とある幻想の四重響奏 -Quartet of a Imagine-   作:独楽と布団中の図書館

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明けましておめでとうございます。
2015年初の投稿となります。

何かと至らぬところも多々ありますが、これからもよろしくお願いします。

そして新年一発目の投稿は途中で作者が暴走しました。出来損ないのギャグパートです。


03. Borderline

 踏み越えたのは、日常と非日常の境界線。

 

 

■Borderline■

 

 

 夕方、遊び歩く学生たちの間を、私たちは手を繋いで歩いていた。

 朝食を食べた後、「できれば教会を探してほしいかも」という願い出を受け、一緒に教会捜しに出たのだが、中々見つけることができず、すでに日が暮れ始めていた。道行く人たちに聞いて回っても誰も教会なんて知らないようで、みんな首を横に振るばかりだった。地図を見ても教会なんて載っていないし、ここまで来ると本当に教会があるのかさえ怪しい。

 たしかに一時期、私と当麻と深嗣の三人は、とある施設(何故だか今は詳細を思い出すことが出来ない置き去り用の施設)から教会の孤児院に預けられて、義兄二人が高校生になるまではそこで生活していた。だから学園都市内にも決して教会がないわけではないのだろう。もっとも、私たちが暮らしていた教会も取り壊されて、今では空き地になってしまったらしいが。

 

 そんなこんなでレストランで昼食を挟みながら(インデックスちゃんがメニューを見ながら「ここに書いてあるもの全部食べたい!」なんて言ったのだが、当然そんなことを許した日には破産するので、なんとか口説き伏せた)、結局こんな時間になるまで教会を見つけられずにいた。

 

「見つからないね……」

「……探し方が悪いのかも」

 

 ほんとうに教会なんてあるのかな……、とインデックスちゃんは疲れたように溜息を零した。

 ちなみに今インデックスちゃんは、出会ったときに被っていたベールを今現在は被っていない。部屋に忘れてきてしまったとのことだ。教会を見つけてから取りに行けばいいだろう、とインデックスちゃんは言っていたから、今は教会捜しを優先するべきだろう。

 

 二人で、どうしようか、と悩んでいると快活な声が届いた。

 

「あ、上条さんだ。上条さーん!」

 

 声のした方向を見ると、人ごみの中から佐天さんと初春さんがこちらに走ってくるのが見えた。それを見たインデックスちゃんが、さ、と私の後ろに隠れる。私との身長差があまり無いせいでほとんど隠れてないが。

 

「こんにちは上条さん」

「こんにちは二人とも。もう動いても大丈夫なんだ?」

「はい、もっちろんです!」

 

 敬礼っぽいポーズをとって普段以上に元気良く答えた佐天さんと、その後ろでいつも通り苦笑している初春さん。

 とりあえず相変わらず元気な佐天さんに私は安心していた。

 昨日病院で、初春さんと屋上で何か話していたようだったから、もしかしたら何かあったのかもしれない。それも良い方向に転んだのだと見た。……もしかしたら落ち込んでるんじゃないか、と心配していたがそれも杞憂だったようだ。よかった。

 

 昨日の一件のおかげで、佐天さんはあまり顔には出さないが悩みを溜め込んでしまう性格をしていると知ることができた。それもレベルアッパーを使ってしまうくらいだ。自分が無能力者だということに、大分苦悩していたらしい。

 私も、私のことで彼女たちと相談することはあまり無い。そんな身の上で言えたことじゃないが、私でなくとも、せめて初春さんには相談しておいてほしかったな、なんて。

 

 そこまで考えて、私はそんなに偉そうにものを言えるのか、と酷い自己嫌悪に襲われたので気持ちを切り替えた。

 佐天さんのことは、なんにしても解決した。そして問題は、相変わらず顔の下半分をマスクで隠した初春さんなのだが、

 

「初春さん、風邪治ってないんでしょ?」

「いえ、昨日お薬もらいましたし、前ほど辛いわけじゃありませんから」

 

 もし悪化しても、佐天さんと上条さんに看病してもらいます、なんてのたまった辺り体力の余裕はあるようだった。

 ……どうやら私も頼りにされているらしい。うん、うれしい。すごい嬉しい。

 

