砂漠に咲くは、鉄の華   作:山崎五郎

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※今回の話は作者の個人解釈マシマシでお届け致します。
 原作キャラへのアンチ・ヘイトと取れる描写が存在しているため、そういった要素を受け付けないという方はブラウザバックを強く推奨いたします。 



柴関ラーメン

 

先生が対策委員会に協力することを約束した翌日。

登校したユミカが見たのは…

 

 

「はぁ…」

 

 

机に肘をつきながら頭を抱えている先生だった。

 

 

「あ、ユミカおはよう」

 

「おお、シロ。

 そういや今日は先に行ってるんだったな」

 

「ん、今日は自由登校日だからね」

 

「そういやそうだったな…。

 んで、先生は何でこんな風になってんだ」

 

「それが……」

 

 

 

『あ、セリカおはよう』

 

『…』

 

 

『セリカ、今日は何か用事でもあるの?』

 

『……』

 

 

『セリカ、せめてどこに行くかだけでも…』

 

しつこいわよストーカー!

 

 

 

「…っていう感じで突き放されたんだって」

 

「そりゃそうもなるだろ…距離縮めようったって向こう見ずすぎるぞ…」

 

「うぐぅ」

 

 

その一言がトドメになったのか、とうとうバタリと机の上に突っ伏した。その脱力感丸出しの見た目に違わぬため息も続けざまに出た。

 

 

「うーん…こういう時はどうすれば…」

 

「うへ〜、先生お困りのようだね〜」

 

「ん、ホシノ先輩おはよう」

 

「おはようッスホシノ先輩」

 

「うんうん、二人ともおはよ〜。

 それで先生。 ここはやっぱりいいとこを見せるしかないんじゃない?セリカちゃんの前でさ〜」

 

「良いところっつったってなぁ。

 また不良共追い払いでもするのか?」

 

「でもヘルメット団はこの間追い払ったばかり。

 ソレは多分無理…」

 

「流石におじさんでもそんな事は言わないよ〜。

 ……皆、今日のお昼はラーメンなんてどうかな?」

 

 

 

   ◇   ◇   ◇   

 

 

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで…す……」

 

「すみませ〜ん九名なんですけど、お席は空いてますか〜?☆」

 

「よっすセリカ!グーゼン(・・・・)、だな!」

 

「あ、あはは…セリカちゃん、お疲れ…」

 

「ん、セリカ、お疲れ」

 

「「「………」」」

 

 

楽しげに尋ねるノノミ、悪戯(いたずら)っぽく笑みを浮かべ声をかけるイルナ、苦笑いながらも言葉をかけるアヤネ、良くも悪くも普段通りなシロコ、頭を抱えるなり苦笑いを浮かべるなり普段通りなりで無口なユミカ・シズカ・マナコ。

そして、慌てるセリカ。

 

偶然(・・)揃ったアビドスの面々はまさに十人十色なリアクションを取った。

 

 

「み、皆…どうして、ここを……!?」

 

「うへ〜やっぱりここだと思ったよ。

 この間の会議から怪しかったからねぇ〜」

 

「ど、どうも…」

 

「せ、先生まで…何よ! やっぱりストーカー!?」

 

「うへ〜誘ったのは私だよ?

 それより店員さん、私たち早く案内してほしいんだけどな〜?」

 

「そうだな。セリカちゃん、早いとこ席に案内してやってくれ」

 

「た、大将…うう、分かりました…。

 人数が多いので席を分けてご案内します…」

 

 

そして一同は席に移動した。

しかし流石に九人という人数はテーブル席二つでも多かったようで…

 

 

「私はカウンター席でも良いかな?」

 

「ん、それは駄目。

 先生は私の隣に座るべき」

 

「私の隣も空いてますよ〜☆」

 

「いや、うーんと…」

 

「…先生、そういうことなら俺もカウンターにする。

 それなら席も余裕あるし、良いだろ?」

 

「うん、じゃあそうしよっか」

 

「「……むぅ」」

 

 

シロコとノノミが不服そうにぼやく。

先生は申し訳なさそうにしながらも、近くのカウンター席に腰掛けた。 ユミカもその隣に腰掛ける。

 

 

「こんな大人数でいっぺんに来るからよ…。

 それで、ご注文は?」

 

