とある幻想の四重響奏 -Quartet of a Imagine- 作:独楽と布団中の図書館
ていうか読み直してみると作者の書く上条さんはコミュ障にしか見えない。いやまあ序盤はそういう設定なんだけれども。
※注意事項。
この話では煙草を吸う青少年が出てきますが、青少年の煙草を助長するものではありません。
煙草は二十歳になってから、です。
■2015/02/11
読みづらいというご指摘を貰ったので修正しておきました。
人の繋がりはかくもままならない。
■School Days■
日がほぼ真上から降り注ぎ、むき出しのコンクリートを熱していく。
屋上。もはやテンプレートとも言える学園物語の舞台。そんな学園風景の代名詞も、授業中、しかも真夏日の昼間にもなれば人足は途絶える。大概の生徒は授業に出ているし、授業をサボタージュした生徒はもっと心地よい場所(たとえば保健室)などに行っているため、屋上に今現在約一名を除いて誰もいない。……というよりその一名と言うのが俺こと上条当麻だった。
「暑い……」
ベンチに横になった俺に真夏の直射日光は容赦なく照りつける。蒸発してしまいそうだ。授業を、というよりクラスメイトたちの視線を面倒臭がって屋上まで逃げてきたのだ。普段から授業にあまり出ない俺が偶に気まぐれで授業に出れば、当たり前だが視線が殺到する。それが好奇の視線だけならいいのだが、少々というか結構な量の安心と心配の視線が混ざっていて。――居心地が悪くて逃げてきてしまった。まあ、自業自得ではあるのだが。
そういえば初めてサボったのはいつだっただろうか、と思い出そうとしても殆どの授業をサボタージュしているせいで思い出せなかった。
これじゃあただの自閉症だな、なんて現実逃避しても、結局俺は現状を打破する術を持たない。というより変えるつもりもない。……ただ、必要だからと通っているだけの高校だ。能力開発についても『レベル0の能力』とかいう訳の分からないものを持っている以上、期待できるものではない。
自販機で飲み物でも買って来ようか、と思い立ったところで、
「よぉ、相変わらずシケた面してんな」
そんなことを開口一番にほざきながら、そいつは扉を開けて入ってくる。赤塗料をまき散らしたような髪に着崩した制服。首から提げた十字のごてごてしたシルバーアクセサリーに手の甲には蛇の入れ墨。皮肉げな笑みに不遜な表情。見るからに不良然としたそいつの名前は切削深嗣(キリソギ ミツグ)。ありていにいえば幼馴染。言い方を変えれば腐れ縁。
「何か用かよ」
「別に用なんてねーよ。ほら隣空けろって」
そう言われて仕方なしに右側に座りなおす。当たり前のようにそいつはベンチの反対側、左端に腰を下ろした。
「で、授業出ねーの?」
「どうせ明日が終われば長期休暇なんだ。いまさら授業に出ようが出まいが変わらない」
「あーあー、不真面目生徒はこれだから」
「うるせぇぞ不良男児」
お前だってサボりなんだろと言ってやれば、深嗣はケラケラと笑い始める。当たりなのか外れなのかいまいち判断できない反応だった。すると左隣で「あちゃぁ」と深嗣が零した。
「そういや切らしちまってたな……。当麻、あの糞不味いメンソールでもいいから一本くれ」
「糞不味いので悪かったな」
仕方なしにズボンに忍ばせていたソフトの箱から一本取り出そうとして、誰かが階段を上ってくる音に気がついた。数秒と立たずその人物が扉を開けて屋上に入ってくる。……扉を開けるのに大分苦労してようだが。
よいしょっと。そんなおっさん臭い、幼い女子のような声だった。
「もー切削ちゃん遅いですよー。いつまで待たせる気ですか」
ような、ではなく見た感じ完全に幼女だ。身長は135cm。桃色の髪をセミロングにして、ピンク色を基調としたワンピースを着ている。どうみても小学生だが(いまだに信じられないのだが)正真正銘の教師らしい。しかも心理学の専門家であり「発火能力」専攻であるという。なんなんだこの摩訶不思議生物――、まあ担任にそんな口利くつもりもないけど。
そんな俺の内心に気づいたのかどうかは知らないが、とうの月詠小萌教諭が半眼で睨んできた。
「で、上条ちゃんは屋上で何をしてたんですかー?」
まるで、「あなたなんか信用してないからさっさとゲロっちゃいなよ」とでも言っているようだった。
「見ての通りサボタージュですが」
正直にゲロったところでプラスチックファイルが飛んできた。間髪入れずに投げられた。投げつけてきた本人を見れば肩を震わしている。涙目だ。ぐずってしまっている。癇癪でも起こしそうだった。