「あ、上条さん照れてるー」

「顔真っ赤ですよ上条さん」

 

 顔に出てしまったらしい。二人に笑われてしまった。そんな事を言われたせいで、余計に顔が熱くなってしまったではないか。

 先輩をからかうとどうなるか思い知るがいい、と軽く反撃しようと思ったが、残念ながら今は別の目的がある。嬉しくなるようなことを言って貰っちゃったことだし、説教は後にしておいてあげよう。

 

 

「と、ともかく。二人とも、聞きたいことがあるんだけど――」

 

 

 

 

 

「初春、どこまで行ってますのー?」

 

 

 

 

 と、道を聞こうとしたところで、二人の背後から声が届いた。女の子が駆け寄ってくる。

 御坂さんと同じ常盤台の制服を着た小柄な女の子だ。赤み掛かった茶髪をツインテールにしている。腕に初春さんと同じ風紀委員の腕章をしていることから、彼女も風紀委員なのだろう。見た目に反して、彼女の纏う雰囲気はちょっと大人びた感じだ。

 

「あ、白井さん。すいません、こちら学校の先輩の上条柚姫さんです。それでこっちが白井黒子さん。風紀委員の先輩で御坂さんの知り合いです」

「こんにちは。紹介に預かりました上条柚姫です」

「白井黒子ですの」

 

 初春さんが丁寧に紹介してくれた。

 白井さんはなんというか、絵に描いたようなお嬢様口調からちょっとずれた感じの話し方をする子だ。いやまあ、そんなことを気にしだしたらインデックスちゃんだって、ってことになっちゃうんだけど。

 彼女は珍しい能力を持っているのか、私が今まで見てきた人たちの中で白井さんと似た感じの人はいなかった。随分と複雑な能力だ。かなり難しい演算を必要とする能力ということだけは見て取れた。

 色々と能力について思いを馳せていると、あれ、と、一人でやってきた白井さんを見て、佐天さんが首をかしげた。

 

「御坂さんは?」

「え、お姉さまなら…………、いませんわね」

 

 どうやらさっきまで御坂さんもいたらしいのだが、姿が消えてしまったようだ。

 すこし離れた位置にいた私たちにすぐ気付いたくらいだ。そこまで行き交う人は多くないし、はぐれたとは考え辛い。

 だが白井さんは、まあいいでしょう、と呟いた。佐天さんも初春さんも、そんな彼女を見て「いつもこうだったら平和なんだろうなぁ……」とか言い合いながら苦笑しているだけだった。

 

「御坂さんを探さなくていいの?」

「ええ。お姉さまも子供ではありませんから」

 

 微塵も揺らがない声で断言した白井さんは、御坂さんのことをとても信頼しているように見えた。きっと、とても仲が良いのだろう。白井さんと御坂さんの通う常盤台がお嬢様校ということもあって、お姉さまという敬称が妙に様になっていた。……『お姉さま』という言葉の中に、とてつもなく甘い響きが含まれているように思えて仕方ないのだが、それは今は無視だ。背筋が若干寒くなったのも気のせいだろう。……うん、きっとそのはず。

 

「それよりも、そちらもお困りではないのですか?」

 

 風紀委員の仕事が優先です、と白井さんは私の背後に隠れているインデックスちゃんを促した。

 人見知りするような感じではないが、そういえば教会捜しの中で何人かに声をかけた時もインデックスちゃんは私の後ろに隠れていた。学園都市内でシスター服は人目を惹く。理由はわからないが、彼女は極力他人の目に付かないようにしていたのだろう。

 ちょっと悪いことしちゃったかなと思って、「ごめん、彼女たちは大丈夫だから」とインデックスちゃんだけに聞こえるように言うと、彼女は「仕方ないんだよ」と控えめに頷いて私の陰から出た。

 

 

「……こ、こんにちわ。インデックスなんだよ」

「…………」

 

