とある幻想の四重響奏 -Quartet of a Imagine- 作:独楽と布団中の図書館
こっちで勝手に改変していたり捏造している設定も多いです。
とりあえず幻想御手編が終わったらそれも載せようかと思います。
2014/12/7追記:誤字脱字修正しました。
2014/12/14追記:捏造設定については、出来うる限り本編で補完していこうと思います。
危険物、可燃性。
それはどちらに言えることだろうか?
■Flammability ITEM■
あの後、役割分担して各自で準備することになった。クラス委員三人組は追加のテーブルや食器などの調達。深嗣は別の用事があるとかで別れた。俺はといえばパーティに使う食材の買出しを任せられ、ショッピングモールへと向かっているのだが、
「一人でどうしろっていうんだ……」
どう見積もっても一人では抱えきれない量になる。俺たち三人にクラス委員三人組、柚姫の友人二人と御坂(+まず確実についてくるだろう白井黒子)。総勢十人の食事を作らないといけないのだ。最悪、タクシーを使うことになるかもしれない。金銭の余裕が無いわけではないが、あまり不必要なところで使いたくないのだ。柚姫と一緒に「そうだよな」って頷いていたら、深嗣に呆れられたことがあった。いわゆる守銭奴ってやつだそうだ。
「――――?」
ふと視線を感じた。視線を感じた方向を見ると、見知った顔が道路脇のビルにもたれ掛かっていた。酷い言い方かもしれないが、今はあまり会いたくない人物だった。根は良いやつなのだが、彼は必ず厄介ごとを持ってくる。そう決まっているのだ。
金髪でオレンジのパーカーを羽織った彼はすまなそうな顔で近づいてきた。
「――――浜面」
「よぉ上条。悪いな、仕事だ」
浜面仕上。もともとはスキルアウトのメンバーだったが、駒場利徳が殺害されたのをきっかけに気付いたら暗部のチームである『アイテム』に扱き使われていたらしい。付いて来いよと言う彼に頷いて、案内されるままに裏路地に入る。
案内されたのは廃棄区画にある廃ビルだった。もともとは何かの研究施設だったのだろうが、今は誰も手をつけずいたるところで天井が崩れ、塗装が剥げてコンクリートが剥き出しになっていた。
裏口から入って連れてこられたのは一階の、元々はエントランスだったらしい広い一室だ。本来の入り口らしい部分はぼろぼろに崩れている。スキルアウトのたまり場になっていたのか、煙草の吸殻や酒類の空き缶も転がっている。だが、彼らはもうここにくることは無いだろう。
そしてその元凶が、正面のカウンターの奥、もとは関係者用の休憩室から姿を現した。
「やほー『幻想殺し』。元気にしてたかにゃーん?」
ふざけた挨拶をしやがったこいつ。波打つ茶髪に強気な表情。ピンクのサマーセーターを着た女学生の名前は麦野沈利。超能力者第四位『原子崩し』。
彼女が能力で吹き飛ばした痕跡があちらこちらに残っている。不良どもを追い払うのに大分暴れたようだ。哀れだとは思うが、見たことも無いスキルアウト連中には何の感慨も湧かなかった。カウンターの奥に逃げ込んだ奴らを、今しがた片付けてきたのだろう。部屋から焦げ臭い匂いが漂ってきている。
はぁ、と背後から溜息が聞こえた。浜面のだ。やりすぎだ、とでも思っているのだろう。
麦野の登場をきっかけに気配が増えた。背後、俺たちが通ってきた通路に一つとエントランス両側の通路に一つずつ。
「まあ結局、『死神』なんかに会いたくなかったってのが本音なわけよ」
「同感ですね。貴方に関わってから超ろくな事がありません」
「……大丈夫。私はそんな不幸な浜面と上条を応援してる」
フレンダ、絹旗最愛、滝壺理后。それぞれ背後、左、右の順だ。
