便利屋イグニート   作:文ノ雪

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色々あって少々更新が遅れました。申し訳ございません


最上階

廊下を走り、オリビアは駆け抜ける。大浴場で遮ってきたマフィアを叩きつぶしたオリビアは、最低限に体をふき取って急ぎ衣服を着直しキュリアを追っている。

 

「クソッ…見失ったか…」

 

辺りを探してもキュリアの姿は見当たらない、既に上の階に行かれたと考えるべきだろう。

 

「確かエレベーターのほうはリリィが…」

「アッ!おーい!オリビアー!」

 

その時、奥の方から声が響く。視線を移すと、リリィがこっちに向かって来ながら呼びかけていた。

 

「さっきまで連絡しても反応し…って、お前なんで髪濡れてるんだ?」

「説明は後だ。それより、連絡してたってことは何か見つけたのか?」

「あぁ、VIPルームに繋がるエレベーターを見つけたぜ!」

「ほんとうか!」

 

オリビアの反応にリリィは親指を立てながら笑顔を見せつける。

 

「その周辺を守ってた連中もぶちのめしてやった。あとはキュリアの野郎をぶちのめして、フェリクスを救助すれば完璧だ!」

「奴は既に上で待ってるはずだ。これ以上、フェリクスと奴を同じ場所にいさせるわけにはいかない、VIP階に向かうぞ!」

「あぁ!行ってやろうぜ!」

 

 

 

チーン、という無機質な音と共にエレベーターの扉が開かれる。目の前に広がったのは、数多の装飾にいくつかの絵画、更には巨大ガラス窓から見える絶景の景色。まさに高級ホテルにふさわしい通路があった。

最上階にあたるVIPルームが存在する場所に、二人は足を踏み入れた。

 

「…待ち伏せがあると警戒してたが、誰もいないな」

「銃を構えた連中が扉の前に待機しててもおかしくねぇ状況だっつうのに…マフィアにしては無警戒にもほどがあるな…」

 

辺りを見渡してもマフィアはおろか、人ひとりさえ見当たらない。待ち伏せさえしておらず、警備をおろそかに…いや、警備をしてもいない状況だ。

 

二人は警戒心を強めながらも奥へ奥へと先を進んで行くと、巨大な扉が正面にあるのを確認した。他に部屋と思わしき場所もなく、扉があるのはそれだけだ。

 

「もっと部屋があると思ったが、一階に一室のみとは随分思いきってるな」

「VIPルームという名のアイツの私室みたいなもんじゃねぇかこれ」

 

つかつかと歩き、扉の前にたどり着く二人。おそらくこの先にキュリアが、フェリクスが待っている。

 

「…覚悟は決めてるか?リリィ」

「そんなの、朝っぱらから既にしてるさ。とっと終わらして事務所に帰ろうぜ」

「フッ、だな」

 

オリビアとリリィは扉を…二人そろって思いっきり蹴飛ばした!扉は二人のキックに耐え切れず崩壊!地面に倒れた扉を踏みつけながら、VIPルームへと二人は入っていった。

 

 

 

中は思ったより簡素なものとなっている。壁に曲剣めいた武器が飾られていること以外はまるで普通の部屋と言っても過言ではないほどだ。あるのは机や椅子に多少大き目のベッド、どれもシンプルなデザインだ。

 

「ようこそ、私のホテルへ。ご堪能いただけたか?」

 

そして、その中央ともいえる場所で両手を広げながらオリビアとリリィを出迎えるキュリアがいた。上着は着ておらず、大きく牙を見せた獰猛なシャチのタトゥーが露わになっていた。

 

「先程ぶりだなオリビア。髪も乾かさないで来るとは」

「どうせ勝手に乾くさ、爆炎使ってたら嫌でもな」

 

両手は既に炎を纏わせており戦闘体勢だ。

 

「ここのホテルは銃弾やAKWで出迎えるのが流儀か?だとしたらとんだクソホテルだな!」

「特別扱いしたまでのこと。他では味わえない体験をしたのは事実だろう?」

「御託はいい。それよりもフェリクスを開放しろ」

 

オリビアの視線はキュリアのすぐ隣に向いていた。そこには、椅子に縛られ、指はいくつか斬り落とされ、顔や体中に数多の傷をつけられ、血で汚れたフェリクスがいた。目は虚ろめいているが、視線はしっかりオリビアたちの方へ向けている。

 

「…オリビアさん…リリィさん…なんで、ここに…」

「無理して喋るな…遅れて、すまない」

 

あまりに痛々しい光景にオリビアはフェリクスに言葉をかけ、沸き上がる怒りと殺意を込めた睨みをキュリアに向けた。

 

「ずいぶん…フェリクスで楽しんでたようだな」

「なんど質問しても碌に会話してくれなくてね。おかげで手荒いことをせざるおえなかっただけだ。シュヴァルツの犬は躾がなってなくて、飼育しづらいことこの上ない」

「テメェ…!」

 