「こらこらセリカちゃん。そこは『ご注文はお決まりですか』でしょー? それにお客さんにはちゃんと笑顔で対応しなきゃ、ねぇ?」

 

「あ、アタシは店員さんのスマイル一つ!なんつって!」

 

「……………ご注文は、お決まりですか?」

 

 

イルナの小ボケは無視された。

怒りで口元を引きつらせつつも、どうにかセリカは笑顔で注文を受けたのだった。

 

 

注文の内容はそれぞれ、

 

ノノミ→チャーシュー麺

シロコ→塩

アヤネ→味噌

ホシノ→特製味噌ラーメン+炙りチャーシュー

ユミカ→野菜ラーメン(味噌)+辛葱

マナコ→味玉ラーメン(醤油)+ほうれん草

イルナ→つけ麺

先生→醤油ラーメン+海苔コーン増

 

となった。

 

 

「あ、あと餃子二つ!

 先生もいるか?」

 

「ん〜…私はいいかな。

 皆で食べていいよ」

 

「そういうことなら俺も今日は遠慮しとくかね」

 

「……当然って言えば当然だけど、すごい量の注文ね。

 結構時間かかるわよ? それにお金も…」

 

「それは大丈夫です!

 このカード、限度額までまだまだ余裕ありますから!」

 

「いやいや、流石に毎度毎度ノノミちゃんのお世話になるわけにはいかないよ〜ね、せんせ〜?」

 

「………ウン、ソウダネ」

 

「………」

 

 

 

   ◇   ◇   ◇   

 

 

 

「ご馳走さんっした!」

 

「いや〜皆良い食いっぷりだねぇ。

 あ、先生お支払いありがとうねぇ!」

 

「フフ…生徒のためならこのくらい安いもんだよ…ふふ」

 

「ん、先生目の焦点が合ってない」

 

「大丈夫ですか先生?やっぱり私のカードで支払えば…」

 

「いや、それは駄目。

 気持ちは嬉しいけど、子供に奢ってもらうことになっちゃうし…それは先生どころか大人として駄目だから」

 

「うーん…先生がそう言うのでしたら、分かりました☆」

 

 

「いつまでも店の前でウロウロしてないで帰って!

 次のお客さんが困るでしょ!?」

 

「あ、ごめんなさい…」

 

「あ、あはは…セリカちゃん、また明日ね」

 

「また来るからな〜みんな(・・・)で!」

 

「うっさい!二度と来んな!」

 

 

わいわいと騒ぐ一同をセリカが追い払う。

先生たちは店の前から離れ…たところで再び談笑を始め、話しながら去っていった。

 

 

「はあ…ったくもう、絶対ホシノ先輩あたりが『皆に奢ってるところ見せれば信用してもらえるよ〜』とか何とか吹き込んだに決まってるわ…!」

 

「いや、誘ったのは確かにホシノ先輩だが、奢ることを決めたのは先生の意思だ」

 

「うぇ!?

 マナコ先輩まだいたの!?」

 

「ああ。この漫画が思いのほか良くてな。

 つい居残ってしまった」

 

「何やってるのよ…。

 っていうか、マナコ先輩も先生のこと信用してるわけ?」

 

「少なくとも、先生は過剰に肯定されることも、かといって過剰に拒絶されることもまだしてはいない。

 が…この間、指揮に助けられたのは事実だ」

 

「………」

 

「オレが思うのはそれだけだ。

 …大将に『美味かった』と伝えておいてくれ。また来る」

 

「…言っとくけど、先生とか連れてこないでよ?」

 

 

マナコは最後の一言には答えず、黙って歩き去っていった。

その背中を見送り、セリカも業務に戻るのであった。

 

 

 

   ◇   ◇   ◇   

 

 

 

「……」

 

バイトも終わった夜、セリカは一人自宅への帰路についていた。

夜の暗闇を煌々と照らす自販機の前に立ち、ぼんやりとしながらジュースを飲んでいる。

 

『少なくとも、先生は過剰に肯定されることも、かといって過剰に拒絶されることもまだしてはいない』

 

「…っ」

 

昼間、マナコに言われたその言葉がセリカの頭をよぎる。

それを無理矢理かき消すようにジュース缶の中身をぐい、と飲み干し、半ば投げ捨てるようにゴミ箱に投げ入れた。

 