 頼りなさそうに若干俯きながらも前に出たインデックスちゃんを見て、佐天さんの動きが止まる。初春さんと白井さんは、名前だか愛称だか判断できない自己紹介を聞いて首を傾げていただけだったが、佐天さんだけは何故だかふるふると震えていた。……なんでそういう反応になるのだろう、といまいち理解できなかったが、その理由もすぐにわかった。

 

「か、かわいい~!」

 

 なんというか、既視感を刺激する光景だった。

 佐天さんがインデックスちゃんに思いっきり飛び掛ったのだ。打ち止めちゃんのときもそうだったが、佐天さんは可愛い子に目が無いようだ。いや、無防備な子に目がないのかな? ……うん、私も気持ちはわからないわけではない。あんな出会い方をしてなければ、一緒に写真でも撮ろうと誘っていたかもしれない。

 

「え、うわ、うわわっ……!?」

「うわっ、髪綺麗さらっさら~。ね、ね、初春も触ってみて」

「あ、……え? …………! ほ、ほんとですね。すごく綺麗な髪……」

 

 初春さんを引き込んで、佐天さんはインデックスちゃんに後ろから抱きついて服や髪を触りまくっている。初春さんも初春さんで、弄られる対象が自分ではないことに気をよくしたのか、控えめながらに佐天さんの真似をしている。インデックスちゃんは二人よりも背がやや低いし、歳はわからないけど子供っぽい上に可愛らしいから、二人からしたら止める理由も無いのだろう。

 そんな彼女たちを見て白井さんは溜息を零した。仕方ないですわね、と呟いて私と向き合う。

 

「……で、結局何の用ですの?」

「あ、うん。あの子、インデックスちゃんが教会探しているみたいなの。この辺に教会ってないかしら?」

 

 白井さんのお陰でようやく本題に触れることが出来た。

 風紀委員ならばもしかしたら、と。わずかばかり期待を乗せた質問に、白井さんは顎に手を当てて少し考えるような仕草をした後、一つ頷いた。

 

「それなら、たしか三沢塾の辺りにあったはずですの。よければ案内しましょうか?」

「いいの?」

「はい。それくらいお安い御用ですの」

 

 白井さんの申し出に肩の荷が下りるのを感じた。

 何度か休憩を挟んでいたとはいえ、長時間インデックスちゃんを連れ回すことに大分心苦しさを感じていたのだ。これでようやく彼女を教会に送ってあげられる。

 

 よかった、と私が本気で安心していると、

 

 

 

 

「初春、一緒に行くよっ!」

「な、何をですか!?」

「えいっ!」

「なっ――――!?」

「う……!? うひゃぁあああぁあああううぅ!!?」

 

 

 

 

 佐天さんがとんでもない狼藉を働いていた。初春さんの両手を掴んで、必死に逃げようとするインデックスちゃんの胸部を後ろから鷲掴みにさせたのだ。

 そして彼女たちの周りには、足を止めて顔を赤くしながら(客観的に見ればキャッキャウフフな光景を)眺める男子生徒たち。

 

 

 

 

 

 さ、流石にこれはやりすぎである――!

 

 

 

 

 

「佐天さん! 周りに人! 人いるから!!」

「初春! 貴女一体何をしていますの!!」

「あだっ!? ~~~~~っ! か、かか上条さんっ、頭をぐりぐりするのは反則だと思いますっ……! っていうか人が居ない所ならやっても――――ぃたい痛い痛ぃいッ!」

「白井さん痛いです! いつにも増して本気なせいで頭が本気で潰れそうです! ――――って、なんで私までされなきゃいけないんですかー!!」

 

 

 

 問答無用ですのー! と白井さんと私で不埒者どもに制裁を下す。いわゆる、相手の頭を両手で作った拳で挟んで、回転させながら押し付けるアレである。

 鉄拳万力で二人を締め上げていると、横から、

 

 

 

 

「グルルルルル…………」

 

 

 

 

 いきなり近くから獣の唸り声のような音が聞こえた。仲間を殺された狼みたいな、地獄の底から響く怨嗟の声に振り返り、その声の主が分かった。

 

 

 

 

 

 

「グルルルルル…………」

 

 

 

 

 

 

 

 ……インデックスちゃんだった。

 

 

 

 

 

 

「…………え」

 

 

 

 

 呆気にとられてしまい、万力が緩んでしまったせいで佐天さんが逃げ出してしまった。

 

 しかし私には、そんなことを気にする余裕なんてなかった。……だってそうでしょう? いきなり目の前で、犬歯剥き出しにして獣みたいに唸っているシスター服の銀髪美少女が自分を睨んでいたら、誰だってそうなるわよ?