リリィは背負っていたグレートメイス型AKW【グレイド】を手にする。既に戦闘態勢に入っていた。

 

「ほう、襲撃を受けてたとは聞いていたが、まさかそんな大がかりな武器まで持って来たとは。どうやらそっちも本気と見える、ならば」

 

そう言うと、キュリアは壁に掛けられていた曲剣めいた武器…否、曲剣型AKWを外す。それも一本ではなく二本を両手に持った。

 

「こちらも、相応の態勢で臨むとするか。二本を扱うのは何時ぶりだろうか…久々に闘志も沸いてきたよ」

「AKWを二本も使う気か?腕が持つわけねぇだろ…」

 

リリィの言葉は何も間違っていない。AKWは武器に内蔵されたエンジンがあり、いくら小型と言えど重量は相当なものだ。訓練されてないものでは起動してない状態でもうまく振るうことさえできず、そもそも片手で扱うこと自体難しいのだ。

 

それを二本、俗にいう二刀流で戦うのは現実的ではない。強靭な力を持つドラゴニュートのリリィでさえその無謀さは重々理解している。過去にそれをやろうとして重症を患ったことがあるからだ。

 

「心配してくれてるのかな?」

「自信過剰なのかという心配はあるな。私はAKW自体は扱わないが知識はある。お前の行為が無謀としか言いようがない」

「フッ…言っただろう?相応の態勢で行くと。そちらも使える手を全て使うなら、私の力も持て余すことなく使わせてもらう」

 

瞬間、オリビアはキュリアから強い魔力の流れを感じ取った。それはキュリアを纏うように…いや、身体の内から何かを湧き立たせるような、鼓動に近い。炎の如く燃え上がるような魔力がキュリアから感じ取ったのだ。

 

キュリアはオリビアのその反応を察し二ヤリと笑う。

 

「お前なら私が今なにをしたのか、わかったんじゃねぇか?オリビア」

「…ストレング、身体能力を強化する魔法」

「大正解!わかってくれて嬉しいなぁ、これに気づけずに死ぬような連中ばっかだったからよぉ」

 

上機嫌な状態でキュリアは二本の曲剣型AKWを起動させた。この状態でも下手すれば重量と振動でバランスを崩し、大怪我を負う可能性があるが、キュリアはまるでものともせず持っている。

 

ストレング。オリビアのいう通り身体能力強化の効果を持つ魔法の一種。扱うにはそれ相応の魔力が求められ、軽々しく扱えるようなものではない。それはつまり、キュリアは魔力においても油断ならない実力の持ち主であることの証明である。

 

「お前たちは私を倒したくてうずうずしてるんだろう?遠慮はいらん。二人同時でかかってくるといい」

「調子に乗りやがって…」

「落ち着け、昨日戦った時はストレングは使ってなかった。今のキュリアは私でさえ未知数の相手だ」

「なら二人で叩き潰せばいいだけの話だ!」

「…それもそうだな。なら、早々に終わらせてもらう…行くぞ!リリィ!」

「あぁ!」

 

オリビアの掛け声と共に、二人は同時にキュリアに接近!

 

「オラァ!」

 

最初に攻撃を仕掛けたのはオリビアだ。右拳が顔面目掛け放たれるが、すかさずキュリアはAKWで防ぎもう片方の曲剣が振るわれる。

 

「させねぇよ!」

 

だがリリィのグランドが振り落とされたことで、キュリアは攻撃をやめ素早くバックステップを行い地面に落ちたトマトのように潰れるのを回避!リリィはそのまま追撃するべく一度グランドをその場に捨て、格闘による戦闘スタイルに切り替える。

 

「ウラァ!ウオラァ!!」

 

右手、左手と、繰り返し止むことなく攻撃を仕掛け続ける。その戦いっぷりはオリビアと比べるとやや荒々しく、故に隙が生じやすい!

 

「ドラゴニュートと戦うことは滅多にないが…なかなか面白い戦い方するじゃねぇか」

 

キュリアは何度も避け、AKWで受け止め、攻撃を捌く。そして、リリィの隙をすぐに見つけだし、攻撃を避けたところを二刀の曲剣で切り裂こうとした。起動された刃がリリィの腸へと接近するも、金色に輝くその目には恐怖も焦りもない。

 

「ウオリャアァァ!」

 

オリビアがリリィの肩に手をかけ、飛び越えるようにジャンプし、炎にまとった飛び蹴りが繰り出される!リリィも同時のタイミングで蹴りを行っていた!キュリアは舌打ちし二人のキックを二刀の曲剣で受け止めた。蹴りの衝撃で後ろに下がり、やや距離が空き二人を見る。

 

「ハハハ…なかなかに面白いじゃねぇか。血がたぎるのを感じるぞ…!」

「なら、オレたちが大量出血させて落ち着かせてやるよ!」

「タイマンなら私は負けてたかもしれないが、リリィと二人ならお前に負けるきは一切ない。このまま押し切らせてもらう!」




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