ここに来る前よりも早足で、再び自宅に向けて歩き出す。

 

 

 

「……アイツだな?」

 

「ええ、間違いありません。

 アビドス対策委員会のメンバー…その一人です」

 

「よし…次のブロックで確保するぞ。

 総員用意」

 

 

彼女の後を追う、フェイスヘルメットを被った敵集団に気づかずに。

 

 

 

   ◇   ◇   ◇   

 

 

「…なんか、静か。

 前はここまで静かじゃなかったはずなのに…治安もどんどん悪くなってるし…」

 

明かりの灯っていないマンションの部屋や、荒れた道路や壁、空き家を見てセリカは呟く。

それを誤魔化すように、ぶんぶんと頭を振った。

 

「…弱気になっちゃ駄目だ。

 私たちが頑張らないと…そして学校を建て直さないと…」

 

「…驚いたな。

 本気であんな借金まみれの学校を立て直すつもりなのか?」

 

「っ、誰!?」

 

 

声のした方向にセリカが振り向く。

そこには、まるで底なし沼のような目の色をした赤髪の少女が立っていた。

 

「お前らが今更足掻いて何になるってんだ?

 あんな途方もない金額、学生の悪あがき程度でどうにかなるわけないって、とっくに気づいてるだろ?」

 

「な、あんた、何を…」

 

「とっとと転校なりなんなりすればいいだろ。キヴォトスの歴史の中で消えていった学校なんて幾つもある、アビドスが消えようが、世界は何も変わりはしないんだよ」

 

「だからって…!」

 

「この世は強いやつが…色んな物を『持たされた』奴が勝つように出来てるんだよ。

 凡人がいくら足掻いて、何か一つを掴み取った所で、結局は…」

 

「うるさいっ!!

 アンタ、人を馬鹿にするのもいい加減に…!!」

 

 

その時、暗闇をマズルフラッシュが照らした。

セリカの背後でいくつもの光が瞬き、鋭い弾丸が放たれた。

 

 

「ぐっ…!?」

 

「…本当に気づいてないとはな。やっぱり、あの『先生』や指揮官のいないお前らなんざ、大したことはないみたいだ」

 

「なに、を…っ!」

 

 

赤毛の少女が背後から取り出したそれを、そして現れた少女たちを見て、セリカは目を見開いた。

そこにいたのは、つい先日自分たちが追い払ったばかりの…

 

 

「カタカタヘルメット団…!

 アンタたち、まだこの辺をうろついてたのね…!」

 

「……捕らえろ」

 

 

改めてヘルメットを被った赤毛の少女…ヘルメット団のリーダーが、周りのメンバーに命令を下す。

それとともに、地面に倒れたセリカに向けて筒状の何かが投げられた。

 

それらからプシュー、と小気味いい音とともに白い煙が放出される。

最初は何事かと見ていたセリカだったが、しまった、という表情を浮かべ口元を抑えようとする。

 

しかし、時すでに遅く。

 

 

「しまっ、た……」

 

 

力なく地面に伏し、そのまま眠らされた。

 

 

 

「……攻撃を続けますか?」

 

「いや、生け捕りにしなければ意味がない。

 拘束して、ランデブーポイントまで運ぶぞ」

 

「リーダー、先ほどの話は…」

 

「どうした?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

「そうか。

 ああ、それと…石動(いするぎ)

 

『はい、リーダー!』

『はい、リーダー』

 

 

カタカタヘルメット団のリーダーは、通信機で何者か…『石動』と呼ばれた者たちに連絡をする。

かたや明るく、かたや冷静に、同時に返事を返すあたり姉妹なのだろう。

 

 

アレ(・・)の用意は出来ているか?」

 

『はい!機動、可動部、推進剤の補給までバッチリですよ!』

『しかしリーダー、本当によろしいのですか?』

 

「構わないさ、先に前金代わりに送りつけてきたのは雇い主の方だろ?

 それに、噂じゃ“シャーレの先生”は他の学園から幾らでも人を引っ張ってこれるらしい。そんなインチキが出来る相手には、これぐらいしなきゃ割が合わないってもんだろ?」

 

 

くつくつと、意地の悪い笑みを零すヘルメット団リーダー。

気を失ったセリカの手を縛り、車に乗せ、どこかへと去っていくのだった。

 

 

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