今回はモビルスーツ戦です。
阿頼耶識システムの独自設定について簡単に語られます。
また、流石に原作そのままのサイズでは出せないので、独自設定としてモビルスーツは全体的に本家(バルバトスなら18m)の半分のサイズにまで縮ませています(本作だとバルバトスは9m)。
予めご了承下さい。
『シロ、お前にしか頼めねぇ、とびっきりの仕事があんだ!
…やってくれるか!?』
『ん、任せて』
それがつい数分前のこと。
シロコは全速力でモビルワーカーを走らせ、町中を駆けていく。
ここが無人になっていたことに、今だけは感謝していた。
そしてアビドスの校舎に近づいた所で、シロコは通信機をつける。
通信先は、アビドス地下の
「シズカ」
『シロコ! もう戻ってきたの!?』
「うん、緊急事態だからね。
そっちは用意できてる?」
『こっちももうすぐ!あとはシロコのモビルワーカーがあれば…』
『シズカ先輩!5番が見つからなくて…』
『そこの下の方にある!
今はシロコをこっちに入れないと…ちょっと待ってて!』
「ん、了解」
一旦通信を切り、校門前まで走った。
そして校門を通り抜け、目と鼻の先にある駐車場に一時停車する。
それから数秒たち、駐車場の床の一部がせり上がる。
そこにモビルワーカーを停車させ…エレベーターで下まで降りていく。
「ん、来たよ二人とも」
「シロコ、良かった!
アヤネちゃん、そっちの用意は!」
「あとはコックピットと立ち上げだけです!
私も手伝いましょうか!?」
「いや、こっちは私がやるよ!
アヤネちゃんはクレーンと出口の確認!」
「了解しました!」
シズカはアヤネに指示を出すと、流れるように工具を持ちモビルワーカーに近づく。そして慣れた手つきでシート部分を外し始めた。
「これ、どうするの?」
「あのモビルスーツは元々、動力炉として再利用する為に昔のアビドスのお偉いさんが残してた物だったんだ。
コックピット周りは必要ないからって丸々取り払われてたんだ…だから、これを流用する」
「ん…? モビルワーカーのシステムで動くの?」
「うん。システム自体は元々あった物を使う。
これ、一応簡単なマニュアルとか武器とかのデータ。目を通しておいて」
「ん」
シロコは端末を受け取ると、中身の情報を確認していく。
その間に、シズカはシート部分を外し終わり、上から降りてきたクレーンのフックを取り付けていた。
「どっちかと言うとほしいのはこれ。阿頼耶識のインターフェースの部分だね。
『厄祭戦』の頃のモビルスーツは大半がこのシステムで動くようになってるから…よし。アヤネちゃん、持ち上げて!」
「はい!」
「だけどねシロコ。
モビルスーツからの情報のフィードバックはモビルワーカーの比じゃない。 下手したら君の脳神経にも…」
阿頼耶識システムは機械と人間を繋ぐシステム。
シロコ達の頭部に浮かぶ
しかし擬似的とはいえ神経同調が必要となる都合上、当然危険は伴う。
今までは武装や情報量の少ないモビルワーカーだったからこそ比較的安全に運用できただけの話であり、人型かつここまで大型なモビルスーツとなれば当然危険は倍以上。
しかしシロコは、
「いいよ。どうせ誰かがやらないといけないんでしょ?
それにライディングだって下手したら怪我するのは変わらない、どんなことにもリスクは付き物なのは同じだよ」
と、いつもの様に真顔で答えてみせた。
「……簡単に言うね、君は」
「シズカ先輩!シートの取り付け、完了しました!」
「――仕方ない! 行くよ、シロコ!」
「分かった」
「じゃあ、起動するよ?」
『ん、了解』
「阿頼耶識システム、
コックピットに乗り込んだシロコは、阿頼耶識システムとの接続のためハッチを締め切り、外にいるシズカとアヤネとは通信で会話していた。
起動したモニターに、
GUNDAM FLAME TYPE BARBATOS ASW-G-08
と表示された。
『何これ?』
「シロコ? 何かあった?」
『ん、何か文字が浮かんできた。
えっと…ぐ?違うか、ガンダムフレーム、ば、る……?
――――うっ、ぐ!?あ…!!』
「シロコ先輩!?」
「シロコ! やっぱり無茶か…!
アヤネちゃん、接続を」
『だい、丈夫……ふぅ』
苦しげながらもシロコが二人にそう言い、ぷっ、と何かを吐き捨てた。
それと共に、バルバトスの頭部にシロコの物と同じ
「!
同調率、100%…凄い…!」
『バル――バトス。』
「え?」
『ガンダム・バルバトス。
さっきの文字、この子の名前だった』
「……行けるの、シロコ?」
『うん。
だから…急ごう』
「………分かった!
