とある幻想の四重響奏 -Quartet of a Imagine-   作:独楽と布団中の図書館

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2014/12/7追記:誤字脱字を修正しました。


08. Retrograde Lastoder

 青く明るい空の、たった一つの黒点。

 懐かしい人との出会いを中心に、その爛れは広がった。

 

 

 

■Retrograde Lastoder■

 

 

 

 

 先ほどまで降り続けていた雨が嘘みたいに止み、水溜りに映りこむ晴天には太陽が浮かんでいる。

 HR後に当麻から『パーティするから都合が良ければ友達も連れてこい』と連絡が来たため、後輩二人に『校門前に集合』と連絡を入れ、今現在、学校の校門前で二人が出てくるのを待っていた。終業式も終わって、これからの長期休みに心を躍らせるように笑う学生たちが続々と出てくる中、見知った顔が玄関から現れた。

 

「お待たせしました上条さん!」

 

 あれ、と思った。こちらに走り寄ってくるのは佐天さん一人だ。初春さんの姿がない。

 

「全然待ってないよ。初春さんは?」

「風邪こじらせちゃったみたいで今日は休みです」

 

 ああそうか。そういえば昨日マスクしていたし、やっぱり風邪だったらしい。

 そんな状態にも関わらずあれだけ動き回ったのだから、当然といえば当然だろう。当の本人がいないことをいいことに「あ、そうだ初春の通知表見ます~?」とか言うから困ったものだ。しかしどうしよう、できれば初春さんも呼びたい。未だに初春さんから連絡が返ってこないことから寝込んでいるのだろうし、体調を崩している彼女に無理強いもしたくない。うむむ、どうしようか。

 

「このあと家でパーティでもしようかって話になってるんだけど、佐天さんはどうする? 予定とかあったりする?」

「もちろん行かせていただきます!」

 

 快活な笑顔で即答してくれた佐天さんに、よし、と頷く。問題は風邪で休んでいる初春さんと、連絡先を知らない御坂さんなのだが、

 

「とりあえずまずは初春の部屋に行ってみましょうか?」

「うん。そうだね、寝込んでいたら悪いけどお邪魔させてもらおうか。あと御坂さんの連絡先知ってる? 私昨日聞きそびれちゃって連絡できないんだ」

「あ、御坂さんの連絡先なら私知ってますよ。連絡しておきましょうか?」

「お願い」

 

 佐天さんが御坂さんにメールを送ったところで私たちも移動することにした。目的地は予定通り初春さんの部屋だ。できれば何か体によさそうなものを見繕って行こう。それにもし彼女が動けるくらいに回復しているようだったら無理やり連れて行けばいいだろう。初春さんは風邪を移しちゃ悪いと遠慮するだろうが、生憎とそんなことを気にする人は私が知る限り誰もいない。

 

「そういえば準備とかはどうするんですか?」

「それは大丈夫だと思う。お兄ちゃんたちが買出し行ってくれてるみたいだから、私たちはとりあえず机の準備とか調理とかの手伝いかな?」

「はーい……、って上条さん危ないっ!」

「え?」

 

 道中、会話に夢中になっていたせいか、道脇の路地から何かが飛び出してくるのに気付くのが遅れた。気付いたときにはその小さな影はすでに避けようが無いくらい近づいていて、

 

「う、わっ!?」

「ぶにゃ゛っ……!?」

 

 腰の辺りに衝撃が走り、ぶつかってきたソレと一緒に道端に倒れ込んだ。

 茶髪の子供だった。水色のワンピースの上からシャツを着た見た目七・八歳くらいの女の子だ。顔を抑えてプルプル震えている。先ほどの衝撃はこの子供が私の腰に頭を直撃させたものらしい。

 

「ちょ、大丈夫ですか?」

「え、うん、大丈夫」

 

 心配そうに覗き込んでくる佐天さんに怪我はないよと答える。

 思い切りしりもちをついてしまったものの、受身が取れたせいか怪我はない。水溜りに落ちなかったのが幸いと言えば幸いだった。だが、問題のこの女の子は大丈夫だろうか?