 

 

 

 

「GRRRRRRRRR…………」

「い、インデックスちゃんっ……!? す、すすすすすストップ待ってWait!! い、いから落ち着こう!? ねっ!?」

 

 

 

 

 慌てて宥めようとしても起爆スイッチはすでに起動済み。

 もう私には止めることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うがぁああああああ!!」

「きゃぁああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……一番近くにいた私が噛み付かれたのが理不尽だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、周囲の視線に耐えられなくなって、瀕死の初春さんと佐天さんを白井さんと二人で引っ張って、インデックスちゃんに噛み付かれたままようやく逃げ遂せたときには、私たちは疲労困憊な上に精神的にも参ってしまっていた。

 息も絶え絶えだった私たちは、これ以上は不毛なだけだろう、と今日のところは互いに不可侵条約を結んだ。インデックスちゃんを全員で何とか宥め(未だに膨れっ面で私の影に隠れているが)、それでようやっと教会へと向かい始めたのだ。

 

 そして、そのまま何事も無く済むかと思われた道中、

 

 

「ハッ――――!」

「白井さん、どうかしたんですか?」

 

 白井さんが何かに気付いたように声を上げた。

 初春さんが声をかけると、猫みたいに髪の毛が逆立った白井さんが、私たちそっちのけで明後日の方向に走り出した。

 

「お姉さまの身に殿方の魔の手が伸びてきている予感がしますの!」

「ちょ、白井さん!?」

 

 「お姉さま~!」という妙な声だけ残して、しゅ、と文字通り一瞬でその姿を消した白井さん。

 そして何本か離れた街灯の上に突然現れたかと思うと、街灯を蹴り上げて跳んだところで再び姿が消えた。

 どうやら瞬間移動できる能力を持っていたらしい。……確かレベル4の『空間移動』という名前の能力だったはずだ。難しい能力に見えたわけだ。実際に複雑な演算を必要とする能力だったのだから。

 

「すいませんっ、これ地図です!」

 

 初春さんが地図を私に押し付けるように渡して、慌てて白井さんが跳んでいった方向に走っていく。

 呆然としたまま二人が走っていた方向を見ていると、今度は佐天さんが声を上げた。その声にインデックスちゃんが、びくっ、と肩を跳ね上げ、慌てて私の後ろに隠れた。……どうやらトラウマになってしまっているらしい。

 

「佐天さん?」

「私も初春に用事があったんでした!」

「…………? ……うん、地図もらったから、とりあえず私たちだけで大丈夫だよ」

 

 何か重要な用事があったのだろう。すまなそうにしている佐天さんに、私たちのことはいいから、と言うと、「すみません、じゃあまた」と苦笑しながら佐天さんも走っていく。あ、途中で振り返った。

 

「あ、インデックスちゃんもまた遊ぼうねー!」

「……も、もうあんな目に遭うのは嫌なんだよ!!」

 

 「るいこのバカー!」と吠えたインデックスちゃんに「あっははははは!」と笑いながら、佐天さんは走り去っていった。

 

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 

 

 

 あっと言う間にインデックスちゃんと二人だけに戻ってしまった。嵐が

過ぎ去った後、という言葉はこういうことを言うのだろうか。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 佐天さんの姿が完全に見えなくなったところで、インデックスちゃんは先ほどとは打って変わって、何か考えるような難しい顔をしていた。どうかしたの、と聞くと、なんでもない、と答える。

 まあいいか、と目的地に赤い丸印の付いた地図を見ながら、手を繋ぎなおして二人で教会に向かう。

 素直に手を引かれて付いてくるインデックスちゃんと地図を見ていると、ふと、思い出したことがあった。

 

 

「あ、」

 

 

 そういえば、まだちゃんとした答えを貰ってない質問があったのだ。

 

 

「インデックスちゃんは何で家のベランダに引っかかってたの?」

「落ちたんだよ。本当は屋上から隣のビルに飛び移ろうとしたんだけど」

 

 彼女は当然のように言ってのけた。

 どういうこと、聞き返しながらと立ち止まる私の横で、インデックスちゃんは微笑みながら、静かな口調で補足していく。

 

「珍しいかもしれないけど、ほかに逃げ道がなったからね」

 

 

 

 

 

――逃げ道?

