とある幻想の四重響奏 -Quartet of a Imagine-   作:独楽と布団中の図書館

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はじめましての方ははじめまして、もしかしたら以前ホームページをご覧になられた方は久しぶりでございます。
2011年1月に始め、2014年10月現在に閉鎖したうp主のサイトをサルベージしたものを少しずつ直しながら載せていこうと思っています。
以前まではmyuuuと名乗っていましたが、今現在はホームページのタイトルだったものを名前にしています。




00. Opening of Tragedy

 

 

 彼は、『上条当麻』は懐かしい夢を見ている。

 夢を見ている、と。そう自覚できるほどに、この夢は彼の記憶に鮮明にこびりついていた。

 

 それは、『物語の基点』であり。

 本来の物語、『一人の少年が、ベランダに引っかかっていた少女と出会って始まる物語』の根底を大きく変容させる『きっかけ』だ。

 

 根底が変わる。変容する。

 

 その始まりはそう、――悲劇だ。

 

 幼い頃から人一倍『不幸』を引き寄せてしまい、『厄病神』だと罵られ忌避されてきた少年は、七歳の頃に『良くないもの』を呼んでしまったのだ。

 

 何の因果か、この世ではないどこかから落ちてきてしまった『化物』によって。

 

 本来ならばこの時点で関わることのない存在によって、『善人(ヒーロー)』になるはずだった少年の未来は、その在り様を大きく変容させることになる。

 

 

 

■Opening of Tragedy■

 

 

 

 曇天の空だった。降り注ぐ黒い礫が世界を赤色に染めていく。

 塵に煤けた体を雨が洗い流しいくのも、何かに浸かった体がずぶ濡れになるのも構わず、ただ空を見上げていた。

 

 

 体は死んでいて感覚も無い。動かすこともできない。

 動かそうとして胸部から腹部にかけて鋭い痛みが奔った。顔を持ち上げれば胴の右側から左側まで一直線に切り開かれた体が見える。切り開いて中身を引き摺り出した後みたいだ。身体が二つに泣き別れていた。下半身は消えていた。右肩から先は腕ごと消えていて何かが溢れ出ていた。よくわからない。

 

 浸っているそれが自分の血液だと気づいた。致死量だとか、そんなことを考えなくても、ああ死ぬんだな、なんて考えに行き着いた。今生きているのが不思議なくらいだ。普通はもう死んでいるはずだ。

 入っていた中身が無いのだから容器だけで存在する理由はない。尚も中身が溢れ出ていく。

 

 もう時間が無い。でも、何故こうなったのかもわからない。始まった瞬間に終わりかけていた。理不尽だとも思わなかった。いや、他者と自分の違いも、幸福だとか不幸も理解できていなかった。だから、何も感じない。

 ここで終わりを迎える。その先があるかどうかは考える必要もない。あったらその時に考えればいいことだから。

 意識は在っても無いようなもので。かすれていく視界と砂のように崩れていく記憶が終わりを克明に訴えていた。

 

 

 

 

 

 白んでいく世界に、ふと、影が落ちた。黒い影。それは不思議な形をしていた。

 

 

 

 

 

 まず見たことも無いような大きさだ。家一軒くらいの生き物なんて見たことがなかった。そしてそれは体中を堅そうな鱗で覆っている。金槌で殴った程度では割れそうもない分厚い鱗だ。それから大きな翼が生えていた。どうやら飛んできたらしい、今は地に腰をおろしているからかたたんでいる。長い首だ。麒麟でもここまで長くない。鋭い牙と大きな顎だ。クジラなんて一噛みで引きちぎるだろう。

 

 なんだったか。こういう生き物をなんて形容するんだろう。

 

 ああ、そうだ、思い出した――、

 

 

 

 

――『竜王(ドラゴン)』。

 

 

 

 

 

 そういったはずだ。架空の生き物で、火を吹いたり、家畜を食い荒らしたりするような奴だ。そんな悪者がこんなところで何をしているんだろう。

 それに答えるようにその口が開いた。

 

 

 

『――我ガ名、〈ash■■iud者ghi〉■i■wスsk』

 

 

 

 驚いたことにソイツは喋れるらしい。ただ、耳じゃなくて直接頭に伝わってくる感じだが。正直、今の体で頭を揺らされるのは、止めに等しい。痛い。

 

 

 

『アアソウカ、人間ニハ『sa識w■e』ガナカッタカ。貴様、名ハ?』

 

 

 

 知るか。そんなもの憶えていない。いいから喋るのをやめてくれ、頭を揺さぶるな。

 

 

 

『答エル『力』モ持タヌカ―――』

 

 

 

 聞けば聞くほど声らしくない声だ。本当は姿も形も持っていない『モノ』に、無理やり見えるような姿を付け加え、必要だから意思を伝える媒体を後付けで組み込んだみたいな。まるで、役割のために必要だから仕方なく付けたような、意思を伝えることに意味を見出していないような。あたかも自分は人間などの声で話をしたいわけではないと露骨に言っているみたいな声だ。

 

 

 

『ナラバ我ガ名付ケヨウ、agy■■s■a子fu■■。ソノ空白、我ガ埋メル』

 

 

 

 瞬間、身体が開かれた。何かが無理やり身体に入り込んできた。

 圧迫され、もとからあった中身が右腕として押し出された。中身がミキサーにかき混ぜられるみたいにぐちゃぐちゃになっていく。そうして原型もなくなった中身のかわりに全身を竜が埋めていく。自分として残されたのは元から中身が詰まっていた頭と押し出された右腕だけだ。

 でも、先まで空っぽだった中身はすべて埋まった。必要な分はすべて代替物で埋まってしまった。容器に存在理由が詰め込まれてしまった。

 だから死ぬ理由もなくなった。

 

 

 

――『我ガ名ハ、■■■■』

 

 

 

 

 身体の中から聞こえる声に。

 

 

 

 

――『神ヲ浄メ、魔ヲ討ツ『li■s意■■』ヲ持ツ子供ヨ。貴様ニ名ヲ――』

 

 

 

 混濁する意識は――、

 

 

 

――貴様ハ我ラガ………………、

 

 

 

 

 最後にそんな、歓喜するような声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして気づいたときには俺はどこかの病院のベッドの上で、体のいたる所に点滴を差された状態で目を覚ました。

 

 

 

 事故に巻き込まれたのだと、医師に教えられた。

 全治半年以上の怪我だったのにどうして、と看護婦に言われた。

 

 

 

 何日かして『上条示道(カミジョウ シドウ)』とかいう男がやってきた。いかつい顔の一切表情の変わらない鉄面皮の男だった。

 どうやらその男は後見人を名乗り出たらしいのだ。

 最初はどんな物好きだろうと思った。次に、なんで記憶も名前もない子供の親なんかになろうとしているのか知りたくなった。興味は尽きなかったがそれを聞いても彼は答えなかった。

 

 

 それから何を話したのかは覚えていない。

 ただ必要最低限のことだけ教えられ、必要な分だけ物を与えられた。

 

 

 そして二年間ほど、俺が便宜上9歳になるまで共に暮らすことになった彼につけられた名前は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――『上条当麻』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえずプロローグ。
基本的に一話の文章量は2000から5000くらいになるので少々物足りなくなるかもしれませんが、そこは三年前の処女作ということでご容赦ください。

■2015/02/07
第一章は文章も少なくばらつきがありましたが、第二章あたりから平均が5000~7000程度になりました。……何にしてもばらつきは残ってしまいましたが……(汗
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