 見れば、彼女は赤くなった鼻先をなでながら立ち上がった。ちょっと涙目だ。

 

「だいじょうぶ、ってミサカはミサカは健気に胸を張ってみる」

「ごめん、全然大丈夫そうに見えない」

 

 言いながら立ち上がって、女の子の顔を覗き込んだ。

 鼻周辺が少々赤いが怪我らしい怪我はしていない。それにしても、ものすごく見覚えのある顔だ。自分のことを『ミサカ』とも言っていた。この子から感じる能力も電気系統みたいだし、これは確定かもしれない。

 

「もしかして、あなたは御坂美琴さんの妹さん? 連絡、しよっか?」

「えぇー!? お姉様の知り合いなの!? ってミサカはミサカは驚いてみたり!」

 

 予想的中。それにしても、この子はどうしてあんな人通りの無い路地から出てきたのだろうか。

 いわゆる迷子というやつなのだろうか。佐天さんと顔を見合わせる。彼女も困り顔だ。こういう場合は御坂さんに届けたほうがいいのかもしれない。

 それにしてもこの子は随分と面白い言葉遣いをする。何の影響だろう。

 

「へぇ、御坂さんの妹かぁ~、かわいいなー」

「わ、ひゃっ? ってミサカはミサカはっ……」

 

 可愛いー、と佐天さんが抱きついた。頬擦りまでしながら、女の子を揉みくちゃにしている。

 がばっ、といきなり佐天さんが顔を上げた。歩道の先を凝視している。

 

「あれは、」

 

 研究施設みたいな建物の前に頭に花飾りをした女生徒が立っていた。初春さんだ。スーツ姿の髪の長い女性と一緒にいる。他にも人影を何人か連れているようだった。

 

「あれは……、初春さん? と、誰?」

 

 そこで、さっきまでじゃれあっていた女子二人が消えているのに気が付いた。

 

「うーいーはーるっ!」

「うりゃぁああ!ってミサカはミサカはなんだかよくわからないけどお姉ちゃんの真似をしてみるっ!!」

 

 ずばーんっ。

 初春さんのスカートが左右から思い切りたくし上げられる。無論、佐天さんと御坂さん似の女の子だ。

 

「……うひゃぁあっ!?」

 

 慣れたのか何なのか知らないが、初春さんは捲れ上がったスカートが上りきらない内に抑えて降ろした。どうやら結構元気らしい。風邪の発熱ではなく、羞恥に顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 

「佐天さんが何でここにいるんですか!? ていうかスカートめくらないでください!!」

「えへへ~今日も縞々ですなぁ~、眼福眼福」

 

 あははーとかいつも通りの佐天さん。人前をスカートをめくることに何ら躊躇いを見せていない。軽く尊敬する。

 おや、と声がかかった。初春さんと一緒にいた女性だ。彼女はあまり驚いてないらしく普通に会話に混ざってきた。目の前で女の子のスカートがめくれ上がったのに驚かないあたり大人だ。

 

「初春さんの知り合いかい?」

「はい、佐天涙子でっす!」

「『打ち止め』だよってミサカはミサカは自己紹介してみる!」

「上条柚姫です」

 

 

 慌てて追いついて、「すいません」と女性やその後ろの人達に謝って、気付いた。

 

 

「?」

 

 

 違和感。

 目の前には――久々に顔を見た――、目の下に大きな隈を残した女性一人だけだ。

 だけど、そこにある気配は。

 

 

「な、何、この人……っ!?」

 

 

 恐怖に足が竦んで、その場にへたり込んでしまった。

 意識の塊だ。そう形容するほか無いものだった。

 彼女がとてつもなく巨大な何かを纏っている。コールタールのように黒くてどろどろした沢山の意識をその身体に縛り付けて、それでも彼女は平然としていた。それこそ当然のごとく彼女は意識の黒海の中で佇んでいる。

 

「どうかしたのか? ……いや待て、君は確か――」

 

 瞬間。全ての意識が眼を開く。

 開かれたのは無数の、数え切れないほどの空洞みたいな瞳で。

 

「ぁ……、ぁあ……」

 

 その複眼染みた穴に映っているのは、私で――――、

 

 

 

 

 

 

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 それは、何か、言って、

 

 

 

「―――――、sp助ytw」

 

 

 

 それに答えるように、無意識に私は何か口走ったが意味も無く。

 黒くてどろどろとした腕に体中を掴まれた。

 

 

 

 地面に沈むような浮遊感を最後に、私の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 




昼間なのにホラー。
みたいなのを書こうとした結果なのですが、これはどうなんだろうか?
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