アヤネちゃん、リフトアップ!
3番ハッチから出すよ!」
「えっ!? でもあそこは砂で塞がれてて…」
「あそこからトンネルを抜けていくのが今の戦場に一番近い!
こっちもなりふり構ってられないんだ!」
「……分かりました! 3番ハッチ、開放します!」
「シロコ、そっちにルートを送る!
ある程度は機体制御で進めるから!」
『――網膜投影、スタート』
外部カメラから読み取られた外の景色が、
自身の背後以外のほぼ全方位の景色が、モニターに広がった。
『―――行くよ。 バルバトス!!』
バルバトスの
背部のスラスターから蒼白い炎を吹き出し…戦場へと飛び立った。
◇ ◇ ◇
そして現在。
戦場へと駆けつけたシロコとバルバトスは、ヘルメット団リーダーの駆るグレイズを薙ぎ払ってみせた。
アビドスの面々も、ヘルメット団の面々も。
各々抱く感情は違えど、戦車の数倍もの巨躯に見惚れていた。
「本当に、やっちゃった…」
「アレに、シロコちゃんが乗ってるんですか…?」
「……」
『見て見てホシノちゃん!
私たちのご先祖様はこのモビルスーツに乗って戦ってたんだよ! カッコいいよねぇ…!』
『…今はただの動力炉ですけどね』
『そ、それはそうだけど!
でも…いつかまた、動いてるところ見たいなぁ…ホシノちゃんなら動かせない!?』
『無理です。私にメカニックの腕はありませんし。
第一、理由もなくこんなの動かしたら何を言われるか…』
「………ユメ、先輩…」
その最中、ホシノは一人
「り、リーダーが…!?」
「ウソだろ…!? あいつらもモビルスーツを持ってるなんて聞いてない!!」
「まさか、リーダー、今の一撃で……」
先程まで盛んに勢いづいていたヘルメット団は、激しく薙ぎ倒されたグレイズとその中にいるであろうリーダーのことを思い、ある者は冷や汗を流し、ある者は恐怖に震えだした。
『誰が、やられただって…!?』
「「「! リーダー!!!」」」
グレイズが震えながら立ち上がり、スピーカーからも雑音混じりではあるが声が響く。
その声の主であるヘルメット団リーダーもどこか苦しげな声色となっており、先の一撃の
『どこから持ってきたのか知らねぇが…よくもやってくれたなッ!!』
怒号を響かせ、再びスラスターを噴かせながらグレイズがバルバトスに迫る。
バトルアックスを怒りのままに振り上げるその有様に、アビドスは再び恐怖を覚えた。
「ひっ…ま、また来たっ!」
『ユミカ、みんなを下げて!!』
「分かった! 総員退避だ、安全圏まで離脱するぞ!」
その指示を受けたアビドスの面々は再びモビルワーカーにしっかりと乗り込み、最高速で戦場から離れてゆく。
「あっ…アイツラどさくさに紛れて!」
「逃がしてたまるか!
私たちも追いかけ…」
「やめろ!あの戦いの横を通るつもりか!?
踏み潰されてミンチになるのがオチだぞ!」
「「う……」」
ガキン、という大きな機械音が響き渡り、バトルアックスとメイスがぶつかり合いせめぎ合う。
通常の何倍もの規模であるそれを見、聞いたヘルメット団は追撃のための移動を放棄せざるを得なかった。
『よく見ればそのモビルスーツ…フレームはガタガタ、装甲も傷だらけで塗装も剥げてるじゃねぇか。
そんな中古品もいいとこなオンボロで、このグレイズの相手になるかっての!』
『…そのオンボロにぶっ飛ばされてたくせに、よく言うね』
『っ! その声…あの時の銀髪女かッ!!』
『そういう貴方は前に追い返してやった赤いやつでしょ?
機体の色は赤くしなくてよかったの?』
『無駄口をォ!!』
ヘルメット団リーダーは怒りのままに操縦桿を動かし、そのまま押し切ろうとする。
しかし実際に押されていたのは…
『いいから…』
『なっ!? どうなってんだ、押し負けるッ…!?』
『大人しくしてろ…っ!!』
ヘルメット団のグレイズの方だった。
バトルアックスを持った手が、放り出されそうな勢いで弾かれる。
当然、その隙を狙おうとシロコはバルバトスの腕でメイスを振り上げた。
『くっ!』
『っ! ちっ…!』
しかし、グレイズの方も黙ってやられはしなかった。
リアスカート部分にマウントしておいたライフルを咄嗟に抜き、バルバトスに向けて弾丸を放つ。
シロコも阿頼耶識によって強化された反射神経でそれに気づき、咄嗟に後ろへと下がりそれを回避した。
…しかし、そこでバルバトスに異常が発生する。
『…? なんだ、奴のスラスターが…』
『っ!? これ…ガス欠!?』
バルバトスの各部のスラスターが、その勢いを失っていく。
その理由を示すように、バルバトスの
◇ ◇ ◇
「…シロコ先輩、大丈夫でしょうか?」
「信じるしかないよ。
…とはいえ、ついこの間までずっと放置されてた状態のモビルスーツでどこまで…いや、やってくれなきゃ駄目なんだけどさ…」
「そう、ですね…とはいえフレームの調整も出来てませんし、燃料だって…」
「燃料……ん? ねん、りょう…?