 

 

 

 

 

「それって、どういう――」

「追われてたんだよ」

 

 だから仕方がなかったんだよ、と。

 当たり前のように彼女は言った。俄かには信じられない話だ。この自称シスター少女の電波な設定を聞かされていると思えばまだ現実味がある。だけど、彼女がベランダに引っかかっていたというのもまた事実だ。今朝のように、冗談だと決め付けることはできなかった。嫌な予感はしていたけど、まさかここまで厄介だとは思わなかった。

 

「本当は飛び移れるはずだったんだけど、背中を撃たれてバランスを崩しちゃったんだよ。落っこちてる最中に引っかかっちゃったみたい」

 

 彼女の口ぶりも嘘だと思えないことが、冗談に聞こえない理由に挙がるのだろう。ただ真摯に、懺悔室の中で告解するように彼女は私に説明していく。

 最後に「……だから、迷惑かけちゃってごめんね」と綺麗な微笑みに苦味を混ぜた。とても、寂しそうな笑顔だった。

 

 

 

「撃たれたって――?」

「うん。でも別に怪我をしているわけじゃないよ。この服は『歩く教会』って言って、結界としての役割もあるからね」

 

 

 

 また、だ。彼女の言葉の端々によくわからない単語が混じる。今朝、魔法と口走ったことと関係があるのだろうか。

 

 いや、今はそんなことよりも、彼女を追っている人たちのことのほうが重要だろう。追っ手がいるならば、教会に行ったところで逃げ切れるものなのだろうか。少なくともインデックスちゃんは、教会まで行けば大丈夫だ、と考えているはずだ。

 

 

 

 

 

 なら彼女を追っている人たちとは、宗教になんらかの形で関わっている人間……?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ひとつ聞きたいんだけど、」

「ん、なにかな?」

「あなたを追っている人って――、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで、ふと気づいた。

 

 

 

 

 

「――――、え?」

 

 

 

 

 

 音が消えていた。夕日に染まる交差点は閑散として、先ほどまで行き交っていた生徒たちの姿が見えない。私たち以外、誰もいない。一瞬、どこか別の世界にでも迷い込んでしまったのではないかと錯覚してしまった。

 インデックスと話していて気づかなかったが、あたりに人がいなくなってから大分時間が経っているようだった。

 

 

 

「なんで……?」

「――人除けの結界だよ」

 

 

 横で深刻そうに呟くインデックスは、逃げるよ、と手を掴んで引っ張ってくる。

 雰囲気がいつになく真剣なものに変わった彼女に戸惑いながら、引っ張られるままに彼女についていく。

 

 

「早く人気のある場所に――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行かせませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 インデックスの言葉を遮るように。

 背後から聞こえた声に私たちが振り返れば、

 

 

 

 

「『禁書目録』を保護しにきました。

 渡さぬと言うのなら、今ここで排除させてもらいます」

 

 

 

 

 視界の端で、艶のある長い黒髪が風に靡いていた。誰もいなくなった交差点の中心だ。

 腹部を出すように意図的に捲くられたシャツに、片足だけが付け根まで露出されているジーンズ。

 左右非対称な姿に、学園都市内ではまず見ることの無い、長い日本刀を携えて。

 

 

 

 

 

 

「『禁書目録』を渡しなさい」

 

 

 

 

 

 

 人足の途絶えた交差点の中心で、彼女は剣呑な表情を浮かべていた。

 

 

 

 




落ち着いて見直したら、「なんだこれ……」と愕然としてしまった。……日常をもうちょっと楽しそうな感じに書けないものか。
場合によっては書き直します。


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