それ以前に子供を苛めてしまったという罪悪感が大きかった。いや実際には子供じゃないし、むしろ彼女は年上なのだが見た目が完全に子供なせいで見てるこっちが泣きたくなるくらい可哀想だ。
無論、そんな面白い状況を切削が逃すはずはなく。
「――ていうのは冗談で実は一服しようと」
「い、いや、違っ――わないけどさ……」
「未成年が喫煙しちゃいけません!!」
叫んだそれはほとんど悲鳴だった。完全に小学生を苛めている高校生の構図だ。悲鳴を上げたいのは俺の良心だっての。というより俺が喫煙者だってことばらすなよ。
柄にも似合わずテンパっていると、どたどたと二・三人の足音が聞こえた。階段を走って上り屋上に飛び込んでくる。
「上条当麻! 貴様何してる!」
「小萌センセーを泣かせるなんて許さへんでぇえええ!!」
「神妙にお縄に付くにゃー!」
ぎゃあぎゃあ騒いでるのが来た。クラス委員吹寄制理、金髪でサングラスをしている土御門元春、無類の女好き青髪ピアスの三人は、傍目から見るだけじゃ理由はよくわからないが大体いつも三人一緒だった。クラスの中心的存在で、クラスで何かするときは常に彼らが先導していく。とにかく何でもするやつらだ。
吹寄は委員長然としていてまだまともなのだが、後の二人に関しては素行が悪い以前の問題があってとにかく馬鹿だ。
入学当初から(特にここ最近は)何かと彼らに目をつけられているのだ。気遣ってくれている、と言い換えることもできるが。
それが居心地悪くて屋上に避難していたわけだが、どうやら先の月詠教諭の悲鳴に駆けつけてきたらしい。
「それを返せ!」
いきなり吹寄が俺の顔目掛けて拳を突き出してきた。条件反射でベンチに足をかけて飛び起きて、彼女の頭上を飛び越える。そうやって避ければ、振り返った吹寄が親の敵でも見るような目で見ていた。なんでだ。
「いやぁ、流石にかみやんでもそれは許されへんで」
うりゃぁ、と。
次に青髪ピアスが飛び掛ってくる。吹寄には手は出せなかったが、青髪なら吹き飛ばしてもいいか。落下してくる彼の溝尾に拳を叩き込んだ。180cmはある巨体が上方向へと持ち上がる。そこへ更に何コンボか入れようとして、やめた。流石にそれはやりすぎである。
しかし何もしなかったが故に青髪ピアスはそのまま落下して地面に叩きつけられた。これは痛そうだ。
「むう、そこまで強情だとは思わなかったにゃー。いくら子供っぽくても先生から物を取り上げるのはよくないと思うぜい」
「? ……ああ、コレか」
土御門に言われてようやく理解した。今手にしているプラスチックファイル。それは月詠教諭のものだ。つまりはそれを取り上げて苛めているように見えたらしい。見た目小学生の月詠小萌教諭に対して、彼女のファイルを持って見下ろしている曰く不真面目らしい高校生。どう見ても取り上げているようにしか見えない。むしろ今すぐ三人に同意したい。ごめんなさいすいません俺が悪かったです。
「あらやだ怖い。これだから不良は」
「誰が不良だよ。あー、ええっと、すみません月詠教諭。彼がいうことはテキトーなんで、あまり信じないほうがいいですよ。俺も冗談が過ぎました、ごめんなさい」
言いつつファイルを返してやる。吹寄にあやされていた(ように見える)彼女は、まだ涙目だったが頷いてファイルを受け取る。
「よろしいです。上条ちゃんに話があるから切削ちゃんには『教室に戻るように』って伝えるよう頼んだんですけどね、何してたんですか?」
「あー、別に? こいつが戻りたくないって強情なもんで――」
「違う。ていうかお前はもう黙れ。これ以上事態をややこしくするな。お前は教室に戻れなんて一言も言ってないだろう」
ここに来てようやく三人組の臨戦態勢が解除された。吹寄はふん、と仁王立ちなんかしてるし、青髪は月詠教諭を口説いているが無視されていて、土御門は「やれやれ」なんて肩を竦めている。この状況を見て、いつも通りだなんて思う俺はこいつらに毒されてるのかもしれない。
「それと、何度も言うようですが『教諭』なんて大げさな言い方はしなくていいです。私は生徒にそこまで距離を置かれたくありません」
「……はぁ、しかし――――」
困ったところを突いてくる。あまり馴れ馴れしい言葉は使いたくないのだ。
すると追撃がきた。
「口答え禁止です。もう、どうして切削ちゃんができたのに上条ちゃんにできないんですか」
「おいおい、俺はこいつ以下っすか」
「そうだろうが。いまさら何言ってやがる」
「うるせぇ大体お前がサボりまくるのがいけないんだろーが」
「だったら最初から事情くらい説明しやがれ」