ああーーーっ!!」
「し、シズカ先輩!?」
「アヤネちゃん、どうしよう!?
バルバトスのスラスターのガス、補給するの忘れてた…!」
「ええーっ!? ど、どうしようって言われても…!?」
「起動するのに夢中で…!
もともと残ってた分で、どれだけ動けるか…!?」
◇ ◇ ◇
『……ちっ。だったら…!』
シロコはスラスターを止め、どうにかバルバトスを足で踏みとどまらせた。そのままメイスを地面に擦らせ、砂埃を巻き上げ煙幕を張る。
だが、それに対しグレイズはライフルを真っ直ぐに向けた。
『無駄だ! この距離なら照準は外れない!
こんな煙幕……なっ!?』
土煙が揺れ動くのを検知したセンサーの反応。
咄嗟にバトルアックスを構え……煙幕の向こうから真っ直ぐに飛んできたメイスを空中に弾き飛ばした。
『馬鹿が!一つしか無い武器を投げ捨てやがって……っ!?
あいつ、どこに行った!?』
衝撃で吹き飛んだ土煙の向こうに、もうバルバトスの姿はなかった。慌てて周囲を見渡すも、何処かに移動した形跡はない。
「リーダー! 上、上っ!!」
『上…なッ!?』
グレイズの頭部を頭上へと向ける。
そこには、宙に弾かれたメイスをキャッチし…そのままそれを叩きつけようとするバルバトスの姿があった。
『くっ!!?』
『遅い……っ!!』
回避しようと咄嗟に操縦桿に手を掛けるが、時既に遅く。
回転の勢いを乗せた鉄塊が、グレイズに向けて振り下ろされ。
轟音を響かせながら、土煙が巻き上がった。
『ぐあああああっ!!?』
『……っふぅ』
完全に破壊されてはいないものの、頭部がひしゃげ、地面に倒れ、その
そんなグレイズからメイスを引き抜き、ゆっくりと立ち上がる五体満足のバルバトス。
どちらが勝者でどちらが敗者なのかは、火を見るより明らかだった。
『……く、そ…っ』
グレイズの
先ほどの一撃による衝撃は、そうなるのに充分なものだったらしい。
『………次は』
「ひっ!!?
あ、あいつ、こっちに来るぅ!?」
「サブリーダー!早く逃げよう!」
「馬鹿! リーダーを置いてけるわけ…」
「…」
バルバトスがずしん、と一歩を踏み出す。
ヘルメット団は慌てふためきこの場から逃げようとする…が、一方でリーダーを置いてはいけないと動こうとしないものもいた。
「待て、シロ!
もう充分だ!」
『ん? …ユミカ』
その場へモビルワーカーが駆けつける。
それを見たバルバトス…シロコは、ヘルメット団へと向かう足を止めた。
「さて…大人しくしてもらおうか、ヘルメット団の皆さんよ」
「「「………」」」
ヘルメット団は観念したのか、次々と手に持っていた銃を地面に落としていく。そして降伏の意思を示すように両手を挙げ、地面に膝をついた。
『ん……皆無事でよか、っ…あれ…?』
シロコの視界が薄れる。
違和感を感じた直後、意識に霞がかかり…
「あ…? うおっ!?」
「モビルスーツが!?」
「シロコ先輩!?」
バルバトスがずん、と膝をついた。
そのコックピットの中…シロコは気を失っていた。
阿頼耶識システムでモビルスーツを動かし続け、なおかつ衝撃などで揺れたことはシロコの脳や肉体に大きな負荷を掛けていた。
その結果、その負荷に耐えきれなくなったシロコの肉体は意識を手放すことを選択。
擬似的とはいえパイロットと繋がっているバルバトスが機能を停止するのもまた、必然と言えることだった。
…かくして。
アビドス郊外の砂漠での戦いは、ひとまずアビドス高校側の勝利で幕を下ろしたのであった。
これにて毎日投稿は一旦打ち止めです