便利屋イグニート   作:文ノ雪

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災難続き

「あぁ!?テメェなんだその面ナメてんのかエェ!!」

「んだとゴラァ!ナメた真似してんのはそっちだろうが!」

 

砂浜のど真ん中ともいえる場所で、男二人が怒声を上げながら言い争いをしていた。両者ともに顔が若干赤くなっており、身体の動きも不安定なところから酒で酔っ払ってる状態であることを示している。

二人の手には空き瓶が握られてるのもあり、巻き込まれるのを恐れた周囲の客はなるべく関わらないよう避け、離れていく。

 

「あー、アンタら、ちょっといいか?」

 

だが、そこに割って入るかのよう一人のドラゴニュートがいた。男二人は睨みを利かせながら振り向くと、自身より長身の体に、でかい尻尾。太陽がちょうど彼女の頭で隠れた位置に立ってたのもあり、面を食らって一歩下がってしまう。

 

「ここはビーチだ。いつもなら人なんていねぇが、今日は周りに人がたくさんいるのはわかるだろ?だからよ、いっかい落ち着こうぜ?な?」

 

彼女…リリィは気さくに話しかけ落ち着かせようとするが、男たちの怒りの矛先はリリィに向けらる。

 

「急に来てなんだテメェ!」

「邪魔すんなぶっ飛ばすぞ!!」

「…フー、たしか話が通じねぇ場合は…」

 

これ以上の説得は時間の無駄と判断したリリィは、すぐさま男二人の腕を掴み取る。当然振りほどこうと二人は抵抗しようとするが、その前にリリィが二人を宙へ持ち上げた!

 

「海に来たんなら…酒飲んでねぇで泳げやテメェらァ!!」

 

リリィは勢いよく海めがけ投げ飛ばし、二人はそのまま受け身も取れるはずもなくダイブした。幸いにも浅瀬だったのもありすぐに打ち上げられたが、あまりに急すぎる出来事を前に気絶したようだ。

 

「たくっ、最初の一時間以外まったく泳げる暇もねぇ」

 

愚痴を言いながら二人を尻尾で持ち上げ、砂浜に転がった空き瓶を拾ってその場を去っていった。

 

 

 

「ハァー、あちぃし変な客は多いしで忙しいぜ」

 

男二人をシルト社が用意した留置場まで送り届けたリリィはレモネード片手にビーチへと戻っていく。

かれこれビーチに来て数時間が経過。最初は大したことは起きず気楽にやってきたが、昼を過ぎたあたりから明らかに酒に酔って問題を起こす客が急増しており、この数時間の間だけでもう10人近く輸送作業をしている。

三人で固まって行動するよりバラバラのほうが効率的として別れており、今はリリィ一人だ。

 

「酒禁止にすりゃあ済むが…まぁ、そんなんすりゃ暴動が起きるよなぁ。オレだって嫌だし」

 

そんなことをボヤキながらビーチへと戻ると、奥の方で何やら必死に走る一人のメガネを掛けた銀髪の女と、それを追うもう一人の女がいた。

 

「待てぇ!その財布今すぐおいていけ!」

 

聞き覚えのある声にリリィは奥の方へと視線を集中させると、あとを追っていたのはオリビアだった。手を貸そうと思い近づこうとしたが、それよりも先にオリビアが逃げる女の腕を掴み取った。

 

「大人しくしろ!今ならまだお咎めだけで…」

 

オリビアが喋ってる最中、女の掴まれていた方とは別の手にナイフが握られ、オリビア目掛け振り落とす。

 

「ッ!おい!避けろオリビア!」

 

いち早く気づいたリリィは叫ぶ。オリビアは少し気づくのに遅れるも、横へステップしなんとか回避に成功する。

 

「やりやがったな…そっちがその気なら私も…」

「何とか当たったか」

 

女の発言にオリビアは一瞬訝しんだが、それよりも先に身体に違和感を感じた。ズルっと何かが落ちたような、あるはずの物が無くなったかのような、肌への日差しがさっきより強く感じ始め下に視線を向けると。

ビキニの紐が斬られ、ずり落ちていた。

 

「うわああああっ!?」

 

赤面しながら必死にビキニを拾い上げ上半身を隠すように手を動かすが、その際に腕を掴んでいた手を放してしまい、女は即座にその場から逃げるよう立ち去った。

 

「オイコラァ!逃がすと思ってんのか一回ぐらいぶん殴ってや」

 

隠しながらも追おうと立ち上がったが、女は即座に振り向き持っていたナイフを投げ飛ばす。ナイフはオリビアの下半身の横を通り過ぎ、砂に埋もれるよう突き刺さる。

そして、またもや嫌な予感を感じたオリビアは再び視線を動かすと、下着のほうの水着の紐もまた斬り落とされてるのに気づいた。

 

「ぬああああああっ!?」

 

もはや立つこともできずその場にうずくまるようオリビアは座ってしまい、女はそれからは振り向くこともなくビーチから後を去っていった。

リリィは女を追うべきかと考えたが、流石に今のオリビアを放置するのはあんまりだと思い、追うのは諦めオリビアのもとに近づく。

 

「…えーっと。大丈夫かオリビア?」

「これを見て大丈夫と思うかお前!!」

 

赤面しながらオリビアは怒り声を上げる。仕方ないがご立腹の様子だ。

 

「まぁ落ち着けって!それより…今のはスリか?」

「あぁ、ついさっき盗んだ場面を見て後を追ってたんだが…見ての通りだ」

「さっきのやけに無駄のない動きだったな。ナイフの扱いに慣れてやがる…だが、どっから取り出したんだあのナイフ?」

 

傍から見ていたリリィからすると、先の銀髪の女は懐に手を入れるような動作もなく、そもそもその女もまた水着のよな恰好をしていたのでナイフを持ち運べるような恰好ではなかった。だが、にも関わらず気づけば手にナイフが握られていたのだ。

 

「おそらく錬金術の類の魔法だろう…アイツからかなり強い魔力があるのを感じ取れてた」

「そんな上等な魔法を扱えるって言うのに、なんでスリなんぞやってんだあの女?」

「それよりもだ。リリィ、悪いがそのライフガードを私に…」

 

だがその時。リリィの聴覚は海辺の方から何やら叫び声のようなものを聞き取った。声の聞こえた先に視線を向ければ、何やら人だかりで集まっているのもわかる。

 

「悪い、緊急事態が起きたかもしれん。後は自分でなんとかしてくれ!」

「えっ、ちょ!?リリィ!?」

 

うずくまってその場から動けないオリビアを置いていき、リリィは声の聞こえた先へと走り去っていった。

 

 

 

たどり着いた先はやはり人で集まっており、全員が海の方へと視線を向けている。高身長なのをいかし何が起きてるのか覗き込むと、海の奥らへんの位置に何かが浮かんでいるのが見える。

その正体はいち早く気づけた。浮き輪を着けた子供が奥の方へと流されているのだ。

 

「誰か!誰か助けてください!私のルイスが!」

 

母親らしき人物が涙声で訴えるよう助けを求めている。

 

「クソっ!オイどけ野次馬ども!」

 

事態の緊急性に気づいたリリィは人だかりを押しのけ子供の方へと向かおうとするが、それよりも先に海へ飛び込んだものがいた。

 

「うおりやああああ!」

「フェリクス!?」

 

リリィはその飛び込んだ者の正体にいち早く気づき驚く。他でもない新たに便利屋へと加わったフェリクスだ!

 

「アッ!リリィさん!ここは私にお任せうおおおおおお!!」

 

近くにリリィがいるのに気づいたのか親指を立て子供を助けるべく叫びながら泳いでいった!




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