このままここで殺り合ってもいいか、と割と本気で考えているところに月詠教諭が割って入った。「喧嘩しちゃ駄目です!」だそうだ。流石に毒気を抜かれて肩を落とす。すると切削と目が合った。二人同時に中指を立てる。
「「くたばれ」」
そう言って、お互いに最後の毒を抜ききった。
「お前ら、仲がいいのか悪いのか分からないにゃー……」
「……別に。ただの腐れ縁」
「こいつ仲良しとか笑えねーこと言うんじゃねぇよ」
息が合った。ムカつく。「どっちもツンデレだにゃー」なんて土御門は嘆いているし。
まあどっちにしろ話の腰は折れた。月詠教諭の追及からは逃れることはできた。まあ、一応は感謝しておくか、一応は。絶対に口には出さないがな。
「そう思うならもっと敬え」
「てめぇはあれか、能力で人の思考を覗く変態か。ああそういえばそうだったな。悪い忘れてたよ、そのまま少年院にでもぶち込まれてろ」
「顔に出てんだよ顔に。ポーカーフェイス気取ってんじゃねぇ」
「うるさい黙れ」
はき捨てると「いい加減にしなさい!」と吹寄の拳が飛んできた。避けた。また睨まれた。
「で、俺に何のようです? 明後日から夏休みなんですから、今更何か――」
「いえ、ただ単に上条ちゃんには休み中にも登校することになっていますから。今日のうちに連絡したかっただけです」
「――――え?」
休み中に登校? それはつまり、
「簡単に言えば出席日数足りてないので補修ということです」
……そうだった。そういえば入学時に渡された生徒手帳にそんなことが書いてあったような。
「き、休日の校舎内で小萌センセーとカミやん二人だけやと……っ!?」
「まあ、あれだけ屋上でサボってればそうなるにゃー」
「自業自得よ」
ていうか、一人おかしな反応して慄いているが放っといていいのか。
切削に目を向ければ先ほどと同様笑ってやがる。どうやら静観モードらしい。あいつにとって今日は面白い日だろう。珍しく右往左往しまくっている俺を見れて面白いのだ。後で殴る。
「上条ちゃんは授業を7割休んで何のペナルティもないと思っていたのですか?」
「い、いや、学校てそういうところじゃ……」
「そういうところじゃありません。あなたは今までどんなところに住んでいたんですか?」
本気で心配された。しかし二人の過去を書類上である程度知っている教諭はそこで失言に気付き、「とにかく」と咳払いした。
「休みの半分は学校に来てもらいます。今までのサボり分をそれだけでチャラにしてあげるんですから、ちゃんと来て下さいね」
「……ええ、構いませんけど」
どうせやる事もない。暇を潰せると考えれば別にいいことかもしれない。日ごろからあまり授業に出ていないし、たまには良いのだろう。
「じゃあ、教室に戻りますよ。今は授業中なんですから」
「……え?」
いきなり手を掴まれた。そして扉へと導かれる。そういえば補修通告ならHRのときにでも言えばよかったのだ。HRならちゃんと教室にいるし。つまり無理やりにでも授業に出させるのが狙いか。
「まったく上条ちゃんは頭はいいのに何で授業に出ないんですか。もし人に話せないことなら補修中にちゃんと聞いてあげますから、今日ぐらいは我慢して出てくださいね」
「……――――ッ」
ああ、もう。なんてお人好し。そういうのが一番辛いのに。
抵抗をしてもよかったのだが、流石にそれは月詠教諭に失礼だろうと教諭の顔を立てるためにも大人しく従った。
「お、おおおおおお、手をつないでいるやと……! 個人相談やとぉおおおおおおお!? カミやん羨まし過ぎるぅうううううう!!」
青髪ピアスがわけのわからないことを絶叫していたが、土御門と吹寄にそれぞれ生温い目で見られていたが、それよりも背後で大爆笑している切削が許せなかった。笑い過ぎで呼吸困難になっているらしく、腹を抱えている。死ねばいいのに。
叫び嘆きうねる青髪に、談笑する土御門と吹寄、笑いを堪えきれない切削、手を引く月詠教諭。なんともいえない異色なメンバーで屋上を後にする。
そんなこんなで久々に出た授業は新鮮ではあったが、なんというか珍しいものでもみるようなクラスメイトたちの視線が鬱陶しかった。
…………。
あとで月詠教諭から聞いた話だが、土御門元春と青髪ピアスも補修らしい。ちなみに切削は授業にでていてそこそこ以上の成績だったため補修は免れた。
まあ問題はそこではなく、土御門や青髪とともに補修を受けないといけないところにある。……どう考えても無駄に騒がしくなる未来しか想像できない。
……不幸だ。
オリキャラ二人目。イメージは髪赤くしてサングラスはずして縦に伸ばしてV系一直線な土御門、かもしれない。
ただ単にV系がほしいって理由から追加した結果、だったような……?