麦野は一度俺に負けたのをまだ根に持っているらしく、最近では俺をどうやって弄り倒すのかを考えるのが日課らしい。フレンダと絹旗は「会いたくない」と言っている割には会う必要の無い時にも顔を出している気がする。よくわからない。滝壺は、……よくわからない。
この四人が『アイテム』のメンバーであり、俺への依頼の伝達役でもある。もっとも本人たちは大分不服なようだが、それはこちらも同じこと。
「…………――ッ、」
くだらない考えを舌打ちとともに切り捨てる。
気持ちを切り替える。立ち位置を裏返す。表で普通の生活を送っていた上条当麻から、裏で学園都市にとっての害悪を処分するカミジョウトウマに。余分な思考をカットし、端的に必要事項だけを問う。
「依頼内容は」
ふん、と麦野が鼻を鳴らした。何かを投げつけてくる。右手で受け止めると、小型端末が手の中にあった。電源を入れれば映像が流れ始める。研究施設の玄関前を俯瞰した映像だった。その映像には見知った人物が五人ほど映っている。柚姫、初春、佐天。それから打ち止め。そしてもう一人、だいぶ昔に世話になった――、
くつくつと、麦野は笑った。
「目的はドクター木山と『幻想御手』の確保。抵抗するようなら『木山センセー』は殺害してもいいってさ」
麦野がさも愉快そうに笑う。ご丁寧に俺の過去の情報まで調査済みなのだろう。
しかし、俺はといえば悪態一つとることもせず、それどころか映像に映る五人を見つめることしかできなかった。
定点カメラが高所から撮影した映像には、突然倒れ込んだ柚姫とそれを抱えて車に乗せる『木山先生』が映っていた。そうして車は走り去る。病院と反対の方向に走り出した。郊外の方向だ。
「くそっ……」
苦々しく呟いた言葉が、背後から届いたけたたましい排気音にかき消された。それは壁ガラスを割ってエントランスに侵入し、俺の後ろにいた浜面をかすってから俺のすぐ横で急停止する。いきなり突っ込んできた赤い単車に、浜面が驚いたような声を上げて慌てて滝壺のほうへと転がっていった。
顔をしかめた。単車に乗っていたのは悪友で。そいつも俺に気が付いたようで、へぇと笑みを浮かべた。
「お楽しみだったか?」
「……深嗣、なんでお前が」
別に大したことじゃない、と受け流すように深嗣は笑みを深くする。答える気はないようだ。
「なんだ、テメェ……」
「いきなり現れて何なんですか。超邪魔です」
「こういう場合、結局面倒くさいんだけど対処しなきゃいけないってわけよ」
「上条の知り合い……?」
突然の乱入者を前に、滝壺を除いた『アイテム』の面々が敵意をむき出しにして深嗣を睨んでいた。『アイテム』といった、裏での活動を基本とする組織は任務中に目標以外の無関係者との接触を極端に嫌う。
そんな暗部の連中を前に、単車に跨ったまま愉快そうに深嗣が口を開く。
「うちの連中と仲良くしてくれたみたいだからな、そのお礼をね」
かかッ、と麦野が笑う。新しい玩具を見つけたような子供みたいな顔だ。
「なぁるほどねぇ。あんたさっきの山猿どものボスってわけ」
値踏みするような麦野に、「ま、ヤリ合いたいのは山々なんだけどな」と深嗣が吐き捨てる。そして彼女たちにはもう興味が無いように、俺に振り返り、
「今はそれどころじゃあねぇらしいし?」
そう言って、俺の持っていた携帯端末を興味深そうに眺めて不敵に笑う。
画面には先ほどから繰り返し再生されていた動画が、俺が再生を止めなかったせいで流れたままになっていた。
「今回は降りさせてもらうわ。――行こうぜ当麻。後ろ乗れよ」
「……ぁ、ああ」
名を呼ばれてようやく我に返った俺は、深嗣のバイクの後ろに乗る。俺が乗ったのを確認して深嗣がアクセルを吹かした。
赤い車体が駆動音を室内に響かせながら、砂埃を舞い上げて急旋回して、先ほど深嗣が進入してきた場所から路地へ飛び出す。
飛び出す間際、背後で誰かが嘲笑する気配がした。