮は人類。その程度だ、私の本領を発揮するには足りない。そう目の前の考えに早々に見切りをつける。

 

「長く戦っても疲れるだけね。もう終わりにしましょうか」

 

事実としてアウラの身には一切の傷は入っていない。彼女からすれば衣服が少し切れるなど誤差でしかないだろう。この程度の蟲に傷を付けられる自分の甘さには怒りこそ湧けど、目の前の相手には侮りしか浮かばない。

 

しかし、それが命取りだった。

 

「ふふっ、良かった。慢心を、油断をしてくれて、ね」

 

そう言い放った瞬間、空気が変わった。静かなちっぽけだった魔力は、荒れ狂う嵐のようなものに変化した。

その華奢な身体からは考えられぬ程のオーラに木の枝に停まっていた鳥たちは怯えるように空へと逃げるように飛び立っていた。

地面が叫びを上げ、世界が少し軋んだ。

 

 

 

── 作戦はこうだ。

 

『アウラは私たちが劣勢になると意気揚々と自らも戦いに加わる。だけど、追い込まれつつも拮抗しないと出ては来ない。最初は軍勢の後ろで気色の悪い笑みを浮かべているだけだよ』

 

前に相見えた時も、あの魔族は自ら闘いの場に出てこようとはしなかった。

空に浮かび、こちらを眺めるだけのチキン。それがフリーレンの予測するアウラの性質。

 

『では、どう演技する?俺は手加減が下手だぞ』

『私が魔力を普段から抑えてるのは、知ってるよね』

『あぁ』

『それを使って油断を誘うよ。魔族は魔力量を偽るなんてプライドの無い行動への理解が無い。だって自らの誇りが全てなんだから、それと反する事は考えられない』

 

言葉の節々から自らに対する誇りがあると感じられるほどの性格で、なんとも分かり易く作戦を立てられる。他の七崩賢ではこう上手くはいかないだろう。

 

『想定外の行為をするという事か』

『単純だけど、魔族にはそれが一番効果的だよ』

 

 

 

── 作戦通りだね。

 

上手くいきご満悦ではあったが周りは酷い有り様だ。戦いが終われば暫くは復旧作業に追われるだろう。

だが、そんなことは知らないと、この後のことなど考えるなど野暮だと。かのエルフは思考を閉ざした。吹っ切れたとも言える。

その代わり様に、アウラはズリズリと後退りして、自らの傲慢を呪った。

フリーレンの周りから噴き出るオーラは、目の前に御馳走があるのだからと、じっくりとこの一時を噛みしめように、じわりじわりとアウラを囲んでいく。

 

── 想えば、ここ数週間は激動の日々であったとフリーレンは思う。

長く過ごした場所から離れて、街に出た。当時は何気ない気持ちだった。

しかしこの世界の変わりように悪戦苦闘して、魔族という種族の恐ろしさをどうすれば周知させられるのかと考えていた。

あの場にいた方がよかったのかもしれないと何処か迷いがあった。

 

この瞬間には、頭に霧がかかったような状態は綺麗さっぱり無くなったが。

 

だからこそ今日という日に感謝しよう、この魔族に出会わせてくれた運命に感謝しよう。

今ならなんだって出来る気がする。それぐらいには幸せだ。だってこれで魔族は企みを持っていると分かるはずだから。

故にだ。早く終わってくれ、と目の前の魔族の最期の面を頭に覚えさせる。

 

最期の一撃を放とうと杖を再度構えて、アウラに向ける。

かの魔族の瞳は涙により潤いを持ち、身体は後悔の念で心配になる程震えていた。

 

だが、そんな窮地に救世主が現れる。

 

「やりすぎです。独断専行で人類に攻撃を仕掛けるなど…七崩賢という肩書が泣いています」

 

「お前は…?」

「始めまして、そしてさようなら。今日はもう閉幕ですよ」

 

その言葉を聞いた途端、尋常なまでの睡魔がフリーレンたちを襲った。

 





前回の日常パートと今回の戦闘パートの寒暖差で読者を整わせる算段。
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